榊遊矢のGX次元漂流記   作:おこむね

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#009 『№.16色の支配者ショック・ルーラー』

「ずるいっすー、卑怯っすー、贔屓っすー!」

 

 と、遊矢を見ながら叫んでいるのは、前回覗き野郎のレッテルを貼り付けられそうになった翔だった。頭には鉢巻を付けて勉強を頑張っている。

 明日は月に一度のテストの日であり、成績次第でオシリスレッドからラーイエローに進級することも出来るのだ。

 しかし、新システムのテスターとしてデュエルアカデミアに来ている遊矢は、普通の生徒ではない。新システムの普及こそが仕事であり、試験などは一切免除されていた。

 

「ずるいって、言われてもなぁ」

「普段は一緒に授業受けてるじゃないっすかー!」

「授業時間は生徒がいなくて仕事が出来ないからね。暇つぶしに授業に参加してるんだよ」

 

 逆にペンデュラムやシンクロ、エクシーズの授業になると、生徒ではなく講師役になることもある。そういう意味では半分は教員側みたいなものだった。

 

「別にいいじゃん。遊矢は試験が免除されるくらい強いデュエリストってことだろ」

「実際、教員として雇われていても不思議じゃないんだな」

 

 ずるい、贔屓と叫ぶ翔に対して、同室の十代と隼人は、遊矢の優遇措置を気にした様子はない。

 むしろ、何故教師ではなく、生徒としてデュエルアカデミアに来ているのか不思議に思っているくらいだった。

 

「なぁ、遊矢。今、何戦だっけ?」

「十代とのデュエルだけなら21戦。学校での全てのデュエルを含めれば86戦だな」

「で、全勝だろ?」

「全勝って言っても、相手はまだ一年生だけだ。二年以上が一年生とデュエルするのはある程度の期間が明けてからじゃないと駄目ってルールがあるらしいし、二年以上の実力がわからないから大きな顔は出来ないよ」

「遊矢なら例外にしても良いと思うけどな」

「仮に例外にしても挑む奴はいないと思うんだな」

「何でだよ、隼人?」

「怖いもの知らずの一年と違って、上級生はこのデュエルアカデミアを一年以上過ごしてるんだぞ。つまり、それだけ相手への警戒心も強い。早々喧嘩を売るような真似はしないんだな」

「つまり、ビビってるってことか」

 

 十代の軽口はともかく、中には本気で遊矢の実力を見極めようとしている奴もいるので油断は出来ない。

 特に、翔の兄であり、入学試験で遊矢のデュエルを見られなかったとある人物は、その傾向が強かった。

 

「今は遊矢君の実力よりテストっすよー! 今夜は徹夜しないとー!」

「徹夜はいいけど、遅刻しないようにな」

「遅刻なんかしないっすよ! あーあ、本当に羨ましい。僕も遊矢君みたいに試験免除にならないかなぁ」

「試験は免除だけど、何もしない訳じゃないんだぞ。明日、遂にシンクロとエクシーズのパックが先行販売されるから、朝からその手伝いをすることになってるし」

「そっか、遂に明日か!」

 

 忘れてたとばかりに、テンションを上げる十代。

 遊矢が先行販売と言った通り、デュエルアカデミアが一番最初にシンクロとエクシーズのパックが販売される。一般の販売は約三か月後なので、かなり先行アドバンテージが取れると言っていい。

 

「ただ、購入制限があるのを忘れるなよ。シンクロ、エクシーズなんかのパックを合わせて一人5パックまで。一応、シンクロ、エクシーズ以外にも、既存の融合や儀式なんかの強化パックも出るから実技テストで高得点を狙うならそっちもおすすめだな。こっちも購入制限ありだから中々強いカードが入ってるって話だし」

 

 この購入制限により、一人の金持ちがカードを独占するという事態はなくなる。一人でも多くの生徒に新システムを体験して貰うための先行販売なので、少しでも買えない人を減らすための工夫という訳だ。

