榊遊矢のGX次元漂流記   作:おこむね

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#045 『やっぱり、貴方だったんですね』

 十代VS神楽坂の後、無事に十代とブラマジガールの決勝戦も行われ、学園祭は大成功に終わった。

 神楽坂に続き、ブラマジガールも容赦なく倒した十代は、オシリスレッドの魔王と呼ばれるようになり、しばらくデュエルアカデミアのヒール役となっている。

 

 そんなある日のこと。セブンスターズとの戦いを聞きつけたボーイと名乗る男がデュエルアカデミアに乗り込んできた。

 聞けば、自分の方が七精門を守る戦士に相応しいから雇え――ということだ。

 騒ぎを聞きつけて様子を見ていた遊矢達だったが、明日香が見ていられないとばかりに校長室に乗り込み、自分に勝ったら鍵を譲ると言い出した。

 ギリギリで通常のデュエルが出来るかどうかの明日香に、無理にデュエルなどさせられるはずもなく、遊矢を始め全員が断固として拒否の姿勢を見せる。

 しかし、明日香もあのボーイという男が昔の知り合いで、取り戻さなければいけないものがあるらしく、デュエルをすると言って聞かない。

 最終的には遊矢以外の全員が言い含められてしまい、渋々ながら遊矢も折れた。明日香も無事に勝利し、昔取られたという赤いスカーフを取り戻している。

 

 ――それからしばらく経ったが、セブンスターズの最後の一人は全くと言っていいほど姿を現さなかった。

 

 その間に万丈目は全回復。明日香もほぼ全回復に近いくらいには回復している。

 同時に、行方不明になった大徳寺の捜索も行われていたが、こちらも見つけることが出来なかった。学園が総出で探して見つからない所を見るに、もうこの島にはいないのかもしれない。

 十代は頑なに大徳寺先生の無事を信じているようだが、亮や万丈目は逆に大徳寺が敵に内通しているのではないかと考えていた。

 遊矢も内心では信じたい気持ちはあるが、大徳寺が怪しいという気持ちが存在するのも事実だ。吹雪の件もそうだが、墓守次元の件ももしかしたらワザと自分達を危機に陥れたのではないかという考えもある。

 

 そんなある日のこと、吹雪が再び姿を消した。

 

 明日香が吹雪を探しに出かけて行ったが、その明日香も吹雪に続いて姿を消している。明日香が消えたことで、亮も二人を探しに行き、そしてまた姿を消した。

 もしかしたら、七精門を守るデュエリストを狩っている奴がいるのかもしれないということで、万丈目もどこかに行ってそのまま姿を消している。

 消えた四人を探すために、遊矢、十代、翔、隼人という、いつものレッドメンバーで島内を捜索することになったのだが、日が暮れる頃に、森の中で明日香や亮、万丈目のものらしきデッキが落ちているのを発見した。

 

 万丈目のデッキに宿る《おジャマ・イエロー》の精霊によると、万丈目はマスクで顔を隠したデュエリストに敗北して、七精門の鍵を奪われると同時に姿を消したのだという。

 やはり、セブンスターズに襲われたのだと遊矢が確信するのと同時、島を囲うように五つの光の柱が出現する。

 直感的に、それが七精門で遊矢と十代以外の鍵が既に奪われてしまったことを理解した。

 十代もこれがセブンスターズとの最後の戦いになると直感したようで気合が入りまくっている。「どこからでもかかってこい!」と、覚悟を決めた声を出すと、近くに小さな雷が落ち、謎の錬金術のマークが記されているのを見つけた。

 

 その後も、まるで遊矢と十代を誘うように、次々と道に錬金術のマークが記されていく。

 

 錬金術のマークが案内してくれたのは、吹雪が行方不明になった幽霊寮だった。

 そのまま中に入って、最後のセブンスターズを探していく。なかなか敵の姿を見つけられなかったが、今まで見つけられなかった横穴を発見し、そこから敵のアジトらしき研究所を見つけることが出来た。

 とりあえず、近くにあった棺のようなものを調べてみると、中にはどこかで見たことあるような人物のミイラが入っている。

 学者のように白衣を着ており、胸にはDAITOKUJIとローマ字で記されていた。しかし、これが仮に大徳寺だったとしても、行方不明になっていた期間では、こんな風に変化するのはおかしい。それこそ何十年と経たないと、こうはならないだろう。

 もしかしたら、闇のゲームでこうなったのではないかと翔が推察するが、その瞬間、この部屋の電気が点き、奥から最後のセブンスターズらしき男が歩いてきた。

 

『ようこそ、私のデュエル場へ。遊城十代、榊遊矢』

 

 顔をマスクのようなもので隠し、フードを被っていて性別も良くわからないが、万丈目の精霊である《おジャマ・イエロー》によると、万丈目を倒したのはこいつらしい。

 

『そう、私こそお前達が探していた七番目のセブンスターズ――アムナエル』

「アムナエル!」

「カミューラやタニア、アビドス三世に力を与えた人物か!」

『ふふっ、名前は知ってくれているか。まぁ、正確には少し違うが概ね間違ってはいない。私が他のセブンスターズに地縛神やナンバーズのカードを渡した』

 

 結局、カミューラは元に戻せなかったが、全てを知る人物が目の前に現れた。こいつを倒して全ての謎を解くと、遊矢も意気込んでいる。

 

