榊遊矢のGX次元漂流記   作:おこむね

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#005 『ドロップアウトVSエリート』

 十代の後を追いかけていくと、室内デュエル場にたどり着いた。

 どうやら、十代のいうデュエルの匂いとやらは、ここからしていたようで、「デュエルしようぜ!」と、声高に叫んでいる。

 翔曰く、ここは最新設備のデュエルフィールドらしいが、海馬コーポレーションで手伝いをしていた遊矢からすれば、試作アクションシステムが実践投入されていない旧型にしか見えない。それでも十代達からすればお宝の山なのか、デュエルしたいと目を輝かせていた。

 

「おいおい、ここはオシリスレッドのドロップアウトボーイが来る所じゃないぞ」

「上を見てみろ、オベリスクの紋章が見えないのか?」

 

 十代達が騒いでいると、オベリスクブルーの生徒らしき二人組が近づいてそう口にする。

 遊矢は、いくら成績でクラスが別れていると言っても、設備を利用できないのはやりすぎではないかと思ったが、経営者である海馬の実力主義の性格を考えると、それも仕方ないかとすぐに苦笑いを浮かべた。

 

「ごめん、知らなかったんだ。寮に帰ろう、アニキ」

「んー……なんかしっくりこないな」

 

 どうやら、十代も遊矢と同じことを感じたようだ。変な顔をして、何かを考えこんでいる。

 

「んじゃ、お前ら俺とデュエルしないか? それならいいだろ?」

 

 大胆不敵な十代の発言に、オベリスクブルーの生徒は何かを思い出したように十代を指さした。

 

「思い出した! 誰かと思ったら、クロノス教諭に勝った110番に……」

「万丈目さん! あの時の110番と、例の新システムのテスターですよ!」

 

 観客席で横になっていた万丈目と呼ばれたオベリスクブルーの生徒が身を起こしてこちらを見る。

 翔は居心地悪そうに十代の後ろに隠れるが、対する十代は堂々と前へ出て行った。

 

「ああ、俺、遊城十代。こっちは榊遊矢。で、あいつは?」

「お前ら、万丈目さんを知らないのか!?」

「同じ一年でも、中等部からの栄え抜き、超エリートクラスのナンバーワン!」

「ナンバーワン?」

 

 思わず、そう呟いた遊矢。

 彼らの言い分が本当なら、万丈目は今年のオベリスクブルー生の中でもトップクラスの実力を持っているということだ。

 

「そうだ。未来のデュエルキングとの呼び声高い、万丈目準様だ!」

「おかしいなぁ」

「何が?」

「デュエルキングって一番ってことだろ? この学園で一番強いのは俺だからさ」

 

 半分挑発のような十代の発言。だが、一つだけ気になる所があったのか、翔が呟いた。

 

「でも、アニキ。さっき遊矢君に負けてたよね?」

「遊矢は例外! 生徒って言ってもテスターなんだから!」

「でも、十代。今、この学園で一番って言ったような……?」

「いや、それは――」

「Be quiet! 諸君、はしゃぐな」

 

 焦る十代に遊矢と翔が突っ込みを入れていると、万丈目が乱入してくる。

 こちらに向かってくる万丈目とは反対に、オベリスクブルーの生徒二人が観客席の方へ移動した。

 

「下がってろ。そいつら、お前達よりやる。入学試験デュエルで手抜きしたとはいえ、110番は一応あのクロノス教諭を倒した男。榊遊矢に至っては、あのKCとI2社がスポンサーを務める新システムのテスターだ」

「へへっ、実力さ」

 

 と、自信満々に笑う十代。

 

「その実力、ここで見せてほしいものだな」

「いいぜ」

 

 売り言葉に買い言葉で、万丈目と十代がデュエルディスクを構える。

 場の空気を読んだのか、後ろに下がるように言われたオベリスクブルーの生徒二人が、デュエルフィールドの電源を入れ、いつでもデュエルが出来るように準備していた。

 

