榊遊矢のGX次元漂流記   作:おこむね

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#047 『希望を一つに』

 十代が肩で息をしている中、遊矢のターンとなる。少しでも十代を休ませつつ、状況を改善するために、遊矢も祈るようにデッキからカードをドローしていく。

 

「俺のターン! 魔法カード、《シャッフル・リボーン》発動! フィールドにモンスターが存在しない場合、墓地からモンスター一体を特殊召喚する! 甦れ、《EMドクロバット・ジョーカー》!」

 

 《EMドクロバット・ジョーカー》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆4 闇属性 魔法使い族

 ATK1800 DEF100 攻撃表示

 

 墓地からドクロバット・ジョーカーを呼び出す。

 特殊召喚なので効果は発動しないが、遊矢の目的は闇属性をフィールドに呼び出すことにあった。

 

「俺は、スケール8の《EMジェントル―ド》をペンデュラムスケールにセッティング! さらに墓地の《EMレディアンジュ》の効果! 墓地にこのカードが存在し、自分フィールドに『オッドアイズ』カード又は、《EMジェントルード》が存在する場合、このカードをペンデュラムゾーンに置く! 墓地から、スケール1の《EMレディアンジュ》をセッティング!!」

「墓地からセッティングだと!?」

 

 これで、レベル2から7までのモンスターが同時に召喚可能となる。

例え、どんなに厳しい状況でも、遊矢は必ずペンデュラムを作り上げてくる――それが、遊矢の最大の強みだった。

 

「《EMジェントルード》のペンデュラム効果! 一ターンに一度、もう片方のペンデュラムゾーンにレディアンジュが存在し、自分フィールドのモンスターが存在しない、又はペンデュラムモンスターのみの場合、デッキから『オッドアイズ』カード一枚を手札に加える! 俺のフィールドはペンデュラムモンスターのドクロバット・ジョーカーのみ! よって、デッキから《オッドアイズ・フュージョン》を手札に加える!」

 

 ペンデュラムを駆使して、何とかフィールドを立て直していく。これで、準備は全て整った。

 

「――揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け、光のアーク! ペンデュラム召喚! 現れろ、俺のモンスター達!  EXデッキから、《EMオッドアイズ・シンクロン》! 《EMペンデュラム・マジシャン》! 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」

 

 《EMオッドアイズ・シンクロン》

 効果モンスター チューナー ペンデュラム

 ☆2 闇属性 魔法使い族

 ATK200 DEF600 守備表示

 

 《EMペンデュラム・マジシャン》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆4 地属性 魔法使い族

 ATK1500 DEF800 攻撃表示

 

 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆7 闇属性 ドラゴン族

 ATK2500 DEF2000 攻撃表示

 

 予め、特殊召喚されていたドクロバット・ジョーカーを含め、再び遊矢のフィールドに五体のモンスターが並んだ。

 

「《EMペンデュラム・マジシャン》の効果発動! ペンデュラムゾーンのカード二枚を破壊し、デッキから《EMモモンカーペット》と《EMドラネコ》を手札に加える!」

 

 再びのサーチ。どちらも攻撃を防ぐか、戦闘ダメージを半減する効果がある。地縛神を警戒してのことだろう。

 だが、大徳寺は本命のカードは、その前にジェントルートの効果で手札に加えた《オッドアイズ・フュージョン》と見た。

 

「ふっ、融合召喚か……」

「そっちが融合なら、こっちも融合だ! 俺は手札から《オッドアイズ・フュージョン》を発動! フィールドの闇属性、《EMオッドアイズ・シンクロン》と《EMドクロバット・ジョーカー》を融合! 二色の眼を持つ歯車よ、常闇の奇術師と一つとなりて、新たな道を指し示せ!」

 

 ――両手を合わせ、フィールドの二体の闇属性を一つにしていく。

 

「――融合召喚! 現れろ、飢えた牙持つ毒龍! レベル8、《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》!!」

 

《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》

 効果モンスター 融合

 ☆8 闇属性 ドラゴン族

 ATK2800 DEF2000 攻撃表示

 

 四天の龍――その最後の一体が降臨する。

 

「スターヴ・ヴェノムの効果発動! 融合召喚に成功した時、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター一体を選択し、その攻撃力分だけスターヴ・ヴェノムの攻撃力をターン終了時までアップする!」

 

 遊矢は、ジオグラシャ=ラボラスを選択した。しかし、インティも攻撃力は同じなので、どちらでも結果は変わらない。

 

 《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》 ATK2800→5800

 

「さらに! スターヴ・ヴェノムのさらなる効果発動! 一ターンに一度、相手フィールドのレベル5以上のモンスター一体の名前と効果をターン終了時まで得る!」

 

 当然、選ぶのはジオグラシャ=ラボラスだった。

 これでスターヴ・ヴェノムは、自身が相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に相手の攻撃力・守備力をゼロにする効果と、相手モンスターが戦闘・効果で破壊された場合、相手フィールドの全てのカードを破壊する効果をコピーした。

 効果を読んで、遊矢の動悸が一瞬激しくなる。

 もし、ペンデュラム・マジシャンの効果で、自分フィールドのモンスターを破壊していたら、こちらのフィールドが丸裸にされる所だったのだ。

 しかし、逆を言えば、それを乗り越えた今、大徳寺のフィールドを空にするチャンスでもある。

 

