シュラハトくん見逃して 作:私貴方私(Y-ou@so-soなフリー)
ふーれんどこ?ふりれんどこ?りーれんどこ?
【第四幕】神話
ふりーれんこ?ふりーれどこりーれんどこふりーどこ?ふりんこ?りーれんどこ?
ふりれんどこ?ふーれんどこ?ふりーれどこ?
りーれんどこ?ふりーれどこ?ふりれんどこ?どこ?ふりー
私はそれを現実に体験したよ。
でもね。それは最悪なカタチをしていたよ」
レンゲの秘密基地で1日を過ごしたフリーレン達。
幸い、レンゲの隠れ家は四人の人間が暮らせるちょうど良い広さがあった。
毛布も人数分あり、寝床も、食器も足りていた。
フリーレンは少し違和感を感じる。
しかし、ゲシヒテの魔法のせいで時間感覚が狂ってしまい、全員くたくただった。
激動の1日。
普通の人間では一生かかっても縁のない体験をした三人は、ようやく眠りにつくことができた。
「あとちょっと…」
「レンゲ、本ばっかり読んでないでお外で遊ぼうよ」
「そうだぜ。こないだドワーフの婆さんが新しいおもちゃくれただろ。あれやろう」
声が聞こえる。
ああ、これは夢だ。
おねえちゃん、おにいちゃん…
私は本が好きだった。いつも本を読んでいた。
お気に入りの本は『勇者と氷の姫君』。
カッコいい勇者様が『綺麗だけど冷たいエルフのお姫様』を冒険に誘うお話。
勇者様は『お姫様』を色んなところに連れて行く。
山とか海とか、魔物の群れの中とか。
勇者様と『お姫様』は、色んな人と出会う。
イタズラ好きな男の子とか、頑固なお婆さんとか、魔王とか。
勇者様は、大切な仲間に『お姫様』を紹介する。
お酒が大好きな僧侶様とか、山を片手で持ち上げられる戦士様とか、料理の上手い騎士様とか。
そして、勇者様と一緒に冒険した後、『氷のお姫様』はいなくなっちゃう。
最後のページで勇者様の隣にいるのは、
『
これは私の『オリジン』。
今も共にある大切な思い出。
>>>>>>>>>>>>>
あの日、私達が居た孤児院に新しい子が来た。
名前は『ゲシヒテ』。
見た目は私と同い年くらいの男の子だった。
孤児院で1番年少だった私は嬉しかった。
これで私もお姉さん。
でもゲシくんは、なかなか弟扱いさせてくれなかった。
それどころか物心ついてからずっと、本を読み続けてる私よりもたくさんの物語を知っていた。
ゲシくんのお話はとっても面白かった。
ある時は『読み聞かせ』、ある時は『お芝居』、またある時は『紙芝居』なんかもやってくれた。
ゲシくんに教えてもらい、みんなでお遊戯会をやったこともある。
観に来てくれた街の人から、たくさんお菓子をもらったりもした。
ゲシくんはなんでもできた。
教えるのも上手かった。
みんなゲシくんを構うようになって、やきもちを焼いて喧嘩したりもした。
それでもゲシくんは私と仲良くしてくれた。
そんなある時、ゲシくんがみんなの好きな物語を聞いてまわっていた。
私はもちろん『勇者と氷の姫君』の
ゲシくんは満面の笑みで頭を撫でてくれた。
するとその日から私だけにしか見えない勇者様が見えるようになった。
勇者様はたくさんのことを教えてくれた。
私は物語の勇者のようにあちこち飛び回れるようになった。
みんなそうだ。
おにいちゃんは凄い魔法が使えるようになり、おねえちゃんは未来が見えるようになった。
空が飛べるようになった子がいたり、一瞬であちこち移動できる子もいた。
みんな楽しそうだった。
私も楽しかった。
あの時までは…
ゲシくんは言った。
私は飛びついた。
その後、気がついたら知らない場所で、お姉ちゃんが私の手を引いて走っていた。
そこからは怒涛の日々だった。
『お化け』がずっと私達を追いかけてきた。
みんなひとりずつ会えなくなっていった。
ついに安全な場所を見つけた。
