榊遊矢のGX次元漂流記   作:おこむね

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#008 『それでも僕はやってない』

 万丈目と遊矢のデュエルから数日が過ぎ、両者共、表向きは何もなかったかのように過ごしていた。

 しかし、遊矢はともかく、万丈目は精神的にボロボロになっている。自身が予想していた未来が現実になりつつある恐怖が、万丈目を追い詰めていたのだ。それでも、残されたオベリスクブルートップというプライドが弱気な態度を取ることを許さない。

 だから、表向きは普通に見える。また、遊矢も下手に万丈目を気にかけなかった。下手な気遣いは万丈目のプライドを傷つけるだけだと思ったからだ。勝者が敗者にかける言葉は何もない。

 それ以上に、遊矢自身もあまり余裕がある訳ではなかった。毎日デュエルしてくれと誰かしらから声がかかる。基本的には、やはりペンデュラム、シンクロ、エクシーズ目的なようで、中には勝ち負け関係なく見たいだけという人もいた。

 新システムのテスターという立場である以上、仕方ない部分もあるが、それでもかなり多忙な日々を送っている。おまけに、スタンダードデュエルのためのデッキのバランス調整に四苦八苦しており、未だ完璧な調整が出来ていなかった。

 

「た、大変だ。遊矢!」

 

 そんなこんなで、今日もデッキ調整に追われていると、別室の十代がドタバタと部屋の中に入ってくる。

 

「十代、部屋に入るならノックしてくれ。後、今忙しいんだ。悪いけどデュエルならまた今度に……」

「違うんだって! 翔が攫われちまったんだ!」

「そうか、翔がさらわれたのか……って、翔が攫われた!?」

 

 そこでようやくデッキ調整を止めて、十代の方を見る遊矢。

 対する十代は足をバタバタさせて、「そうだよ!」と、あからさまに焦ってますという態度をしている。

 

「何で!?」

「知らねぇ! 風呂から上がったら翔が居なくて、いきなり携帯端末に『丸藤翔を預かっている。返して欲しくば女子寮まで来い』って……」

「何で、女子寮に?」

「わかんねーよ! とりあえず、助けに行くから手伝ってくれ!」

「わかった。女子寮へ行こう!」

 

 

 

◇◆

 

 

 

 と、勢いよくやってきたは良いものの、翔を捕まえていたのは明日香を始めとした女子オベリスクブルー組だった。

 明日香を始め、取り巻きのジュンコとももえが、翔を縄で捕まえて動きを封じている。

 話を聞いてみると、女子寮に覗きが出たようで、翔がその犯人とされているらしい。本人は「それでも僕はやってない!」と、言い張っているが、実際翔が女子寮の周辺をウロウロしていたのは事実のようだ。

 本人は明日香に手紙で呼び出されたと言っているが、当の明日香はそんなものを出していないと一蹴。

 遊矢は、この時点でどうにもきな臭いものを感じていた。まだここ数日の付き合いだが、丸藤翔に女子寮を覗くような度胸はない。おそらく、手紙というのも、誰かの細工で翔はハメられたのだろう。

 

「で、デュエルをすればいいんだっけ?」

「ええ、あなたか遊矢、どちらかがデュエルして私に勝ったら解放するわ。覗きの件も今回は目を瞑ってあげる」

 

 そして、多分、明日香はそれに気付いていながら、こちらにデュエルを申し込んでいる。

 こちらが勝った場合、無条件で翔を解放するなどと言った時点でバレバレだ。もし、翔が本当に覗きをしていたなら、こんなデュエルをするまでもなく翔は学校側に突き出されているだろう。

 

 とはいえ、この状況でこちらにデュエルを断る選択肢はなかった。

 

「どうする遊矢?」

「俺の方はデッキ調整が終わってない。正直、あまりやりたくないな」

「じゃあ、ここは俺が行くぜ」

 

 そのまま、明日香を筆頭とする女子組、十代を筆頭とする男子組に別れてボートに乗り、湖の真ん中まで移動する。

 見回りの先生に見つからない為だろうが、ここまでする必要があるのか遊矢は疑問を感じていた。デュエルがしたいなら、日を改めて昼間に普通に挑めばいい。それが遊矢の感性である。