「本当にやるのか十代?」

「あぁ、売られたデュエルは買うのが礼儀だ」

 

 あぁ、これは止められないと遊矢は思った。

 この後、入学祝いの歓迎パーティがあるが、遊矢は十代とのデュエルの後、レッド寮に行かずにここへ直接きたこともあってか、比較的時間に余裕はある。

 こうなってしまえば、白黒はっきりさせてしまった方が、今後の彼らのためになるだろう。

 ふと、横目で万丈目の方を見ると、何やらデュエルディスクからデッキを取り外し、違うデッキに取り替えていた。

 

「よし。準備は出来たか? ドロップアウトボーイ」

「あぁ、いつでもいいぜ。エリートさん」

「見せてもらおうか、クロノス教諭を倒したのが実力だったのかどうか」

「あぁ、俺も知りたかった所だ。デュエルアカデミアのエリートってやつの実力がどの程度なのかな」

「行くぞ」

「あぁ」

「「デュエル!!」」

 

 デュエルディスクに表示された先攻は万丈目。

 手札を確認すると、デッキに手をかざし、カードをドローしていく。

 

「俺が先攻だ、カードドロー! 《リボーン・ゾンビ》を攻撃表示で召喚!」

 

 《リボーン・ゾンビ》

 効果モンスター

 ☆4 闇属性 アンデット族

 ATK1000 DEF1600 攻撃表示

 

 まさにゾンビという見た目のモンスターが万丈目のフィールドに現れた。しかし、攻撃力は1000。とてもじゃないが、強そうなモンスターには見えない。

 

「さらにカードを一枚伏せ、ターンエンドだ」

 

 

 万丈目 手札4枚 LP4000

 フィールド 《リボーン・ゾンビ》

 魔法・罠 リバース1枚

 

 VS

 

 十代 手札5枚 LP4000

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 

 

「オベリスクブルーとオシリスレッド、この頭脳の差が既に勝敗を決めているんだよ」

「デュエルは頭の中でやるものじゃない! 熱い心でぶつかるものだぜ!」

 

 いや、考えることは大切だぞ、と遊矢。

 

「俺のターン、ドロー! 魔法カード、《融合》発動! フェザーマンとバーストレディを融合して、フレイム・ウイングマンを攻撃表示で融合召喚!!」

 

 《E・HEROフレイム・ウイングマン》

 効果モンスター 融合

 ☆6 風属性 戦士族

 ATK2100 DEF1200 攻撃表示

 

 先程も召喚した十代のフェイバリットモンスターがフィールドに現れた。

 

「早速かかったな」

「何?」

「お前のデュエルは既に分析済みだ。罠カード、《ヘル・ポリマー》発動!」

 

 発動された罠カードを見て、遊矢は万丈目がピンポイントで融合対策をしているのを理解する。

 だが、即座に万丈目の狙いを看破した遊矢に対して、翔は《ヘル・ポリマー》の効果がわからないのか、「《ヘル・ポリマー》って?」と首を傾げていた。

 

「翔、《ヘル・ポリマー》は――」

「デュエリストにとって、カード効果は基本的な知識よ」

 

 遊矢が翔にカード効果を説明しようとすると、後ろから聞き覚えのある女性の声が聞こえる。

 振り返ると、オベリスクブルーの制服に身を包んだ“この世界”の天上院明日香がこちらへ歩いて来ていた。

 

「《ヘル・ポリマー》は、相手が融合モンスターを融合召喚した時、自分フィールドのモンスター一体をリリースすることで、その融合モンスターのコントロールを得るカード」

「えっと、君は?」

 

 一応、初対面なので、名前を聞く遊矢。

 翔は、「奇麗な人」と、明日香に見惚れていた。

 