「お前が明日香やカイザー、万丈目を!?」

「吹雪さんもだ!」

『確かに、お前の仲間は私が預かっている』

 

 十代と遊矢の問いに応えるように、アムナエルは懐から本のようなものを取り出す。どうやら、あの中に仲間達は閉じ込められているらしい。

 

『彼らもまた、類稀なる才能を持ったデュエリストだった。しかし、私の期待を超えることは出来なかった……』

「大徳寺先生を、あんな姿にしたのもお前か!?」

 

 だとしたら許さないとばかりに、十代が敵意を向ける。だが、その敵意だけはお門違いだった。

 

『残念ながらそれは違う。そのミイラは元々この実験室に置かれていたものだ』

 

 嘘――とは言い切れない。アムナエルはこれまで質問には真摯に答えを返している。大徳寺に関する問いだけ嘘をつく理由がない。

 

「じゃあ、今まで俺達に教えてくれた先生は……?」

「十代、落ち着け。答えはすぐそこにある」

『下にあるものは上にあるものの如く、上にあるものは下にあるものの如し――十代、遊矢、真実を知りたければ、この世界の真実が綴られたエメラルド・タブレットの前で、私の闇のデュエルを受けるがいい』

 

 受けて立つ――と、十代と遊矢は同時にデュエルディスクを構えた。どちらも引く気はない。

 

『――十代、遊矢、私がお前達の最後の試練だ。二対一でも一向に構わんぞ』

「二人がかりでも勝てるってか……! 舐めやがって!」

「けど、それじゃいくら何でも俺達が有利過ぎる。負けた時の良い訳にはされたくないし、公平を期すために、ルールは変則タッグルールを提案する!」

 

 変則タッグルールとは、二対一でタッグデュエルをするというものだ。

 もし、タッグでなければ、アムナエル、十代、遊矢の三人がそれぞれ戦うことになり、遊矢と十代は二人なので、手札、フィールド、ライフがアムナエルの倍になる。

 しかし、タッグになれば、フィールド、墓地、ライフが遊矢と十代で共有になり、初期手札の差以外アムナエルに不利な要素はなくなるのだ。

 

『よかろう。では、私が先攻、次が十代、私、遊矢の順でターンを進めていく。フィールド、墓地、ライフは共有で、ライフはお互いに8000とする。問題はないな?』

「「ない」」

『では、始めよう』

 

 そう言って、アムナエルは部屋の中央へ歩いていく。遊矢と十代もそれに続き、翔と隼人も応援するためにデュエルが見える位置へと移動した。

 アムナエルもデュエルディスクを構え、被っていたフードを外す。長い白髪が露わになり、遂に遊矢、十代とセブンスターズとの最後のデュエルが始まることになった。

 

「いくぞ、遊矢!」

「ああ、行こう十代!」

「「『デュエル!!』」」

 

 変則ルールなので、先攻はアムナエルとなり、デッキからカードをドローしていく。

 

『私の先攻! 私は手札から《使神官―アスカトル》の効果を発動! このカード名の効果は一ターンに一度しか使用できず、この効果を発動するターン、私はシンクロモンスターしかEXデッキから特殊召喚できない』

「いきなり、特殊召喚制限をかけてきた!?」

「いや、EXデッキからの特殊召喚に制限をかけているだけだ! 他の特殊召喚は通常通りできる!」

『その通り。私は《使神官―アスカトル》以外の手札を一枚捨て、このカードを手札から守備表示で特殊召喚する!』

 

 《使神官―アスカトル》

 効果モンスター

 ☆5 地属性 魔法使い族

 ATK2300 DEF1500 守備表示

 

 太陽をモチーフにした杖を手にした神官がフィールドに現れ、その杖で隣のフィールドを差す。

 

『その後、《使神官―アスカトル》の効果で、手札・デッキから《赤蟻アスカトル》一体を特殊召喚する!』

 

 《赤蟻アスカトル》

 効果モンスター チューナー

 ☆3 地属性 昆虫族

 ATK700 DEF1300 守備表示

 

 続けて、アスカトルが杖で差したフィールドに巨大な赤い蟻がデッキから飛び出してくる。こちらも神官と同じ名前を冠しており、神官が蟻を従えているようだった。

 

「一気に二体のモンスターを特殊召喚してきたか!」

「後はフィールド魔法さえ発動すれば、地縛神が召喚される……!」

 

 十代と遊矢も、まだアムナエルが召喚権を残していることを忘れていない。僅か一ターンで地縛神が出て来るのかと、警戒を露わにする。

 

『ふっ、残念ながら今の私の手札に地縛神はいない――と、口で言っても信じはしないだろう。だから見せてやる! 私はレベル5の《使神官―アスカトル》にレベル3の《赤蟻アスカトル》をチューニング!』

「チューニング!?」

「シンクロ召喚か!」

『――太陽昇りし時、全ての闇を照らし出す。降り注げ、光よ! シンクロ召喚! 出でよ、レベル8! 《太陽龍インティ》!!』

 

 《太陽龍インティ》

 効果モンスター シンクロ

 ☆8 光属性 ドラゴン族

 ATK3000 DEF2800 攻撃表示

 

 胴体に、アルゼンチンやウルグアイの国旗に描かれている五月の太陽のようなものがあり、そこから四つ首の赤い龍が顔を覗かせていた。

 手足や羽根、尻尾はなく、有名なヤマタノオロチの四つ首バージョンとでもいうべき姿をしている。しかも、攻撃力は3000と、容易く突破できる数値ではなかった。

 

