セブンスターズの最後の一人であるアムナエル――大徳寺を倒したことを、鮫島校長に報告し、奪われていた鍵を返した遊矢と十代は、森の中で倒れていた仲間達が無事に見つかったという報告を受けると同時に意識を失った。
気が付けば日は沈んでおり、丸一日は眠ってしまったらしい。カミューラは逃げずに遊矢の影に潜んでいたようで、遊矢と十代が目を覚ますとその姿を再び現した。
そのまま、まずナンバーズについて聞いていく。
大徳寺の記憶の転写を受けたということで、カミューラもある程度の情報を持っているようだった。
聞けば、ナンバーズと言うのは、この世界のカードではなく、別次元に存在するエクシーズモンスターのようで、1から100の百枚存在するのだという。それを地縛神と同じく、闇の力で再現した者から預かり、この世界に散らばらせていたのが大徳寺ということだった。
しかし、大徳寺も、誰が地縛神やナンバーズを作ったかまでは知らないようで、あくまで配り手の一人だったらしい。今年、デュエルアカデミアで発生していたナンバーズ事件は、その殆どが大徳寺が起こしたものだったということだ。
カミューラがナンバーズを持っていたのも、大徳寺経由のようで、大本が誰かは知らないと言っている。
また、ナンバーズには強力な闇の力で人を操る性質があるが、これも大本のカードをコピーした副作用らしい。精霊の力を強く持つ者や、闇に抵抗出来る者は、持っていても正気を失うことはないようだが、精神が弱い人間は簡単に操られてしまうのだという。
カミューラが知っているのは以上のようだが、今まで謎だった部分が解明され、少し真実に近づくことが出来た。同時に遊矢は、このナンバーズを生み出している闇の存在こそが、自分をこの世界に呼んだ人物だと推測する。
別の次元のカードを作り出せるくらいなのだ。
別の次元の人間を呼ぶ事だってできるだろう。
そして、そのまま話は遊矢が別の次元から来た存在だということに移った。大徳寺とのデュエルの最中に、遊矢がこの世界の人間ではないことはバレている。
カミューラは初耳のようだが、特に興味はないみたいだった。彼女自身、吸血鬼という存在だからか、遊矢が別の世界の人間だろうと特に気にはしないらしい。
それは十代達も同じだったが、事情を説明する前に、改めて今、このことを知っているのは、KC社長である海馬とその弟であるモクバ、次元跳躍研究チームの数名と、I2社のペガサス社長——両手で数えきれる数であることを話した。
別の次元から来た人間——それだけで、話題には事欠かないのに、シンクロ・エクシーズ・ペンデュラムという爆弾まで抱えている。下手に吹聴して、世間に遊矢のことがバレれば、面倒事になるのは火を見るよりも明らかだ。
だからこそ、秘密を知る人間を増やしては来なかった。遊矢は知らないことだが、KCとI2社では、遊矢について箝口令が敷かれている。
しかし、遊矢本人には別段そういうことを強いてはいなかった。自分のことは自分でしろということでもあるし、遊矢の性格上、仲間にまで秘密にするとは思えなかったからだ。
実際、今まで話さなかったのはデュエル中にも言った通り、タイミングがなかったからである。日常の生活の中で、「実は俺、この世界の人間じゃないんだ」と切り出せるタイミングなどあるはずもなく、また話した所で意味もなかったことからずっと話せずにいた。
「まさか、遊矢君が別次元の人間だったなんて……」
「でも、これで納得なんだな。シンクロやエクシーズが普及したのは、遊矢がこの世界にカードデータを提供したからなんだな」
「スタンダード次元、融合次元、シンクロ次元、エクシーズ次元かぁ……行って見てぇ!」
だからこそ、秘密を共有した今、三人とはもっと仲良くなれた気がする。
「あんまし話すなよ。別に秘密にしたい訳じゃないけど、面倒事が起きるのは御免なんだ」
「言わねーよ。けど、遊矢はプロだったんだな。そりゃ、簡単に勝てねぇ訳だ」
「一応、プロになってからは無敗――だったけど、海馬社長やペガサス会長にボコられたからいくつか黒星ついてるな」
「お兄さんでも勝てない訳っすね」
「でも、勝てたらプロでも通用するってことなんだな」
「ようし、卒業までに必ず黒星つけてやる!」
――と、全ての話が終わったことで、改めて遊矢はカミューラに向き直った。
