――大徳寺がデュエルアカデミアからいなくなって数日が過ぎた。
明日香は無事に意識を取り戻し、ここ数日で何とか歩けるくらいには回復している。万丈目もほぼ回復したようで、普通のデュエルを出来るくらいには元気になっていた。
また、本土の病院で治療を受けていた三沢も、全身包帯姿でデュエルアカデミアに帰還している。闇のデュエルは勿論、通常のデュエルもしばらく禁止のようだが、普通に生活する分には問題ないらしい。
また、三沢が退院したことで、タニアも退院したようなのだが、やはり本人は遊矢とした約束をすっかり忘れて、三沢とのデュエルに満足して実家に帰ってしまったという。
これでカミューラを元に戻すにはセブンスターズの最後の一人に頼るしかなくなってしまった。
しかし、もしかしたら、その最後の一人が大徳寺先生かもしれないということで、七精門の鍵を守る遊矢達の士気もだだ下がりしている。
それからしばらくして、デュエルアカデミアも学園祭の季節がやってきた。オベリスクブルー、ラーイエロー、オシリスレッドに別れて出し物をするらしい。
オベリスクブルーの三年は、プロモーションデュエルをするということで、卒業してプロになるブルー生を中心に、世間に顔を売るために様々なイベントデュエルをするようだ。カイザーもその手伝いをすると言っている。
二年以下はデュエル喫茶や迷路デュエル等の出し物をするらしいが、遊矢達の中でオベリスクブルーなのは明日香だけなのでイマイチ情報が来ない。明日香も怪我でイベントには不参加の予定だからだ。
ラーイエローは全ての学年が屋台を出すということだが、三沢も怪我を理由に参加を辞退している。
オシリスレッドは全体で、毎年恒例コスプレデュエルをトーナメントでするということで、翔や隼人が、元気のない遊矢や十代のために気合を入れて準備をしていた。
気合を入れ過ぎて翔が転んだり、隼人が意外と絵が上手かったりと、二人が祭の準備を頑張っている姿を見ている内に、遊矢や十代も少しずつ元気を取り戻していく。
――そして、当日。
コスプレデュエルは、八人のトーナメント形式で行われるということで、久しぶりのデュエルに参加する十代と万丈目が気合を入れていた。
十代は最初気合が入り過ぎて何のコスプレをしているかわからなくなっていたが、最終的には遊矢のセンスで《炎の剣士》の衣装に、万丈目は前に自身で使っていたXYZのコスプレを自作して来たようでそれを身に着けている。
ただ、XYZのコスプレでは腕回りが上手く動かせないので、デュエルディスクとカードの操作は今回翔に任せるようだった。
久しぶりに闇のデュエルでも何でもないので、今回は遊矢も見る側として十代と万丈目を応援することにしている。流石に参加するのは他の生徒達に悪いので自重した形だ。
また、十代と万丈目以外に知った顔として、ラーイエローの神楽坂の姿があった。
前に武藤遊戯のデッキを盗んだ生徒だが、どうやらあのデュエル以来、武藤遊戯のデッキの感触が忘れられなくなってしまったらしい。今回は、盗んだデッキではなく、自身とラーイエローの生徒達から貰ったカードで武藤遊戯のデッキを出来るだけ再現して参加していると言っていた。
また、コスプレなのか、イエローの制服を肩にかけ、髪をヒトデのように尖らせて、胸には手造りのパズルのようなものをかけている。遊矢は写真でしか見たことはないのでイマイチわからないが、武藤遊戯のコスプレをしているらしい。
この三人の他にもオシリスレッドの生徒が数人、コスプレで参加している。デュエルを禁止されている三沢はラーイエローなのに何故か司会を担当するようで、解説席にも何故か《ハーピィ・レディ》のコスプレをしているオベリスクブルーの明日香が恥ずかしそうに座っていた。どうやら、取り巻きのジュンコとももえも同じ衣装を着ていることから無理矢理着させられたらしい。
明日香の闇のデュエル以降、すっかり元気になった吹雪が、そんな明日香の写真を撮っては妹の成長を喜んでいたが、それをファンクラブのメンバーに渡すと言った所で明日香に追いかけられていた。どうも、吹雪は意外とお調子者な性格をしていたようだ。
そんなこんなで、オシリスレッドの一大イベントとして、コスプレデュエル大会が始まったのだが、何と参加者の最後の一人に《ブラック・マジシャン・ガール》のコスプレをした少女が参加していた。
これには企画の翔も驚いている。
と、いうのも、デュエルアカデミアでは、伝統的に毎年トメさんが《ブラック・マジシャン・ガール》のコスプレをしているからだ。
まさか、こんな所で本物そっくりのブラマジガールが出て来るとは思わず、万丈目の近くで号泣している。しかし、よくよく気配を探ると、このブラマジガールはデュエルモンスターズの精霊だった。まさに、特別ゲストとして申し分ない。
一回戦は十代、万丈目、神楽坂、ブラマジガールの四人が順当に勝ち抜いており、二回戦では万丈目VSブラマジガール、十代VS神楽坂という組み合わせで、デュエルをすることになった。
しかし、ブラマジガールの可愛さに現を抜かした翔が、万丈目の指示を無視してプレイングミスを連発し、一足先にブラマジガールが決勝戦へとコマを進めている。
続く第二試合では、十代と神楽坂がデュエルの準備を始めていた。前回、遊矢が神楽坂とデュエルした後、十代も神楽坂とデュエルしたようだが、その時は遊戯デッキのパワーに押されて十代が負けたらしい。
正確には、亮が何とか相打ちを取った以外は、全ての生徒が遊戯デッキのパワーに敗北していた。
神楽坂が遊戯デッキの魅力に取りつかれたのも、それだけの勝利を手にした故の結果ということでもある。とはいえ、あの時のデッキは、かなり高価なカードも使われており、いくらラーイエローの生徒の力を借りたとはいえ、全く同じものを再現するのは不可能だった。
だからこそ、神楽坂は今できるだけの模倣をした遊戯デッキで、このコスプレデュエルに参加している。力は前より格段に落ちているが、それでも十代はやる気十分だった。
「悪いが、デッキが未完成でも手加減するつもりはないぜ。二度も負けたくないしな!」
「いいや、勝つのは俺だ」
「「デュエル!!」」