『まだまだ行くぞ! 手札の《死神官―スーパイ》の効果発動! このカード名の効果も、アスカトル同様に一ターンに一度しか使用できず、この効果を発動するターン、私はシンクロモンスターしかEXデッキから特殊召喚できない』

「けど、シンクロモンスターを呼ぶから問題ないってことか!」

「そういえば、《地縛地上絵》のフィールド魔法もシンクロモンスターが重要視されてたっけ……!」

『フッ! 私は、《死神官―スーパイ》以外の手札を一枚捨て、このカードを手札から守備表示で特殊召喚する!』

 

 《死神官―スーパイ》

 効果モンスター

 ☆5 地属性 魔法使い族

 ATK2200 DEF1900 守備表示

 

 鬼の面のようなものを付けた杖を手に、今度は女性の神官が現れる。アスカトルが太陽を意味するのなら、スーパイは月を意味しているようだった。

 

『その後、《死神官―スーパイ》の効果で、手札・デッキから《スーパイ》一体を特殊召喚する!』

 

 《スーパイ》

 効果モンスター チューナー

 ☆1 地属性 悪魔族

 ATK300 DEF100 守備表示

 

 神官のスーパイが持っている杖に良く似た鬼のような仮面のモンスターがデッキから呼び出されていく。アスカトル同様、このスーパイも神官に従っているように見えた。

 

『レベル5の《死神官―スーパイ》にレベル1の《スーパイ》をチューニング! 闇に月満ちる時、魔の囁きが聞こえだす。死へと誘え! シンクロ召喚! 出でよ、レベル6! 《月影龍クイラ》!!』

 

 《月影龍クイラ》

 効果モンスター シンクロ

 ☆6 闇属性 ドラゴン族

 ATK2500 DEF2000 攻撃表示

 

 インティ同様に、胴体部分に青い月を模した丸い物体があり、そこから四つ首の青い龍が顔を覗かせている。

 まさにインティの色違いといっても良く、二体合わせることで八つの首となるようだ。攻撃力も2500と高く、そう簡単に超えられる数字ではない。

 

『先攻は最初のターン、攻撃できない。私はリバースカードを二枚セットしてターンを終了する』

 

 手札を全て伏せてきた。相手も序盤から全力と言うことだろう。しかし、二人である分、やはり十代と遊矢の方がカードの枚数は有利だった。

 

 

 アムナエル 手札0枚 LP8000

 フィールド インティ、クイラ

 魔法・罠 リバース2枚

 

 VS

 

 十代 手札5枚 LP8000

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 

 

「行くぜ! 俺のターン、ドロー!!」

 

 十代も気合が入っている。目の前には攻撃力3000と2500のシンクロモンスターがおり、後ろには遊矢が居るということもあって、十代も最初から全力で行く気満々だった。

 

「手札から魔法カード《融合》を発動! 手札のスパークマンとエッジマンを融合して、《E・HEROプラズマヴァイスマン》を融合召喚するぜ!」

 

 《E・HEROプラズマヴァイスマン》

 効果モンスター 融合

 ☆8 地属性 戦士族

 ATK2600 DEF2300 攻撃表示

 

 学園祭デュエルでも出したスパークマンとエッジマンの融合体がポーズを決めて稲妻を放つ。主同様に気合が入っているようだった。

 

「プラズマヴァイスマンの効果発動! 手札を一枚捨て、《太陽龍インティ》を破壊する!」

『太陽を沈めるか……』

「続けてバトルだ! プラズマヴァイスマンで、《月影龍クイラ》を攻撃! プラズマ・パルサーション!!」

 

 《E・HEROプラズマヴァイスマン》 ATK2600 VS《月影龍クイラ》 ATK2500

 

 プラズマヴァイスマンの稲妻が放出され、クイラへと迫っていく。

 

『この瞬間、《月影龍クイラ》の効果発動! このカードが攻撃対象に選択された場合、攻撃モンスターの攻撃力の半分だけ自分のライフを回復する!』

「なにっ!?」

 

 アムナエル LP8000→9300

 

「けど、攻撃は続行されるぜ! クイラは破壊だ!」

『くっ!!』

 

 攻撃力で及ばないインティを効果で破壊し、攻撃力の低いクイラは戦闘破壊する。文句のないコンビネーションプレイで二体の龍は破壊された。

 

 アムナエル LP9300→9200

 

 ――はずだった。

 

『月が沈む時、日はまた昇る――《月影龍クイラ》の効果! このカードが破壊された場合、自分の墓地の《太陽龍インティ》を特殊召喚する!』

 

 《太陽龍インティ》

 効果モンスター シンクロ

 ☆8 光属性 ドラゴン族

 ATK3000 DEF2800 攻撃表示

 

 クイラの破壊をトリガーに、地面から再び太陽が昇るようにインティが浮上していく。

 

「倒したはずのインティが復活した!?」

「自分の破壊をトリガーにパートナーを復活させる効果か!」

『さぁ、どうする十代? まだ君のバトルフェイズだ』

「くっ、俺はリバースカードを二枚伏せてターンエンドだ」

『ならば、このエンドフェイズで手札を補充させて貰おう! 罠カード、《ゴブリンのやりくり上手》! さらにチェーンして《ダブル・サイクロン》発動!』

 