「で、アンタはどうするんだ?」
「そうねぇ。このままトンズラしてもいいけど、行く当てがある訳じゃないしね。アンタたちの行く末にも興味あるし、もう少しこの島で様子を見ることにするわ」
どうも、大徳寺の記憶を転写されたせいか、無意識部分で遊矢や十代達を心配してしまうらしい。
遊矢としては、約束は果たされたのでもう自由にして貰って構わないのだが、今回の事件の行く末を見届けるまで、カミューラはここから出ていくつもりはないようだった。
◇◆
数日後、鮫島から話が漏れたのか、はたまた自然とそういう噂が流れてしまったのか、遊矢と十代がセブンスターズを全員倒したという話がアカデミア中に伝わり、二人は英雄のように扱われていた。
元々、セブンスターズとの戦い自体、噂話レベルの話だったが、カミューラの目撃証言やタニアのコロッセオ製作に巻き込まれるなど、実際に被害にあった生徒もいたことで、話が伝わりやすくなっていたのだろう。
勿論、戦ったのは遊矢と十代だけではないのだが、敵の首領を倒したのが二人ということで、他のメンバーよりも目立ってしまっていた。
そんな中、サンダーこと万丈目が、大徳寺とのデュエルの後から様子がおかしくなっている。デュエル等どうでもいいという様子で何かに悩んでいるようだった。
どうやら、大徳寺との闇のデュエルで囚われていた際、唯一意識があった万丈目は、近くで意識を失っていた明日香の鼓動を感じ取ったことで、自身の胸の高鳴りを感じ、恋心が芽生えてしまったらしい。
多分、吊り橋効果的なもので、不安や緊張から引き起こされた鼓動を、恋心だと錯覚しているだけだと思うが、それでも万丈目は自身の思いを明日香に伝えようと必死だった。
その必死な気持ちは、偶然万丈目を見つけた明日香の兄である吹雪にも伝わったらしく、二人で共謀して明日香に恋のデュエルを仕掛ける――という話になったようだ。
そして、次の日。
恋に目が眩んだ万丈目は、校長室から七精門の鍵を強奪し、返してほしければ明日香にデュエルを受けろと迫ってくる。
何故、七精門の鍵を奪ったのかは全くの謎だが、明日香は万丈目のデュエルを受けるつもりらしい。
前に十代が綾小路という先輩とデュエルした時のように、勝てば付き合うという話ではなく、どうもデュエルを通じて思いを伝えるつもりのようだった。
明日香的には、どうでもいい――というのが本音だが、七精門の鍵を奪われたままにしておく訳にもいかないのだろう。それで万丈目が満足するのならと、七精門の鍵を守ったメンバー全員と鮫島校長でデュエルを見届けることにした。
とはいえ。
元々、そこまで実力差がない二人なのに、もう片方が恋に現を抜かしてまともなデュエルになるはずもなく、容赦なく明日香にボコられて終わった。
吹雪は、「何故、こんなに格好いいサンダーに惚れないんだ! アスリン!」と、猛抗議していたが、今の明日香は花より団子ということで、恋よりデュエルの方が好きらしい。
こうして、万丈目サンダーの騒動はひと段落付いたのだが、デュエルが終わるのと同時に七精門の鍵が光り、どこかへと飛んで行ってしまった。
鍵を首にぶら下げていたサンダーは、一緒に連れて行かれるようにどこかへと走っていく。
後を追いかけると、大きな七つの柱に七精門の鍵が一つずつ飲み込まれて行き、その七つの柱に囲まれた中央の地面から謎の装置が飛び出してきた。
装置には三枚のカードが置かれており、鍵が柱に飲み込まれたことから、おそらくはあれが三幻魔のカードだと推測できる。
変なことが起きる前にカードを回収しようとした遊矢だったが、突如として『待てい!』という声と共に、上空から謎の物体が落下してきたことでその足も止まった。
見れば、カニのような足が映えたメカのようなものが三幻魔のカードの近くに降り立つ。その中央には生体ポッドのようなものが見え、中には見覚えのない老人が入っていた。
『フハハハハ……鮫島校長、私の声を忘れてしまったのかね?』
「その声は……影丸理事長……」
どうやら、鮫島校長には、この謎の人物に心当たりがあるらしい。
イマイチ事態を飲み込めていない遊矢達だが、理事長と呼ばれた影丸という人物はそんなこと知らぬとばかりに言葉を続ける。
『これより、三幻魔復活の儀式を始める』