お互いにデッキからカードを五枚引いていく。先行は神楽坂だった。
「俺のターン、ドロー!」
結構様になっていることもあって、応援席のラーイエローの生徒から、「遊戯さん!」、「いけー遊戯―!」と、応援の声も飛んでいる。当然ながら、神楽坂であって遊戯さんではない。
『えー、引き続き、デュエルの実況はラーイエローの三沢がやっていきます。解説も引き続き、オベリスクブルーの天上院君にお願いしていきますのでよろしくお願いします』
『よろしくお願いします』
『では、ざっくりプロフィールを紹介していきましょう。先攻を取ったのはあのデュエルキング、武藤遊戯のコスプレをしているラーイエローの神楽坂選手。彼は見た通り、武藤遊戯のデッキを出来る限り再現してこのトーナメントに参加しています』
『一回戦は相手のレッド生を、キマイラのみで倒したのが印象的でしたね』
『しかし、武藤遊戯のデッキを再現しようとしたことがある人なら誰もがぶつかる壁ですが、どうしてもカードが入手しづらいのが現状です。彼も同じ寮の仲間からカードを譲って貰ったり、トレードしたりして何とか形にはしたようですが、それでも限界があるのが心配な所ですね』
そんな解説を耳にしながらも、神楽坂は武藤遊戯になりきってカードをプレイしていた。
「俺は手札から、《砲撃のカタパルト・タートル》を召喚!」
《砲撃のカタパルト・タートル》
効果モンスター
☆4 水属性 水族
ATK1000 DEF2000 攻撃表示
背中に砲台を付けた巨大な亀が、フィールドに出現する。かつて、武藤遊戯が使っていた《カタパルト・タートル》のリメイクカードだった。
「《砲撃のカタパルト・タートル》の効果! 一ターンに一度、自分フィールドのモンスター一体をリリースし、手札・デッキから『暗黒騎士ガイア』モンスター、又はドラゴン族・レベル5モンスター一体を特殊召喚する!」
「けど、お前のフィールドにはカタパルト・タートルのみ……」
「焦るなよ。俺は、このカード自身をリリースすることで効果を発動する! カタパルト・タートル、射出! デッキより出でよ、《暗黒騎士ガイア》!!」
カタパルト・タートルが消えながら砲弾を発射していく。その弾が空中で破裂すると同時に、中から黒い馬に乗った騎士がフィールドに乱入してきた。
《暗黒騎士ガイア》
通常モンスター
☆7 地属性 戦士族
ATK2300 DEF2100 攻撃表示
「おおっ、ガイア!!」
「俺はこれでターンエンドだ」
神楽坂 手札5枚 LP4000
フィールド ガイア
魔法・罠 なし
VS
十代 手札 LP4000
フィールド なし
魔法・罠 なし
「へへっ、やっぱしっかり遊戯さんのデッキになってるな。俺のターン、ドロー!」
好調な滑り出しを見せる神楽坂だが、逆に十代の手札はあまり良くなかった。珍しく、《融合》を引き当てることが出来ていない。
「ここは様子見だ。俺はモンスターをセット、カードを一枚伏せてターンエンド」
十代 手札4枚 LP4000
フィールド セット1体
魔法・罠 リバース1枚
VS
神楽坂 手札5枚 LP4000
フィールド ガイア
魔法・罠 なし
『対する《炎の剣士》の遊城十代選手ですが、どうも手札があまりよくないのかいつもの調子が出ていません。彼は『E・HERO』デッキの使い手で、いつも速攻でモンスターを融合して攻めてくるのが特徴です』
『追い詰めたつもりでいてもいつの間にか逆転されていることが多い選手です。一回戦のデュエルも、中盤までは相手が押していたけれど、後半の巻き返しで逆転勝利していたわね』
『確かに。ここからの十代選手の盛り返しに期待しましょう』
とはいえ、不調の原因は三沢も明日香もわかっている。ここ最近、安静にするために、十代はデュエル自体をそこまでやっていなかった。
十代にしてみれば、このトーナメントはちょっとしたリハビリに当たる。そのせいもあってか、まだ完全に調子が乗り切っていないのだ。
「俺のターン! 悪いが、手加減はしないぜ! 手札から、永続魔法《螺旋槍殺》を発動! 自分の《暗黒騎士ガイア》、《疾風の暗黒騎士ガイア》、《竜騎士ガイア》が守備モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えていれば、その分だけ相手に戦闘ダメージを与える!」
「貫通攻撃か……!」
「まだまだ! 手札から《融合派兵》を発動! このカードを発動するターン、俺は融合モンスターしかEXデッキから特殊召喚出来ない! だが、その代わりに、EXデッキの融合モンスター、《竜騎士ガイア》を相手に見せ、そのモンスターに記載された融合素材モンスター、《カース・オブ・ドラゴン》を手札・デッキから特殊召喚するぜ!」
《カース・オブ・ドラゴン》
通常モンスター
☆5 闇属性 ドラゴン族
ATK2000 DEF1500 攻撃表示
全身が金色の呪われしドラゴンがデッキから呼び出される。普段はあまり見ないが、確かにこのモンスターも武藤遊戯が使用したモンスターの一体だった。
「さらに手札から《融合》を発動! フィールドの《暗黒騎士ガイア》と《カース・オブ・ドラゴン》を融合し、《竜騎士ガイア》を融合召喚!!」
馬から飛び上がったガイアが、《カース・オブ・ドラゴン》の背に乗ることで、新たなモンスターとなっていく。
《竜騎士ガイア》
通常モンスター 融合
☆7 風属性 ドラゴン族
ATK2600 DEF2100 攻撃表示
「手札から《クィーンズ・ナイト》を召喚!」
《クィーンズ・ナイト》
通常モンスター
☆4 光属性 戦士族
ATK1500 DEF1600 攻撃表示
赤い鎧を身に纏った金髪の女戦士がトランプの絵柄が描かれた盾と剣を構えて現れる。
これでまた神楽坂のフィールドには、二体のモンスターが並ぶことになった。
「バトルだ! 《竜騎士ガイア》で守備モンスターを攻撃! ダブル・ドラゴン・ランス!!」
ガイアが守備モンスターに向けて槍を構えていく。表になったのはクレイマンだった。
《竜騎士ガイア》 ATK2600 VS 《E・HEROクレイマン》 DEF2000