 二枚のリバースカードがオープンされる。チェーンの逆順処理によって、後から発動した《ダブル・サイクロン》が先に効果を発揮した。

 

『《ダブル・サイクロン》の効果で、自分フィールドの魔法・罠カード一枚と、相手フィールドの魔法・罠カード一枚を破壊する! 私は《ゴブリンのやりくり上手》を破壊し、右のリバースカードを破壊!』

「《ヒーローバリア》が!」

『さらに、破壊された《ゴブリンのやりくり上手》の効果発動! 自分の墓地に存在する《ゴブリンのやりくり上手》の枚数+1枚をデッキからドローし、自分の手札一枚をデッキの一番下に戻す! 私の墓地の《ゴブリンのやりくり上手》は三枚! よって、四枚をドローして一枚をデッキの一番下に戻す!』

 

 速攻魔法、《ダブル・サイクロン》で破壊されたことにより、今発動した《ゴブリンのやりくり上手》は、カード自体は墓地に存在することになっている。

 

「残りの二枚はアスカトルとスーパイのコストで捨てたのか!」

「プレイングに無駄がない……!」

『ふふ、お褒め頂き感謝する』

 

 

 十代 手札0枚 LP8000

 フィールド プラズマヴァイス

 魔法・罠 リバース1枚

 

 VS

 

 アムナエル 手札3枚 LP9200

 フィールド インティ

 魔法・罠 なし

 

 

『変則タッグルールにより、次は私のターンとなる! 私のターン、ドロー! このスタンバイフェイズに効果を発動!』

「なっ、このタイミングでの効果だって!?」

「まさか――」

『日が沈み、月は浮かぶ――《太陽龍インティ》の効果! フィールドの《太陽龍インティ》が破壊された次のターンのスタンバイフェイズ、墓地の《月影龍クイラ》を特殊召喚する!』

 

 《月影龍クイラ》

 効果モンスター シンクロ

 ☆6 闇属性 ドラゴン族

 ATK2500 DEF2000 攻撃表示

 

 インティの効果で、クイラまでもが復活を果たした。これで前のターン、十代がやったことは全て無駄になってしまう。

 

『魔法カード、《天使の施し》を発動! デッキからカードを三枚ドローし、二枚を捨てる! さらに《死者蘇生》を発動! 今、墓地に送った《太陽の神官》を特殊召喚する!』

 

 《太陽の神官》

 効果モンスター

 ☆5 光属性 魔法使い族

 ATK1000 DEF2000 攻撃表示

 

 どこかの民族衣装を身に着けた神官がフィールドに呼び出されていく。しかし、その攻撃力は1000と、お世辞にも強くはなかった。

 

『速攻魔法、《地獄の暴走召喚》を発動! 相手フィールドに表側表示モンスターが存在し、自分のフィールドに攻撃力1500以下のモンスター一体のみが特殊召喚された時、その特殊召喚されたモンスターと同名のモンスターを、自分のデッキ・手札・墓地から可能な限り攻撃表示で特殊召喚する! デッキより、二体の《太陽の神官》を特殊召喚!』

 

 《太陽の神官》×2

 効果モンスター

 ☆5 光属性 魔法使い族

 ATK1000 DEF2000 攻撃表示

 

 これで、インティとクイラに挟まれるように、同じ神官が三体並んだ。

 

『しかし、デメリットもある。相手もまた自身のフィールドの表側表示モンスター一体を選び、そのモンスターと同名のモンスターを、自分のデッキ・手札・墓地から特殊召喚できる。さて、十代、どうするかね?』

「何がデメリットだよ。融合モンスターであるプラズマヴァイスマンはこの効果では呼び出せない!」

『おっと、EXデッキは対象外だったな。これは失礼した』

 

 白々しく謝って来るが、ワザとなのは目に見えている。十代を挑発するのが目的だろう。

 しかし、十代もわかっているようで、必要以上には噛みついていなかった。

 

『では、バトルフェイズと行こう。《太陽龍インティ》でプラズマヴァイスマンを攻撃!!』

 

 《太陽龍インティ》 ATK3000 VS《E・HEROプラズマヴァイスマン》 ATK2600

 

 先程の逆襲とばかりに、インティの炎がプラズマヴァイスマンに襲い掛かっていく。

 しかし、《ヒーローバリア》を破壊され、十代には防御手段が残されていなかった。

 

「くっ……あれ?」

 

 十代 LP8000→7600

 

 闇のデュエルのダメージを身構えた十代だが、想像に反してダメージはそこまで大きくない。

 

「十代、大丈夫なのか!?」

「あ、ああ。慣れたのかな? 思ったよりダメージが少ないような……?」

『闇のデュエルでのダメージを軽減しているだと?』

 

 流石のアムナエルもこれには驚いた様子を見せた。どうやら、予想外の出来事らしい。

 

『そんなはずは……っ! 榊遊矢! 君のポケットの中だ!』

 

 よく見ると、遊矢のポケットが僅かに発光している。手を入れてみると、前にダークネスと十代のデュエル後、不吉だからと二人から取り上げていた二つの墓守のペンダントが、ポケットの中で一つになったようで光を放っていた。

 

「これがダメージを軽減してくれたのか?」

「きっと、そうだ! ラッキー、殆どダメージないぜ!」

「……二つが一つになって初めて効果が発揮するのか。もっと早くに気付いていれば――」

 