でもあの子はもう長くなさそう。
私よりも早く孤児院に来た小さいお姉ちゃん。
勇者様よりも悪い魔族の方が好きな変わった女の子。
家族がいなくなるのは寂しい。
でも、あの子は最後に置き土産を残してくれた。
『
あの子が一緒にいたのは『
聞いたことはないけど、凄い勇者だったのかも。
私達は今日もあの子の
>>>>>>>>>>>>>
それからもたくさんのことがあった。
おにいちゃんもおねえちゃんも、ゲシくんについて調べたことをたくさん残して、いなくなってしまった。
他人は頼れない。
ゲシヒテの目がどこにあるか分からない。
1人になった秘密基地の中で、僕は『おとうさん』からたくさんのことを学んだ。
『おとうさん』は勇者だ。
魔王を倒した力なら、その手下の七崩賢だって倒せるはず。
力を磨く。
助けを求めるため、女神様に最も近いと呼ばれるエルフに会いに行った。
何故かゲシヒテのことは話せなかったが、彼女の試練に打ち勝って、師匠の弟子になった。
そして力をもらった。
これならゲシヒテに勝てる。
勝てない。勝てる。勝てない。分からない。
魔法使いにとって、イメージできないものは実現できないらしい。
僕には、ゲシヒテに勝てる自分をイメージできない。
ある時、師匠以外のエルフに初めて出会った。
これは運命だと思った。
見間違うはずが無い。
僕の中の『おとうさん』が叫んでいる。
僕の幼い日の思い出が、1番大切な思い出が、彼女を最後のピースだと叫んでいる。
『フリーレン』
あなたが欲しい。
チケットを送る。
あなたがいなければ、僕は彼に勝てない。
だから力を貸して。
『フェルン』
ごめんね。
でももう振り返らないから…
朝が来た。
しっかり休息を取り、ゲシヒテを倒す作戦を立てたフリーレン達。
作戦は単純だ。
人がいない場所にゲシヒテを誘き寄せ、フリーレンとシュタルクでその場に足止めする。
遠距離からフェルンが援護射撃を行い、レンゲが不意を突いて仕留める。
ゲシヒテは何故かフリーレンに執着している。
フリーレンが魔力を解放すれば姿を現すだろう。
今まで散々ゲシヒテに場を荒らされたが、今回はこちらの都合がいい状況を作る。
そう意気込み、フリーレンは外への扉を開いた。
扉を開けると、そこは見たことのない場所だった。
いや、私はここを知っている。
「やられた…」
フリーレンがもう二度と見ることはないと考えていた光景が眼に映る。
最後の戦いで破壊されたはずの窓や扉まで傷ひとつない。
あの日のままだ。
「この光景も100年ぶりだね」
周囲に漂うあまりにも濃密な魔力にフェルンは気分が悪くなる。
そして不安に駆られ、フリーレンに問いかける。
「フリーレン様、ここは?」
「ここはね…」
シュタルクとレンゲも言葉が出ない。
疑問はたくさんある。
何故、自分達の隠れ場所が分かったのか。
何故、拠点であるシャーデンフロイデではないのか。
何故、やつは単身で自分達の前に現れたのか。
しかし、彼らにはその疑問を悠長に考える時間などない。
『魔族』が玉座から立ち上がる。
『魔族』がゆっくりとこちらへ歩いてくる。
『魔族』は手を掲げる。
『魔族』との戦いが始まった。
最初に動いたのは、意外にもシュタルクだった。
レンゲがその場の空気に呑まれ、震えている様子を見た彼は、スイッチを切り替える。
戦う覚悟を決める。
自分ももちろん怖いし、今すぐ逃げたい。
でもこういう時のため、師匠に叩き込まれた『教え』がある。
パーティーにおける戦士の役目は、敵に切り込み活路を開くこと。
そして、『恐怖で足がすくんだ仲間のため、少しでも覚悟を決める時間を稼ぐこと』。
「俺が怯えて動けなくなるわけには、いかねぇだろぉ!!」
間合いを詰め、大斧を振り下ろす。