 

「行くわよ!」

「おう、来い!」

「「デュエル!!」」

 

 しかし、そんな遊矢の感性を無視してデュエルは始まった。

 デュエルディスクのターンプレイヤーは明日香を差している。明日香の先攻だ。同時に、デッキからカードをドローしていた。

 

「私は手札から、《エトワール・サイバー》を攻撃表示で召喚!」

 

 《エトワール・サイバー》

 効果モンスター

 ☆4 地属性 戦士族

 ATK1200 DEF1600 攻撃表示

 

 赤い髪を靡かせた女性型モンスターが召喚される。かなりの身のこなしを持っているようで、動きを確認するかのように流麗な動きを見せていた。

 

「さらに、カードを二枚伏せてターンエンドよ」

 

 

 明日香 手札3枚 LP4000

 フィールド 《エトワール・サイバー》

 魔法・罠 リバース2枚

 

 VS

 

 十代 手札5枚 LP4000

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 

 

 まさに様子見というべき感じだ。伏せカードも二枚あって手堅い布陣とも言える。

 しかし、対する十代は、そんなこと知らんとばかりにデッキからカードをドローしていた。

 

「俺のターン! 俺は手札から《E・HEROスパークマン》を召喚!」

 

 《E・HEROスパークマン》

 通常モンスター

 ☆4 光属性 戦士族

 ATK1600 DEF1400 攻撃表示

 

 万丈目とのデュエルでも使っていたヒーロー。攻撃力が1600ということで、明日香の《エトワール・サイバー》を上回っている。

 

「バトル! スパークマンで、《エトワール・サイバー》を攻撃! スパークフラッシュ!!」

 

 《E・HEROスパークマン》 ATK1600 VS《エトワール・サイバー》 ATK1200

 

 スパークマンの稲妻が、《エトワール・サイバー》に迫っていく。

 二枚のリバースカードなど気にした様子もない十代の攻撃に、舐められていると感じたのか、明日香も若干憤ったようにリバースカードをオープンしていた。

 

「罠カード、《ドゥーブル・パッセ》! 相手モンスターが自分の表側攻撃表示モンスターに攻撃宣言した時に発動! 攻撃対象モンスターの攻撃力分のダメージを相手に与え、その相手モンスターの攻撃を自分へのダイレクトアタックにする!」

「なにっ!?」

 

 スパークマンの放った攻撃が霧散し、代わりに十代が《エトワール・サイバー》の蹴りを受ける。

 与えられるのは効果ダメージのはずだが、何故かエフェクトはダイレクトアタックのようになっていた。

 

「くっ!」

 

 十代 LP4000→2800

 

 十代は《エトワール・サイバー》の攻撃力1200分のダメージを受ける。しかし、これによりスパークマンは明日香にダイレクトアタックが出来るようになった。

 だが、その瞬間、明日香がもう一つのリバースカードをオープンしていく。

 

「さらに罠カード、《ホーリーライフバリアー》を発動! 手札を一枚捨てて、このターン私が受ける全てのダメージを0にする!」

 

 これによって、スパークマンのダイレクトアタックも無効になり、ダメージを受けたのは十代だけになった。

 罠カードを上手く使った華麗なタクティクスに、十代も「そう簡単には行かないか……」と笑みを浮かべている。

 

「やるな、明日香。俺は、リバースカードを一枚セットしてターンエンドだ」

 

 

 十代 手札4枚 LP2800

 フィールド スパークマン

 魔法・罠 リバース1枚

 

 VS

 

 明日香 手札2枚 LP4000

 フィールド 《エトワール・サイバー》

 魔法・罠 なし

 

 

「私のターン、ドロー!」

 

 明日香がデッキからカードをドローする。

 

「私は手札から《ブレード・スケーター》を召喚!」

 

 《ブレード・スケーター》

 通常モンスター

 ☆4 地属性 戦士族

 ATK1300 DEF1500 攻撃表示

 

 両腕に鎌のような武器を付けた女性スケーターが現れた。ここは氷の上ではないが、水上を滑るように動いている。

 

「さらに、魔法カード《死者蘇生》を発動! 私の墓地に存在する《サイバー・プリマ》を攻撃表示で特殊召喚するわ!」

 