 それこそ、カミューラ以降の闇のデュエルでのみんなのダメージを減らすことが出来たかもしれない。

 ダークネスと十代のデュエルで、早々に役に立たないと決めつけた遊矢の判断ミスだった。

 

「遊矢、悔やむのは後だ! 今、役に立ってるんだからいいじゃん!」

「……そうだな!」

 

 実際、もしかしたら別の人に渡したら効果を発動しなかったかもしれないし、この効果も永続的に発動するものではないかもしれない。

 結局は、わからないことだらけなのだ。

 ならば、今現在役に立っていることを喜んでおくべきという十代の指摘は正しい。おかげで、このデュエルでは十代のダメージを減らすことが出来た。

 

「デュエル続行だ! 罠カード、《ヒーロー・シグナル》! モンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られたので、デッキからバブルマンを守備表示で特殊召喚するぜ!」

 

 プラズマヴァイスマンは破壊されてしまったが、ヒーローの絆が次へと繋いでいく。

 

 《E・HEROバブルマン》

 効果モンスター

 ☆4 水属性 戦士族

 ATK800 DEF1200 守備表示

 

「バブルマンの効果! このカードが召喚・特殊召喚された時、フィールドと手札に他のカードがない時、デッキからカードを二枚ドローする!」

『守備力1200か。では、《月影龍クイラ》でバブルマンを攻撃!!』

 

 《月影龍クイラ》 ATK2500 VS《E・HEROバブルマン》 DEF1200

 

 もし、バブルマンの守備力が1000以下だったなら、《太陽の神官》で攻撃されて大ダメージを受けていただろう。

 ギリギリの所で、何とか意思を繋いでいる。クイラの攻撃でバブルマンが破壊され、フィールドにモンスターもいなくなったが、それでも十代の目は輝きを失っていなかった。

 

『《太陽の神官》三体で、十代にダイレクトアタック!!』

 

 《太陽の神官》×3 ATK1000×3 VS十代 LP7600

 

 三体の神官の攻撃が十代のライフを大きく削っていく。

 

「へっ、全然へっちゃらだぜ……っ!」

 

 十代 LP7600→4600

 

 しかし、全然という割にはダメージを受けているように見える。やはり、いくら軽減するとはいえ、ダメージ自体がなくなっている訳ではないので痛みは感じるのだろう。

 

『では、メインフェイズ2で、私はレベル5の《太陽の神官》三体でオーバーレイ! 三体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!!』

「今度はエクシーズ!?」

「まさか、ナンバーズを!?」

『そのまさかさ! 出でよ、ランク5! 《№53偽骸神 Heart-eartH》!!』

 

 《№53偽骸神 Heart-eartH》

 効果モンスター エクシーズ

 ランク5 闇属性 悪魔族

 ATK100 DEF100 攻撃表示

 

 神の名を冠するナンバーズ。オーバーレイユニットを三つ持ち、まるで赤い城のようにも見える見た目をした悪魔が降臨する。

 しかし、攻撃力、守備力は100しかなく、あからさまに攻撃を誘っている雰囲気を遊矢は感じていた。

 

『私はカードを一枚伏せてターンを終了する』

 

 

 アムナエル 手札1枚 LP9200

 フィールド インティ、クイラ、ハートアース

 魔法・罠 リバース1枚

 

 VS

 

 十代 手札2枚 LP4600

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 

 

 アムナエルの二ターン目が終わった。もし、仮にこれがシングルデュエルだったら、十代はワンターンでライフを600まで減らされていたことになる。

 やはり、セブンスターズの最後の一人で、他の仲間達を倒したその実力は伊達ではないということだ。

 

「俺のターン!」

 

 だが、このデュエルは変則タッグデュエル。フィールドの状況こそ圧倒されてはいるが、手札枚数の差は、遊矢達の方が有利だった。

 

「俺はスケール1の《EMゴムゴムートン》と、スケール6の《EMギタートル》でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

 毎度おなじみのペンデュラム。フィールドに二つの光の柱が並び立ち、これでレベル2から5までのモンスターが同時に召喚可能となる。

 

「ギタートルのペンデュラム効果! もう片方のペンデュラムゾーンに『EM』モンスターが置かれたことで、デッキからカードを一枚ドローする!」

 

 プラスでカードもドローしつつ、準備を着々と進めていく。

 

「――揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け、光のアーク! ペンデュラム召喚! 現れろ、俺のモンスター達! レベル2、《EMオッドアイズ・シンクロン》! レベル3、《EMウィム・ウィッチ》!!」

 

 《EMオッドアイズ・シンクロン》

 効果モンスター チューナー ペンデュラム

 ☆2 闇属性 魔法使い族

 ATK200 DEF600 攻撃表示

 

 《EMウィム・ウィッチ》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆3 闇属性 魔法使い族

 ATK800 DEF800 守備表示

 

 天空の光から、二体のモンスターが同時に召喚される。どちらも大したステータスのモンスターではないが、アムナエルは警戒態勢を解かない。

 まるで、ここからさらにもう一段階先があるのをわかっているかのような態度だった。

 

「ウィム・ウィッチはペンデュラムモンスターをアドバンス召喚する時、二体分のリリースとして使用できる! 俺はウィム・ウィッチをリリースして、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》をアドバンス召喚!!」

 