ゴヅゥ
手応えはあった。でも手応えがない。
シュタルクは奇妙な感覚に違和感を覚え、ゲシヒテとの間に大きな手が割り込んでいることに気づく。
その手に振り払われ、シュタルクは吹き飛ばされる。
「おあああぁ」
「シュタルクッ!」
吹き飛ばされたシュタルクをフェルンが追う。
なんとか魔法でシュタルクを受け止め、すぐさまフリーレン達の元へ戻ろうとする。
しかし、あまりにも大きな障害がそこへ立ち塞がる。
眼前に見えるは巨大な足と鱗。
空を切る音が聞こえ、咄嗟に後ろに下がる。
今までいた場所が、巨大なスプーンですくったかのようにエグり取られる。
「これは…手強いですね…」
フェルンはシュタルクを吹き飛ばした元凶を睨む。
それは頭部が見えないほど、大きな『巨人』だった。
これだけ大きければ、魔王城の天井を破りそうなものだ。
しかし、その天井は相変わらず新月の夜空を映すように、変わらない暗黒が続いていた。
敵は巨人だけではない。
隣には、見たこともない奇妙な魔物がいた。
頭が九つある竜。
その体はボロボロであり、絶えずどこかが崩れている。
そして、崩れたそばから脱皮するかのように内側の綺麗な鱗が露出し、再び崩れていく。
「こんなのおとぎ話でしか見たことないですよ」
「俺だってないぜ…。せっかく竜との戦いに慣れてきたってのに、これは今までの経験が通じそうにねぇな」
フェルンとシュタルクは、ヒンメル達さえ戦ったことのない神話に挑もうとしていた。
「くっ、分断された」
「すまない。僕が怯まなければこんなことには…」
シュタルクが単眼のの巨人に吹き飛ばされ、フェルンがそれを追いかけた瞬間。
魔王城の中で水晶の壁が迫り上がり、フリーレン達とフェルン達は分断されることになった。
「フェルン達のところに向かった化け物は『
「二つ名の由来はこれだったか…相変わらず魔族の魔法はとんでもないね。さっさとゲシヒテを倒してフェルン達を助けないと」
フリーレンは杖を握りしめる。
焦りは何も状況を良くすることはない。
フェルン達のためにも、冷静にこいつを処理しなければいけない。
「ゲシヒテは殺しても死なない。なんとか対処方法を見つけないと」
「それなら策はあるよ。今は僕を信じてくれないかい。そうすれば、僕達の攻撃は奴に届く」
レンゲからなにか確信を持った言葉が返ってくる。
短い付き合いだが、彼女は根拠のない言葉は使わない。
『ここはレンゲを信じる』
熟練の老魔法使いはそう決断した。
強敵を前に、レンゲの足はすくむ。
震えは身体を伝い、カタカタと音が響く。
それでも彼女は逃げない。
レンゲは腰から勇者の剣のレプリカを抜き放ち、正面に掲げる。
その声は誰にも届かない。
身体の中から温かい物が込み上げてくる。
今の自分は一人ではない。
隣には信頼できる
今まで感じたことのないような高揚を感じる。
『もう何も怖くない』
「行きます!」
『勇者ヒンメルのごとき神速を宿す魔法』
『勇者ヒンメルのごとき斬撃を放つ魔法』
ゲシヒテに強烈な一撃をお見舞いする。
しかし、彼の手元に現れた二振りの剣がそれらを弾く。
ゲシヒテが手にしているのは、かの有名な人類最強『南の勇者』が使っていた双剣。それを『
ゲシヒテにとって、物語に出てくる無生物を現実にすることなど容易い。
実際に傷を与えられた物ならば、尚更高い再現性を発揮できる。
伝説の武器だろうが神器だろうがいくらでも使い放題と言える。
ただし、
どんなに凄い武器を作っても、ただの剣と同じように振り回すことしか出来ない。
武器が主と認めない故に、その能力を引き出すことができない。
レンゲの攻撃を捌き、フリーレンの魔法を回避しながら、ゲシヒテは片方の剣を天に掲げる。
その瞬間、天井に無数の武器が現れる。
