遊矢と万丈目の決闘は、一見万丈目が盤面を支配しているように見えた。
それは、偶然遊矢がデュエルフィールドに向かう姿を見つけて、後をつけてきた明日香の感想だ。隠れて様子を見る限り、万丈目は本気で遊矢を倒そうとしている。
攻撃力3000の大型モンスターに加え、遊矢のフィールドは欠けたペンデュラムがあるのみ。この世界のデュエリストからすれば絶望的な状況だ――しかし、遊矢ならあるいは、という、願いにも似た考えが明日香の中にはあった。
それは、入学試験で見たデュエルから来る直感のようなものだったが、遊矢が楽しそうな笑みを浮かべているのもその理由の一つとも言える。
「俺のターン!」
ターンが遊矢に移り、デッキからカードをドローした。
これで手札は3枚、フィールドにはスケール1の《星読みの魔術師》のみ。
正直、VWXYZを何とかするだけなら、ダーク・リベリオンを呼べば済む話だ。向こうは効果や破壊に耐性がある訳ではないので、ダーク・リベリオンの効果で攻撃力を上回れば圧勝できる。
同じ理由で相手の攻撃力分だけ攻撃力が上がるスターヴ・ヴェノムでもいい。とはいえ、今の遊矢の手札ではダーク・リベリオンもスターヴ・ヴェノムも呼べそうになかった。
どうも、まだデッキの調整が完ぺきではないのだ。カードをいじった影響で、デッキのバランスが少し崩れている。
これはまた再調整が必要だな――と、考えつつ、遊矢は今の手札で出来る精一杯のプレイをすることにした。
「俺は手札からチューナーモンスター、《EMオッドアイズ・シンクロン》を通常召喚!」
《EMオッドアイズ・シンクロン》
効果モンスター チューナー ペンデュラム
☆2 闇属性 魔法使い族
ATK200 DEF600 攻撃表示
大きな星の飾られた白いシルクハットを被ったコミカルなモンスターが遊矢のフィールドに現れた。
攻撃力は低く、とても強そうには見えない。
しかし、チューナーという聞き慣れぬ単語に、万丈目の表情が引き締まった。直感的に、遊矢が攻めてくるとわかったのだろう。
「オッドアイズ・シンクロンの効果発動! 一ターンに一度、自分のペンデュラムゾーンに存在するカードを、効果を無効にして特殊召喚し、そのカードと自身でシンクロ召喚する!」
オッドアイズ・シンクロンの手招きに応じるように、残されたペンデュラムゾーンから《星読みの魔術師》が飛び出してくる。
《星読みの魔術師》
効果モンスター ペンデュラム
☆5 闇属性 魔法使い族
ATK1200 DEF2400 攻撃表示
「来るか、シンクロ!」
「そして、レベル5の《星読みの魔術師》に、レベル2の《EMオッドアイズ・シンクロン》をチューニング!」
オッドアイズ・シンクロンが2つの光の環となり、5つの星に変換された《星読みの魔術師》と光の道を作っていく。
「――その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!」
口上と共に、エクストラデッキからカードを引き抜いた。呼び出すのは、自分が信じる四天の龍の一体。
「シンクロ召喚! 現れろ、レベル7! 《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!!」
《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》
効果モンスター シンクロ
☆7 風属性 ドラゴン族
ATK2500 DEF2000 攻撃表示
入学試験で見たダーク・リベリオンとは正反対の真っ白な龍。デュエルを隠れて見ている明日香が小声で「奇麗……」と呟いた。
また、同時に――
「あれが、遊矢のシンクロモンスターか。ダーク・リベリオンも格好いいけど、あれも格好いいなぁ」
と、自身以外いるはずのない人間の声が聞こえて、咄嗟に明日香が悲鳴を上げて振り返りそうになった。
だが、声は出なかった。「おっと」と、慌てたように後ろの人物が明日香の口を塞いだのだ。
「俺だよ、俺。遊城十代」
「あ、あなた……どうしてここに?」
「なぁに、ちょっとデュエルの匂いがしたんでね。面白そうだから遊矢の後をつけてきたんだ」
