苦情は受け付けない()
休日、昼下がり。
今しがた起きた俺は、課題を進めようにも気分が乗らない。
とりあえず散歩がてら、商店街をぶらついていた。
特に行き先も決めてない故、とりあえずと目についたベンチに座る。
と、前方から人影。
「おやおや?奇遇ですな~?」
「...青葉」
顔を上げると、自称:謎の美少女、青葉モカだった。
袋いっぱい、むしろ溢れそうなパンが入った袋を持って、なんなら一個食ってる。
形を見るにコロネだろうか。
「美少女モカちゃん、さんじょ~。何かお悩み事ですかな~?」
「いや、そういうわけじゃない」
平静を装ってそう言ったが、目の前の人間にはバレてたようで。
「まーまー、そう言わずに~。悩み事を話したくなる秘密のパンをあげよう~」
「そんなもんないだろ...」
差し出されたのはいたって普通のメロンパン。
それを見た瞬間に、昼起きの体は強烈に空腹を訴えた。
渋々受け取ると、青葉は召し上がれ~なんて腑抜けた声で言う。
「...いただきます」
一口齧る。
甘味が広がって、意識がだんだん覚醒していく気がする。
「...うま」
「でしょ~?山吹ベーカリーのパンは絶品なんだよ~」
「別に青葉が自慢げに言うようなことじゃ...まぁいいか」
山吹ベーカリーのパンがうまいのは事実だし。
「ところで、明日提出の課題は終わったのかな~?」
「え、あれ明日提出だったっけ!?」
そんなはずはないと先ほどの課題を頭の中でプリントしていると、からかうような笑い声が降ってくる。
「その反応では、まだ終わってないようですな~?」
「くっそ...カマかけられた」
「いやぁ~、それほどでも~」
「褒めてねぇよ...」
悩み事を話したくなるパン、あながち間違ってなかったのかもしれない。
あるいは、青葉が一枚上だったか。
そう考えると負けたような気がして癪だから絶対認めてやらんけど。
「やろうと思ったんだけどさ、なーんか気分乗らなくて...」
「そういう時は、パンを食べて頭に糖分を回すのだ~」
「頭は回るだろうけどやる気とは関係ないだろ...」
冗談めかして言ってみたものの、メロンパンのおかげか、少し活力が戻ってきた気がする。
これから通おうかな、山吹ベーカリー。
「サンキュ青葉、なんか調子戻ってきた気がする」
「それは何より~。じゃあ、モカちゃんはこの辺で~」
「ん、また明日」
「お達者で~」
青葉と別れ、帰路に着く。
半分以上残っているメロンパンを食いながら、課題を終わる自分をイメージする。
「...なんか、いける気がする」
ちなみに課題は爆速で終わった。
今度メロンパンのお返ししよう。