「三幻魔復活の儀式だって!?」
「どういうことだ!? 何故、七精門が勝手に開く!?」
十代が驚きの声を上げ、万丈目が疑問を返す。
確か、遊矢の記憶では、七精門の鍵を全て奪われなければ三幻魔は復活しないということだった。実際、遊矢と十代はまだ負けていないので、条件は満たされてはいないはずだ。
『最初から、そういう仕掛けだからだ。三幻魔のカードをここに封印し、七精門の鍵を鮫島に託したのは私自身なのだよ』
まるで事もなくそう話す影丸。
つまり、鍵の話は全部でっち上げ――最初からセブンスターズが勝とうと負けようとどうでも良かったということだった。
『七つの鍵は、お前達とセブンスターズを戦わせ、この島にデュエルエナジーを満たすための増幅装置に過ぎん』
前に大徳寺が言っていた、三幻魔を研究する過程で行きついた強いデュエリストが戦うことで生まれるエネルギーのことだろう。
それが満ちたことで、三幻魔は目覚めたということだった。密かに自分がカギを持ちだしたせいじゃないとわかって万丈目がホッとしている。
聞けば、今から数年前、影丸は永遠の命と世界の覇権を手にするという三幻魔のカードを手に入れたが、実際に三幻魔に眠る力を蘇らせるには大量の強いデュエルエナジーが必要だということがわかったらしい。
そこで、影丸はデュエルアカデミアの理事長となることで、この島に学園を創り、三幻魔復活のための強いデュエリストを育成していたということだった。
当然、自分達が利用されていたとわかり仲間達は憤慨する。そして、鍛えられたその力で、影丸を倒すと言い放ったのだが、三幻魔復活の為の相手として、影丸は遊矢と十代の二名を指名してきた。
「俺と十代だけ?」
「なんでだ……?」
『セブンスターズとの戦いを勝ち抜いたこともそうだが、精霊の力を強く持つお前らでなければ意味がないのだ』
精霊の力を強く持つ――という条件なら万丈目も当てはまる。だが、負けなしの強者というと、全勝したのは遊矢と十代だけしかいなかった。
「もし、断れば……?」
遊矢がそう問いかけると同時、七精門の鍵を吸収した七つの柱が輝き、結界のようなものを展開していく。
『私の挑戦を断るなら、ここから出られぬまま、この島と共に海に沈むがいい』
実質、拒否権はないということだった。
同時に、影丸が機械を使って、三幻魔のカードを自身のデッキに入れていく。どうやら、あの機械を使ってデュエルするつもりらしい。
「いくぞ、十代」
「おう」
遊矢がデュエルディスクを構える。逃げられない以上、戦って勝つしかなかった。
十代も翔から鞄を受け取ると、自分のデュエルディスクを取り出す。だが、その瞬間、一緒に入れていたエメラルドタブレットが地面に落ちて、中からカードが数枚飛び出してきた。
「このカードは……」
「十代」
「ああ、大徳寺先生がこのカードを使えってさ。俺はそれを信じる」
落ちたカードをデッキに入れ、翔に鞄を投げ返すと、十代もデュエルディスクを構える。
「アニキ―! そんな奴に負けないでよー!」
「十代! きばれー!」
翔と隼人の応援も聞こえ、十代もやる気に満ちていた。
「任せろ! んじゃ、始めようぜ、ラストデュエル!」
「ルールは大徳寺先生の時と同じ、変則タッグルールだ!」
『よかろう。先攻は私が貰う……では、行くぞ』
「「『デュエル!!』」」
変則タッグということで、一人の方が先攻となる。そこから遊矢にターンが回り、影丸、十代、影丸と交互にターンを移っていく。
さらに、遊矢と十代はフィールド・墓地・ライフが共有となり、二人がかりということで、影丸とは手札差が五枚ある状況でスタートとなった。
『私のターン、ドロー! 私はメインフェイズ1で《強欲で金満な壺》を発動! EXデッキの裏側表示カードを三枚又は六枚除外し、除外したカード三枚につき一枚デッキからカードをドローする!』
まるでEXデッキのカードなどゴミとでもいうように、六枚のカードを除外してカードを二枚、手札へと変換する。
『さらに永続魔法、《強欲なカケラ》を発動! リバースカードを三枚セットしてターンを終了する』
影丸 手札3枚 LP8000
フィールド なし
魔法・罠 《強欲なカケラ》、リバース3枚
VS
遊矢 手札5枚 LP8000
フィールド なし