「墓地の《シャッフル・リボーン》の効果! このカードを除外し、フィールドのペンデュラム・マジシャンをデッキに戻してカードを一枚ドローする!」

 

 ジオグラシャ=ラボラスは戦闘では破壊できないモンスターだ。必要なのは、効果破壊が出来るカード。

 

「魔法カード、《ペンデュラム・ホルト》! 自分のEXデッキの表側表示のペンデュラムモンスターが3種類以上存在する場合、デッキから2枚ドローする!」

 

 当然、条件は満たしている。だが、このカードの発動後、ターン終了時まで自分はデッキからカードを手札に加えることが出来なくなった。

 

「来たっ! 魔法カード、《螺旋のストライク・バースト》発動! 自分フィールドにオッドアイズカードが存在する場合、フィールドのカード一枚を破壊する! ジオグラシャ=ラボラスを破壊だ!」

「くっ……!」

「さらに、スターヴ・ヴェノムがコピーしたジオグラシャ=ラボラスの効果! 相手モンスターが戦闘・効果で破壊された場合、相手フィールドのカード全てを破壊する!」

「ならば、こちらも《地縛牢》の効果! このカードが相手によって破壊され、自分フィールドか墓地に『地縛』モンスターが存在する場合、相手のライフを半分にし、相手フィールドの全ての表側表示カードの効果をターン終了時まで無効にする!」

「ライフを半分に!?」

 

 とんでもない効果だが、大徳寺は小さく「まぁ、あまり意味の無い効果だがな……」と呟いた。

 しかし、遊矢はダメージを耐えるのに必死で、その言葉を聞き逃している。

 

「くっ!!」

 

 遊矢 LP4300→2150

 

 同時に、フィールド上のカードの効果が無効になったことで、スターヴ・ヴェノムの攻撃力も元に戻った。

 

 《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》 ATK5800→2800

 

「だが、これでフィールドにモンスターはいなくなった! バトルだ! スターヴ・ヴェノムで大徳寺先生にダイレクトアタック!!」

 

 《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》 ATK2800 VS大徳寺 LP2900

 

 予想外の反撃は受けたが、まだオッドアイズの攻撃も残っている。大徳寺にとどめを刺すには十分だった。

 

「罠カード、《攻撃の無敵化》! このカードの効果で、このバトルフェイズ中、私への戦闘ダメージをゼロにする!」

 

 だが、このデュエルが始まって初めて大徳寺が防御に回る。それだけ追い込んでいるのだ。それは間違いない。

 

「くっ、メインフェイズ2で、俺はスケール2の《EMドラネコ》とスケール7の《EMモモンカーペット》でペンデュラムスケールをセッティング! カードを一枚伏せて、ターンエンド! このエンドフェイズに《シャッフル・リボーン》の効果で手札一枚を除外するが、俺の手札はゼロなので除外されない!」

 

 

 遊矢 手札0枚 LP2150

 フィールド オッドアイズ、スターヴ・ヴェノム

 魔法・罠 リバース1枚

 ペンデュラム ドラネコ、モモンカーペット

 

 VS

 

 大徳寺 手札2枚 LP2900

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 

 

 この遊矢のターンで、完全に状況は逆転した――したはずだ。ライフはほぼ並んでいるが、フィールドの状況は圧倒している。

 だが、それでも、大徳寺の余裕は失われていない。

 

「……十代、大丈夫か?」

「ああ、もう大丈夫だ」

 

 遊矢もかなり自分のターンに時間をかけた甲斐はあったようで、十代も前のターンの連続ダメージから何とか回復出来たらしい。

 しかし、本番はこれからだった。

 おそらく、大徳寺はこのターンで地縛神を出してくる。遊矢には、その確信があった。

 

「ククク……素晴らしいぞ、遊矢、十代。二人がかりとはいえ、よく私の融合・シンクロ・エクシーズモンスターの全てを対応し、私をここまで追い詰めた」

 

 大徳寺は懐からエメラルド・タブレットを出すと、さらにこれまで倒してきたセブンスターズが持っていた全ての闇のアイテムを取り出していく。

 

「褒美だ。私も本気を出そう」

「……ようやく本気ね」

「地縛神を出すってことか……」

「――見ているがいい。これが、私の錬金術の成果だ!!」

 

 その言葉と同時、全ての闇のアイテムが光り輝くと、フィールド全体を光に包みこんだ。

 次の瞬間、十代や遊矢が立っている場所が暗闇に包まれ、辺りがまるで宇宙空間のように何もない世界に変化していく。後ろで応援していた翔と隼人も、いきなり自分達が別の空間に移動したことで驚きを隠せずにいた。

 

「これが闇のデュエルをさらにもう一段階進めた姿だ。今、私たちは人間の世界を超えて、宇宙――闇の世界へと展開された」

 

 見れば、少し離れた位置に、万丈目、明日香、亮、吹雪と、行方不明になっていた仲間達が、謎の光の中に捕らえられていた。

 見ると、万丈目は意識があるようだが、他の三人は完全に意識を失っている。

 

