原神 自分を一般人だと思い込んでいる主人公の兄 作:アリエイルでしょ
これが投稿が遅れる理由の9割。
海岸から移動して早数十分。白昼堂々という言葉がピッタリなくらいに堂々と姿も隠さずに道を歩いている。
「…思うんだけど、こんなにのんびり歩いててもいいの? まだ城下も近いし、すぐに見つかる気がするんだけど」
「この時間であれば問題はない。精々天領奉行に話を通している最中といったところじゃな」
「サラッと言ってるけどそれって普通に大問題じゃ…」
「今更になって怖気付いたか?」
「国まで巻き込むっていうのは流石に… まあ行くけどさ」
別に蛍と一緒に居たくない、と言うわけでは決してない。とはいえ少しは1人で落ち着く時間が欲しいものだ。
蛍と居る時間はなんというか…落ち着くんだけど、落ち着かない。
とにかく常に監視されている感覚で、寝る時も俺が寝付くまで寝ないし、俺よりも必ず早く起きてる。怖い。
挙げ句の果てにはトイレにまで着いてこようとするし、少し長くなるとドンドンと扉を叩きながら声を掛けてくる。怖い。
前はここまでじゃなかった気がするけどな…
考え事もそこそこに前を歩く神子に着いていく。一体どこを目指しているのだろう。
…とりあえず目的地くらいは聞いておいた方がいいか。そう思い、神子に話しかけようと思った瞬間、声が聞こえた。
「あれ、宮司様? このような街道でお会いするなんて珍しいですね」
…冷や汗が出た。これも聞いたことのある声だ。
この状況、無視もできない…警戒しつつ神子に掛けられた声の方に振り向くと、人の良さそうな男が立っていた。彼には見覚えがある…神里家に仕えているモンド人だ。
…これはひょっとしてもうピンチになったのかもしれない。少しビビりながらも神子の出方を伺う。
「む、トーマか。汝こそ城下の方まで来ているとはな」
「俺は日用品の買い物やお嬢の要望もあってこっちに来たんですよ」
そろそろ茶葉がなくなりそうとか。などと自らの目的を話し出すトーマ、この流れは良くない。大体この話の続きは…
「宮司様はどういった用事でこちらに? 出版とかそっちのお仕事とかですか?」
「普段ならそうであるが、今回の要件は此奴じゃ」
「ぅえ?!」
隣に居る八重神子に腕を掴まれトーマの前に引っ張り出される。態々姿を晒すなんて一体どうするつもりなのか。
「此奴はあの蛍の兄でな、こうして見つけたから稲妻城まで連れて行くところじゃ」
「「!?」」
ついトーマと同時に驚いてしまう。その蛍から逃げるっていうのになんでそんな素直にバラしてるんだこいつ。
「彼が!? 確かに良く似ているけど…本当に?」
「あー…えっと……」
反応に困り八重神子に視線を送ると、彼女は事実だと答えろと言わんばかりに頷いていた。
「…うん、俺は空。蛍は俺の妹だよ」
「おおっ…! はじめまして、俺はトーマ! よろしく、蛍のお兄さん」
「どうも」
爽やかな笑顔と共に出された手を取り握手をしつつ挨拶を交わす。それだけのやり取りでコミュ力の高い人だなと感じた。
「これまでずっと捜索は続けられていたけど本当に稲妻で見つかるなんて…一体君はどこに居たんだ?」
「妾が鳴神大社で参拝しているところを捕まえたんじゃ。なぁ、童よ」
「えぇ…まあ、大体そんな感じ?」
適当に神子に言われるがまま話を合わせる。一体どうするつもりなんだ…
「何はともあれ蛍のお兄さんが見つかるなんて、一大事じゃないか! 早く蛍にも教えてあげないと!」
「落ち着かぬか。そのために妾が態々ここまで来たのじゃ、此奴を天領奉行の九条裟羅殿にでも引き渡すためにな」
そうすれば蛍のやつにも連絡がいくであろう、と適当にでまかせでそれっぽい話を作っていく八重神子。