 《サイバー・プリマ》

 効果モンスター

 ☆6 光属性 戦士族

 ATK2300 DEF1600 攻撃表示

 

 先程の罠カード、《ホーリーライフバリアー》のコストで墓地に送っていたのだろう。

 蘇生効果によって、銀の長い髪をしたバレリーナのような女性型モンスターがフィールドに復活する。

 

「バトルよ! 《サイバー・プリマ》でスパークマンに攻撃! 終幕のレヴェランス!!」

 

 《サイバー・プリマ》 ATK2300 VS《E・HERO スパークマン》 ATK1600

 

 明日香の《サイバー・プリマ》が踊るようにスパークマンの元に迫っていく。

 この攻撃が通れば、十代のフィールドにモンスターがいなくなり、ライフが2100まで削られる。

 さらに、明日香のフィールドにいる《エトワール・サイバー》と《ブレード・スケーター》の攻撃力を合わせれば、合計2500のダメージを受けることになり、十代のライフは全て削り切られてしまうだろう。

 

「罠カード、《ヒーロー・バリア》! 自分フィールド上に『E・HERO』が存在する時、相手モンスターの攻撃を一度だけ無効にする!」

「上手い!」

 

 思わず、遊矢も声を上げた。スパークマンの前に大きな盾が現れ、《サイバー・プリマ》の攻撃を防いでいく。

 これにより、スパークマンの破壊は防がれ、残る《エトワール・サイバー》と《ブレード・スケーター》は、スパークマンより攻撃力が低いので攻撃できない。

 

 だが、明日香のプレイングはさらにその先を行っていた。

 

「まさか、これで受けきったとでも!? 《ドゥーブル・パッセ》の効果! 前のターンに効果を受けた自分のモンスターは、このターンダイレクトアタックが出来る! 《エトワール・サイバー》で十代にダイレクトアタック!!」

 

 再び《エトワール・サイバー》が十代に向かって走っていく。十代にリバースカードはもうない。この攻撃は防げなかった。

 

「さらにこの瞬間、《エトワール・サイバー》の効果発動! このカードがダイレクトアタックする時、ダメージステップの間、攻撃力が500ポイントアップする!」

 

 《エトワール・サイバー》 ATK1200→1700 VS十代 LP2800

 

 先程と同様に再び蹴りを入れられる。

しかし、今回のダメージは戦闘ダメージで、おまけに攻撃力は先程よりも上がっていた。

 

「ぐぅっ、効くぅ……!」

 

 十代 LP2800→1100

 

「メインフェイズ2、魔法カード《融合》を発動! フィールドの《エトワール・サイバー》と《ブレード・スケーター》を融合して、《サイバー・ブレイダー》を融合召喚するわ!」

 

 《サイバー・ブレイダー》

 効果モンスター 融合

 ☆7 地属性 戦士族

 ATK2100 DEF800 攻撃表示

 

 現れたモンスターは、二体の女性型モンスターが合わさったことで、所々で各々の特徴が受け継がれていた。

赤かった長い髪は青に変化し、全体的に赤い衣装を身に纏っている。ただ、スケートはしっかり足につけており、《ブレード・スケーター》同様に水上を華麗に動いていた。

 

「これで、私はターンエンド」

 

 

 明日香 手札0枚 LP4000

 フィールド 《サイバー・プリマ》、《サイバー・ブレイダー》

 魔法・罠 なし

 

 VS

 

 十代 手札4枚 LP1100

 フィールド スパークマン

 魔法・罠 なし

 

 

 二体の上級モンスターが並び、盤石な布陣となっていく。

 遊矢の知る天上院明日香は、儀式モンスターを使用するデッキを使っていた。正確には遊矢の記憶ではなく、ユーリの記憶だが、統合されている以上は自身の記憶だ。

 隙の無いサイバー・エンジェルデッキを使う明日香も強かったが、目の前の明日香もそれに負けないくらいの強さを感じる。少なくとも、今日まで戦ってきた一年生の中ではトップクラスの実力を持っているだろう。

 対する十代を見ると、かなり不利な状況だが、それでも負けてたまるかと言わんばかりの笑みを浮かべていた。

 

「俺のターン、ドロー! 魔法カード《強欲な壺》を発動! デッキからカードを二枚ドローする!」

 