 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆7 闇属性 ドラゴン族

 ATK2500 DEF2000 攻撃表示

 

 通常召喚権を使って、上級モンスターをアドバンス召喚していく。オッドアイズも、いつもより相手が強敵だとわかると、アムナエルに向かって強く咆哮した。

 

「さらに、オッドアイズ・シンクロンの効果発動! 一ターンに一度、自分のペンデュラムゾーンに存在するカードを、効果を無効にして特殊召喚し、そのカードと自身でシンクロ召喚する!」

 

 オッドアイズ・シンクロンに導かれるように、ペンデュラムゾーンから《EMゴムゴムートン》が飛び出してくる。

 

 《EMゴムゴムートン》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆5 地属性 獣族

 ATK900 DEF2400 守備表示

 

「レベル5の《EMゴムゴムートン》に、レベル2の《EMオッドアイズ・シンクロン》をチューニング! その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!!」

 

 オッドアイズ・シンクロンが2つの光の環となり、5つの星に変換されたゴムゴムートンと光の道を作っていく。

 

「――シンクロ召喚! 現れろ、レベル7! 《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!!」

 

 《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》

 効果モンスター シンクロ

 ☆7 風属性 ドラゴン族

 ATK2500 DEF2000 攻撃表示

 

 オッドアイズに並び立つように、クリアウィングも咆哮した。一気に二体の上級モンスターが現れ、アムナエルが嬉しそうな声を出す。

 

『ククク……融合に、シンクロ……やはり、お前達は素晴らしい錬金術師だ』

「俺達が錬金術師だって……?」

「何を言ってるんだ、俺達は錬金術師なんかじゃない!」

『どうやらわかっていないらしいな。雑魚モンスターを強い力を持つモンスターに変換する。融合、シンクロ、エクシーズは、石を金に変える錬金術そのものであり、それを駆使するお前達は既に一流の錬金術師なのだよ』

 

 そう言って、アムナエルは遊矢と十代を指さした。

 

『このデュエルアカデミアで、融合、シンクロ、エクシーズ、その全てを高レベルで使用できるデュエリストはお前達二人だけだ。だからこそ、私はお前達を最後の相手に選んだ』

「遊矢はともかく、俺も……?」

『むしろ、お前の方が伸びしろがある。融合しか使えなかったお前は、この一年でエクシーズを先駆けにシンクロまで手に入れた。元より高い実力を持つ遊矢とは違って、可能性に満ちている』

 

 遊矢に伸びしろがないと言っている訳ではないが、未熟な十代の方が当然伸びしろが高い。アムナエルは、どうやらそこが気に入っているのか、十代のことを褒めまくっている。

 しかし、遊矢を蔑ろにしている訳ではなかった。むしろ、一番感謝しているとも言える。

 

『榊遊矢。全ては君が現れたおかげだ。君が別の次元からやってきたおかげで、この世界のデュエルは進み、同時に錬金術もさらなるステージへと扉を開くことが出来た!』

 

 ――それは、この世界では数少ない人物しか知るはずのない遊矢の秘密だった。

 

「別の次元からやってきた……?」

「遊矢君が……?」

「一体、どういうことなんだな?」

「アムナエル! お前、それを誰から!?」

 

 いきなりの事実に十代を始め、翔や隼人も意味を理解できずにいる中、遊矢はアムナエルを睨みつけた。

 もしかしたら、自分をこの次元に呼んだ犯人と関りがあるかもしれないからだ。

 

『フフフ、君を調べればすぐにわかったさ。榊遊矢などという人物は、この世界には存在していない。そう、君はある日、突然現れたんだ。別の世界からね』

「……確かに戸籍などは調べればわかるかもしれないが、この世界で俺が別次元から来たことを知っているのは、海馬社長とKCの一部、そしてペガサスさんだけだ。お前が知っているはずがない」

『世の中、自分の中の情報だけが全てじゃないってことさ。君が初めて公に姿を現した、あの入学試験の日に、次元を揺るがすほどの時空振動があったことが観測されている。それと戸籍情報を結び付ければ、結論を出すのは容易だ』

「……あくまで、俺が別次元から来たというのは推測だと?」

『ああ。ただ確信に近い推測だ。君はその日、この世界にないはずの召喚法を使用したのだから』

 

 そう、世間ではシンクロとエクシーズを導入するのに、遊矢をテスターとして起用したことになっているが、本当は遊矢が新たな召喚法をこの世界に広めた結果だ。

 卵が先か、鶏が先かでお茶を濁していたが、卵が先だとわかってしまえば、遊矢がこの世界の人間ではないとわかってもおかしくはない。どうやら、アムナエルは遊矢が別の世界の人物だとは知っていても、そのことに関与はしていないようだった。

 

「遊矢……」

「後で話すよ。別に秘密にしようと思ってた訳じゃない。ただ、話すキッカケがなかっただけだ」

 

 こうなれば、十代達にも本当のことを話すしかないだろう。しかし、それは今ではない。

 

「デュエル続行だ。バトルフェイズ! 俺は、クリアウィングで《月影龍クイラ》を攻撃! 旋風のヘルダイブスラッシャー!!」

 

 《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》 ATK2500 VS《月影龍クイラ》 ATK2500

 

 同じ攻撃力故、このままでは相打ちになるが、遊矢は敢えてクイラを攻撃していた。

 