魔法・罠 なし
永続魔法とリバースカードを三枚のみで、ターンが遊矢へと変わっていく。
明らかに罠だ。3枚のリバースで遊矢を迎撃するつもりなのだろう。しかし、相手のフィールドががら空きな今、攻撃しないという手はなかった。
「俺のターン! 手札から《EMユニ》を召喚!」
《EMユニ》
効果モンスター
☆4 光属性 獣戦士族
ATK800 DEF1500 攻撃表示
額から一本の角を生やした、全身白色のマジックショーのアシスタントのような女性型モンスターが現れる。
これまでも、度々その墓地効果で遊矢の窮地を助けてくれたが、純粋に召喚されるのはこれが初めてだった。
「《EMユニ》の効果! このカードが召喚・特殊召喚に成功したターンに一度、手札からレベル3以下の『EM』モンスター一体を攻撃表示で特殊召喚する! 来い、《EMコン》!」
《EMコン》
効果モンスター
☆3 光属性 獣戦士族
ATK600 DEF1000 攻撃表示
ユニと同じく、額から一本角を生やした、全身青色のマジックショーのアシスタントのような女性型モンスターが現れる。
先に出したユニと姉妹のように似ているが、ユニが髪の色も白なのに対して、コンは青く、衣装の形も微妙に違っていた。
「《EMコン》の効果! このカードが召喚・特殊召喚に成功したターンに一度、このカード以外の攻撃力1000以下の表側攻撃表示『EM』モンスターとこのカードを守備表示にして、デッキから『オッドアイズ』モンスター一体を手札に加える!」
明らかに、ユニとコン、コンビで使用することを前提としている効果だ。特に、コンの方の、このカード以外の攻撃力1000以下の表側攻撃表示『EM』モンスターというのは、通常であれば条件が厳しすぎる。
名前も、二人合わせてユニコーンになることから、何かしらの関係があるのがわかった。
「二人の応援を受けて、俺はデッキから《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を手札に!」
しかし、これで遊矢のデッキのエースが手札に加わり準備が完了していく。
「俺はスケール1の《星読みの魔術師》とスケール8の《時読みの魔術師》で、ペンデュラムスケールをセッティング!」
珍しく、通常召喚権を駆使してからのペンデュラム――だが、これでレベル2から7までのモンスターが同時に召喚可能となる。
「――揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け、光のアーク! ペンデュラム召喚! 現れろ、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》
効果モンスター ペンデュラム
☆7 闇属性 ドラゴン族
ATK2500 DEF2000 攻撃表示
ペンデュラム召喚で呼び出したことで、リリースなしで呼びされた。ユニとコンで防御を固めつつ、オッドアイズで攻撃を仕掛けるつもりなのだろう。
ペンデュラムモンスターであるオッドアイズならば、戦闘を行う場合、星読みと時読みのペンデュラム効果で相手の魔法・罠カードの発動を防ぐことが出来る。
『フッ、貴様のデータは大徳寺を通じて入手済よ。永続罠カード、《デモンズ・チェーン》を発動! このカードが魔法・罠ゾーンに存在する限り、オッドアイズの攻撃と効果を封じる!』
しかし、そう簡単には攻撃させてくれないようで、オッドアイズの動きを止められた。
「なら、リバースカードを一枚伏せてターンエンド」
『そのエンドフェイズに永続罠、《宮廷のしきたり》、《闇の増産工場》を発動!』
残る二枚の永続罠をいきなりオープンしていく。
何か狙いがあるのは間違いないが、一体何が狙いなのかはさっぱりわからなかった。
『私は《闇の増産工場》の効果で、手札の《キラー・スネーク》を墓地へ送り、カードを一枚ドローする!』
アビドス三世も使っていたがエラッタ前なので当然禁止カード級のカードと言っていい。
これで影丸はスタンバイフェイズ毎に《キラー・スネーク》を回収し、一生手札コストに困ることはなくなった。
遊矢 手札1枚 LP8000
フィールド ユニ、コン、オッドアイズ
魔法・罠 リバース1枚
ペンデュラム 星読み、時読み
VS