「私は天上院明日香。オベリスクブルーの一年よ」

「俺は榊遊矢」

「僕は丸藤翔っす」

「で、あそこでデュエルしてるのが、遊城十代。よろしく」

 

 と、遊矢が指さすと、丁度万丈目が《リボーン・ゾンビ》をリリースして、フレイム・ウイングマンのコントロールを得ていた。

 十代は成すすべがないのか、モンスターをセットしてターンエンドしたようだが、デュエルの流れは万丈目が掴んだと言っていいだろう。

 

 

 十代 手札2枚 LP4000

 フィールド セット1体

 魔法・罠 なし

 

 VS

 

 万丈目 手札4枚 LP4000

 フィールド フレイム・ウイングマン

 魔法・罠 なし

 

 

「俺のターン、カードドロー! 《地獄戦士》を召喚!!」

 

 《地獄戦士》

 効果モンスター

 ☆4 闇属性 戦士族

 ATK1200 DEF1400 攻撃表示

 

 黒く禍々しい鎧を身に纏った戦士が、万丈目のフィールドに召喚される。

 

「バトルだ! フレイム・ウイングマンでセットモンスターに攻撃! フレイムシュート!!」

 

 《E・HEROフレイム・ウイングマン》 ATK2100 VS《E・HEROクレイマン》 DEF2000

 

 万丈目が十代得意のフレイム・シュートを使い、十代のクレイマンが破壊されていく。

 同時に、モンスター効果でフレイム・ウイングマンが十代に炎を浴びせ戦闘で、破壊され墓地へ送られたクレイマンの攻撃力分のダメージが十代のライフから引かれていった。

 

「ぐっ、あああああああああっ!」

 

 十代 LP4000→3200

 

「これでお前を守るモンスターはいない! 《地獄戦士》でプレイヤーに直接攻撃! 行け、ヘル・アタック!」

 

 モンスターのいなくなった十代まで《地獄戦士》が迫ると、その剣で十代を一刀両断していく。

 

「ぐぅっ!!」

 

 十代 LP3200→2000

 

「融合モンスターを封じられてもう打つ手なしか? 俺はカードを三枚伏せ、ターンエンドだ」

 

 

 万丈目 手札1枚 LP4000

 フィールド フレイム・ウイングマン、《地獄戦士》

 魔法・罠 リバース3枚

 

 VS

 

 十代 手札2枚 LP2000

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 

 

 デュエルには流れがあった。攻撃でダメージを与えたり、相手のコンボを阻止したりと、一つ一つの行動が勝負の流れを引き寄せ、デュエリストに有利な状況を作り出す。

 今、このデュエルの流れを掴んでいるのは万丈目だ。

 対する十代のライフは半分。フィールドアドバンテージも奪われ、劣勢というしかない。この危機的状況をひっくり返すには、まず奪われたフレイム・ウイングマンをどうにかするしかなかった。

 

「俺のターン、ドロー! 《E・HEROスパークマン》を召喚!」

 

 《E・HEROスパークマン》

 通常モンスター

 ☆4 光属性 戦士族

 ATK1600 DEF1400 攻撃表示

 

 稲妻を纏いながら、新たなヒーローが十代のフィールドに飛び出してくる。しかし、攻撃力は1600。これではフレイム・ウイングマンには対処できなかった。

 

「バトルフェイズ! スパークマンで《地獄戦士》を攻撃! スパークフラッシュ!」

 

 《E・HEROスパークマン》 ATK1600 VS《地獄戦士》 ATK1200

 

 十代は迷わず《地獄戦士》に攻撃を仕掛けていく。攻撃力の差もあって、スパークマンが簡単に《地獄戦士》に勝利した。

 

「くっ、この瞬間、モンスター効果発動! 《地獄戦士》が戦闘によって破壊され、墓地へ送られた時、その戦闘によって受けたダメージを相手にも与える!」

「なにっ!?」

 

 万丈目 LP4000→3600

 十代 LP2000→1600

 