「上にある物は下にある物の如く、下にある物は上にある物の如し――この言葉は、このエメラルド・タブレットに記されたこの世界の真実。世界の全ては一つの物質から生まれ、それが様々に変化し、天空を、地上を作り上げている。それ故、全ての物は繋がり、互いに影響を与え合っているのだ。先程まで君達がいた人間世界と、今私達がいるこの闇の世界もね」

「人間世界と闇の世界が繋がっている!?」

 

 十代は驚きを隠せずにいるが、遊矢は何となく大徳寺の言葉が理解出来た。

 遊矢が元々いたスタンダード次元も、融合次元、シンクロ次元、エクシーズ次元と、全ての次元と密接に関係している。本質は一緒なのだ。

 

「……流石は遊矢。現代科学に気触れた子供と違って、君は本質を理解している」

「理解は出来ます。けど、それを肯定するつもりはない!」

「ククク……錬金術は不可能を可能にする奇跡の学問。私の最後の授業を見届けよ、遊矢、十代」

「……魔法だか、錬金術だか知らないが、一つ俺に言えることは、万丈目や明日香、カイザー、吹雪さんをあんな目に合わせるアンタを許せないってことだ!!」

 

 十代の啖呵に、大徳寺は嬉しそうな笑みを浮かべる。

 

「ならば、私を倒してみろ! 私のターン、ドロー! このスタンバイフェイズに、《太陽龍インティ》の効果で、墓地の《月影龍クイラ》が復活する!」

 

 前のターン、スターヴ・ヴェノムの効果でインティが破壊されたことでその効果を発動していた。

 

 《月影龍クイラ》

 効果モンスター シンクロ

 ☆6 闇属性 ドラゴン族

 ATK2500 DEF2000 攻撃表示

 

「さらに魔法カード、《貪欲で無欲な壺》を発動! このターンのバトルフェイズをスキップすることで、自分の墓地のモンスターを三種類デッキに戻し、カードを二枚ドローする!」

 

 大徳寺は昆虫族の《赤蟻アスカトル》、悪魔族の《スーパイ》、雷族の《アポカテクイル》をデッキに戻して手札を増やしていく。

 しかし、バトルフェイズをスキップするというのはかなりのデメリットだ。このターンは地縛神を出さないのかと、遊矢と十代が首を傾げる中、大徳寺が質問を飛ばしてくる。

 

「十代、遊矢、これまで見た地縛神は強かったか?」

「……ああ」

「どれも強力なモンスターだった」

「もし、それが不完全な物だと言ったら、どうする?」

 

 咄嗟に言葉が出なかった。

 

「不完全……だと……?」

「あれだけ強力なモンスターが?」

「本来、地縛神はダークシグナーと呼ばれる5000年周期でシグナーという戦士達と戦う冥界の王に選ばれた者が使用する邪神。今はまだナスカの地上絵と共に封印されている」

 

 ふと、遊矢の記憶が蘇る。

 このセブンスターズとのデュエルの開幕――十代とダークネスのデュエルで、ダークネスが地縛神のことをダークネスの力で再現した劣化品と言っていたのを。

 

「私達が使っている地縛神は、あくまで闇の力でその力を模倣したものに過ぎず、本来の地縛神の力を100%再現できては居ない――しかし」

 

 大徳寺はフィールド魔法、《地縛地上絵》を発動させた。

 

「この闇の世界に限り、私の持つ地縛神は全盛期の能力を取り戻すことが出来る! そのために、君達の仲間を捕らえ、そのデュエルエナジーを回収させて貰ったのだ!」

「デュエルエナジー!?」

「なんだそれは!?」

「三幻魔復活の過程で、見つけたエネルギーだ。強いデュエリストが戦う時に発生し、それをこの闇の空間で増幅させている。その力が地縛神を全盛期の姿にするのだ!」

 

 そして、大徳寺はシンクロモンスターである《月影龍クイラ》をリリースしていく。

 

「私は《地縛地上絵》の効果で、シンクロモンスターの《月影龍クイラ》を二体分のリリースとし、最強の地縛神――《地縛神WiraqochaRasca》をアドバンス召喚する!!」

 

 《地縛神WiraqochaRasca》

 効果モンスター

 ☆10 闇属性 鳥獣族

 ATK100 DEF100 攻撃表示

 

 フィールドが地下から、闇の空間に変わったことで、その全身が視界に入る。

 強大な鳥――ダークネスが使ったアスラピスクすら超える大きさの鳥が、フィールドに降臨した。

 

「これが最強の地縛神……!」

「感じる力の桁が違う……!」

 

 一時的に本来の力を取り戻した地縛神は、十代と遊矢に今までとは比べものにならない威圧感を与えている。

 

 しかし、本当の恐怖はこれからだった。

 

「《地縛神WiraqochaRasca》の効果発動! 一ターンに一度、自分のバトルフェイズをスキップすることで、相手のライフを1にする!!」

 

 まさに、最強に相応しい効果が、ターンプレイヤーである遊矢を襲っていく。

 モモンカーペットにはペンデュラムゾーンに存在する限り、自分が受ける戦闘ダメージを半分にする効果があったが、この仮に効果ダメージを半分に出来たとしても、ライフを1にするこの効果を防ぐことは出来なかった。

 

「ぐわああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 遊矢 LP2150→1

 

 墓守のペンダントでダメージを軽減して尚、本来の地縛神の力が遊矢の精神にダメージを与える。

 もし、何の軽減もなくこの効果を受けていれば、遊矢は立っていることすら出来なかったかもしれない。

 

「遊矢!」

「だ、大丈夫だ……」

 

 ふらついているが、まだ意識はハッキリしている。バトルフェイズがスキップされるのが唯一の救いだった。

 

「メインフェイズ2で、魔法カード、《貪欲な壺》を発動! 墓地の《太陽の神官》三体と、《使神官アスカトル》、《死神官スーパイ》をデッキに戻し、カードを二枚ドロー!」

 

 そして、大徳寺はそのまま引いたカードをデュエルディスクにセットしていく。

 

「私は、引いたカードを全て伏せ、ターンを終了する!」

 

 

 大徳寺 手札0枚 LP2900

 フィールド ウィラコチャラスカ

 魔法・罠 《地縛地上絵》、リバース2枚

 

 VS

 

 遊矢 手札0枚 LP1

 フィールド オッドアイズ、スターヴ・ヴェノム

 魔法・罠 リバース1枚

 ペンデュラム ドラネコ、モモンカーペット

 

 

 ターンプレイヤーが遊矢から十代に変わる。前のターンで遊矢が自分を休ませてくれたように、今度は自分が遊矢を助けると、十代もカードをドローしていく。

 

「俺のターンだ! 悪い遊矢、ドラゴンを貰うぜ!」

「ああ、好きに使え!」

「魔法カード、《アドバンスドロー》発動! レベル8のスターヴ・ヴェノムをリリースして、カードを二枚ドローする!」

 

 地縛神には攻撃対象に出来ない効果がある。

 だが、今の十代の手札にはそれに対処出来るカードがない。強力モンスターであるスターヴ・ヴェノムを捨ててでもドローするしかなかった。

 

「俺は、墓地の魔法カードを一枚除外し、手札から《マジック・ストライカー》を特殊召喚!」

 

 《マジック・ストライカー》

 効果モンスター

 ☆3 地属性 戦士族

 ATK600 DEF200 攻撃表示

 

 墓地の《ホープ・オブ・フィフス》を除外して、手札から飛び出してくる。前にも一度使ったことがある、相手にダイレクトアタックが出来るモンスターだった。

 

「さらに、魔法カード、《H-ヒートハート》発動! 《マジック・ストライカー》の攻撃力をエンドフェイズまで500ポイントアップするぜ!」

 

 《マジック・ストライカー》 ATK600→1100

 

 どうやら、このターンで勝負をつけるのは無理と判断して、十代は少しでも大徳寺にダメージを与えることを選んだらしい。

 しかし、残りライフが少ない大徳寺から見ても、このダイレクトアタックはそう簡単に受けたいものではなかった。

 

「バトル! 《マジック・ストライカー》でプレイヤーにダイレクトアタック! 行けっ、ダイレクト・ストライク!!」

 

 《マジック・ストライカー》 ATK1100 VS大徳寺 LP2900

 

 まだライフが2900あるとはいえ、1100のダメージを受ければ残りライフは1800になってしまう。

 塵も積もれば山となる。

 いくら、地縛神が最強でも、ライフがゼロになってしまえば脅威ではない。デュエルモンスターズは、相手のライフをゼロにした方が勝利するのだ。

 

「くっ、罠カード、《ダメージ・ダイエット》! このターン、受ける全てのダメージを半分にする!」

 

 大徳寺も、ここでのダメージは致命傷になりかねないとわかっているようで、なりふり構わずダメージを軽減してくる。

 

 大徳寺 LP2900→2350

 

「簡単には行かないか……俺はカードを一枚伏せてターンエンドだ」

「では、このエンドフェイズに罠カード、《常世離レ》を発動! 相手の墓地のカードを五枚まで除外し、その数だけ除外されている相手のカードを墓地に戻す! 私は《ネクロ・ガードナー》と《EMユニ》を除外し、除外されている《EMゴムゴムートン》と《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を墓地に戻す!」

「なっ、《ネクロ・ガードナー》とユニが!?」

 

 墓地に残していた防御カードが一気に除外される。これで、地縛神のダイレクトアタックを受けるだけで勝負は決まってしまう。

 

 

 十代 手札0枚 LP1

 フィールド オッドアイズ、マジスト

 魔法・罠 リバース2枚

 ペンデュラム ドラネコ、モモンカーペット

 

 VS

 

 大徳寺 手札0枚 LP2350

 フィールド ウィラコチャラスカ

 魔法・罠 《地縛地上絵》

 

 

「っ……悪い、遊矢。あんま時間稼げなかった」

「大丈夫だって……けど、油断はするな。大徳寺先生も、ここに来て本気で俺達を倒しに来ている」

「あぁ!」

 

 大徳寺のターンへと移っていく。

 墓地の保険がなくなった今、どんなダメージでも受けた瞬間、十代と遊矢の敗北が確定することとなる。一ミリも油断は出来なかった。

 

「私のターン、ドロー! 魔法カード、《終わりの始まり》を発動! 墓地の闇属性モンスターが七体以上存在する場合、その内の五体を除外してカードを三枚ドローする!」

 