影丸 手札3枚 LP8000
フィールド なし
魔法・罠 《強欲なカケラ》、《デモンズ・チェーン》、《闇の増産工場》、《宮廷のしきたり》
『私のターン、ドロー! このドローの瞬間、《強欲なカケラ》の効果を発動! 私が自分のドローフェイズに通常ドローをする度に、このカードに強欲カウンターを乗せる』
《強欲なカケラ》 強欲カウンター0→1
『さらにスタンバイフェイズ、墓地の《キラー・スネーク》の効果で、スタンバイフェイズにこのカードを墓地から手札に戻す! さらにメインフェイズに《闇の増産工場》で、《キラー・スネーク》を捨てて一枚ドロー!』
手札がどんどん増えていく。エラッタ前の《キラー・スネーク》禁止の理由が少しは伝わるだろうか。
『では、そろそろ行こうじゃないか。まずは、一体目を見せてやろう』
「まさか――」
「来るのか!?」
『フッ、私はフィールドの永続罠カードを三枚墓地に送ることで、このカードを特殊召喚することが出来る! 出でよ、三幻魔が一柱――《神炎皇ウリア》!!』
《神炎皇ウリア》
効果モンスター
☆10 炎属性 炎族
ATK0 DEF0 攻撃表示
全身が赤く、炎を纏ったドラゴンがフィールドに現れる。ウリアが咆哮するだけで、大地が揺れ、木の葉は散り、遊矢のフィールドのモンスターの怯えの表情を見せていた。
『三幻魔は通常召喚出来ないが、特定条件をクリアした場合のみ特殊召喚が出来る。ウリアの場合はフィールドの永続罠カードを三枚墓地へ送った場合のみ特殊召喚が可能。そして、その攻撃力は自分の墓地の永続罠カードの数×1000ポイントとなる』
《神炎皇ウリア》 ATK0→ATK3000
「いきなり、攻撃力3000……!」
「これが、三幻魔の一体……!」
『さらにウリアの効果を発動! 一ターンに一度、相手フィールドにセットされた魔法・罠カードを一枚破壊する! トラップディストラクション!!』
チェーンしてリバースカードを発動させようとした遊矢だが、何故かカードを発動させることが出来ずにセットされた《ダメージ・ダイエット》が破壊されていく。
「カードが発動できない!?」
『無駄だ。ウリアの効果の発動に対し、相手は魔法・罠カードの発動はできない』
「つまり、必ずリバースカードを破壊できるってことか……!」
『流石に理解が早いな。だが、どうする? バトルフェイズに入るぞ』
当然ながら、影丸の狙いは攻撃表示のオッドアイズと見てまず間違いなかった。
『バトル! 《神炎皇ウリア》で、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を攻撃! ハイパーブレイズ!!』
《神炎皇ウリア》 ATK3000 VS《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》 ATK2500
ウリアの炎が、オッドアイズに襲い掛かっていく。しかし、遊矢にはこのままバトルする以外の選択肢はなかった。
反撃するオッドアイズだが、力及ばず炎によって炭と化す。その衝撃は当然、プレイヤーである遊矢にも襲い掛かってきた。
「ぐっ……オッドアイズ!」
遊矢 LP8000→7500
墓守のペンダントのおかげで、今回の闇のデュエルもダメージが軽減できている。もし、これがなければ、前回の大徳寺の闇のデュエルですら乗り越えることは出来なかった。
『カードを一枚伏せ、ターンを終了する』
影丸 手札2枚 LP8000
フィールド ウリア
魔法・罠 《強欲なカケラ》、リバース1枚
VS
遊矢 手札1枚 LP7500
フィールド ユニ、コン
魔法・罠 なし
ペンデュラム 星読み、時読み
ようやく、十代へとターンが回る。しかし、状況は圧倒的に不利と言っていいだろう。
「俺のターン、ドロー! 遊矢! 力を貸してくれ!」
「ああ! セッティング済みのペンデュラムスケールで、ペンデュラム召喚を行う!」
遊矢と十代は何回もタッグデュエルをしているが、十代がペンデュラム召喚をするのはこれが初めてだった。
手札の状況だったり、フィールドの状況だったりと、出来ない理由はいろいろあったが、初のペンデュラム召喚に十代も笑みを浮かべる。