つまり、最初から明日香の後ろにいたということだ。
正直、不審者でなくて一安心――と、明日香もホッとしたが、安心すると逆に「なら最初から声をかけなさいよ」とも思う。
とはいえ、十代に悪意があった訳でもなさそうだったので言葉にはしなかった。ただ、内心の不満のせいか、十代を見る目が若干ジト目になっている。
しかし、当の十代は気にした様子もなく、「おっ、そろそろ状況が動きそうだな」と、呑気に呟いていた。明日香が再びフィールドに目を向けると、遊矢が万丈目と話しながらカードを伏せようとしているのが見える。
遊矢のクリアウィングの攻撃力は2500。真正面からでは、万丈目のVWXYZには歯が立たないのだろう。
「入学式で聞いてはいたが、実際に見るのとは大違いだな。レベルの低い雑魚共が、高攻撃力のモンスターを呼び出す素材になるとは……しかし! それでも攻撃力はVWXYZの方が上だ!」
「俺はリバースカードを2枚セットしてターンエンドだ」
遊矢 手札0枚 LP2200
フィールド クリアウィング
魔法・罠 リバース2枚
ペンデュラム なし
VS
万丈目 手札1枚 LP4000
フィールド VWXYZ
魔法・罠 《前線基地》、リビングデッド
「俺のターン、ドロー!」
ターンが入れ替わり、万丈目がデッキからカードをドローする。
結局、遊矢は攻めずに終わった。万丈目からすれば、このままVWXYZの効果でクリアウイングを除外すれば、プレイヤーへの直接攻撃で勝利が決まる場面だ。
「魔法カード、《マジック・プランター》発動! 自分フィールドの永続罠カードを墓地へ送り、カードを二枚ドローする! 俺は、使用済みの《リビングデッドの呼び声》を墓地へ送り、二枚をドロー!!」
しかし、万丈目は警戒を怠らなかった。
遊矢は前のターンにVWXYZの効果を見ている。にも拘らず、わざわざ除外されるためだけに、シンクロ召喚したモンスターを出すなどあり得ない。それならば、オッドアイズ・シンクロンを裏側守備表示にしておいた方がまだマシだろう。
如何にもクリアウイングを除外してくれと言わんばかりの状況に、万丈目は罠の可能性を考慮に入れた。怪しいのは三枚のリバースカードだ。あのカードのいずれかに、クリアウイングを除外効果から守るカードが入っている――万丈目はそう考えた。
「だが、それでも攻める! VWXYZの効果発動! 貴様の一番右のリバースカードを除外する!」
「この瞬間、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の効果発動! レベル5以上のモンスターの効果が発動した時、それを無効にし破壊する!」
「なにっ!?」
「そして、破壊したモンスターの攻撃力分、クリアウイングの攻撃力がアップする!」
VWXYZを破壊しようと、クリアウィングの全身が光を放ちだす。
しかし、それと同時に、万丈目も手札からカードをデュエルディスクに差し込んでいた。
「させるか! 手札から、速攻魔法《わが身を盾に》を発動! 1500のライフを支払い、フィールド上のモンスターを破壊する効果を無効にし破壊する!」
「なんだって!?」
万丈目 LP4000→2500
このままではクリアウィングが破壊される上に、リバースカードも除外されてしまう。
「なら、罠カード、《ダメージ・ダイエット》発動! このターン、自分が受ける全てのダメージを半分にする!」
クリアウィングはもう守れないと判断して、VWXYZの効果対象となったカードを発動させていく。
カードこそ除外されることになるが、効果を発動させたことで何とか除外を無意味にする。これで、このターン、遊矢が受ける全てのダメージは半分となった。
続いて、VWXYZの回りに光の壁が現れ、クリアウイングの効果を無効にする。同時に、まるで自壊するかのようにクリアウイングの体が爆散した。
「っ、クリアウイング!?」
「これで貴様のフィールドにモンスターはいない! VWXYZで榊遊矢にダイレクトアタック!!」
《VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン》 ATK3000 VS遊矢 LP2200
VWXYZの全ての砲門が遊矢へと向けられる。《ダメージ・ダイエット》の効果で、ライフがゼロになることはないが、遊矢はここで最後のリバースカードを発動させた。
「速攻魔法、《イリュージョン・バルーン》!! 自分フィールドのモンスターが破壊されたターン、自分のデッキの上からカードを5枚めくり、その中の『EM』モンスター一体を特殊召喚する!」
このターン、クリアウィングが破壊されているため、発動条件は満たされている。遊矢がデッキからカードを5枚めくっていく。
「よし! 俺は、めくったカードの中から、《EMギッタンバッタ》を特殊召喚し、それ以外のカードはデッキに戻す! 来い、ギッタンバッタ!!」
頭と尻に顔を持ち、尻の方にシルクハットを被ったコミカルなバッタが守備表示で呼び出される。
《EMギッタンバッタ》
効果モンスター
☆4 地属性 昆虫族
ATK100 DEF1200 守備表示
「ならば、その目障りなバッタを破壊するのみ! VWXYZでギッタンバッタに攻撃!! この瞬間、速攻魔法、《エネミーコントローラー》発動! 相手フィールド上の表側表示モンスターの表示形式を変更する!」
《VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン》 ATK3000 VS《EMギッタンバッタ》 ATK100
強制表示変更で、戦いたくもないギッタンバッタが攻撃表示になっていく。
ダメージが半分になる以上、そこまでして追撃しなくてもいいかもしれないが、万丈目は勝ちへの誘惑を振りきれなかった。
ギッタンバッタの二つの顔が揃って焦り出し、その場から逃げようとするも、逃げ場などないと一斉砲撃が発射されていく。
「だが、特殊召喚されたギッタンバッタは、一ターンに一度、戦闘では破壊されない! さらに、《ダメージ・ダイエット》の効果で、このターンで俺が受ける全てのダメージは半分になる!」
遊矢 LP2200→750
ギリギリで首の皮一枚つながったが、あまりの破壊力にギッタンバッタが恐怖で顔が引きつらせている。このターンは無事とわかっても、圧倒的な破壊力の前には手も足も出ないとわかっているのだ。
「ちっ、俺はこれでターンエンドだ」
逆に、万丈目はモンスターを残してしまったことに苛立ちを露にする。
手札もなく、魔法・罠もなく、ペンデュラムもない。誰が見ても万丈目が有利な場面。それでも万丈目は、小骨が喉につまったような、何とも言えぬ感情を抱いていた。
万丈目 手札1枚 LP2500
フィールド VWXYZ
魔法・罠 《前線基地》
VS
遊矢 手札0枚 LP750
フィールド ギッタンバッタ
魔法・罠 なし
ペンデュラム なし
しかし、何とか凌いだとはいえ、遊矢のフィールドには《EMギッタンバッタ》が一体のみ。リバースカードもペンデュラムも手札もない。こうなれば、ドローカードでどうにかするしかないという、まさに瀬戸際。
そんな遊矢を見ながら、隠れている十代は何とも言えないような表情を浮かべていた。
「ありゃー、こりゃ遊矢の負けか? 遊矢に初黒星をつけるのは俺の予定だったのに。しっかし、万丈目の奴、想像以上に強いな」
「オベリスクブルー一年のトップは伊達ではないということよ。それでも、彼ならどうにか出来るかも、と思ったけど……」
ここまでかしら――と、明日香がデュエルを止めようと考える。もし万丈目が榊遊矢を倒したとなれば、また調子に乗るに決まっていた。また、時間的にもガードマンの見回りが来かねないし、止める理由はある。
だが、動こうとした明日香を十代が止めた。
何故――と、口を開こうとした明日香だが、十代が「まだ遊矢は勝ちを諦めてない」と呟くと、再び視線をデュエルフィールドに向けた。
「万丈目。お前が何を求めて俺にデュエルを挑んだのか、正直今もまだ良くわかってない。俺とのデュエルでその答えが出たかどうかもわからない」
「………………」
「けど、これだけは言える。お前は強いよ。少なくとも、俺はお前を凄いデュエリストだと思ってる。だから、怯えるな」