 大徳寺の墓地には、《シノビネクロ》、《№53偽骸神 Heart-eartH》、《№92偽骸神龍 Heart-eartHDragon》、《地縛囚人ライン・ウォーカー》、《地縛囚人ストーン・スィーパー》、《地縛戒隷ジオグラシャ=ラボラス》、《月影龍クイラ》の7体がいるので、発動条件を満たしていた。

 その中から《シノビネクロ》、ハートアース、『地縛』モンスター三体を除外して手札を増やしていく。

 

「墓地から効果で除外された《シノビネクロ》の効果で、自身をフィールドに特殊召喚する! さらに、手札からユニオンモンスター、《比翼レンリン》を召喚!」

 

 《シノビネクロ》

 効果モンスター チューナー

 ☆2 闇属性 アンデット族

 ATK800 DEF0 攻撃表示

 

 《比翼レンリン》

 効果モンスター ユニオン

 ☆3 闇属性 ドラゴン族

 ATK1500 DEF0 攻撃表示

 

 再び《シノビネクロ》が復活し、同時に全身緑の羽毛に包まれ、虹色の羽根を持ったグリフォンにも似たドラゴンがフィールドに現れる。

 

「《比翼レンリン》の効果! このカードを地縛神に装備、元々の攻撃力を1000にし、一ターンに二度の攻撃を可能とする!」

「二回攻撃だって!?」

 

 それはつまり、二度のダイレクトアタックをすることが出来るということだった。

 

 《地縛神WiraqochaRasca》 ATK100→ATK1000

 

「さらに、魔法カード、《早すぎた埋葬》を発動! ライフを800支払い、墓地から《月影龍クイラ》を蘇生してこのカードを装備する!」

 

 大徳寺 LP2350→1550

 

 ライフをコストに、再び月を蘇生していく。

 

 《月影龍クイラ》

 効果モンスター シンクロ

 ☆6 闇属性 ドラゴン族

 ATK2500 DEF2000 攻撃表示

 

「フィールド魔法、《地縛地上絵》の効果! 一ターンに一度、シンクロモンスターが特殊召喚された場合、デッキから『地縛神』魔法・罠カード一枚を手札に加える! 《究極地縛神》を手札に!」

 

 タイタンも使っていた、通常召喚された地縛神が存在する場合、相手のモンスター一体を破壊できるカードが手札に加わった。

 

「バトル! 《地縛神WiraqochaRasca》で、プレイヤーにダイレクトアタック!!」

 

 全ての準備を終えた大徳寺が攻撃を仕掛けてくる。一つでも通った時点で、敗北は確定だった。

 

 《地縛神WiraqochaRasca》 ATK1000 VS十代 LP1

 

「罠カード、《ガード・ブロック》! 戦闘ダメージをゼロにし、カードを一枚ドローする! くっ!!」

 

 遊矢がセットしたリバースカードで何とか窮地を凌いでいく。しかし、ダメージをゼロにして尚、地縛神のモーションが十代に大きな衝撃を与えていた。

 

 おまけに、攻撃はまだ残されている。

 

「ならば、二回目の攻撃! 《地縛神WiraqochaRasca》で、プレイヤーにダイレクトアタック!!」

「ぐっ!!」

 

 《地縛神WiraqochaRasca》 ATK1000 VS十代 LP1

 

 何度も状況を確認するが、手札のカードは誘発効果を持っていない上、リバースカードも発動条件を満たしていない。さらには墓地のモンスターを除外されてしまった今、もう十代にこの攻撃を防ぐすべはなかった。

 

 迫り来る攻撃に、十代も覚悟を決める――

 

「――《EMドラネコ》のペンデュラム効果!」

 

 だが、遊矢はまだ諦めていなかった。フィールドが共有な以上、十代のターンでもペンデュラム効果は発動出来る。ずっと一緒にデュエルしてきた十代もすぐにその効果を把握した。

 

「そうか! 一ターンに一度、相手モンスターの直接攻撃宣言時、その戦闘で発生する自分への戦闘ダメージはゼロになる!」

 

 これで、何とかダメージはまたゼロにしたが、その衝撃は二人に大きなダメージを与える。

 

「っ! わりぃ、遊矢!」

「気に、するな……っ、まだ来るぞ!」

 

 大徳寺は十代と遊矢が攻撃を防いでくると確信していたのか、笑みを浮かべながらモンスターに追撃を指示していた。

 

「《シノビネクロ》で、《マジック・ストライカー》に攻撃!!」

 

 《シノビネクロ》 ATK800 VS《マジック・ストライカー》 ATK600

 

 低レベルモンスターの戦いだが、通ればこれで決着となる。

 

「《マジック・ストライカー》の効果! このカードとの戦闘で発生する自分へのダメージはゼロとなる!」

 

 しかし、何とかダメージは防いでいた。

 

「まだまだ! 《月影龍クイラ》で《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を攻撃!!」

 

《月影龍クイラ》 ATK2500 VS 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》 ATK2500

 

 蘇生されたクイラが、オッドアイズと相打ちとなる。相打ち故にダメージはないが、問題はクイラが破壊されたことにあった。

 