 十代は今からどのパックを買おうか頭を悩ませ、翔は起死回生のカードが手に入るように祈っている。隼人はどうせ自分のデッキに合ったカードはないと思いつつも、やはり新システムのカードには多少の興味があるようだった。

 

「じゃあ、俺も明日は朝早いから部屋に戻るよ。勉強頑張れよ」

 

 あまり長居しても邪魔になるので、遊矢も自室へと戻って行った。

 十代と隼人が手を振って見送る中、翔だけが相変わらず恨めしそうな瞳で遊矢を見つめている。苦笑いしつつ、足早に遊矢は自室へと避難していった。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 次の日。KCのガードに守られながら、新パックのカードがデュエルアカデミアに上陸した。

 万が一にも盗まれないように警備は厳重になっており、また抜け駆けしたり、買い占めたりは絶対に出来なくなっている。とある教員が新パックを買い占めて一人の生徒を贔屓しようとしていたようだが、あまりの厳しさに計画を断念したくらいだった。

 

 そんな中、遊矢は朝から新パックのカードを並べるのを手伝っている。シンクロ、エクシーズを目玉にしつつも、融合や儀式等、既存の強化パックも目立つように置いていく。

 ある程度の配置を決めると、後は購買部の職員さんにお任せした。遊矢に出来ることと言えば、後はズルをして制限以上のカードを買おうとする人間をチェックすることくらいだ。

 

 しかし、新パックの用意に想像していた以上の時間を使ってしまっていたようで、気がつけば昼休憩のチャイムが鳴っていた。

 午前の筆記試験が終了し、ここから昼食件昼休みだ。実技試験は14時からなので、この時間に生徒達は新パックを買ってデッキの調整に入る。

 

 ドドドドド――と、地響きのような足音が聞こえてきた。

 

 おそらく、スタートダッシュを決めた生徒達が廊下を走っているのだろう。本来、廊下を走るのは危ないので注意する場面だが、デュエリストに新カードという餌を前にして走るなと言うのは無理がある。

 一番に来た生徒が、「シンクロ、エクシーズ、2、3パック!」と声を上げると、続けて「こっちはエクシーズ5パック」、「シンクロ4、エクシーズ1」と引っ切り無しに注文が入って行く。ただ遊矢が思っていたようなズルをする生徒はいないようで、カードを買うと生徒達は一目散に購買部から離れて自分のデッキの調整に向かっていた。

 

 あまりの人ごみに遊矢も購買の手伝いをしていると、万丈目らしき生徒がカードを買っていく姿が目に入る。何を買ったかまではわからないが、かなり深刻そうな顔をしていた。

 少し心配になるがすぐに新たな声がかかる。どうやら明日香も新カードを買いに来たようで、「エクシーズ2、シンクロ2、儀式1」で、お願いと注文が入った。「当たりが入ってるのを祈ってるから」と言われたので、遊矢の直感で良さそうなパックをチョイスしているが当たるかどうかは保証していない。

 また、何だかんだ、隼人も購買に顔を出していた。そのまま、ある程度生徒を捌ききると、十代や翔がまだ来ていないということに気が付く。

 まだパックは残っているものの、もうそこまで多くはない。下手をすると、買えない可能性もあった。

 続けてカードを売っていると、ようやく十代と翔がやってくる。二人が来たのは、遊矢が心配し出してから数分後のことだった。後ろには入試試験でエラッタ前の《破壊輪》を使っていた三沢も一緒にいるようで「まだカードはあるかい?」と声をかけられる。

 

「今、残ってるのは、エクシーズが1、シンクロが2、融合が4、儀式が3だな」

 

 合計10パック――だが、ここには十代と翔、三沢の三人がいる。平等に買うなら、一人3パックと言った所だろう。

 