防御に定評のあるクレイマンでも、ガイアの攻撃は受けきれずにそのまま破壊されていく。同時に、貫通ダメージが十代を襲った。
「くっ、クレイマン!」
十代 LP4000→3400
「この瞬間、《螺旋槍殺》のもう一つの効果! このカードの効果で《竜騎士ガイア》が相手に戦闘ダメージを与えた場合、デッキからカードを二枚ドローし、その後手札を一枚捨てる!」
「くっ、これが未完成のデッキの力かよ……!」
「まだ俺には《クィーンズ・ナイト》の攻撃が残っているぜ! いけっ、十代にダイレクトアタック! クィーンズ・セイバー・クラッシュ!!」
壁モンスターのいなくなった十代に、《クィーンズ・ナイト》の剣が襲い掛かっていく。
《クィーンズ・ナイト》 ATK1500 VS十代 LP3400
「悪いがこれ以上は駄目だ! 罠カード、《ヒーロー・スピリッツ》! 『E・HERO』が戦闘で破壊された場合、モンスター一体からの戦闘ダメージをゼロにする!」
しかし、墓地へ行ったクレイマンの思念が、《クィーンズ・ナイト》から十代を守った。
「なら、メインフェイズ2で魔法カード、《馬の骨の対価》を発動! 通常モンスター、《クィーンズ・ナイト》を墓地へ送り、デッキからカードを二枚ドローする!」
次のターンの反撃を警戒してか、低い攻撃力のモンスターを手札へと変換していく。
「永続魔法、《ブランチ》を発動! さらにカードを二枚伏せて、ターンエンドだ」
神楽坂 手札1枚 LP4000
フィールド 竜ガイア
魔法・罠 《螺旋槍殺》、《ブランチ》、リバース2枚
VS
十代 手札4枚 LP3400
フィールド なし
魔法・罠 なし
前回のデッキは新カードでチューンされていたが、今回のデッキは割とバトルシティで武藤遊戯が使っていたデッキに近いからか、会場の客達も大盛り上がりしている。
息抜きに、レッド寮の様子を見に来た亮だが、あまりの盛り上がりっぷりに驚きを隠せずにいた。
「凄い盛り上がりだな」
「想像以上でこっちも驚いてる」
実際、遊矢もここまで盛り上がることになるとは思っていなかった。しかし、神楽坂は想像以上に武藤遊戯のデッキを作りこんできている。だからこそ、観客もここまで盛り上がってくれているのだろう。
「へっ、勝負はここからだ! 俺のターン、ドロー!」
状況はアウェイで、追い詰められているが、十代は笑顔を浮かべてカードを引いていく。
「来たぜ! 俺も魔法カード《融合》発動! 手札のスパークマンとエッジマンを融合し、《E・HEROプラズマヴァイスマン》を融合召喚する!」
《E・HEROプラズマヴァイスマン》
効果モンスター 融合
☆8 地属性 戦士族
ATK2600 DEF2300 攻撃表示
スパークマンとエッジマンが一つとなり、新たにプラズマヴァイスマンが現れ、その稲妻で激しく自身の体を包み込む。
「プラズマヴァイスマンの効果! 手札を一枚捨て、相手フィールド上のモンスター一体を破壊する! 《竜騎士ガイア》を破壊!」
「永続魔法、《ブランチ》の効果発動! 融合モンスターがフィールド上で破壊された時、自分の墓地に存在する融合素材モンスター一体を特殊召喚できる! 甦れ、ガイア!!」
《暗黒騎士ガイア》
通常モンスター
☆7 地属性 戦士族
ATK2300 DEF2100 守備表示
転んでもただでは起きぬとばかりに、龍から落ちたガイアが馬の上に着地する。
「けど、プラズマヴァイスマンにも貫通効果がある! いくぞ、《暗黒騎士ガイア》に攻撃! プラズマ・パルサーション!!」
《E・HEROプラズマヴァイスマン》 ATK2600 VS《暗黒騎士ガイア》 DEF2100
プラズマヴァイスマンの稲妻によって、ガイアが黒焦げにされていく。まさか貫通効果まであるとは思わなかったようで、神楽坂も予想外のダメージを受けてしまった。
「ガイア……ッ!!」
神楽坂 LP4000→3500
「俺はリバースカードを一枚セットしてターンエンドだ」
十代 手札0枚 LP3400
フィールド プラズマヴァイスマン
魔法・罠 リバース1枚
VS
神楽坂 手札1枚 LP3500
フィールド なし
魔法・罠 《螺旋槍殺》、《ブランチ》、リバース2枚
『お互いに一歩も引かぬ戦いですが、どちらも手札が徐々に少なくなってきましたね』
『そうね。でも、神楽坂君は本当にデュエルキングのデッキを上手く再現しています。正直、ここまでとは思っていなかった……』
『それは俺もです。ガイア系のカードも、《ブラック・マジシャン》並とは言いませんが入手難度が高い。よく、ここまで揃えて上手く回しているものです。それは彼の実力と言っていいでしょう。俺はいずれ、彼がオベリスクブルーになってもおかしくないと思っています』
『それでも流石に《ブラック・マジシャン》は入ってないでしょうけどね』
『《ブラック・マジシャン》や《ブラック・マジシャン・ガール》は、その人気からそう簡単には手に入りませんからね。そこは仕方がないでしょう』
それでも、出来る限り神楽坂はデッキを練り上げてきている。足りない部分を他のカードで補うことで、デッキを手足のように使い熟していた。
「俺のターン、ドロー! 罠カード、《融合準備》を発動! EXデッキの融合モンスター、《有翼幻獣キマイラ》を相手に見せ、そのモンスターに記された融合素材モンスター、《バフォメット》をデッキから手札に加え、墓地から《融合》を手札に加える!」
「すぐさま反撃態勢を整えてきたか……!」
「魔法カード、《デビルズ・サンクチュアリ》を発動! 《メタルデビル・トークン》一体を特殊召喚する!」
《メタルデビル・トークン》
トークン
☆1 闇属性 悪魔族
ATK0 DEF0 守備表示
万丈目がたまに使用するトークンがフィールドに現れる。どこからどう見ても、リリース要員だった。
「俺は、《メタルデビル・トークン》をリリースし、《バフォメット》をアドバンス召喚!」
《バフォメット》
効果モンスター
☆5 闇属性 悪魔族
ATK1400 DEF1800 攻撃表示
前回の遊矢とのデュエルでも出てきたモンスターだ。このモンスター自体はそこまで強い訳ではないが、一つ特殊効果を隠している。