「俺が、怯える……だと?」
「このデュエルを始めた時から、俺はお前から僅かな怯えのようなものを感じていた。まるで、俺ではない何か恐ろしいものと戦っているような感じ……それは今も続いている。けど、お前は強いんだ。だから、そんなものに怯える必要はない」
それは、万丈目が抱えている未知への恐怖だった。遊矢はデュエルを通して、万丈目の心に潜む怯えの感情を感じ取っていたのだ。
「何を意味のわからないことを! 俺を強いと褒め称えることで負けた時の言い訳にするつもりか!?」
「いいや」
首を横に振る遊矢。
「本当に強いから、そう伝えたかっただけさ。そして、俺はまだ負けてない! お楽しみはこれからだ!!」
デッキの一番上に指をかける。同時、ドローフェイズに入ったことでデュエルディスクからカードが押し出された。
「俺のターン、ドロー!」
引いたカードを確認する。
「俺は手札から、《EMプラスタートル》を通常召喚!」
《EMプラスタートル》
効果モンスター
星4 水属性 水族
ATK100 DEF1800 攻撃表示
またしてもシルクハットを被った白い髭を生やしたコミカルな亀がフィールドに特殊召喚される。
手にはハンコのようなものを持っており、+というマークが描かれていた。
「そんな雑魚を呼んだ所で、俺のVWXYZの敵ではない!」
「確かに、このままじゃ勝ち目はないさ! けど、これで俺のフィールドにはレベル4のモンスターが二体並んだ!」
「レベル4のモンスターが二体だと――まさか!?」
少し遅れて万丈目も気付く。
今までなら、レベル4のモンスターが二体並んだ所で、雑魚の壁が増えただけだった。
だが、これからは、この条件をクリアすることで特殊召喚が可能になる。
シンクロと同じ、新システム――自分が強さへの疑念を抱くキッカケとなった新たなモンスターもその召喚法を使用していた。
「俺は、レベル4の《EMギッタンバッタ》と、《EMプラスタートル》でオーバーレイ!!」
シンクロとはまた違うエフェクト。二体のモンスターがオーバーレイユニットとなり、黒い光の中に取り込まれていく。
「――漆黒の闇より、愚鈍なる力に抗う反逆の牙! 今、降臨せよ! エクシーズ召喚!」
エクストラデッキからカードが一枚飛び出してくる。呼び出すのは、クリアウイングと同じ四天の龍の一体。
「現れろ、ランク4! 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!!」
《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》
効果モンスター エクシーズ
ランク4 闇属性 ドラゴン族
ATK2500 DEF2000 攻撃表示
漆黒の龍が勝利のために咆哮する。
そして、万丈目もまたそのモンスターを見て、思わず後ずさってしまった。優秀過ぎる頭脳が逆に結果を見据えてしまったのだ。
「ダーク・リベリオン……!」
「入学試験を見ていたなら効果は知ってるな? オーバーレイユニットを二つ取り除き、相手モンスター一体の攻撃力を半分にし、その数値分自身の攻撃力に加える! トリーズン・ディスチャージ!!」
オーバーレイユニットを全消費すると同時に、ダーク・リベリオンの宝玉が輝き、翼がスライドして稲妻が発生していく。
また、その稲妻によって感電したVWXYZの攻撃力が下がり、その数値がダーク・リベリオンへの攻撃力へと吸収されていった。
《VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン》 ATK3000→1500
《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》 ATK2500→4000
万丈目のライフは、《わが身を盾に》のコスト1500を支払ったことで、2500まで下がっている。
そして、ダーク・リベリオンは相手の攻撃力の半分を吸収する特性上、必ず自身の攻撃力である2500を相手のライフに与えることが出来るモンスターだ。万丈目には手札誘発も伏せカードもない。この攻撃を防ぐことは出来なかった。