「どうする?」

「僕達が寝過ごしたせいで三沢君も出遅れたんだし、三沢君から選んでよ」

「いや、俺はいいよ。二人で買うと良い。新カードには興味あるが、一朝一夕で使いこなせるものじゃないだろうし、最初からデッキを弄る気はなかったんだ」

 

 どうやら、昨日の徹夜がたたって、十代と翔は筆記試験で居眠りしてしまったらしい。その二人を起こすために三沢はカードを買う機会を逸したようだ。

 とはいえ、被害者の三沢がカードを買わないと言っても、なら良かった――とはならないようで、十代と翔もカードに手を伸ばすのを気まずそうにしている。

 

「お待ちよ」

 

 そんな中、購買部の顔ともいうべきトメさんが十代達に声をかけた。

 

「あ、今朝のおばちゃん!」

「おばちゃんじゃないわよ、トメって呼んで! ト・メ」

「トメさんは購買部のおばちゃんだったのか」

「十代、トメさんと知り合いだったのか?」

「まぁ、ちょっと訳アリでな」

 

 聞けば、今朝トメさんが購買部の荷物を運んでいるのを、遅刻した十代が手伝ってくれたらしい。

 

「それより、こっちにいらっしゃいよ。良いものあるのよ、お客さん」

 

 と、トメさんの案内で、購買部の奥へ行くとそこには新パックの取り置きがあった。

 エクシーズが5パックだけだが、これで購買の残りと合わせて15パックになる。

 

「トメさん、本当は買い置き禁止ですよ」

「いいじゃないの遊矢ちゃん。硬いことは言いっこなしよ! これは荷車を押してくれたお礼さ。それに、オシリスレッドのアンタじゃ良いカードの一つもないとね」

 

 結局、カードの分配は、十代がエクシーズ2、シンクロ1、融合2。翔がエクシーズ3、融合2。三沢がエクシーズ1、シンクロ1、儀式3となった。

 融合使いの十代や翔に気を使って、三沢が儀式を選んでいる。これから三人はデッキの調整をするということで、遊矢も一緒について行くことにした。カード販売の仕事は終わったので、ここからは実技試験を見学するつもりでいる。

 今回買ったパックで当たったシンクロやエクシーズを早速使ってくるデュエリストもいるだろうし、変わった環境を自分の目で見たくなったのだ。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 三沢とは購買部で別れ、遊矢は当たったカードを見ながら、十代と翔のデッキ調整を手伝っていた。

 二人とも大当たりというようなカードこそなかったが、そこそこ使えるカードは引けたようで、これで実技試験を乗り切ると気合が入っている。

 しかし、いざ試験が始まると、何故か十代の相手がオベリスクブルーの万丈目になっていた。本来であれば、オシリスレッドはオシリスレッド同士での対戦となるが、クロノス教諭曰く、十代の実力だとオシリスレッドの生徒では相手にならないので特別措置として万丈目に白羽の矢が立ったとのことだ。

 

 だが、当の万丈目の様子が何かおかしかった。

 

 先程の深刻そうな顔を打って変わって、まるで夢遊病患者のようにフラフラしており、視点が目の前の十代を捉えていない。

 体調でも悪いのかと思ったが、遊矢が万丈目に声をかける前に十代がデュエルを快諾したことによって、二人のデュエルが開始されてしまった。

 

「いくぞ、万丈目! 今度は本気デッキで来い!」

「……さんだ」

「デュエル!!」

「……デュエル」

 

 デュエルディスクが表示したターンプレイヤーは十代。十代の先攻だ。

 デッキからカードをドローすると、慎重に手札を確認していく。前に手加減されたデッキを使った万丈目相手に勝った十代だが、本気デッキの万丈目はあの遊矢を後一息という所まで追いつめた強敵だ。迂闊に攻めれば瞬殺されると感じているのだろう。

 

「俺はモンスターを一体セット、リバースカードを一枚セットしてターンエンドだ」

 

 

 十代 手札4枚 LP4000

 フィールド セット1枚

 魔法・罠 リバース1枚

 