「現れろ、俺のモンスター達! レベル3、《E・HEROフェザーマン》、《E・HEROバーストレディ》! レベル7、《E・HEROエッジマン》!!」
《E・HEROフェザーマン》
通常モンスター
☆3 風属性 戦士族
ATK1000 DEF1000 攻撃表示
《E・HEROバーストレディ》
通常モンスター
☆3 炎属性 戦士族
ATK1200 DEF800 攻撃表示
《E・HEROエッジマン》
効果モンスター
☆7 地属性 戦士族
ATK2600 DEF1800 攻撃表示
十代のフィールドに三体のヒーローが同時に召喚された。これで先に召喚されていたユニとコンを含めて、十代のフィールドにはモンスターが五体揃ったことになる。
「手札から《置換融合》を発動! フィールドのフェザーマンとバーストレディを融合し、《E・HEROフレイム・ウイングマン》を融合召喚するぜ!」
《E・HEROフレイム・ウイングマン》
効果モンスター 融合
☆6 風属性 戦士族
ATK2100 DEF1200 攻撃表示
二体のヒーローが一つになり、フレイム・ウイングマンへと姿を変えていく。
普通の《融合》と違って、《置換融合》はフィールドのモンスターだけしか融合が出来ない。十代が遊矢に力を借りたのは、これが一番の理由のようだった。
『フン、勢いよくモンスターを出しても、攻撃力は全て3000以下――それではウリアには勝てん』
「慌てるなって、ヒーローにはヒーローの戦う舞台がある。ここは殺風景すぎてヒーローが戦う舞台には相応しくないぜ!」
『なに?』
「フィールド魔法、《摩天楼―スカイスクレイパー―》発動! このカードの効果で、『E・HERO』モンスターの攻撃力は、その攻撃力より高いモンスターに攻撃するダメージ計算時のみ1000ポイントアップする!」
これで、フレイム・ウイングマンとエッジマン、どちらが攻撃してもウリアを倒すことが出来る。
「バトルだ! フレイム・ウイングマンで、《神炎皇ウリア》に攻撃! スカイスクレイパーシュート!!」
《E・HEROフレイム・ウイングマン》 ATK2100 VS《神炎皇ウリア》 ATK3000
フレイム・ウイングマンが摩天楼の上から真っすぐウリアに突っ込んでいく。この攻撃が通れば、一気に影丸に大ダメージを与えることが出来た。
『その攻撃宣言時に永続罠、《ハイパーブレイズ》を発動!』
「ウリアの攻撃と同じ名前のカード……!?」
『自分の《神炎皇ウリア》が戦闘を行う攻撃宣言時に一度、手札・デッキから罠カード一枚を墓地に送り、このターン、ウリアの攻撃力はお互いのフィールド・墓地の罠カードの数×1000となる!』
「なにっ!?」
影丸は、デッキから永続罠《王宮の鉄壁》を墓地へと送った。これにより、ウリアが攻撃力を参照する幅が、このターンのみ永続罠から罠カード全てに変わり、場所も自分の墓地から互いのフィールド・墓地に変化する。
これにより、3000だったウリアの攻撃力は爆発的に上昇した。現在、十代と遊矢の墓地には罠カード《ダメージ・ダイエット》が一枚、影丸の墓地には永続罠が四枚に、フィールドには《ハイパーブレイズ》の一枚――合計六枚がある。
《神炎皇ウリア》 ATK3000→6000
いくらスカイスクレイパーの効果で攻撃力が1000上がるとはいえ、3000も上昇されては手も足も出なかった。
《E・HEROフレイム・ウイングマン》 ATK2100→3100 VS《神炎皇ウリア》 ATK6000
反撃の炎で、フレイム・ウイングマンが真っ黒に焼き尽くされていく。
「フレイム・ウイングマン――ッ!!」
十代 LP7500→4600
『フハハハハ! こうも見事にハマるとは! 攻撃力が低ければ倒せるとでも思ったか!?』
「くっ、カードを一枚伏せて、ターンエンドだ!」
『貴様のターンが終了したことで、ウリアの攻撃力も元に戻る。まぁ、その数値は上がっておるがな』
《神炎皇ウリア》 ATK6000→4000
十代 手札1枚 LP4600
フィールド ユニ、コン、エッジマン
魔法・罠 スカイスクレイパー、リバース1枚
ペンデュラム 星読み、時読み
VS
影丸 手札2枚 LP8000
フィールド ウリア
魔法・罠 《強欲なカケラ》、《ハイパーブレイズ》
影丸の三ターン目となる。普通なら、手札の差でタッグ側が有利になるはずだが、大徳寺とのデュエル同様に追い込まれていた。