剣や斧だけではない。槍やハンマー、弓矢まである。中にはフリーレンすら見たことない膨大な魔力を込められた武器も含まれており、それらが一斉に高所から落下し始めた。
「フリーレンっ!」
レンゲはフリーレンを守りに向かおうとするが、ゲシヒテに阻まれる。
無数の神話級武器が落下し、頑丈な魔王城の床も崩落する。
ゲシヒテが武器を変える。
それは『一本の剣』だった。
「それはまさか…」
レンゲはその剣を良く知っている。
幼い頃から憧れ、毎日素振りにも使っていた剣。
今も彼女が握っている相棒の
いや、この場合偽物はレンゲが持っている剣の方だろう。
「勇者の剣…」
「流石に気付くよね。これは君の大好きな『勇者ヒンメルの剣』だよ。これで相手をしてっ!?」
不意をついて放たれた
魔法は『勇者ヒンメルの剣』をなんの抵抗もなく貫き、油断し切ったゲシヒテの胸に大穴を開けた。
ゲシヒテの手から『勇者ヒンメルの剣』だった物が砕け落ちる。
崩落した床から浮かび上がってくるフリーレン。
ゲシヒテは彼女へ苦言を投げる。
無傷なフリーレンの様子に、レンゲはひとまず安心する。
胸に穴が空いたまま会話を続けるゲシヒテ。
フリーレンの表情は険しい。
やはり、自分の魔法ではゲシヒテを仕留めきれない。
このまま削って、レンゲの隠し球に頼るしかなさそうだ。
「ニヒツの嘘つき。仮説、全然合ってないじゃん」
騎士ニヒツは昔、『魔族は物語を読まない』と言った。
それは部分的に正しい。
魔族は基本的に物語を読まない。正確には、魔族は『空想の物語』に価値を見いださない。
人類が作る『空想の物語』とは娯楽であり、突き詰めれば
嘘を利用して狩りを行う魔族だからこそ、嘘と分かり切っているものにわざわざ価値を見いだすことはない。
魔族は人類に対して『共感』することができない。だから『嘘』を娯楽として楽しむ概念がない。
人間が蟻に共感できないように、魔族は人間が作り出す『空想の物語』に共感できない。
いくら同じ人の形をしていても、起源も生態も全く異なる生物なのだから、これは当然の結果である。
だから、ニヒツはたくさんの『物語』を残した。
そこに魔族と戦うための知識を残し、未来の人類に魔族と戦うすべを残そうとした。
問題は何事にも例外があるということだ。
魔族は生涯に渡り、魔法を探究し続ける生き物だ。
その魔法に『物語』が含まれるのであれば、当然それを詳しく研究するだろう。
それが『神話のゲシヒテ』と呼ばれ、七崩賢になるほどの才能を持った魔族だっただけの話。
彼だけは人々が綴る『物語』というものに執着した。
『空想』だろうが『史実』だろうが、ただ全ての『物語』を読み漁った。
そしてそれを再現することに
『魔法はイメージの世界』
ただ目の前にあるがまま、それをイメージすればいいのだから。
「魔法はイメージできないことは実現できない。逆に言うとイメージできればなんでも実現できる。だけど、これはやり過ぎだ」
フリーレンの眼前には、80年前の旅ですら見たことがない絶望が広がっていた。
そして、その奥に鎮座する圧倒的な存在感。
『七崩賢を従える
この瞬間、フリーレン達に勝ち目は無くなった。
ゲシヒテは手に持っていた『一冊の本』を投げ捨てる。
『勇者ヒンメルの冒険』
騎士ニヒツが人々のために残した警句。
魔族の脅威とその被害の記録。
恩人である南の勇者が未来に繋げた想い。
そして、ヒンメル達との旅の思い出。
魔族による悲劇を少しでも後世に残し、被害を減らそうとした『ニヒツの想い』がフリーレン達人類に牙を向いた。
「フリーレン、諦めるかい?」
「言葉にするまでもないよ」
そう、言葉にするまでもない。
フリーレンはこれまでも理不尽な状況に遭遇し、それを突破してきた。