「後一息、もう少しで俺が勝っていた……勝っていたのに!!」
勝ちを焦って、ギッタンバッタへ《エネミーコントローラー》を使用してしまったのが、ここに響いている。
あの場面は冷静にカードを温存して、遊矢の反撃に備えるべきだった。そうすれば、この敗けはなかっただろう。勝ちへの誘惑を振りきれず、遊矢を追い込もうと考えた万丈目のミスだ。
「デュエルは最後までわからない。カード達が俺に応えてくれた結果だ! いくぞ、バトル! 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》で《VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン》に攻撃! 反逆のライトニング・ディスオベイ!!」
《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》 ATK4000 VS《VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン》 ATK1500
ダーク・リベリオンの必殺の咢が直撃し、VWXYZがガラクタのように崩れ去っていく。
同時に、万丈目のライフから攻撃力の差の数値が引かれ、そのポイントをゼロにした。
「くっ……!」
万丈目 LP2500→0
デュエル終了と共に、万丈目が膝から崩れる。
後一押し、もう後少しで万丈目は勝ちに手が届きかけていた。そこからの敗北と言うことで、万丈目も言葉にならない悔しさを感じている。
遊矢が先に万丈目にこのデュエルの感想を伝えたのも、こうなるかもしれないと思ったからだったのかもしれない――と、隠れて見ていた明日香は思った。
また、一緒に居た十代も、「やっぱ、遊矢が勝ったか」と呟いて頷いていた。しかし、勝敗が付いた後でも十代は遊矢に声をかけようとはしていない。彼なりに、万丈目に気を使っているのだろう。
しかし、明日香の耳は、今度こそ本当にガードマンが歩いてくる足音が聞こえてきていた。
「ガードマンが来るわ! 本来、時間外の施設の利用はルール違反、見つかったらどうなるかわからないわよ!」
遊矢が「明日香、十代も、いつのまに!?」と驚く中、「それよりも早く逃げるわよ!」と、走り去っていく。
振り返ると、ゆっくりと万丈目が起き上がっていた。「……俺に構わず先に行け」と言われたので、遊矢も明日香と十代に続いてデュエルフィールドから去っていく。
ギリギリでガードマンから逃れた遊矢は、そのまま先に逃げていた二人と合流する。
結果的に、デュエルを盗み見していたということもあり、苦笑いする明日香と十代を見ながら、遊矢は「来てたなら声でもかければ良かったのに」と、あっけらかんとした言葉を口にしていた。
「いやぁ、まぁ、ちょっとガチっぽい雰囲気だったし」
「そもそも、私はたまたま通りがかっただけというか……」
「嘘つけよ! デュエルフィールドに入って行く遊矢を見てコソコソ後をつけてた癖に!」
「あなたこそ! ずっと後ろに隠れてニヤニヤデュエルを見てたじゃない!」
適当に話を振ったら、何故か喧嘩が始まってしまい、今度は遊矢が苦笑いで二人を仲裁する。
そんな中、十代が少し聞きづらそうに口を開いた。
「で、その、何だ、何で遊矢は万丈目とデュエルしたんだ?」
「別に、呼び出されたから応じただけさ。ただ、万丈目には何か悩みがあるように見えた。俺とのデュエルでそれを解決できたかはわからないけどね」
「……そっか」
本当は、俺とどっちが強かった? と、聞きたかった。
だが、ワンターンキルされた自分と、ギリギリまで遊矢を追い詰めた万丈目。どちらが強いかなど子供でも分かる。十代の中で悔しさが生まれ始めていた。
「実際、かなり追い詰められていたけど、万丈目君はやっぱり強かった?」
「強かったよ。ただ、十代もそうだけど、どうにもペンデュラムやシンクロ、エクシーズを特別強い召喚法だと勘違いしてる節があったかな」
「えっ、だって強いじゃん?」