『《月影龍クイラ》の効果発動! 攻撃対象になった場合、攻撃モンスターの攻撃力の半分だけ自分のライフを回復する!』

「クリアウィングの効果発動! 一ターンに一度、このカード以外のフィールドのレベル5以上のモンスターが効果を発動した時、その発動を無効にし破壊する! そして、破壊したモンスターの元々の攻撃力分、ターン終了時までこのカードの攻撃力をアップする! ダイクロイックミラー!!」

 

 回復効果を発動させようとしたクイラが破壊され、その攻撃力がクリアウィングに加算されていく。

 

 《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》 ATK2500→5000

 

 クイラの効果はあくまで誘発効果。条件を満たせば強制的に発動してしまうが故に、アムナエルでも回避することは出来ない。

 だからこそ遊矢は相手の効果を逆手に取った。

 おまけに、ダメージステップに入る前にクイラが効果破壊されたことで、まだクリアウィングには攻撃する権利が残されている。

 

「クイラが先に破壊されたことで、インティが復活することはなくなった! クリアウィングで、《太陽龍インティ》を攻撃! 旋風のヘルダイブスラッシャー!!」

 

 《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》 ATK5000 VS《太陽龍インティ》 ATK3000

 

 クイラの攻撃力を吸収したクリアウィングが、今度はインティに攻撃していく。

 どうやらアムナエルは動くつもりはないようで、そのままインティは破壊された。

 

『くっ……!』

 

 アムナエル LP9200→7200

 

『だが、ただではやられない! 《太陽龍インティ》の効果発動! このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた場合、このカードを破壊したモンスターを破壊し、その攻撃力の半分のダメージを相手に与える!』

「なっ!?」

『《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》のもう一つの効果は、フィールドのレベル5以上のモンスターを対象に取る効果しか無効に出来ない。しかし、インティの効果は誘発効果であり、対象を取らないので、これを防ぐことは出来ない!』

 

 インティを倒したクリアウィングが爆散し、遊矢にその攻撃力の半分のダメージが与えられる。

 

「ぐぅっ!!」

 

 遊矢 LP4600→2100

 

 この効果はフィールドの攻撃力を参照するため、クリアウィングの攻撃力5000の半分、2500が遊矢達のライフから引かれていく。

 

「けど、これで次のターンのスタンバイフェイズで蘇るのはクイラだけ! オッドアイズで、《№53偽骸神 Heart-eartH》に攻撃! 螺旋のストライクバースト!!」

 

 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》 ATK2500 VS《№53偽骸神 Heart-eartH》 ATK100

 

 二体同時にフィールドに居られるよりも、交互に一体ずつ出てきた方がまだ対応が効く。

 何とか二体のシンクロモンスターを対処し終えた遊矢が、ナンバーズへと攻撃を仕掛けた。

 

『ハートアースの効果発動! 一ターンに一度、このカードが攻撃対象に選択された場合、このカードの攻撃力はターン終了時までその攻撃モンスターの元々の攻撃力分アップする!』

「なにっ!?」

 

 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》 ATK2500 VS《№53偽骸神 Heart-eartH》 ATK100→2600

 

 ハートアースの攻撃力がオッドアイズの元々の攻撃力2500分アップし、オッドアイズを返り討ちにしていく。

 それは、装備カードや効果などで、攻撃力を100以上上げていない限り、必ず相手に勝つことが出来る効果を持っているということだった。

 

「くっ……!」

 

 遊矢 LP2100→2000

 

 墓守のペンダントのおかげで、身体的なダメージはそこまでではないが、状況的にまた不利になってしまう。

 せっかく呼んだクリアウィングとオッドアイズも倒され、再び遊矢達のフィールドはがら空きになってしまった。

 

「強い……これまで戦ってきたセブンスターズの誰よりも」

『私の錬金術師としての実力の高さが、そのままデュエリストとしての実力に直結しているのだ。正直、君がシンクロやエクシーズをこの世界に持ってこなければ、私もここまでの力を得ることは出来なかっただろう』

 

 それは、遊矢がアムナエルを強くしてしまったということだ。

 

「へっ、その方が断然面白いぜ」

「十代……」

「相手が強ければ強いだけ面白い。デュエルってのはそういうもんだろ?」

「ああ、そうだな」

 

 この十代の前向きさが、いつも遊矢を救ってくれている。

 

「俺はリバースカードを二枚伏せてターンエンド」

『君のターンが終了したことで、ハートアースの攻撃力も元に戻る』

 

《№53偽骸神 Heart-eartH》 ATK2600→100

 

 

 遊矢 手札0枚 LP2000

 フィールド なし

 魔法・罠 リバース2枚

 ペンデュラム ギタートル

 

 VS

 

 アムナエル 手札1枚 LP7200

 フィールド ハートアース

 魔法・罠 リバース1枚

 

 

 遊矢のターンが終わり、再びアムナエルのターンへと移行していく。

 しかし、その瞬間、どこからともなく現れた猫のファラオが、デュエルリングを横断してアムナエルの元へ走っていった。

 思わず十代が「行くなファラオ! そいつは危険だ――」と、声をかけたが、ファラオは失速せずにアムナエルの足に顔をこすりつけている。

 オシリスレッドの寮でも、ファラオはそう簡単に人に懐く性格をしていなかった。そんなファラオが警戒心ゼロで懐く人物――と、いうことで、遊矢は疑いを確信に変える。

 