「《月影龍クイラ》が破壊された場合、墓地から《太陽龍インティ》を特殊召喚する!」

 

 《太陽龍インティ》

 効果モンスター シンクロ

 ☆8 光属性 ドラゴン族

 ATK3000 DEF2800 攻撃表示

 

 月が沈めば、太陽が昇る――当然、バトルフェイズ中の特殊召喚のため、インティには攻撃権利が残されていた。

 対して、もう十代のフィールドには壁となるモンスターが一体も残されていない。

 

「さぁ、この攻撃を防げるか!? 《太陽龍インティ》でプレイヤーにダイレクトアタック!!」

 

 《太陽龍インティ》 ATK3000 VS十代 LP1

 

 十代のフィールドに残されているのは、リバースカード一枚のみ――

 

「――罠カード、《星落つる地に立つ閃珖》発動! 特殊召喚された相手モンスターの直接攻撃宣言時、そのモンスターの攻撃力が自分のライフを超えている場合、その攻撃を無効にし、デッキからカードを一枚ドローする! その後、自分のEXデッキ・墓地から『スターダスト』モンスター一体を特殊召喚出来る! 来い、《閃珖竜スターダスト》!!」

 

 地縛神の攻撃の時は、相手が通常召喚したモンスター故に発動条件を満たしていたかった。

 しかし、インティはクイラの効果で特殊召喚されたモンスター故に条件を満たしている。十代はインティの追撃を無効にした上で、手札を増やしつつ、さらには《閃珖竜スターダスト》をフィールドに呼び出した。

 

 《閃珖竜スターダスト》

 効果モンスター シンクロ

 ☆8 光属性 ドラゴン族

 ATK2500 DEF2000 守備表示

 

 とはいえ、もう攻撃を防ぐ手段がない以上、せっかくの閃珖竜も守備表示にするしかない。

 

「凌いだか……では、メインフェイズ2で魔法カード、《アドバンスドロー》を発動! レベル8の《太陽龍インティ》をリリースし、カードを二枚ドロー!」

 

 下手に付け入る隙を与えないためか、これまで活躍していたインティすら手札に変えていく。

 

「続けて、速攻魔法《神秘の中華なべ》を発動し、《シノビネクロ》をリリースして、その攻撃力分のライフを回復する」

 

 大徳寺のライフもそこまで多くない。攻撃力の低い《シノビネクロ》を残して大ダメージを受けるのを避けたのだろう。

 これで、大徳寺のフィールドは地縛神だけとなり、攻撃を仕掛けることも出来なくなった。

 

 大徳寺 LP1550→2350

 

「さらに、永続魔法、《フィールドバリア》を発動し、カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

 セットされたリバースカードは間違いなく、このターンでサーチしてきた《究極地縛神》と見て間違いない。大徳寺は、《フィールドバリア》で鉄壁のガードを敷いた上、次のターンの保険までしっかり用意していた。

 

 

 大徳寺 手札0枚 LP2350

 フィールド ウィラコチャラスカ、インティ

 魔法・罠 《地縛地上絵》、《フィールドバリア》、リバース1枚

 

 VS

 

 十代 手札2枚 LP1

 フィールド 閃珖竜

 魔法・罠 なし

 ペンデュラム ドラネコ、モモンカーペット

 

 

「はっ、はっ……はっはぁっ……」

「はっ……はっ、はっ、はぁ……」

 

 ターンが変わったが二人とも肩で息をしている。

 

 それだけ、このターンの攻防は消耗させられた。

 

 何とか凌ぐことは出来たが、二度目はない。

 

 もし、このターンで勝負を決めきることが出来なければ、次のターンで敗北する。十代も遊矢も、言葉には出さないがそれを嫌と言うほど理解していた。

 

 故に、大徳寺からターンが移って、遊矢のターンになっても、遊矢はデッキに指を添えることが出来ずにいる。

 

 ――絶望が二人を襲っていた。

 

「……お前達は、この一年何をしてきたんだ?」

 

 そんな中、大徳寺からの叱咤が飛んでくる。

 

 同時に、思い出した。

 

 一年間、デュエルアカデミアで過ごした日々を。

 

 仲間達と、毎日デュエルに打ち込んだ日々を。

 

 共に笑って――

 

 共に泣いて――

 

 そうやって、十代と遊矢は作り上げていった。

 

 ――仲間との『絆』を。

 

 そして、その絆こそ、大徳寺のいう錬金術――十代と遊矢にとって、希望となるべき存在だった。

 

「そうだ、今までみんなと作った記憶……これからみんなと作る未来……」

「俺達の希望は、まだここに眠っている――」

 

 ――瞬間、遊矢のデッキトップが輝く。

 

「遊矢!」

「ああ、終わりなんかじゃない!」

「「――お楽しみは、これからだ!!」」

 

 遊矢がカードをドローする。そのまま、引いたカードを大徳寺に公開した。

 

「《想い集いし竜》の効果発動! このカードをドローした時、このカードを相手に見せることで、このカードを手札から特殊召喚する!」

 

 《想い集いし竜》

 効果モンスター チューナー

 ☆1 光属性 ドラゴン族

 ATK0 DEF0 守備表示

 