 VS

 

 万丈目 手札5枚 LP4000

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 

 

 十代が慎重にターンをプレイし終えると、ターンが万丈目に移る。しかし、万丈目はボーッと空中を見ており、今にも倒れそうだった。

 流石の十代も、それを見て心配そうな顔をしている。

 

「おい、大丈夫か万丈目?」

「……万丈目、さんだ。ドロー」

 

 ゆっくりとデッキからカードを引き、手札を確認する万丈目。

 

「……俺はフィールド魔法、《ユニオン格納庫》を発動。……発動時に、デッキから光属性・機械族のユニオンモンスターを手札に加えることができる。《Y-ドラゴン・ヘッド》を手札に加え、そのまま通常召喚……」

 

 《Y-ドラゴン・ヘッド》

 効果モンスター ユニオン

 ☆4 光属性 機械族

 ATK1500 DEF1600 攻撃表示

 

 前に遊矢とのデュエルでも出てきたドラゴン型のユニオンモンスター。しかし、展開方法が前回と違うので、十代も気を取り直したように警戒している。

 

「……《ユニオン格納庫》の効果。一ターンに一度、自分フィールドに機械族・光属性のユニオンモンスターが召喚、又は特殊召喚された場合、そのカードに装備可能でカード名が異なる機械族・光属性のユニオンモンスター一体をデッキから選び、そのモンスターに装備する。……ただし、この効果で装備したユニオンモンスターは、このターン特殊召喚出来ない」

 

 そう言って、万丈目はデッキから《Z-メタル・キャタピラー》を選択して《Y-ドラゴン・ヘッド》に装備した。

 

 《Y-ドラゴン・ヘッド》 ATK1500→2100 DEF1600→2200

 

 十代は見たことがなかったが、その姿はYとZを除外して出て来る融合モンスターそのものだった。乗っただけと言ってはいけない。

 

「……さらに手札から、永続魔法《X・Y・Zコンバイン》を発動。……そして場のYとZを除外して変形合体し、《YZ-キャタピラー・ドラゴン》を特殊召喚……」

 

 再び、YとZが分離して一つになっていく。正確には上下に分離して、またくっついただけなのだが、乗っただけとは言ってはいけない。

 

 《YZ-キャタピラー・ドラゴン》

 融合 ☆6 光属性 機械族

 ATK2100 DEF2200 攻撃表示

 

「……永続魔法、《X・Y・Zコンバイン》の効果。……自分の場の機械族・光属性のユニオンモンスターが除外された場合、デッキから《X-ヘッド・キャノン》、《Y-ドラゴン・ヘッド》、《Z-メタル・キャタピラー》のどれかを特殊召喚できる……」

 

 当然、場に出すのは最後のパーツである《X-ヘッド・キャノン》だった。

 

 《X―ヘッド・キャノン》

 通常モンスター

 ☆4 光属性 機械族

 ATK1800 DEF1500 攻撃表示

 

「……《X・Y・Zコンバイン》の第二の効果。……自分フィールドの融合モンスター一体をEXデッキに戻し、除外されている自分のモンスターの中から《X-ヘッド・キャノン》、《Y-ドラゴン・ヘッド》、《Z-メタル・キャタピラー》を二枚まで選んで特殊召喚できる……」

 

 YZが分離して、再びYとZの二体に戻っていく。Zに課せられたこのターン特殊召喚出来ないデメリットも、除外を経由することで無効にする。離れただけとは言ってはいけない。

 

 《Y-ドラゴン・ヘッド》

 効果モンスター ユニオン

 ☆4 光属性 機械族

 ATK1500 DEF1600 攻撃表示

 

 《Z―メタル・キャタピラー》

 効果モンスター ユニオン

 ☆4 光属性 機械族

 ATK1500 DEF1300 攻撃表示

 