『ベーゼの結界』『グラオザームの精神魔法』『魔王の討伐』
魔法はイメージできないものを実現できない。
でもヒンメルは教えてくれた。
『僕がイメージさせてやる。この世に不可能はないって』
だから私は、この状況も乗り越えられる。
「こんなところで諦めたら、天国でヒンメル達に笑われちゃうからね」
「ならやってやろうじゃないか。それが勇者の役目だからね」
フリーレンとレンゲによる絶望的な挑戦が始まった。
シュタルク達の戦いは
どれだけ攻撃を叩き込んでも、巨人に傷一つ付かなかった。
竜には傷を付けられたが、たちまち鱗が生え変わって無かったことになる。
しかし、2人とも無為に時間を潰したわけではない。
攻撃する度、感じる奇妙な違和感。
山担ぎを叩くシュタルクは、手応えのあるようでない巨人の皮膚に。
崩頭竜の相手をしているフェルンは、心なしか魔法の通りが悪い竜の鱗に。
「大変そうだな。手を貸そうか?」
「えっ?」「はぁ?」
2人しかいないはずのこの場に知らない声が聞こえる。しかも背後から。
フェルンは咄嗟に視線を向けてしまう。
その隙を突き、崩頭竜の長い首が迫る。
「あっ」「フェルンッ!!」
「あちゃぁ、ちょっと声かけるタイミング悪かったな。まあ、大事な弟弟子だしな。後進育成と行きますか」
フェルンとシュタルクの間を何かが通り抜け、眼前に迫った崩頭竜の頭部を三枚おろしにする。
「フェルン!大丈夫か」
「え、ええ。大丈夫、ですが…」
フェルンに歩み寄るシュタルク。
ただ、彼女は自分を守った謎の鎧を見つめていた。
「ボサっとしてないで、態勢を立て直せ。こいつは
「えぇっと、あんたは?」
「シュタルク、ここは取り敢えずお礼を言いましょう。確かに怪しい人ですけど…」
鎧の不審者に警戒しつつ、シュタルクとフェルンは素早く戦線に復帰する。
「すまんすまん、変なタイミングで登場したのは謝るよ。俺はニヒツ。フリーレンの友達だよ」
騎士ニヒツは大楯で崩頭竜の突進を捌きつつ、大槍でそれを叩き潰す。
シュタルク達も突然出てきた御伽噺の存在に、言いたい事や聞きたい事がたくさんあるが一旦飲み込んだ。
そして、取り敢えず心強い援軍として彼を受け入れる。
「ニヒツ様、竜の方は攻撃しても再生し続けます。それに魔法があまり通りませんでした。巨人の方はシュタルクが苦戦しているので、あまり物理攻撃と相性が良くない可能性があります。何か対策はありますか?」
フェルンは防御魔法と攻撃魔法を切り替えながら、前衛2人を素早くサポートする。
そして、今まで分かったことを的確にパーティーへ共有する。
「凄いな、もうそこまで分かったのか。じゃああとは簡単だ。山担ぎの弱点はひとつ眼と魔法だ。崩頭竜は一度に体の過半数を崩し切る物理攻撃。どっちも元になった神話で倒せているから、確かな情報だぜ」
「でも、そんな大技叩き込む余裕ないぞ。さっきから相性の悪い巨人がしつこく張り付いて来て、フェルンと相手を交代できない」
シュタルクも相性が悪いことは察していた。
しかし、シュタルクの攻撃を巨人が防ぎ、フェルンの魔法は竜が庇うように立ち回ってきた。
理性のない獣にしては、あまりに制御された動きだ。
やはり手が加えられているのだろう。
「なるほど、やっぱりみんな良い師匠やってたんだな。じゃあ厄災討伐の栄誉は後進に譲りますかね」
ニヒツは手に持っていた大槍を消し、代わりにもう一つ大楯を装備する。
「俺がこいつら2頭の攻撃を全部捌き切るから、その間に大技をこいつらに叩き込め」
「はあ!? 1人で捌き切れる訳ないだろ!」
「俺を信じなくてもいい、でもな。お前達の師匠が信じる俺を信じろ」
ニヒツの言葉。
2人はこれまで『フリーレン』『ハイター』『アイゼン』が語った仲間との思い出と絆を思い出す。