「強いけど、別にこれらが既存の融合や儀式なんかの召喚法を上回っている訳ではないんだ。融合には融合の、儀式には儀式の強い部分がある。それこそ、融合や儀式なんて使わなくても強いデュエリストだっていっぱいいる。目新しいからシンクロやエクシーズが強そうに見えるだけで、実際は他の召喚法と力自体は大きく変わらないんだ」
事実、今回のデュエルでも、最後の最後まで遊矢は万丈目の融合モンスターに追い詰められていた。
シンクロやエクシーズが別次元の強さなら、遊矢は万丈目に苦戦などしなかっただろう。
「その証拠に、俺はデュエルアカデミアに来るまで、I2社のペガサス会長やKCの海馬社長にボコボコにされてる。結局、強いデュエリストには自分の強みを押し付けてくる実力があるんだよ」
「比べる相手が別次元な気もするけど、確かに目新しいから強いと思っている所はあったかもしれないわね」
「別に弱い訳でもないけどね。ようは使い方さ」
万丈目が使っていたVWXYZも、ユニオンモンスターの融合体であり、本来の融合とは少し扱いが違うが、それでもカテゴリー的には融合の部類に入るだろう。
また十代が使うE・HEROも融合のカテゴリーでもサポートカードが豊富だ。低レベルのモンスターが多いので、この世界のデュエリストからの人気はあまりないが、使い方次第で遊矢だって倒せるポテンシャルを持っている。
「……使い方か」
十代もその言葉を聞いて、何やら考えていた。
今日の朝、遊矢にワンターンキルをされたことや、万丈目が自分の想像を超えたデュエルをしたことで、無意識に自分は弱いんじゃないかと思ってしまった心に――その言葉は良く染みた。
もしかしたら、この言葉がなければ十代は負けたことで不調を起こしていたかもしれない。しかし、遊矢の何気ない言葉が、その不調を回避した。
「そうだよな。融合もエクシーズもシンクロも、それこそペンデュラムや儀式だって、デュエルモンスターズの一部分でしかないんだ。俺は俺なりに頑張って遊矢に勝てばいい。そういうことだよな!」
「そういうこと! まぁ、俺もそう簡単に負けるつもりはないけどね」
これでも一応、元の世界ではプロデュエリストなんで――と、いう言葉は、遊矢の胸の中に押しとどめられた。
しかし、今日のデュエルや、デュエルに向ける姿勢を見て、十代や万丈目が三年生になる頃には、もしかしたら負けてしまうこともあるかもしれない――十代と笑い合いながらも、遊矢はそんな予感を感じていた。
原作との変化点。
・遊矢がデュエルに勝利した。
デッキ調整が終わっていないせいで不調だったが、流石に一年の万丈目には負けない。
・明日香と十代がデュエルを覗いていた。
観客の一人もいないと勝った後の話が書きにくかったので、原作通りに登場願った。
・十代が遊矢や万丈目との実力に自信を失いかけた。
危うくエドに負ける前にカードが白く見えるようになる所だった。
デュエル内容変更点。
・万丈目がクリアウィングを破壊したターン、ダイレクトアタック時に《超カバーカーニバル》を発動させ、ヒッポとトークン一体を特殊召喚して凌いだのですが、トークンが任意で呼び出すのではなく、0か4体の二択だったため変更しました。
変更後は《イリュージョン・バルーン》でギッタンバッタを呼び出して凌いでいます。ヒッポにプラスタートルの効果を使うコジャレた演出もカットになりました。
・《ダメージ・ダイエット》の発動を、VWXYZ効果、クリアウィング、《わが身を盾に》のチェーン後にしていたのですが、発動タイミングを逃すことが判明したので修正しました。
修正後は、《わが身を盾に》にチェーンして発動させることにしています。
・《わが身を盾に》のライフ処理をミスしていたので変更しました。
・VWXYZの遊矢へのダイレクトアタック時に、ギッタンバッタを特殊召喚しましたが、その後のギッタンバッタへのVWXYZの表示形式効果はタイミングを逃すので修正しました。
修正後は、まず《マジック・プランター》で手札を増やしてから《エネミーコントローラー》で表示形式を変更しています。温存しろよというツッコミは勘弁してください。