 これで、万丈目のフィールドにXYZの三体が揃う。しかし、遊矢はそれ以上に違和感のようなものを感じていた。

 万丈目はまるで、何かに操られているかのようにデュエルしている。デュエルから、前に戦った時のような強い意思をまるで感じられないのだ。

 

 だが、そんな遊矢が疑問を抱く中、万丈目の態度が急変する。

 

「……揃った。フ、ハハ、ハハハ、ハハハハハ、遂に揃ったぞ!!」

「揃ったって、まだXYZが揃っただけだろ?」

「クハ、馬鹿にはわからん。これで貴様はおしまいだ」

 

 先程までの状態とは打って変わって、目が血走ったような笑みを浮かべていた。

 やはり、何か様子がおかしい。遊矢は、まるでズァークのような負の力を万丈目から感じ取っていた。自身が何度もその力に飲まれたことがあるからこそ、万丈目を動かしているのが万丈目の意思ではないことを直感的に理解したのだ。

 

 遊矢が「お前は誰だ?」と、声をかけようとする。しかし、それよりも先に、万丈目はデュエルを再開した。

 

「俺は! レベル4のモンスター三体で、オーバーレイ!!」

「オーバーレイだって!?」

「三体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚!!」

 

 万丈目がEXデッキからカードを引き抜く。同時に、遊矢は負の力がそのカードから発せられていることを理解した。

 

「現れよ、ランク4! 《№16色の支配者ショック・ルーラー》!!」

 

 《№16色の支配者ショック・ルーラー》

 効果モンスター エクシーズ

 ランク4 光属性 天使族

 ATK2300 DEF1600 攻撃表示

 

 神々しい光と共に、機械のようなモンスターが現れる。

 №16という名前の通り、体には16という数字が色濃く刻まれており、先端には禍々しい顔をしたお面のようなものが付いていた。

 

「ナンバーズだって!? そんなカード、今回発売されたパックには入っていないはず!?」

 

 出現したおかげでハッキリとわかる。やはり負の力はこのモンスターから発せられていた。

 だが、ナンバーズなんていうカードは聞いたことがない。少なくとも、遊矢の知らないカードだった。一瞬、ペガサスがサプライズで作ったカードかとも思ったが、あのペガサスがこんな禍々しいカードを作るとは思えない。

 見れば、万丈目の手の甲にも16という文字が刻まれており、それがあのモンスターとの繋がりを強固にしているようだった。

 

「十代! 多分、万丈目はそのカードに操られている!」

「カードに操られているだって!?」

「ああ。お前も感じないか? 何というか、不気味な力を」

 

 そう言われると、目の前のエクシーズモンスターからは何やら凄く嫌な感じがする。この嫌な感じこそ、遊矢の言う万丈目を操っている力だと十代は本能で理解した。

 

「つまり、こいつを倒せばいいって訳だ」

「貴様がこいつを倒すだと? 寝言は寝て言え」

「さっきまで元気がなかったのが嘘のような態度だな。そのナンバーズとかいうカードのせいか?」

「貴様らにはこのカードの力がわからないのだ。今、俺が教えてやる――バトルだ!!」

 

 バトルフェイズに入り、ショック・ルーラーの砲門が十代のセットモンスターに向けられる。

 

「いけ、ショック・ルーラー! セットモンスターを攻撃!」

 

 《№16色の支配者ショック・ルーラー》 ATK2300 VS《E・HEROクレイマン》 DEF2000

 

 ショック・ルーラーの砲塔がセットモンスターに向けられていく。

 十代のセットモンスターは守備力2000のクレイマンだったが、攻撃力2300のショック・ルーラーの前に撃沈していった。

 しかし、守備表示だったこともあり、十代のライフは削られていない。まだまだこれからと、本人も気合を入れていた。

 

「メインフェイズ2に移行し、ショック・ルーラーの効果発動! オーバーレイユニットを一つ使い、カードの種類を宣言する。相手ターン終了時まで、お互いのプレイヤーは宣言されたカードを発動できない! 俺は魔法カードを選択! これで、お前は次のお前のエンドフェイズまで魔法カードが使えない!!」