 転んでもただでは起きないとはこのことである。

 十代は何とか万丈目のモンスターを倒すことが出来たが、自身もダメージを受けてしまった。

 

「アニキ!」

「貴方のお兄さん、威勢はいいけどちょっと迂闊ね。モンスター効果を無視するなんて……」

「あ、十代君は本当のアニキじゃなくて……何というか、僕の心のアニキなんだ」

「そうだったの。でも、状況は完全に不利。このままじゃ負けるわよ」

「でも、十代は楽しそうだ」

 

 遊矢の言う通り、十代は苦しい状況だが楽しそうな笑みを浮かべている。

 

「リバースカードを二枚セットして、ターンエンド」

 

 

 十代 手札0枚 LP1600

 フィールド スパークマン

 魔法・罠 リバース2枚

 

 VS

 

 万丈目 手札1枚 LP3600

 フィールド フレイム・ウイングマン

 魔法・罠 リバース3枚

 

 

「次の攻撃で俺の勝ちは決まりだ。俺のターン、カードドロー!」

 

 万丈目がカードを引き、スタンバイ、メインフェイズをスキップし、即座にバトルフェイズに入った。

 この攻撃を防ぐことが出来ないと、十代はフレイム・ウイングマンの効果でライフがゼロになってしまう。

 

「バトルだ! フレイム・ウイングマンでスパークマンを攻撃!」

 

 《E・HEROフレイム・ウイングマン》 ATK2100 VS《E・HEROスパークマン》 ATK1600

 

 十代にとどめを刺さんと、万丈目がフレイム・ウイングマンを仕掛けていく。

 

「罠カード、《異次元トンネル―ミラーゲート―》を発動! 自分フィールドの『E・HERO』と名のついたモンスターが攻撃対象にされた時、自分と相手のモンスターのコントロールを入れ替えてダメージ計算を行う!」

「なにっ!?」

「行けっ! スパークリングブレイカー!!」

 

 ミラーゲートに導かれるように、フレイム・ウイングマンとスパークマンが立ち位置を逆転させた。

 

 《E・HEROスパークマン》 ATK1600 VS《E・HEROフレイム・ウイングマン》 ATK2100

 

 これでフレイム・ウイングマンが十代のモンスターとなり、スパークマンが万丈目のモンスターとして扱われる。

 当然、フレイム・ウイングマンの方が攻撃力が上なので、スパークマンは自爆特攻する形で戦闘破壊されてしまった。

 

「この瞬間、フレイム・ウイングマンの効果で破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える!」

「ぐっ!!」

 

 現在、フレイム・ウイングマンをコントロールしているのは十代なので、炎は万丈目に向けられて放たれる。スパークマンの攻撃力分のダメージが万丈目のライフから引かれていく。

 

「うわああああああああっ!!」

 

 万丈目 LP3600→3100→1500

 

「っ、調子に乗るな! 罠カード、《ダメージワクチンΩMAX》発動! 戦闘・効果で自分がダメージを受けた時、受けた数値だけライフを回復する!」

 

 これで万丈目は、フレイム・ウイングマンの効果で受けたダメージ1600を回復した。

 

 万丈目 LP1500→3100

 

「さらに、罠カード、《ヘル・ブラスト》発動! 自分フィールドのモンスターが破壊され墓地へ送られた時、フィールド上の攻撃力が一番低いモンスター一体を破壊し、お互いにその攻撃力の半分のダメージを受ける!」

 

 今、フィールドのモンスターは十代のフレイム・ウイングマンしかいない。唯一の高レベルモンスターが爆散し、その攻撃力の半分1050が二人のライフから削られる。

 

「ぐっ!」

「っ、フレイム・ウイングマンが!」

 

 万丈目 LP3100→2050

 十代 LP1600→550

 

 だが、これで終わりではなかった。

 