「《バフォメット》の効果! デッキから《幻獣王ガゼル》を手札に加える! そして、そのまま《融合》! フィールドの《バフォメット》と手札の《幻獣王ガゼル》を融合し、《有翼幻獣キマイラ》召喚!!」
《有翼幻獣キマイラ》
効果モンスター 融合
☆6 風属性 獣族
ATK2100 DEF1800 攻撃表示
前回の遊矢とのデュエルでは、その名を冠したモンスターこそ出てきたが、本物を見るのはこれが初めてだった。実際、前に見たキマイラと姿形はそこまで変わらない。
「装備魔法、《一角獣のホーン》を発動! 装備モンスターの攻撃力を700ポイントアップするぜ!」
キマイラのガゼル側に付いた角が大きく伸びて、その攻撃力を上げていった。
《有翼幻獣キマイラ》 ATK2100→2800
「素直に攻撃力を上げてきやがった……!」
「バトルだ! キマイラでプラズマヴァイスマンを攻撃! キマイラ・インパクト・ダッシュ!!」
《有翼幻獣キマイラ》 ATK2800 VS《E・HEROプラズマヴァイスマン》 ATK2600
飛びかかってくるキマイラに押さえつけられ、プラズマヴァイスマンが破壊されていく。
「くっ、やるな……!」
十代 LP3400→3200
「けど、まだまだ! 罠発動、《ヒーロー・シグナル》! モンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、デッキからレベル4以下の『E・HERO』一体を特殊召喚できる! 来い、バブルマン!!」
《E・HEROバブルマン》
効果モンスター
☆4 水属性 戦士族
ATK800 DEF1200 守備表示
手札がなくなってからのバブルマンは十代の基本ルートだった。バブルマンも十代に向けて虹色の泡をプレゼントしていく。
「バブルマンの効果! このカードが召喚・特殊召喚された時、フィールドと手札に他のカードがない時、デッキからカードを二枚ドローする!」
「ならば、こちらも永続罠、《リビングデッドの呼び声》を発動! 墓地から《竜騎士ガイア》を特殊召喚する!」
《竜騎士ガイア》
通常モンスター 融合
☆7 風属性 ドラゴン族
ATK2600 DEF2100 攻撃表示
墓地より再び《竜騎士ガイア》が復活し、二本の槍を構える。当然、バトルフェイズ中の特殊召喚なので追加攻撃が出来た。
「バトル! 《竜騎士ガイア》でバブルマンを攻撃! ダブル・ドラゴン・ランス!!」
《竜騎士ガイア》 ATK2600 VS 《E・HEROバブルマン》 DEF1200
クレイマンでも耐えられなかった攻撃にバブルマンが耐えられずはずもなく二本の槍で串刺しにされていく。同時に、永続魔法《螺旋槍殺》の効果で貫通ダメージが与えられた。
「ぐっ!!」
十代 LP3200→1800
「《螺旋槍殺》の効果発動! デッキからカードを二枚ドローし、一枚を捨てる!」
死にカードになったかと思った《螺旋槍殺》だったが、再びその効果を発動させている。神楽坂のカードの使い方が抜群に上手いのだ。
「俺はカードを一枚伏せてターンエンドだ」
神楽坂 手札0枚 LP3500
フィールド キマイラ、竜ガイア
魔法・罠 《螺旋槍殺》、《ブランチ》、《一角獣のホーン》、《リビングデッドの呼び声》、リバース1枚
VS
十代 手札2枚 LP1800
フィールド なし
魔法・罠 なし
「俺のターン、ドロー!」
これで未完成――前に戦った時よりも弱いはずなのに、それでも神楽坂の強さは前回と全く変わっていない。
何故、これでラーイエローなのか、オベリスクブルーのどの生徒よりも強いだろうにと、どうでもいいことを考えつつも、十代はこの苦境を楽しんでいた。
「魔法カード、《融合回収》! 墓地の《融合》とエッジマンを手札に戻す! さらに、魔法カード、《融合》発動! 手札のエッジマンとワイルドマンを融合し、《E・HEROワイルドジャギーマン》を融合召喚する!」
《E・HEROワイルドジャギーマン》
効果モンスター
☆8 地属性 戦士族
ATK2600 DEF2300 攻撃表示
ワイルドマンとエッジマンの融合体。ワイルドマンの野性味はそのままに、エッジマンのアーマーを部分的に身に着けている。
「魔法カード、《H-ヒートハート》を発動! ワイルドジャギーマンの攻撃力を500ポイントアップし、守備モンスターを攻撃した時に貫通効果を与える!」
《E・HEROワイルドジャギーマン》 ATK2600→3100
「くっ、攻撃力がキマイラを上回ってきたか……!」
「それだけじゃない! ワイルドジャギーマンは全てのモンスターに一度ずつ攻撃が出来る! いけぇっ!! インフィニティ・エッジ・スライサー!!」
《E・HEROワイルドジャギーマン》 ATK3100 VS《有翼幻獣キマイラ》 ATK2800
ワイルドジャギーマンの一撃で、キマイラの首が両断されていく。
「くっ……キマイラっ!」
神楽坂 LP3500→3200
神楽坂は《有翼幻獣キマイラ》と《ブランチ》の効果で、素材モンスターを蘇生することが出来るが、敢えてそれを選択しなかった。
ワイルドジャギーマンが全体攻撃の貫通ダメージモンスターになっている今、下手に壁モンスターを並べても貫通ダメージでじり貧になるだけだからだ。
「《一角獣のホーン》の効果! このカードがフィールドから墓地へ送られた場合、このカードをデッキの一番上に戻す!」
「続けて、ワイルドジャギーマンで《竜騎士ガイア》に攻撃! インフィニティ・エッジ・スライサー!!」
《E・HEROワイルドジャギーマン》 ATK3100 VS《竜騎士ガイア》 ATK2600
続く刃で、《竜騎士ガイア》もバラバラにされていく。
「済まないガイア……!」
神楽坂 LP3200→2700
「だが、その思いはこいつが引き継ぐぜ! 罠カード、《セットアッパー》発動! 自分のモンスターが戦闘によって破壊された時、そのモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つモンスター一体を手札、デッキから裏側守備表示で特殊召喚する! 俺は《メタモルポッド》をセット!」