「何だって!?」

 

 三つあるオーバーレイユニットを一つ消費し、ショック・ルーラーが魔法カードを封じていく。

 モンスターを封じれば、間接的に融合モンスターも出せないので、その方が有利に思えるが、ショック・ルーラーには破壊耐性がない。

 モンスターを破壊する魔法カードの存在を警戒しつつ、融合を封じるという意味で万丈目は魔法カードをチョイスしていた。

 実際、十代のHEROデッキは、その殆どが魔法カードによる融合召喚が主だ。魔法を封じられたということは、融合を封じられたも同義だった。

 

「俺はこれでターンエンド。さぁ、お前のターンだ。融合無しで、この状況をどうにかしてみな」

 

 

 万丈目 手札4枚 LP4000

 フィールド ショック・ルーラー

 魔法・罠 《ユニオン格納庫》、《X・Y・Zコンバイン》

 

 VS

 

 十代 手札4枚 LP4000

 フィールド なし

 魔法・罠 リバース1枚

 

 

 魔法カードを封じられたのも大きいが、万丈目はあれだけ大きく展開していながら手札を二枚しか消費していない。

 次のターンで、当然大型のモンスターを呼んで追加攻撃してくるだろう。何とかこの状況を覆さなければ十代に勝ち目はなかった。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 十代がデッキからカードをドローする。引いたカードは《融合》だった。本来であれば、最高の引きと言えるが、今の場面だと使い道のないカードでしかない。

 

「俺は、モンスターをセットしてターンエンドだ」

 

 

 十代 手札4枚 LP4000

 フィールド セット1枚

 魔法・罠 リバース1枚

 

 VS

 

 万丈目 手札4枚 LP4000

 フィールド ショック・ルーラー

 魔法・罠 《ユニオン格納庫》、《X・Y・Zコンバイン》

 

 

 ショック・ルーラーを倒すと宣言したものの、魔法を封じられて防戦一方になっている十代。

 しかし、それも仕方のないことだった。仮に、遊矢があの場に立っていたとしても、魔法カードを封じられればペンデュラム効果も封じられる。そう簡単に逆転は出来ない。

 

「俺のターンだ!」

 

 逆にナンバーズに操られている万丈目は、意気揚々とデッキからカードをドローする。

 慈悲をかけるつもりは欠片もないようで、このまま一気に勝負をつけるつもりらしい。

 

「俺は《V―タイガー・ジェット》を攻撃表示で召喚!」

 

 《V―タイガー・ジェット》

 通常モンスター

 ☆4 光属性 機械族

 ATK1600 DEF1800 攻撃表示

 

 前回のデュエルでも出てきた虎型のジェットマシンが登場する。やはり、追加でモンスターを増やしてきた。

 だが、運が良いのは、Vは通常モンスターなので、《ユニオン格納庫》の効果に対応していない所だ。もし、対応していたら、そこからWが出てくる所だった。

 

「さらに、手札から永続魔法、《前線基地》を発動! 一ターンに一度、自分のメインフェイズに、手札からレベル4以下のユニオンモンスター1体を特殊召喚できる! 俺は、《W―ウィング・カタパルト》を手札から特殊召喚!」

 

 しかし、万丈目はそんな十代の内心を突くかのように、またしてもモンスターを展開してくる。

 

 《W―ウィング・カタパルト》

 効果モンスター ユニオン

 ☆4 光属性 機械族

 ATK1300 DEF1500 攻撃表示

 

 当然のようにVとWが並ぶ。

 こうなれば、合体するのは小学生でもわかった。

 

「さらに! 俺は、《V―タイガー・ジェット》と《W―ウィング・カタパルト》をゲームから除外し、変形融合! 出でよ! 《VW―タイガー・カタパルト》!!」

 