「汝は神里の娘にこの事を伝えに行ってきてくれぬか? 蛍ならば兄の存在を聞きつけたらすぐにでも稲妻へ来るはずじゃ。 その場にあやつも呼んでやればよい」
「なるほど、確かにお嬢も喜ばれると思います。…わかりました! そういうことなら俺にお任せください!」
「うむ、ではまた後ほどな」
急ぎ足で遠ざかるトーマを見送る。一先ずの脅威は去ったと言えるだろう、しかし……
「…どうなるかと思ってひやっとしたよ」
「下手に誤魔化して疑われる方が面倒じゃ、それならこちらから都合のいいように誘導してやればよい」
「頭が回るね…はぁ」
「なんじゃ、危機が去ったというのに浮かない顔をして。何か思うところでもあるのか?」
「ああいった善人を騙すのは気が引けるなって…今後毎回こんな感じになるのかと思うと気が滅入るよ」
自分のことのように兄妹の再会を喜んでくれているし、伝言役も進んで引き受けてくれる程の善人を騙している状況は当然気分がいいものではない。
「であれば今から稲妻城に引き返すのも一つの手じゃ。そうすれば今の話は全て事実になって万事解決ということになる」
「…いや、このまま神子に着いていくよ」
こんな機会はそう訪れない。流石に今引き返してしまうのは逃避行としては、あまりにも早い幕切れだろう。それこそモンドの時の二の舞になってしまう。
「フフ…仮に戻ると答えたとしても妾の目的を達するまでは付き合ってもらうつもりであったがな」
「強制だったんだ。 あ、そういえば聞きそびれてたけど、神子の目的ってなに?」
「秘密じゃ。それも楽しみしておくとよい」
「楽しみねぇ…とりあえず面倒事じゃないことを願っておくよ」
「それは今更じゃな、既に面倒極まりない状態ではないか」
「それはそうだけど…これ以上話をややこしくしたくないからね、今だって危ないところだったし…」
次に誰かと遭遇した場合、先ほどのように切り抜けられる保証はない。天領奉行に行くなんて嘘だってことはどうせすぐにバレるし…蛍の兄が失踪したことなんて瞬く間に広まってしまうのは容易に想像できる。
「そう心配するでない、対策なら既にある」
「対策?」
「要は妾たちだと悟られなければ良いだけのこと。ならば姿形を変えてしまえばよい」
「変装みたいな感じ? 多少効果はありそうだけど、蛍には一瞬でバレると思うよ」
変装程度では彼女の化け物じみた直感の前では無意味に思えてしまう。それでも神子は大層自信があるようで不敵に笑みを浮かべていた。
「変装などする必要もない、もう済んでおる」
「え」
神子が出した手鏡を覗くと自分ではない、似ても似つかない誰かの姿が映し出されていた。誰だよ本当に、モブAみたいな感じだ。なんだこれ……なんだこれ?
「…これは、どういった原理で…?」
「姿を誤魔化しておる。余程のことがなければ見つかることも、目をつけられることもないはずじゃ」
「…それは凄い。けど俺から神子はそのままに見えるけど大丈夫なの?」
「互いに認識できないのは面倒でしかないであろう? 故に妾たちはそのまま認識出来るようにしておる」
「す、凄い。なんて便利で都合のいい術なんだろう…」
どうやっているかは知らないけど、これならすぐに見つかるということはないか…?
…まあ、それでも蛍なら少し注目すれば見破りそうだけど。
「では、急ぎここを離れるとしよう。流石にモタモタはしていられぬ」
「それはいいけど…一体どこに…」
「まずは神無塚に向かう。その後はのらりくらりと適当に追っ手を回避すればよい」
「神無塚…鳴神大社に行くとかじゃないんだ」
「休暇と言ったであろう? これも通り道、とだけ伝えておこう」
通り道ねぇ…まあ島国の稲妻という国の地理上、ここから移動していくには西側に行くしかないのはわかるけど… 一体どこまで行くつもりなんだろうか。
7月からクソ程忙しくなりそ~~なぜ6月末から再投稿を始めたのか。