きっと大徳寺は、このデュエルでこうなるとわかっていたからこそ、あれだけ厳しいデュエルをしてくれたのだろう。あの経験が二人の中でしっかり生きていた。
『私のターン、ドロー! この瞬間、《強欲なカケラ》にカウンターがまた一つ乗る!』
《強欲なカケラ》 強欲カウンター1→2
「ならこのタイミングで、罠カード、《エッジハンマー》発動!」
「上手い! ウリアの効果発動前なら、罠も発動できる!」
「自分のフィールド上に存在するエッジマンをリリースして、相手フィールド上のモンスター一体を破壊し、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!」
影丸のフィールドにはウリアしかいないので、当然ウリアが対象となる。元々の攻撃力は0なのでダメージは与えられないが、これでウリアとエッジマンで相打ちとなった。
『ぐっ!』
「どうだ! 俺とヒーロー達の力は、幻魔なんかに負けはしない!」
『舐めるなよ小僧! スタンバイフェイズに、《キラー・スネーク》を手札に戻す! さらにメインフェイズに永続罠、《ハイパーブレイズ》の効果! 一ターンに一度、手札を一枚捨て、墓地の三幻魔一体を手札に加えるか、召喚条件を無視して特殊召喚する! 墓地からウリアを召喚条件を無視して復活!!』
《神炎皇ウリア》
効果モンスター
☆10 炎属性 炎族
ATK0 DEF0 攻撃表示
しかし、影丸はいともたやすく幻魔を復活させてくる。一ターンに一度とはいえ、手札に《キラー・スネーク》がある以上、ノーコストで復活できるということだった。
《神炎皇ウリア》 ATK0→4000
『そして、フィールド魔法、《失楽園》を発動!』
影丸が新たにフィールド魔法を発動させたことで、スカイスクレイパーが上書きされていく。
「スカイスクレイパーが!?」
『このカードがフィールド魔法ゾーンに存在する限り、私の幻魔は相手の効果の対象にならず、効果では破壊されない! さらに、モンスターゾーンに幻魔が一体でもいる場合、デッキからカードを二枚ドローする!』
これで、もう今のように幻魔を破壊することは出来なくなった。おまけに、幻魔がいる限り、毎ターン《強欲な壺》の恩恵を受けているようなものである。
『さらに、永続魔法、《強欲なカケラ》の効果! 強欲カウンターを二つ以上置かれたこのカードを墓地に送り、カードを二枚ドローする!』
永続魔法版、時間差《強欲な壺》――本当に強欲だったのはこちらだった。
『永続魔法、《七精の開門》を発動! このカードの発動時の処理として、デッキから三幻魔一体を手札に加える! 《降雷皇ハモン》を手札に!』
「三幻魔を手札に加えた!?」
『さらに、一ターンに一度、自分フィールドにレベル10モンスターが存在する場合、自分の墓地の永続魔法一枚を手札に加える! 私のフィールドにウリアが存在するため、墓地から《強欲なカケラ》を再び手札に戻す!』
カードを発動させているはずなのに手札が増えていく。これで影丸の手札は七枚になった。
『そして、永続魔法、《強欲のカケラ》、《強者の苦痛》を発動!』
これで永続魔法がフィールドに三枚――先程のウリアの召喚条件から、遊矢と十代もまさかという思いが表情に浮かび上がる。
『私は、フィールドに存在する三枚の永続魔法を墓地に送ることで、このモンスターを特殊召喚することが出来る! 出でよ、二体目の幻魔――《降雷皇ハモン》!!』
《降雷皇ハモン》
効果モンスター
☆10 光属性 雷族
ATK4000 DEF4000 攻撃表示
今度は雷と共に、全身が金色の悪魔がフィールドに降り立った。同時に、二体目の幻魔が出たことで、三幻魔の恐ろしさがようやく形となって出て来る。
「『おジャマ・イエロー』!?」
声の主は万丈目だった。万丈目は精霊の声を聞くことが出来る故に、いち早く危険を察知したのだろう。
一体目の幻魔が出た時から徐々に、二体目が出てからか顕著に、精霊たちの力が吸い取られていたのだ。
そして、その力は精霊だけでなく、今デュエルしている遊矢と十代以外の、全世界のカードを襲っていた。この場にいる全員のカードからも絵柄が徐々に消え、まるで死んでしまったように真っ白になっていく。