 最近、よく見るようになった緑の壺の祝福により、ノーコストでデッキから追加で二枚カードをドローし、十代が手札を確認する。

 

「フィールド魔法、《フュージョン・ゲート》発動! 手札のフェザーマンとバーストレディをゲームから除外し、《E・HERO フレイム・ウイングマン》を融合召喚する!」

 

 《E・HEROフレイム・ウイングマン》

 効果モンスター 融合

 ☆6 風属性 戦士族

 ATK2100 DEF1200 攻撃表示

 

 新たなフィールド魔法の効果で、《融合》のカード無しでモンスターを融合召喚していく。

 出てきたのはお得意のフレイム・ウイングマンで、十代を守るように仁王立ちしていた。

 

「この瞬間、《サイバー・ブレイダー》の効果! 相手フィールドのモンスターが二体の時、攻撃力が二倍になる! パ・ド・トロワ!」

 

 《サイバー・ブレイダー》 ATK2100→4200

 

 フィールドのモンスターの数によって効果が変わる。下手をすると、身動きが取れなくなる可能性もあった。

 

「迂闊にモンスターは増やせないって訳か。なら俺も、魔法カード《融合》を発動! フィールドのフレイム・ウイングマンとスパークマンを融合し、《E・HERO シャイニング・フレア・ウイングマン》を融合召喚!!」

 

 《E・HEROシャイニング・フレア・ウイングマン》

 効果モンスター 融合

 ☆8 光属性 戦士族

 ATK2500 DEF2100 攻撃表示

 

 前に万丈目にとどめを刺した十代の切り札が登場する。眩い光と共に現れたシャイニング・フレア・ウイングマンが、フレイム・ウイングマンが居たポジションでポーズを決めていた。

 

「これで、俺のフィールドのモンスターが一体になったことで、《サイバー・ブレイダー》の攻撃力は元に戻る。さらに、シャイニング・フレア・ウイングマンの効果! このカードの攻撃力は、墓地の『E・HERO』の数×300ポイントアップする!」

 

 墓地に『E・HERO』は二体。よって、攻撃力は600ポイントアップする。

 

 《E・HEROシャイニング・フレア・ウイングマン》 ATK2500→3100

 《サイバー・ブレイダー》 ATK4200→2100

 

 本来、融合するだけなら、わざわざ《融合》のカードを使わずとも、《フュージョン・ゲート》の効果を使用すればよかった。

 しかし、シャイニング・フレア・ウイングマンの効果を有効活用するために、敢えて十代は《融合》を使用することで、墓地にフレイム・ウイングマンとスパークマンを送って攻撃力を上昇させたのだろう。

 これにより、一気に状況は逆転する。攻撃力が3100となったシャイニング・フレア・ウイングマンに対して、今の明日香のフィールドのモンスターでは太刀打ちできない。

 

「バトル! シャイニング・フレア・ウイングマンで、《サイバー・プリマ》を攻撃! 究極の光を放て! シャイニング・シュート!!」

 

 《E・HEROシャイニング・フレア・ウイングマン》 ATK3100 VS《サイバー・プリマ》 ATK2300

 

 シャイニング・フレア・ウイングマンの圧倒的な攻撃力の前に、《サイバー・プリマ》もなすすべもなく破壊されていく。

 

「くぅぅっ!!」

 

 明日香 LP4000→3200

 

「まだだ! シャイニング・フレア・ウイングマンも、フレイム・ウイングマンと同じく、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!」

 

 シャイニング・フレア・ウイングマンが明日香の前へと移動する。

 破壊された《サイバー・プリマ》の攻撃力は2300。その数値が明日香のライフから削られていった。

 

「きゃあああああああああああああああっ!!」

 

 明日香 LP3200→900

 

 ノーダメージだった状況から一気に1000以下までライフが削られ、明日香と一緒に居たジュンコとももえまでもが悲鳴のような声を上げる。

 対して、まだ解放されていないが、こちらの船に乗っている翔は「いいぞ、アニキー!」と調子のいい声を上げていた。

 

「俺はこれで、ターンエンドだ」

 

 