 《VW―タイガー・カタパルト》

 効果モンスター 融合

 ☆6 光属性 機械族

 ATK2000 DEF2100 攻撃表示

 

 乗っただけとは言ってはいけない。

 

「俺は手札を一枚捨て、《VW―タイガー・カタパルト》の効果発動! 相手フィールドのモンスター1体の表示形式を変更する!」

 

 十代のフィールドにセットされていたスパークマンが攻撃表示に変更させられていく。

 

 《E・HEROスパークマン》

 通常モンスター

 ☆4 光属性 戦士族

 ATK1600 DEF1400 攻撃表示

 

「くっ、やっぱ表示形式を変更してきたか!」

「バトルだ! ショック・ルーラーでスパークマンを攻撃!!」

 

 《№16色の支配者ショック・ルーラー》 ATK2300 VS《E・HEROスパークマン》 ATK1600

 

 再びショック・ルーラーの砲塔が向けられ、今度はスパークマンを狙っていく。

 しかし、今回十代は万丈目がモンスターの表示形式を変更してくるであろうことを読んでいた。

 

「罠カード発動! 《ヒーロー・バリア》! 自分フィールド上に『E・HERO』が存在する時、相手モンスターの攻撃を一度だけ無効にする!」

 

 大きな盾が、攻撃からスパークマンを守っていく。これでショック・ルーラーの攻撃は無効になった。

 

「小賢しい! ならば、《VW―タイガー・カタパルト》でスパークマンを攻撃! いけ、VW―タイガー・ミサイル!!」

 

 《VW―タイガー・カタパルト》 ATK2000 VS《E・HERO スパークマン》 ATK1600

 

 流石にこの攻撃は防げないようで、スパークマンがミサイルの嵐の前に破壊されていく。

 

「ぐわあああああぁぁぁっ!!」

 

 十代 LP4000→3600

 

「メインフェイズ2に再びショック・ルーラーの効果発動! オーバーレイユニットを一つ使い、魔法カードを選択して次の貴様のターン終了時まで発動を無効にする!!」

 

 二つ目のオーバーレイユニットを消費し、再び十代が魔法カードの使用を封じられてしまった。

 今はまだ凌げているが、このまま万丈目がフィールドの状況を整えていくとそれも厳しくなってくる。

 

「これで、俺はターンエンドだ」

 

 

 万丈目 手札1枚 LP4000

 フィールド ショック・ルーラー、VW

 魔法・罠 《ユニオン格納庫》、《X・Y・Zコンバイン》、《前線基地》

 

 VS

 

 十代 手札4枚 LP3600

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 

 

 ターンが変わり、十代がデッキに指を添える。しかし、依然として状況は絶望的だった。

 元々、遊矢とのデュエルを見て、万丈目が強いことはわかっていたが、それに加えて魔法カードを封じるエクシーズモンスターがいることで十代は自由に動くことが出来なくなっている。

 せめて、魔法が使えれば――そんなことを考えつつ、十代はデッキからカードをドローした。弱気になっても、状況が逆転する訳ではない。ならば、少しでも前を向くしかなかった。

 一種の開き直りとも言えるが、デュエリストがカードを引かなくなるのは負けを認めた時だ。自分はまだ負けてない――その負けん気が十代の体を動かしていた。

 

 

 




 原作との変化点。

・遊矢はテスターなので試験など免除。
 半分、教える側なのでやる意味がない。普段は暇つぶしに授業に参加している。

・シンクロとエクシーズが販売に漕ぎ付けた。
 これでGXキャラにもシンクロ、エクシーズが使える。ついでに融合や儀式などの既存のカテゴリーも強化した。

・#4『5重合体!VWXYZ』より、万丈目と十代がデュエルを行った。
 しかし、出てきたのは聞いたこともない謎のモンスターだった。ここからシナリオは基本そのままに、デュエル内容だけがガラリと変わっていきます。



 デュエル内容変更点。

・ショックルーラーの攻撃力が間違っていたので修正しました。


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