「……やっぱり、貴方がアムナエルだったんですね。大徳寺先生」

 

 元々、吹雪の件で黒に近いグレーだった。

だが、話し方こそ違うが、アムナエルの錬金術の知識は大徳寺並だし、ミイラも大徳寺に不信を感じさせないためのフェイクだったのだろう。

 

『そう、その通りだ遊矢』

 

 どうやら観念したようで、アムナエルが仮面を外す。そこには顔中に血管が浮き出た大徳寺の顔が隠されていた。

 大徳寺は足元のファラオを抱きかかえると、そのまま遊矢の方へと向き直る。

 

「いつから私だと予想していた?」

「最初から疑問は感じていましたよ。吹雪さんを罠にかけた人物として大徳寺先生の名前が挙がった瞬間、あなたの行方がわからなくなり、その後の捜索でも居場所は見つけられない。そこに、この隠し部屋です。おまけに、いざ会ったアムナエルは錬金術に詳しい。七割くらいは疑っていました」

「大徳寺先生……そんな、まさか――」

「その様子だと、十代もうすうすは疑問を感じていたようだな」

「でも、だとしたら、あのミイラは……?」

「ふふ、あれも紛れもない私自身。私は錬金術の力で、この世に再び蘇ったのだよ」

 

 聞けば、大徳寺先生の生前は、ある人物の命令で、賢者の石を探すために錬金術師として世界を旅していたのだという。

 賢者の石という名前は錬金術に詳しくなくても耳にする。曰く、石を金に変え、永遠の命を与えることも出来るというとんでもない宝石だ。勿論、そんなものは架空のものだと遊矢は思っていたが、どうやら大徳寺曰く賢者の石は実在するらしい。

 

「かつて、ペガサスがカードゲームを作る過程でデュエルモンスターズに行きついたように、私の賢者の石の研究もまたデュエルモンスターズに行きついた」

 

 しかし、長旅の無理で大徳寺先生は不治の病にかかり、錬金術の力で作ったホムンクルスに自身の魂を定着させて復活したらしい。

 アビドス三世などの死者を蘇らせたのも同じ理屈だろう。だが、所詮は仮初の体のようで、既に大徳寺の肉体は寿命が来てボロボロになっているという。見れば、頬の一部がひび割れ、砂のように崩れている。

 

「しかし、私は訪れる死の前に、私の研究を支えてくれた人の為にも、究極の精霊を操る力を手にしなければならない」

「究極の精霊って……」

「まさか、三幻魔!?」

「その通り。三幻魔の力さえあれば、賢者の石を創ることが出来るのだ」

 

 全ては賢者の石を手にするため、そう聞いて十代が悲しそうな顔を浮かべた。

 では、これまでの自分達と大徳寺との思い出は全部嘘で、全て自分達を利用するためだったのかと――思いのたけを叫ぶ。

 

「そんなのあるかよ……ふざけんなよ……!」

 

 しかし、そんな十代の声を聞いても、大徳寺は薄っすらと笑みを浮かべるだけだった。

 そのまま抱えていたファラオを地面に戻すと、再び大徳寺はデュエルディスクを構える。

 

「デュエルを再開する! 捕えられた四人の仲間達を返してほしいなら、この私を倒して見ろ。これが私の授業の最終試験だ。落第すれば、全ての魂は私の研究の材料となる!」

「先生……」

「十代、やるしかない」

「……わかってる、わかってるけど」

 

 それでも十代は迷いを振り切れずにいた。

 大徳寺はそんな十代を無視するかのように、デッキからカードをドローしていく。

 

「私のターン!!」

 

 

 

 




 原作との変化点。

・#43『明日香にセカンド・ラブ・チャンス!?』より、みつお君の出番をカットした。
 最初はデュエルを書いていたのだが、アニメとそこまで内容変わらなかったのでカットした。キャラは悪くないのにデュエルが面白くならなかった珍しい事例。そのため、今回のあらすじはかなり長い。

・#44『七人目の影』より、十代と遊矢以外さっくり全員捕まった。
 ただ、カイザーやサンダーは捕まるまで結構粘っている。吹雪と明日香はほぼ瞬殺された。

・#45『VSアムナエル! Eヒーロー封じ』より、十代と遊矢の二対一のデュエルになった。
 ルールは劇場版超融合から拝借。また、流石にOCGになっていない錬金術デッキは再現できなかったので、シンクロとエクシーズで誤魔化している。手札の都合でエレメンタルアブソーバーもカット。

・墓守のペンダントが偶然効力を発揮した。
 ここまで欠片も出番がなかったが、ようやく役に立った。闇のゲームでのダメージを減らしてくれている独自設定。ただ、そのせいで遊矢が少し悔やんでいる。

・原作と違って、融合だけでなくシンクロやエクシーズも錬金術という独自設定。
 融合が錬金術なら、シンクロ、エクシーズもそうじゃね? と、いうことで、過大解釈。また、シンクロ、エクシーズ自体が錬金術ということで、アムナエルのデッキは歴代ボスデッキになりつつある。

・アムナエルは遊矢が別の次元から来たことを知っている。
 ただ、アムナエルやその後ろの人間が遊矢をこの世界に連れてきた訳ではない。あくまで、遊矢が別次元から来たことを偶然観測しただけ。

・アムナエルの正体は大徳寺先生だった。
 な、なんだってー!


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