 十代 手札2枚 LP1100

 フィールド シャイニング・フレア・ウイングマン

 魔法・罠 《フュージョン・ゲート》

 

 VS

 

 明日香 手札0枚 LP900

 フィールド 《サイバー・ブレイダー》

 魔法・罠 なし

 

 

「っ、私のターン。ドロー! 魔法カード《強欲な壺》! デッキからカードを2枚ドローする!」

 

 またしても壺の祝福が発動し、今度は明日香の手札を増やしていく。

 一気に大ダメージを受けた明日香だが、まだフィールドには《サイバー・ブレイダー》が残っていた。

 しかし、攻撃力2100では攻撃力3100のシャイニング・フレア・ウイングマンを倒すことは出来ない。圧倒的に不利な状況だが、それでも明日香は笑みを浮かべていた。

 

「どうやら、勝利の女神は私に味方してくれているようよ! リバースカード一枚セット、さらに装備カード《魔導師の力》を《サイバー・ブレイダー》に装備! これにより、《サイバー・ブレイダー》の攻撃力は、私の魔法・罠カードの数×500ポイント攻撃力がアップする!」

 

 魔導師と思わしき人物が現れ、《サイバー・ブレイダー》を応援していく。同時に、《サイバー・ブレイダー》の攻撃力が上昇した。

 

 《サイバー・ブレイダー》 ATK2100→3100

 

「バトルよ、《サイバー・ブレイダー》で《E・HERO シャイニング・フレア・ウイングマン》を攻撃! グリッサード・スラッシュ!!」

「攻撃力は同じ、相打ち狙いか!?」

「残念ね、《サイバー・ブレイダー》は相手のフィールドのモンスターの数が一体の時、戦闘では破壊されないの。パ・ド・ドゥ!」

「何だって!?」

 

 《サイバー・ブレイダー》 ATK3100 VS《E・HERO シャイニング・フレア・ウイングマン》 ATK3100

 

 互いの攻撃がぶつかりあっていく。

 攻撃力は同じ――だが、戦闘破壊耐性がある《サイバー・ブレイダー》が一方的にシャイニング・フレア・ウイングマンを破壊していった。

 

「くっ、シャイニング・フレア・ウイングマン!」

「私はこれでターンエンド。次でとどめよ」

 

 

 明日香 手札0枚 LP900

 フィールド 《サイバー・ブレイダー》

 魔法・罠 《魔導師の力》、リバース1枚

 

 VS

 

 十代 手札2枚 LP1100

 フィールド なし

 魔法・罠 《フュージョン・ゲート》

 

 

「俺のターン!」

 

 ターンが変わり、十代がデッキからカードをドローする。そのカードを見て、十代の表情に笑みが浮かんだ。

 

「俺は魔法カード、《死者蘇生》を発動! 墓地のスパークマンを特殊召喚する!」

 

 《E・HEROスパークマン》

 通常モンスター

 ☆4 光属性 戦士族

 ATK1600 DEF1400 攻撃表示

 

 墓地より蘇ったスパークマンが、再び稲妻を纏ってポーズを決める。

 

「さらに、《フュージョン・ゲート》の効果! フィールドのスパークマンと手札のクレイマンをゲームから除外し、《E・HERO サンダー・ジャイアント》を融合召喚するぜ!」

 

 スパークマンとクレイマンがゲートに吸収され、新たなモンスターへと姿を変えた。

 

 《E・HERO サンダー・ジャイアント》

 効果モンスター 融合

 ☆6 光属性 戦士族

 ATK2400 DEF1500 攻撃表示

 

 その名の通り、雷の力を持った巨人が、十代のフィールドに降り立つ。このモンスターこそ、この勝負の決着をつけるモンスターだった。

 

「サンダー・ジャイアントの効果発動! 手札を一枚捨て、フィールド上に表側表示で存在する元々の攻撃力がこのカードより低いモンスター一体を破壊する!」

「何ですって!?」

「《サイバー・ブレイダー》の元々の攻撃力は2100、よって対象となる! いけぇ、ヴェイパー・スパーク!!」

 

 サンダー・ジャイアントから発せられる雷によって、《サイバー・ブレイダー》が消滅していく。

 また、明日香の《サイバー・ブレイダー》が破壊されたことで、フィールドががら空きになった。

 しかし、明日香のフィールドには一枚のリバースカードが残されている。本来であれば躊躇してもおかしくない場面――だが、それでも十代は躊躇しなかった。

 