「けど、バトルフェイズ中の特殊召喚なので、ワイルドジャギーマンは追撃が可能だ!」
「覚悟は出来てるぜ!!」
「なら、ワイルドジャギーマンでセットモンスターを攻撃! インフィニティ・エッジ・スライサー!!」
ワイルドジャギーマンの攻撃対象となったことで、《メタモルポッド》が表側表示に変更され一刀両断されていく。
《E・HEROワイルドジャギーマン》 ATK3100 VS《メタモルポッド》 DEF600
「ぐわああああああああああああぁぁぁっ!!」
神楽坂 LP2700→200
大きなダメージを受けた神楽坂が、その爆発で思わず後ろに倒れ込む。
「くっ、だが《メタモルポッド》のリバース効果で、お互いのプレイヤーは手札を全て捨てデッキからカードを五枚ドローする!」
「お互いに手札はゼロ! カードを五枚ドロー!!」
ライフを大幅に削り、相手にも恩恵を与えたが、それでも神楽坂の手札は大幅に潤った。
しかし、十代はもう神楽坂にターンを渡すつもりはないようで、引いたカードを確認すると即座にデュエルディスクに差し込んでいく。
「速攻魔法、《融合解除》! ワイルドジャギーマンの融合を解除する!!」
《E・HEROエッジマン》
効果モンスター
☆6 地属性 戦士族
ATK2600 DEF1800 攻撃表示
《E・HEROワイルドマン》
効果モンスター
☆4 地属性 戦士族
ATK1500 DEF1600 攻撃表示
ワイルドジャギーマンの融合が解かれ、二体のモンスターへと戻った。当然、バトルフェイズ中の特殊召喚の為、二体のモンスターは追加攻撃が可能となる。
「行くぜ、エッジマンでプレイヤーにダイレクトアタック! パワー・エッジ・アタック!!」
《E・HEROエッジマン》 ATK2600 VS神楽坂 LP200
残りライフが僅かな神楽坂にとどめを刺さんと、エッジマンが突進していく。
「墓地の《光の護封霊剣》の効果発動! 相手ターンにこのカードを墓地から除外し、このターン相手モンスターの直接攻撃を封じる!」
突如として、光の剣が何本もエッジマンの回りに突き刺さり、その動きを封じ込めた。
こんな時のために、予め《螺旋槍殺》の効果で墓地に送っておいたのだろう。
「けど、ワイルドマンに罠カードの効果は通じない! ワイルドマンでダイレクトアタックだ! いけぇ! ワイルドスラッシュ!!」
《E・HEROワイルドマン》 ATK1500 VS神楽坂 LP200
しかし、続くワイルドマンは罠の効果が通用しない故、光の剣を砕きながら直進してくる。これを受ければ、ライフはゼロだった。
「手札から《クリボー》を墓地に送り、戦闘ダメージを一度だけゼロにするぜ!」
だが、神楽坂も増えた手札に対抗策を持っていた。《クリボー》の効果で、ワイルドマンの攻撃を何とか凌ぎきる。
「済まない《クリボー》! 助かったぜ!!」
「防がれたか……! 俺は、リバースカードを二枚セットしてターンエンドだ」
十代 手札2枚 LP1800
フィールド エッジマン、ワイルドマン
魔法・罠 リバース2枚
VS
神楽坂 手札4枚 LP200
フィールド なし
魔法・罠 《螺旋槍殺》、《ブランチ》
お互い一歩も引かない攻防に、観客も興奮を抑えられずにいた。気が付けば、デュエルアカデミアにいる大半の生徒や、数少ない来客が全員このデュエルを見物に来ている。
あまりの観客の多さにレッド寮のデュエルフィールドの回りはもう人が歩けないレベルで、隼人が緊急で交通整理を始めているくらいだ。
ふと、視線を横に向けると、いつの間にか、かつてデュエルアカデミアに性別と年齢を偽って編入してきた早乙女レイが笑顔で立っていた。どうやら、学園祭を見に来たようで、遊矢と亮が並んで立っているのを見つけて人ごみを抜けてきたらしい。
「レイ、久しぶりだな」
「久しぶり、レイ」
「久しぶり、亮様、遊矢。凄い盛り上がりだね」
パチモンとはいえ、武藤遊戯のデッキを再現しているだけあって、観客の神楽坂への応援の声は大きかった。
逆に十代は完全なヒール役だ。
もし、これで《ブラック・マジシャン》でも出て来ようものなら完全に神楽坂が主役になるのだろうが、そう簡単に手に入るカードではないことはここにいる全員がわかっている。
「神楽坂のデュエルキングのコスプレとデッキが思いの外完成度が高くてね」
「おかげで、この島の大半の人間はここにいる。俺もプロモーションデュエルをしていたが、これが終わるまではおそらく客は来ないだろう」
「でも、十代様が勝ってるんだよね?」
「状況的にはね。でも、ピンチに追い込まれた神楽坂が驚異的な粘りを見せてる。だから大盛り上がりなんだよ」
判官贔屓というか、一種のお化け屋敷に近い感覚かもしれない。驚いたと思ったら一安心して、再び驚いて一安心する。神楽坂は何というか、エンターテイメント性が高いのだ。
「意外と、プロに向いてるかもね」
「……やはり、プロになるにはああいうのが必要か」
「実力だけで売ってるプロもいるからそこまで悩むことはないと思うけどね」
と、遊矢と亮がどうでもいい話をしているのを聞きながら、レイも「ふーん」と神楽坂を見つめる。
しかし、恋する乙女的には意中の十代の方が大事なようで、すぐに「頑張って、十代様ー!」と、応援の声を上げていた。
「俺のターン、ドロー! 魔法カード、《天使の施し》! デッキからカードを三枚引き、二枚捨てる!」
だが、レイの応援も虚しく、現在は神楽坂のターンとなっている。ライフは200まで追いつめられたが、《メタモルポッド》の効果で手札を回復し、《天使の施し》で入れ替えたおかげでまだまだ戦えそうだった。
「手札から《マジシャンズ・ソウルズ》を召喚!」
《マジシャンズ・ソウルズ》
効果モンスター
☆1 闇属性 魔法使い族
ATK0 DEF0 攻撃表示
淡く光る《ブラック・マジシャン》の影のようなモンスターが現れ、会場が大興奮の渦に包まれる。本物ではないにしても、ようやく出てきた魔法使い族に、会場中から応援の声が神楽坂に送られていた。
「《マジシャンズ・ソウルズ》の効果発動! 一ターンに一度、自分の手札・フィールドから魔法・罠カードを二枚まで墓地に送り、送った枚数だけデッキからカードをドローする! 俺は、永続魔法《螺旋槍殺》と《ブランチ》を墓地に送り、カードを二枚ドロー!!」