「まだだ! 永続罠カード、《リビングデッドの呼び声》発動! 自分の墓地からモンスター一体を特殊召喚する! 甦れ、《地獄戦士》!」

「くっ!」

「バトルフェイズ中の特殊召喚のため、《地獄戦士》は攻撃が可能! これで終わりだ、行けヘル・アタック!!」

 

 墓地から蘇生された《地獄戦士》が、十代の残りライフを削らんと襲いかかっていく。

 

 《地獄戦士》 ATK1200 VS十代 LP550

 

「速攻魔法、《クリボーを呼ぶ笛》! このカードの効果で、手札・デッキから《ハネクリボー》一体を自分フィールドに特殊召喚する!」

 

 《ハネクリボー》

 効果モンスター

 ☆1 光属性 天使族

 ATK300 DEF200 守備表示

 

 どこからともなく笛の音が聞こえ、『くりくり~』という声と共に、十代の相棒である《ハネクリボー》がデッキから飛び出してきた。

 

 これにより、十代は何とか危機を脱する。

 

「ちっ、凌いだか! なら《地獄戦士》、その雑魚モンスターを攻撃しろ!」

 

 《地獄戦士》 ATK1200 VS《ハネクリボー》 DEF200

 

 当然、耐えられるはずもなく、『く~り~』という悲鳴と共に、《ハネクリボー》が破壊され墓地へ送られていく。

 だが、そのおかげでギリギリの所で耐えることができ、十代は心の中で相棒である《ハネクリボー》に感謝した。

 

「メインフェイズ2。俺は魔法カード、《デビルズ・サンクチュアリ》を発動! このカードの効果で、フィールドに《メタルデビル・トークン》を特殊召喚する!」

 

 魔法陣から真っ黒な丸を繋ぎ合わせた人形のような物体が出現していく。

 

 《メタルデビル・トークン》

 トークン

 ☆1 闇属性 悪魔族

 ATK0 DEF0 攻撃表示

 

「そして、このメタルデビル・トークンと《地獄戦士》をリリースし、《闇より出でし絶望》をアドバンス召喚!!」

 

 《闇より出でし絶望》

 効果モンスター

 ☆8 闇属性 アンデット族

 ATK2800 DEF3000 攻撃表示

 

 暗闇の中から雷鳴と共に、真っ黒な悪魔が召喚される。真っ黒だが、体には赤い魂のようなものが渦巻いており、まさに絶望の化身と言っていいだろう。

 攻撃力の低い《地獄戦士》をそのままにしておけば、返しの十代のターンで反撃のチャンスを与えるかもしれない。

 だからこそ、万丈目は低ステータスのモンスターをリリースし、上級モンスターを召喚することで、十代に万が一の可能性も与えようとしなかった。

 

「これで、俺はターンエンド。確かに、オシリスレッドにしてはよくやったが、それもここまでだ。手札0、フィールド0の貴様に攻撃力2800のこのモンスターは倒せまい」

 

 

 万丈目 手札0枚 LP2050

 フィールド 《闇より出でし絶望》

 魔法・罠 《リビングデッドの呼び声》

 

 VS

 

 十代 手札0枚 LP550

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 

 

 融合デッキの弱点は、一枚のカードで逆転が効きにくい所にある。

 だが、圧倒的不利なこの状況を逆転するためには、その一枚に全てをかけるしかなかった。

 

「へへっ、確かに絶体絶命だ。でも、俺は負けないぜ」

「ふん、デュエルは99%の知性が勝敗を決する。運が働くのはたった1%に過ぎない」

「その1%に俺は賭ける。このドローで奇跡を起こすぜ! 俺のターン!」

 

 勢い良くデッキからカードを引く十代。

 

「……楽しかったぜ。お前とのデュエル!」

「なにっ!?」

「魔法カード、《ミラクル・フュージョン》発動! 墓地のフレイム・ウイングマン、スパークマンをゲームから除外し、《E・HEROシャイニング・フレア・ウイングマン》を融合召喚する!!」