 元々、遊矢のデッキには入っていないカードが呼び出される。だが、そんなことは関係ない。これは、仲間との絆が、作り上げた新たな希望の形だった。

 

「どうやら、そのモンスターがキーカードのようだな! では、永続罠、《究極地縛神》を発動! 私のフィールドに通常召喚された地縛神が存在する場合、相手フィールドの表側表示モンスター一体を破壊する! これで終わらせる!」

「いいや、希望は潰えない! 遊矢!」

「《閃珖竜スターダスト》の効果! 一ターンに一度、自分フィールド上に表側表示のカード一枚を選択し、そのカードはこのターンに一度だけ戦闘及びカード効果では破壊されない!」

 

 ここに来て、大徳寺の罠を凌いでいく。

 

「さらに、《カードガンナー》の効果で墓地に送られていた十代の《置換融合》の効果! このカードをゲームから除外し、墓地の融合モンスター、《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》をEXデッキに戻して、カードを一枚ドローする!」

 

 だが、希望を形作るにはまだ力が必要だった。十代の力を借りて、そのための仲間を手札に加えていく。

 

「来たっ! 手札から《EMスパイク・イーグル》を通常召喚!」

 

 《EMスパイク・イーグル》

 効果モンスター

 ☆2 風属性 鳥獣族

 ATK900 DEF900 攻撃表示

 

 新たにレベル2のモンスターが呼び出される。これで全ての準備が整った。

 

「何をするつもりだ!?」

「希望を一つにするのさ!」

「俺達の絆をここに集める! 俺は――いや、俺達は!! レベル8シンクロモンスター、《閃珖竜スターダスト》と、レベル2の《EMスパイク・イーグル》に、レベル1の《想い集いし竜》をチューニング!!」

 

 閃珖竜が八つ、スパイク・イーグルが二つの星に変換され、《想い集いし竜》が作る環と共に、一つの光の道を作っていく。

 10個の星は、遊矢、十代、翔、隼人、万丈目、明日香、三沢、亮、吹雪、クロノス――この戦いで力を貸してくれた仲間達を指し、その星を《想い集いし竜》が一つに纏める。

 

「「集いし絆の結晶が、未来の希望を創り出す――光指す道となれ!!」」

 

 ――EXデッキからカードを引き抜く。全くの未知、絵柄すら描いていないカードだったが、光と共にその姿が浮かび上がる。

 

「「――シンクロ召喚! 光来せよ! レベル11、《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》!!」」

 

 《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》

 効果モンスター シンクロ

 ☆11 風属性 ドラゴン族

 ATK4000 DEF3000 攻撃表示

 

 まさに、奇跡ともいうべき輝きを放つドラゴンが降臨した。これは遊矢だけでも、十代だけでもない。仲間達との絆が一つになったことで呼び出せた希望のドラゴンだった。

 

「《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》だと……!?」

「俺だけでも、遊矢だけも、きっと呼び出せなかった」

「ああ、俺達の絆を一つにしたからこそ生まれた希望のドラゴンだ!!」

 

 十代と遊矢の言葉を肯定するように、《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》が咆哮する。

 

「《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》の効果発動! 一ターンに一度、相手フィールド上の効果モンスターを選択し、その効果を無効にする! 俺は、《地縛神WiraqochaRasca》の効果を無効にする! これで地縛神にも攻撃が仕掛けられる!!」

 

 これで、攻撃対象に出来ない効果が無効にされた。真正面から地縛神を倒す。それが、この授業の最後の答えなのだと、遊矢と十代も無意識に察したようで攻撃態勢に移る。

 

 それでいいとばかりに、大徳寺も笑顔を浮かべた。

 

「来い!!」

「「バトルフェイズ! 《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》で、《地縛神WiraqochaRasca》に攻撃! セイヴァー・スター・ミラージュ!!」」

 

 《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》 ATK4000 VS《地縛神WiraqochaRasca》 ATK1000

 

 攻撃宣言と同時に、《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》が光に包まれ、地縛神へと突撃していく。

 一筋の光となった《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》が地縛神を貫き――闇のフィールドを切り裂いた。

 

「うおああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁっ!!」

 

 大徳寺 LP2350→0

 

 大徳寺のライフがゼロになると同時に、持っていた全ての闇のアイテムが砕け、フィールドが元に戻っていく。倒された大徳寺は力尽きたようにその場に座り込んだ。

 また、開こうとしていた七精門も再び封印されたらしく、エメラルド・タブレットの中に封じ込められていた仲間達も無事に解放されたようだった。

 

「「大徳寺先生……」」

 

 十代と遊矢が倒れた大徳寺に駆け寄る。大徳寺は何かやりきったような清々しい笑顔を浮かべていた。

 

「十代、遊矢、最終試験は見事合格だ。錬金術が全てを金に変えるというのは、表面上の現象に過ぎない。その真意は、人の心をより純粋で高貴なものに変えることなのだ……」

 

 大徳寺の最後の講義を聴くために、後ろで応援していた翔や隼人もこちらに歩いてくる。

 