不要になった永続魔法を上手く手札へと変換していく。これで、神楽坂の手札は6枚まで回復した。
「さらに速攻魔法、《ディメンション・マジック》! 自分フィールドに魔法使い族モンスターが存在する時、自分フィールドのモンスター一体をリリースし、手札から魔法使い族モンスター一体を特殊召喚する! 俺はフィールドの《マジシャンズ・ソウルズ》をリリースする! 待たせたな、相棒!!」
そう言って、神楽坂は一枚のカードをデュエルディスクに差し込んだ。
「まさか、《ブラック・マジシャン》!?」
「現れろ、我が最強の僕!!」
《マジシャン・オブ・ブラック・イリュージョン》
効果モンスター
☆7 闇属性 魔法使い族
ATK2100 DEF2500 攻撃表示
それは、前の神楽坂と遊矢のデュエルでも使用された、フィールド上に存在する限り《ブラック・マジシャン》として扱う、《ブラック・マジシャン》の影のようなモンスターだった。
しかし、先程の《マジシャンズ・ソウル》よりも本物に見えるからか、どうも本物が出てきたと観客も勘違いしたようで、再び神楽坂コールが送られていく。
『ちょっ、ちょっと待て神楽坂! 本物の《ブラック・マジシャン》までとはいかなくても、その《マジシャン・オブ・ブラック・イリュージョン》もかなりのレアカードのはずだ! 一体、どこでそんなカードを!?』
基本的に、デュエル中はプレイするデュエリストに配慮して、ターンの終わりに実況を挟むようにしていた三沢だったが、これには流石に物申したいようで乱入してくる。
「聞きたいか? なら、教えてやるぜ。あれは少し前のこと、ラーイエローの有志達と一緒に購買部の販売のお手伝いをしていた時だった――」
――とはいえ、回想に入るほど劇的な出会いがあった訳ではなかった。
ただ、購買部のお手伝いの報酬として渡されたパックの中に、たまたまそのカードが入っていて、《ブラック・マジシャン》系列のカードが使えるようになったというだけ。
確かに、《マジシャン・オブ・ブラック・イリュージョン》は販売されたばかりのレアカードだが、販売されたばかり故に運があれば手に入る。
昔のカードで、既に発売が停止している《ブラック・マジシャン》よりはまだ可能性があったのだ。
だが、本物ではないとはいえ、《ブラック・マジシャン》として扱うという効果は、神楽坂の遊戯デッキのポテンシャルをさらに引き上げた。
「――このカードのおかげで、俺のデッキは完成したんだ。見ているか、仲間達! お前らとの友情の絆は、こうして俺のフィールドで戦っているぜ!」
神楽坂の声に応えるように、《マジシャン・オブ・ブラック・イリュージョン》もポーズを決めていく。
同時に、応援席の一角から、仲間達と思われる生徒達から、「遊戯さん!」、「見せてくれよ、デュエルキングの力を!」と声が上がった。しかし、戦っているのはあくまで神楽坂であって遊戯さんではない。
「デュエルを続行するぜ! 《ディメンション・マジック》の効果発動! 相手フィールドのモンスター一体を破壊する! エッジマンを破壊だ!」
大量の鎖がエッジマンに巻きつき、その身を締め上げて爆散させていく。
これで、十代のフィールドに相手の《マジシャン・オブ・ブラック・イリュージョン》の攻撃力を超えるモンスターはいなくなった。
「さらに魔法カード、《千本ナイフ》! 自分のフィールドに《ブラック・マジシャン》が存在する場合、相手フィールドのモンスター一体を破壊する! ワイルドマンも破壊だ!」
罠カードの効果を無効にするワイルドマンも、魔法の前では無力のようで、千本のナイフが体に刺さっていく。
「これで、お前のフィールドにモンスターはいなくなった! バトルだ! いけっ、《ブラック・マジシャン》! ブラック・マジック!!」
《マジシャン・オブ・ブラック・イリュージョン》 ATK2100 VS十代 LP1800
見た目だけなら本当に《ブラック・マジシャン》に見えた。疑似的なブラック・マジックが十代のライフを削ろうと襲い掛かる。
「速攻魔法、《クリボーを呼ぶ笛》! デッキから《ハネクリボー》を守備表示で特殊召喚する!」
しかし、十代もしっかり防御カードを用意していた。デッキから現れた《ハネクリボー》が十代を守るように前へ出ていく。
《ハネクリボー》
効果モンスター
☆1 光属性 天使族
ATK300 DEF200 守備表示
「さらに、速攻魔法、《進化する翼》を発動! 自分フィールドの《ハネクリボー》と、手札二枚を墓地に送り、デッキから《ハネクリボーLV10》を特殊召喚するぜ!!」
だが、十代は守って終わる気などなかった。
むしろ、これで勝負を決めようとしている。《進化する翼》の効果で、《ハネクリボー》の翼が何倍にも大きく広がり、頭には黄金の竜の飾りと足元には尻尾の飾りをつけ、レベル的にも大きく進化を果たしていた。
《ハネクリボーLV10》
効果モンスター
☆10 光属性 天使族
ATK300 DEF200 守備表示
「《ハネクリボーLv10》の効果発動! 相手のバトルフェイズの間、自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードをリリースすることで、相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て破壊し、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える! これで終わりだ!!」
これにより、神楽坂は《マジシャン・オブ・ブラック・イリュージョン》の攻撃力分のダメージを受け敗北する。
観客席からも動揺の声が響いた。ラーイエローの仲間達も、「遊戯さん!!」、「あぁ、俺達の《ブラック・マジシャン》がぁ!!」と嘆きの声が聞こえてくる。
「――速攻魔法発動!!」
しかし、神楽坂は冷静に一枚のカードを発動させていた。
「なにっ!?」