「墓地のモンスターで融合召喚だと!?」

 

 《E・HEROシャイニング・フレア・ウイングマン》

 効果モンスター 融合

 ☆8 光属性 戦士族

 ATK2500 DEF2100 攻撃表示

 

 光の翼を持ったニューヒーローが、十代のフィールドに降臨する。

 融合モンスターを素材にするヒーロー、これこそ十代の切り札というべきモンスターだった。

 

「シャイニング・フレア・ウイングマンの効果! このカードの攻撃力は、墓地の『E・HERO』の数×300ポイントアップする!」

 

 シャイニング・フレア・ウイングマンの融合に二体を除外したため、今十代の墓地に『E・HERO』は、フェザーマン、バーストレディ、クレイマンの三体。よって、攻撃力は900ポイントアップする。

 

 《E・HEROシャイニング・フレア・ウイングマン》 ATK2500→3400

 

「バトル! シャイニング・フレア・ウイングマンで、《闇より出でし絶望》に攻撃! 究極の光を放て! シャイニング・シュート!!」

 

 《E・HEROシャイニング・フレア・ウイングマン》 ATK3400 VS《闇より出でし絶望》 ATK2800

 

 闇を払うかのように、シャイニング・フレア・ウイングマンから放たれた光が、絶望の化身を消し去っていく。

 

「くっ、だがまだ俺のライフは残る!」

 

 万丈目 LP2050→1450

 

「いや、これで終わりだ! シャイニング・フレア・ウイングマンも、フレイム・ウイングマンと同じく、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える! いけぇ!」

「なんだと!?」

 

 驚く万丈目の目の前にシャイニング・フレア・ウイングマンが降り立ち、その光を向ける。

 破壊された《闇より出でし絶望》の攻撃力2800が、万丈目の残りライフから削られていった。

 

 万丈目 LP1450→0

 

 デュエルが終了し、ソリッドビジョンが解除される。

 敗北した万丈目は驚いたような表情で、「くっ、甘く見すぎていたか」と呟いていた。

 

「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ」

「アニキ!」

「十代やったな」

「まさか、本当にあの万丈目君に勝っちゃうなんてね。でも……」

 

 感心する明日香の言葉に、遊矢も内心で同意する。

実際、万丈目のプレイングはかなりのものだった。

 終始、デュエルの流れを掌握していたし、最後のターン、もし十代が《ミラクル・フュージョン》を引けていなかったら負けていたのは十代だっただろう。

 だが、それでも勝ったのは十代であり、たった一枚のカードで勝敗が決まってしまうのが、デュエルモンスターズというゲームだ。

 

 しかし、何か違和感がある。

 

 遊矢が万丈目の方に目を向けると、負けたというのに特に悔しそうにしていなかった。

 むしろ、企みが成功したようなそんな表情を浮かべながら、デュエルディスクからデッキを引き抜き、また違うデッキを差し込んでいる。

 

「まさか……」

「侮りすぎたか。クロノスとのデュエルを見た限り、このデッキで十分通用すると思ったが」

「なんだ、負け惜しみはみっともないぜ」

 

 勝利の余韻に浸っているのか、からかうようにそう言う十代。

 だが、そんな十代の台詞を聞いても、万丈目やその取り巻き達は怪しく笑うだけだった。

 

「ふん、このデッキに勝ったのがそれほど嬉しいか? なら良いことを教えてやる、これは俺が中等部の時に使っていたデッキだ」

「何だって!?」

「当然、今使っているデッキと比べればカードパワーは格段に落ちる上、構成も甘い。貴様はそんなデッキにギリギリの戦いをしていた訳だ」

 

 そう言うと、万丈目はもう十代には興味が無いとばかりに遊矢に視線を向けてくる。

 

 お互いの視線が交わる――が、すぐに逸らされた。

 