「バトルだ! サンダー・ジャイアントで明日香にダイレクトアタック! ボルテック・サンダー!!」

 

 《E・HERO サンダー・ジャイアント》 ATK2400 VS明日香 LP900

 

 サンダー・ジャイアントが雷を明日香に叩きつけていく。明日香も、同時にリバースカードを開いた。

 

「リバースカードオープン、永続罠《銀幕の鏡壁》! このカードが魔法・罠ゾーンに存在する限り、相手攻撃モンスターの攻撃力を半分にする!」

 

《E・HERO サンダー・ジャイアント》 ATK2400→1200

 

 しかし、それでも明日香の残りライフが900である以上、攻撃を受けきることは出来ない。

 もし、十代が《サイバー・ブレイダー》を効果破壊せず、真正面からバトルを仕掛けて来ていれば、《銀幕の鏡壁》の効果で返り討ちに出来ただろう。だが、現在、明日香のフィールドのモンスターはなく、攻撃力を半分にしても無意味だった。

 明日香もそれはわかっていたのだろう。それでもデュエリストとして、最後の最後まで戦う姿勢を崩さなかったのだ。

 

 《E・HERO サンダー・ジャイアント》 ATK1200 VS明日香 LP900

 

 攻撃力が半分にされたサンダー・ジャイアントの一撃だが、それでも十分に明日香のライフを削り切っていく。

 

「……ここまでね」

 

 明日香 LP900→0

 

 ギリギリだったが、何とか十代が勝利した。勝敗がついたことで、ソリッドビジョンも解除されていく。

 

「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ」

 

 いつもの決め台詞を決めながら、船を岸まで戻す。これで翔は完全解放、覗きの問題も解決となるはずだ。

 

「約束通り、翔は返して貰うぜ?」

「ええ、構わないわ。でも、今度は負けないわよ」

 

 デュエルを通して、十代と明日香がわかりあったような顔をしている。

 とりあえず、翔が無事で良かったとも思ったが、結局翔をハメた人物は誰だったのだろうか――と、遊矢は思考を巡らせる。しかし、その途中で明日香に声をかけられた。

 

「榊遊矢、次はあなたともデュエルをさせて貰いたいわ」

「俺の方は、求められればいつでもデュエルするよ。一応、それが仕事でもあるからね」

「あら、じゃあ今からデュエルして欲しいと言えば受けて貰えるのかしら?」

「えっ、今から?」

 

 流石に夜も遅い。それにまだデッキの調整が不完全だった。しかし、いつでもデュエルすると言った以上、前言を撤回するのは格好悪い気もする。

 そんな遊矢の内心を見抜いたように、明日香は「嘘よ」と言葉を続けた。

 

「今日は流石にもう遅いからこれで終わりよ。いつかまた機会があれば、デュエルしましょう」

「あ、ああ。いつでも声をかけてくれ」

 

 助かった――と、思いながら、十代や翔と一緒にオシリスレッドの寮へと戻っていく。

 しかし、流石の遊矢も気付かなかった。今回の一件が、自分を負かした落第生を退学させようとしたクロノス教諭の仕業だとは。

 デュエルの実力ではなく、純粋にクラスで成績を決めているクロノスにとって、遊城十代は邪魔な存在なのだ。

 同時に、新システムのテスターである榊遊矢が、オシリスレッドに配属され、ドロップアウトボーイである十代と仲良くしていることに、とても頭を悩ませているのだが、当の本人は知らずにまたそのドロップアウトボーイと仲を深めていた。

 

 

 

 




 原作との変化点。

・#3『エトワール・サイバー』より、十代と明日香がデュエルした。
 遊矢とデュエルさせるか死ぬほど悩んだが、あまり十代の出番を奪いたくないので原作通りに。デュエルの内容はまだ控えめ変更レベル。

・明日香の使用カードについて。
 ゲームで使用されたカードも使っています。っていうか、アニメで使用したカードオンリーではデュエルが書けないので、ほぼ全員が原作外のカードも使用する予定。勿論、基本的には使用したカードを優先している。



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