「十代、遊矢、君達は今、その真実を知った。これで、私の目的は達した……」

「……やっぱり、先生は俺達を強くするためにこんな芝居を」

「どういうことだ、遊矢……!?」

「ずっとおかしいと思ってた。大徳寺先生はやろうと思えば、もっと早く地縛神を出して俺達を倒すことが出来たはずなのに、ずっと試すようにデュエルをしていた」

「……私の研究を支えてくれた人物は、強大な力を手に入れんとし、その心をいつの間にか曇らせてしまった」

 

 言葉を紡ぐ度に、大徳寺の体がボロボロに砕けていく。先程話していたホムンクルスの体の限界なのだろう。

 

「十代、遊矢、いずれこの島にはさらなる災いが起きる。私にはその災いに対抗する力を育てる必要があった。十代、これを受け取れ」

 

 そう言って、大徳寺は十代にエメラルド・タブレットを渡す。

 

「遊矢には……そうだな、そいつの知識を渡そう」

 

 続けて、謎の光が十代のポケットを包むと、人形だったカミューラが飛び出してきた。

 

「私の記憶を転写してある。ナンバーズについて知りたければ彼女に聞くと良い。まぁ、私もそこまで知っているわけではないがね」

「大徳寺先生……」

「アムナエル……アンタ……」

「十代、遊矢、大いなる災いを防げるのは君達だけだにゃ……」

 

 そう微笑むと、大徳寺の体は砕け、砂となって崩れていく。残ったのは寂しさと空しさだけだった。

 

「まさか、大徳寺先生がセブンスターズだったなんて。今でも信じられないっす……」

「本当なんだな……」

「でも、これでセブンスターズは全員倒れた。俺達が勝ったんだ……」

「けど、大徳寺先生は、この島にもっと大きな災いが起きると言っていた。その災いを解決しないと本当の平和は帰ってこない」

 

 遊矢がそう続けると、全員が頷く。カミューラは空気を読んで黙っているようだった。

 

「もし、そんな災いが来るとしても、その時は大徳寺先生の意思を継いで、俺が必ずそいつをぶっ飛ばしてやるぜ」

「十代、俺が、じゃなくて――」

「「――俺達が」」

「だよな。わかってるって」

 

 今回のデュエルも、きっと十代一人では勝利することは出来なかった。大徳寺は、十代と遊矢の二人に希望を託して行ったのだ。

 

「さて、アンタにもいろいろ聞きたいことがある……逃げずに着いてきて欲しい」

「逃げるつもりはないわ。アムナエルの術で、貴方が解放するまでこの地に縛られているから、逃げたくても逃げられないのよ」

 

 主従関係とまでは行かないが、それに近い枷が嵌められているらしい。大徳寺先生は錬金術だけではなく、こういう不思議な術も使える万能な術士だったようだ。

 だが、遊矢にしてみれば、ようやく手に入れたナンバーズの謎を解く鍵である。仮に枷がなくても逃がすつもりはなかった。

 カミューラを連れ、地下研究室からレッド寮へと戻っていく。

 長い夜はいつの間にか明けていたようで、強い日差しが遊矢達を包み込んだ。吸血鬼のカミューラは日光が苦手なようで、遊矢の影に隠れていく。しかし、逃げるつもりはないのか、そのまま素直にレッド寮まで着いてきた。

 

 

 




 原作との変化点。

・#46『地水炎風融合! エリクシーラー』より、大徳寺の錬金術を強化した。
 原作だと宇宙空間に行くが、今までのセブンスターズの闇のアイテムの力を使うことでその一段先に行った。闇の空間である。ほぼ宇宙と解釈していい。

・上にあるものは(略)はARC‐Vにも通ずるものがある。
 元が一つの世界が四つに分裂して、互いに影響を与えているという点がまさにその通りだった。多分、たまたまだとは思うが、改めて見るとよく出来ていると感心した。

・最強の地縛神を本当の最強にした。
 アニメ効果。あらすじのアニメ効果ありは、ぶっちゃけこいつのため。とはいえ、あらすじで最弱の地縛神(鳥)を救済したいのでアニメ効果使いますとは書けなかったので、ラーを引き合いに出した。実際、続きを書いてラーが出るとしたら、アニメ効果にするつもりではあるので嘘ではない。

・地縛神のアニメ効果使用には厳しい条件が必要。
 本物の地縛神ではないので、闇の世界+集められた強者のデュエルエナジーによって強化されている。これがないと、ただの鳥(笑)になる。

・とどめはシューティング・セイヴァー・スター・ドラゴンとなった。
 地縛神を倒すならセイヴァーで倒したい! けど、セイヴァー・スター・ドラゴンはスターダスト・ドラゴン縛りあるので使えない! なら、縛りのないシューティング・セイヴァー・スターを出せばいいじゃない! と、いうことで、ご登場願った。口上はオリジナルだが、遊星風に寄せている。ちなみに、この闇の特別空間+充満したデュエルエナジー+遊矢、十代の精霊力+奇跡の複合の結果起きた現象なので、遊矢や十代一人ではまず出せない。
 随分前に、スターダストドラゴン縛りを閃珖竜も使えるようにしたいといったのは、今回は使わなかったが、地味にこいつの二つ目の効果を使いたいがためだったりする。

(2)このカードは通常の攻撃に加えて、自分の墓地のスターダストドラゴン及び、そのカード名が記されたSモンスターの数だけ攻撃できる。

 閃珖竜も許してくれよぉ!!


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