「ッ、《光と闇の竜》!?」
しかし、万丈目の《光と闇の竜》だけは、三幻魔の力に抗っていた。僅かな光がこの場のカードを包み、被害を最小限に抑えていく。
全世界のカードは無理でも、この場にいる仲間たちくらいは守ろうと考えたのだろう。
それでも、相手は神に匹敵する三幻魔だ。
いくら《光と闇の竜》が頑張ってくれているとはいえ、長くは持たないのは目に見えていた。「お前ら、何とかしろ! そいつをさっさと叩きのめしてしまえ!」という、サンダーの涙ながらの訴えに、「「任せろ!」」と答えを返す。
だが、同時に影丸にも変化が起きていた。
まるで二体の幻魔から力を受け取ったかのように、生体ポッドの内にいる老人の影丸の肉体が活性化し、若さを取り戻していく。
いつ死んでもおかしくなかった老人は、三十代の若者に姿を変え、生体ポッドを叩き割って中から飛び出てきた。
そのまま、機械に装着されていたデュエルディスクとカードを奪い去ると、「こんなものはもういらん!!」と言って、それまで使っていた機械を結界外へと放り投げる。同時に大爆発が起きて、爆風がこちらまで飛んできた。
「フッ、ではデュエル再開と行くか。バトルフェイズ――《降雷皇ハモン》で、《EMユニ》を攻撃! 失楽の霹靂!!」
《降雷皇ハモン》 ATK4000 VS《EMユニ》 DEF1500
ハモンの雷の雨が、ターンプレイヤーである十代を守ろうと手を広げるユニを消し去っていく。
「この瞬間、ハモンの効果発動! このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った場合、相手に1000ポイントのダメージを与える! 地獄の贖罪!!」
「くっ、墓地の《ダメージ・ダイエット》を除外して効果ダメージを半分にする!」
遊矢のカードを使って何とか凌ぐ。それでも、500ポイントが再び雷となって十代のライフを削っていった。
「ぐあああああああああぁぁぁっ!!」
十代 LP4600→4100
「まだだ! 《神炎皇ウリア》で、《EMコン》を攻撃! ハイパーブレイズ!!」
コンもまた、十代を守るために、ウリアの炎に焼かれて消えていく。
「くっ、済まねぇ……ユニ、コン!」
「私――いや、俺はこれでターンを終了する」
影丸 手札4枚 LP8000
フィールド ウリア、ハモン
魔法・罠 《失楽園》、《ハイパーブレイズ》
VS
十代 手札1枚 LP4100
フィールド なし
魔法・罠 なし
ペンデュラム 星読み、時読み
影丸の三ターン目が終了し、フィールドには二体の幻魔が立ちはだかっていた。
まだまだデュエルはこれからと言いたいが、この時点でかなりの差がついている。二対一にも関わらず、フィールドも手札もライフも、圧倒的に影丸が有利だった。
倒しても復活し、その力を振るう三幻魔を見て遊矢も察する。大徳寺はこの状況になるとわかっていたから、自分達のデュエルでモンスターを何度も蘇らせてきたのだ。そして、それがまだ優しい難易度だったのだと、今、ようやく理解できた。
原作との変化点。
・ナンバーズの秘密を知った。
黒幕がいて、配っている。それが遊矢をこの次元に連れてきた犯人。
・遊矢の秘密を十代、翔、隼人にばらした。
仲がより深くなった。
・カミューラがしばらくアカデミアに在籍することになった。
大徳寺の記憶が雑に定着したせいで、大徳寺が持っていた十代や遊矢達への未練のようなものまで引き継いでしまっている。もし、続きを書く機会があれば、カミューラはこの学校の先生として登場するかもしれない。
・#47『明日香VS万丈目! サイバー・エンジェル―弁天―』より、万丈目のデュエルをカットした。
ぶっちゃけ、原作のオリカなしで、デュエルで愛など伝えられないし、下手に嫉妬してデッキボトムへ潜る光と闇の竜が簡単に思い浮かんだのでカットした。デュエルで恋心を伝えるって、笑顔にするよりむずいんですけど。
・#48『VS影丸(前編)二つの幻魔』より、あらすじが滅茶苦茶長くなった。
とりあえず、基本的には十代と遊矢のタッグが再びとなる。ただ、大徳寺がラスボス感満載だったせいで、真のボスである影丸の影が何か薄い。作者の表現不足だが、三幻魔の方が闇のデュエルで与えてくるダメージが大きい。