「まぁ、それでも勝者はお前だ。少なくとも、お前は中等部の時の俺よりは強い。だが、今回のデュエルでもう底は見えた」

「待てよ! ならもう一度デュエルだ!」

「ふん、ここで決着をつけてやってもいいが、そろそろパーティが始まる。今日はお前に勝ちを譲っておいてやるさ」

 

 そう言って、万丈目は取り巻きを連れて、デュエル場を後にしていく。デュエルの勝者は十代だが、何故か負けたような空気が辺りに広がった。

 

「ア、アニキ。あんなの負け惜しみだよ」

「いえ、中等部の卒業試験で見た万丈目君のデッキは、確かに今のとは比べものにならないパワーを持っていたわ」

 

 確か、オベリスクブルーは殆どが中等部からのエスカレーター組で構成されていると、遊矢も海馬から聞いていた。

 同じオベリスクブルーの明日香がそういうのなら、万丈目の言っていたことは間違いないのだろう。

 

「ぐぬぬぬぬ、納得いかねぇ! 戻ってこい万丈目! デュエルだー!!」

「ア、アニキ、落ち着いて」

 

 手加減されたというのが余程納得いかないようで、十代はその場に居座って動こうとしなかった。

 だが、万丈目の言っていた通り、そろそろパーティが始まる時間なので、帰らなければ問題になってしまう。

 

「今回の勝ちに納得がいかないなら、次のデュエルで勝負をつければ良いさ。次にお前が勝てば、万丈目もお前の実力を認めるしかないだろ?」

「ぐぬぬぬぬ」

「誰がどう言おうと、勝ったのはお前だ。あいつの言ったことなんて負け犬の遠吠えだよ」

「ぬぬぬぬぬぬぬぬぬ」

「……わかった。後でもう一回デュエルするから動いてくれ。シンクロもそのときに見せるから」

「ほんとか!?」

 

 泣いてたカラスが笑うではないが、今さっきまでの不機嫌が嘘のような笑顔だった。

 

「シンクロ召喚……とても興味あるけど、私ももう寮に帰らないと」

「ん? そういえばお前……」

「十代、彼女は天上院明日香。オベリスクブルーの生徒だ」

「よろしくね、遊城十代君」

「十代で良いぜ。よろしくな、明日香」

 

 握手する二人を見ながら、遊矢は万丈目組もこれくらいフレンドリーなら良かったのにと思ったが、そういえば事前に海馬から与えられた情報で、オベリスクブルーはエリート意識が強いと聞いた覚えがあったことを今思い出した。

 デュエルアカデミアの生え抜きという実績が彼らの自信と傲慢さに繋がっているのだろう。明日香曰く、彼らはオベリスクブルーの中でもろくでもない部類の人間らしく、あまり関わらない方が良いと忠告して、この場を去って行った。

 

 

 

 




 原作との変化点。

・十代と万丈目がデュエルした。
 原作では時間が無くて夜に呼び出してアンティデュエルをするが、今作では寮へ行かずにやってきたためデュエルをする時間があった。内容については、まだ最初なので原作をなぞりつつ多少変更くらい。話が進むと、原作のデュエル内容は跡形もなくなくなるので、原作の面影を感じられるのは多分最初の内だけ。

・万丈目が敗北した。
 しかし、本気デッキは出していない。遊矢の登場で、この半年でカード販売数が有り得ないほど前倒しにされており、それこそ二週間に一回新パックが出るくらいの頻度となっている。そのため、原作で使っていた万丈目デッキは過去の遺物と化していた。



 デュエル内容変更。

・《ヘル・ブラスト》使用時に《防御輪》を使ったのですが、ダメージステップで発動が出来ないことが判明したため修正。
 変更後、万丈目のリバースを3枚に変え、《ダメージワクチンΩMAX》でフレイム・ウイングマンのダメージを無効にしてから《ヘル・ブラスト》発動にしています。

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