「《黒魔術の秘儀》! レベルの合計が儀式召喚するモンスターのレベル以上になるように、《ブラック・マジシャン》又は《ブラック・マジシャン》を含む、自分の手札、フィールドからモンスターをリリースし、手札から儀式モンスターを儀式召喚する!」
前回の遊矢とのデュエルではこのカードの効果で融合召喚してきたが、元々《黒魔術の秘儀》は融合か儀式かを選ぶことが出来るカードだ。
今回は儀式を選んだようで、レベル7の《マジシャン・オブ・ブラック・イリュージョン》を含めた、レベル8以上のモンスターを召喚するつもりでいるらしい。
「一つの魂は光を誘い、一つの魂は闇を導く! 手札の光属性の《ホーリー・エルフ》と、フィールドの闇属性の《ブラック・マジシャン》で、カオスフィールドを創生!! 超戦士の力をここに! 出でよ、《カオス・ソルジャー》!!」
《カオス・ソルジャー》
効果モンスター 儀式
☆8 地属性 戦士族
ATK3000 DEF2500 守備表示
伝説の戦士が降臨する。《カオス・ソルジャー》もまた武藤遊戯が使用した伝説のカードとして有名だが、儀式モンスターはあまり人気がないことから、このカードは比較的入手が難しくなかった。しかし、スペックはブルーアイズと同等の物を持っている。
「《ハネクリボーLv10》は、相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て破壊し、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える効果! 守備表示の《カオス・ソルジャー》は破壊できないぜ!」
効果にチェーンする形での速攻魔法発動――これにより、チェーンの逆順処理が発生し、神楽坂のフィールドが守備表示の《カオス・ソルジャー》になった。
これで、《ハネクリボーLV10》の自身をリリースしてダメージを与える効果は不発となる。
「流石は、遊戯さん!!」
「やっぱり、遊戯さんだぁ!!」
――何度も言うが、フィールドにいるのは神楽坂だ。
「メインフェイズ2で、こちらも墓地の《置換融合》の効果発動! このカードを除外し、墓地の融合モンスター、《竜騎士ガイア》をEXデッキに戻すことでカードを一枚ドロー!」
先程の《天使の施し》で墓地に送っておいたカードだった。全てのカード効果を抜け目なく使っている。
「さらに、墓地の《ADチェンジャー》を除外し、《カオス・ソルジャー》を攻撃表示に変更! カードを一枚伏せて、ターンエンドだ!」
神楽坂 手札0枚 LP200
フィールド 《カオス・ソルジャー》
魔法・罠 リバース1枚
VS
十代 手札0枚 LP1800
フィールド なし
魔法・罠 なし
今度こそ誰も声が出せずにいた。先程、十代を応援していたレイでさえ、神楽坂のデュエルに魅了されている。
本物ではないが、《ブラック・マジシャン》の召喚から、自身を敗北に導く《ハネクリボーLV10》の効果の回避、またその相手モンスターを利用した最上級モンスターの儀式召喚という、まさに本物のようなプレイングが会場中のお客さんの心を掴み取ったのだ。
もはや、言葉にならない興奮が歓声となって響いていく。
これで十代は完全なヒール役となってしまった。誰もが、武藤遊戯の再来である神楽坂を応援している。
『まさか、《マジシャン・オブ・ブラック・イリュージョン》だけでなく、《カオス・ソルジャー》まで見せられることになるとは……これで未完成というのだから恐れ入ります』
『そうね。本物の《ブラック・マジシャン》や《ブラック・マジシャン・ガール》がいない穴を上手く別のモンスターで補っている。けど、やはり武藤遊戯と言えば《ブラック・マジシャン》。神楽坂君は、上手くその要素も抽出してデッキを組んでいる。もはや才能ね』
当然、ないカードは沢山あった。《ブラック・マジシャン》系列のカードも、今使った以外のサポートカードや融合モンスターもほぼ持ってないし、実は絵札の三剣士も《クィーンズ・ナイト》以外は持っていない。
先程、神楽坂の身を守った《クリボー》系列のカードも、《クリボー》以外にはいないし、《バスター・ブレイダー》や《超電磁タートル》のようなレアカードも持っていなかった。
それでも、観客は目の前の神楽坂に伝説の面影を見ている。足りないカードをセンスで補い、神楽坂は見事にデュエルキングを再現して見せたのだ。
「俺のターン、ドロー!!」
しかし、そんな完全アウェイの中、十代は変わらず笑顔でデュエルを続けている。
「楽しいぜ、神楽坂! もう完全に遊戯さんじゃんか!」
「ふっ、まだまだデッキは未完成だけどな。もし、遊戯さん関係のカードを持っていたら、いつでもトレード募集中だ」
「んー、残念だけど、俺は持ってないな。後で他の奴等にも聞いてみるよ」
「よろしく頼むぜ!」
「んじゃ、そろそろ再開と行くか。俺は魔法カード、《ホープ・オブ・フィフス》を発動! 墓地のクレイマン、バブルマン、スパークマン、エッジマン、ワイルドマンの五体の『E・HERO』をデッキに戻し、カードを二枚ドローする! この時、フィールドと手札に他のカードがない時、追加でもう一枚ドローできるぜ!」
先程、《進化する翼》のコストで手札を全て消費し、《ハネクリボーLV10》を処理されたことで、十代のフィールドと手札にはカードが一枚もなかった。よって、条件が満たされ、十代はデッキから三枚カードをドローしていく。
「魔法カード、《ミラクル・フュージョン》! 墓地のフェザーマンとバーストレディをゲームから除外し、《E・HEROフレイム・ウイングマン》を融合召喚するぜ!」
「フェザーマンとバーストレディだと!? そうか、さっきの《進化する翼》のコストで――」
「既に墓地に送っていたのさ! さらにスパークマンも通常召喚だ!」
《E・HEROフレイム・ウイングマン》
効果モンスター 融合
☆6 風属性 戦士族
ATK2100 DEF1200 攻撃表示
《E・HEROスパークマン》
通常モンスター
☆4 光属性 戦士族
ATK1600 DEF1400 攻撃表示
二体のヒーローがフィールドに並び立つ。しかし、どちらも《カオス・ソルジャー》の攻撃力には及んでいなかった。
「さらに魔法カード、《置換融合》発動! フィールドのフレイム・ウイングマンとスパークマンを融合し、《E・HEROシャイニング・フレア・ウイングマン》を融合召喚するぜ!」
フィールドのフレイム・ウイングマンとスパークマンが一つになっていく。
《E・HEROシャイニング・フレア・ウイングマン》
効果モンスター 融合
☆8 光属性 戦士族
ATK2500 DEF2100 攻撃表示
「俺も墓地の《置換融合》の効果発動! このカードを除外し、融合モンスターのプラズマヴァイスマンをEXデッキに戻すことでカードを一枚ドローする!」
「おいおい、シャイニング・フレア・ウイングマンは墓地の『E・HERO』の数×300ポイント攻撃力をアップするんだろう? そう簡単にデッキに戻していいのか?」
「帳尻はこれで合わせるさ! 魔法カード、《天使の施し》発動! デッキからカードを三枚引き、二枚捨てる! 《カード・ガンナー》と《E・HEROネクロダークマン》を捨てるぜ! そして、シャイニング・フレア・ウイングマンは攻撃力をアップする!」
今、十代の墓地に『E・HERO』は三体。よって、攻撃力が900ポイントアップする。
《E・HEROシャイニング・フレア・ウイングマン》 ATK2500→3400
「これで攻撃力が《カオス・ソルジャー》を超えた! バトルだ! 《シャイニング・フレア・ウイングマン》で《カオス・ソルジャー》を攻撃! シャニングシュート!!」
「受けて立て、《カオス・ソルジャー》! カオス・ブレード!!」
《E・HEROシャイニング・フレア・ウイングマン》 ATK3400 VS《カオス・ソルジャー》 ATK3000
お互いの切り札がぶつかり合っていく。しかし、攻撃力はシャイニング・フレア・ウイングマンの方が上だった。
じりじりとつば競り合いになるが、若干攻撃力の劣る《カオス・ソルジャー》の剣に、徐々にヒビが入って行く。
「「速攻魔法発動!」」
だがここで、互いに最後のカードを発動させていく。同時に、《カオス・ソルジャー》がシャイニング・フレア・ウイングマンを弾き飛ばした。
「《武装再生》! 自分又は相手の墓地の装備魔法一枚を、装備可能な自分のモンスターに装備する!」
「《決闘融合―バトル・フュージョン》! 自分フィールドの融合モンスターが相手モンスターと戦闘を行う攻撃宣言時に発動! 自分攻撃モンスターの攻撃力はダメージステップ終了時まで、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力分アップする!」
同時に発動したように見えるが、十代の攻撃なので十代に優先権があり、先に決闘融合が発動していく。
十代の発動させたカードを見て、神楽坂もこのデュエルの結果を理解したようだが、それでもデュエリストとして、最後までデュエルを継続した。
「《武装再生》の効果で、俺が装備するのは――《孤毒の剣》! このカードは自分フィールドのモンスターに装備が可能! 装備モンスターの元々の攻撃力・守備力を相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時のみ二倍にする!」
チェーンの逆順処理により、《武装再生》の効果で《孤毒の剣》が装備され、次に《決闘融合―バトル・フュージョン》の効果で、シャイニング・フレア・ウイングマンの攻撃力が《カオス・ソルジャー》の攻撃力分アップ。最後にダメージステップで《カオス・ソルジャー》の攻撃力が元々の攻撃力の二倍となった。
《E・HEROシャイニング・フレア・ウイングマン》 ATK3400→6400 VS《カオス・ソルジャー》 ATK3000→6000
押し返していた《カオス・ソルジャー》の剣に再びヒビが入り、シャイニング・フレア・ウイングマンが《カオス・ソルジャー》を破壊していく。
その差400ポイントが、神楽坂の残りライフをしっかりと削り切った。
「くっ、ここまでか……!」
神楽坂 LP200→0
勝敗が着いたことでソリッドビジョンが解除されていく。接戦を制したのは十代。だが、遊戯――もとい、神楽坂が負けてしまったことで、会場中から落胆の声が響いた。
もし、十代のリバースカードが《決闘融合―バトル・フュージョン》じゃなければ、勝っていたのは神楽坂だっただろう。
本当にギリギリの差だった。
観客達もそれがわかるが故に落胆も大きい。決勝で、遊戯(物真似)VSブラマジガールという組み合わせがそれだけ見たかったのだろう。
しかし、神楽坂は司会からマイクを奪うと、『負けることは恥じゃない! 負けた後に強くなれないのが恥だ! 俺はこれからまだまだ強くなる! 応援よろしくな!』とアピールし、再び会場中を沸かせてくれる。
その後、神楽坂の遊戯デッキを完成させようと、その場にいたお客さん達による大トレード大会が始まり、決勝戦の十代VSブラマジガールの戦いが大幅に遅れることになるのだが、それはまた別のお話。
原作との変化点。
・#42『学園祭デュエル! ブラマジガール乱入!』より、コスプレデュエルがトーナメントになった。
また、メインのデュエルが十代Vs神楽坂回になった。前回は遊矢にデュエルさせたので、今回は十代とデュエルさせたかった。ブラマジガール回などない。
・神楽坂遊戯デッキ完成度5割。
気合で回しているが、まだカードが足りていない。今回使ったカードの他は磁石の戦士があるくらいで、他は魔法・罠を多めに入れて誤魔化している。メタモルポッドは乃亜編で海馬から受け継いだのでチョイス。
・またどこかで神楽坂を出したい。
遊戯デッキを書けるので準レギュラーくらいにしてやりたいレベル。
デュエル内容変更点。
・ハネクリボーLv10の効果にチェーンして造反劇を使っていましたが無理だったので修正しました。
代わりに、黒魔術の秘技でカオス・ソルジャーを守備表示で出すことにしました。
・黒魔術の秘技でハネクリボーLv10とブラマジをリリースしてカオス・ソルジャーを出しましたが、無理だったので修正しました。
造反劇を無しにして、ホーリー・エルフとブラマジをリリースしてカオス・ソルジャーを出しました。