彼らが楽しそうに話してくれた『騎士ニヒツ』であれば信じられる。
『ハイター様が信じるなら』『師匠が信じるなら』
「信じます」「信じるぜ」
騎士が笑った気がした。
ニヒツは再び前を向き、気合いを入れる。
「冒険者パーティーにおける騎士の役割はタンクだ。つまり、俺の後ろにはネズミ1匹通れねぇってことなんだよ!」
『四つの魔法を重ねる魔法』
『命懸けで仲間を守る魔法』
『7つの武器を自在に操る魔法』
『武具を体の一部として操る魔法』
『女神の守護騎士』
崩頭竜と山担ぎの執拗な攻撃が迫る。
彼らはシュタルク達から放たれる魔力に命の危機を感じた。
なんとしてもその攻撃を撃たせてはいけない。
しかし、それらの攻撃は全て1人の騎士によって阻まれる。
騎士の背後に展開された見えない壁。
次々と竜の首を落とす刃。
全ての鱗に突き刺さり、再生を阻害する矢。
巨人の小指を捻り潰す重圧。
ニヒツの周りに浮かぶ7つの武器が宙を舞い、次々と崩頭竜達の攻撃を潰していく。
巨人の拳は大楯でパリィし、巨大な槍がその横っ面を張り倒す。
これでも倒せない。
それでも役割は全うした。
2体の厄災が体勢を崩す。
「やったれ、シュタフェル!!」
「あ、合体技はまだない感じか。まあ、これからも付き合いは長そうだし、いずれかな」
フェルンの魔法が『山担ぎ』の一つ目を正確に射抜く。
シュタルクの一撃が『崩頭竜』の体を伝っていき、全身を粉微塵にする。
ここに厄災討伐は成った。
現代における新たな神話の誕生である。
「急いでフリーレン様の元へ合流しましょう」
「そうだな。あっちにはこいつらを生み出せる奴がいるんだ。早く合流した方がいい」
「あれ? 君達余韻とかそういうのはない感じ?」
急いで移動するフェルン達を追うニヒツ。
新世代の頼もしさに騎士は涙した。
「それにしても凄い魔法と戦闘技能でしたね」
「あんなの師匠でも出来る気がしないぜ」
フリーレンを始めとした伝説的な人物を師に持つ二人。
彼らですら見たこともないほど複雑なニヒツの神技。
後輩達に褒められ、少し照れる騎士だが、彼らの誤った認識は正さなければいけない。
「ここまでやっても、俺がパーティーで勝ってるのは硬さだけなんだぜ。そして、ここまでやらないと俺より師匠の方が硬い。未だにアイゼンさんには敵わないんだよなぁ」
「全盛期の師匠、何者だよ!」
「ええぇ…」
『
『
『
『物語
七崩賢の魔法がフリーレンとレンゲを襲う。
フリーレンは素早く『防護魔法』をレンゲと自分に展開する。
『黄金郷のマハト』と『奇跡のグラオザーム』はフリーレン達が過去に倒した七崩賢だ。
もちろん、対抗魔法である『防護魔法』も作成済みだ。
『断頭台のアウラ』は対面したことはないが、ニヒツにその呪いの詳細を聞いていた。
「"アウラ、自害しろ"」
アウラ、自害した。
フリーレンが阻止する間もなく、無機質な動きだった魔族達に生気が宿る。
さらに、『断頭台のアウラ』が再び現れる。
瞬間、ゲシヒテの首が飛んだ。
「俺をこき使うとは、良い度胸だな。ゲシヒテ」
不可視の結界を使った斬撃と拘束。
ゲシヒテの体は拘束され、その首は『不死なるベーゼ』の手に落ちる。
しかし、「次はないぞ」と言う言葉と共に彼は解放され、その体に再び首が繋げられる。
「説明してくれるんだろうな。この状況を」
「俺はヴァイゼでデンケン様と戦っていたはずだが」
「私は人間にぶっ殺されたはずですが」
「これは精神魔法ではないな。『
「私、また死んだじゃない…」
「これはまずいね。明らかに存在感が増した。フリーレン、なんとかできそう?」
「なんとかって!?」
悠長に会話をしている余裕もないらしい。
既にフリーレンの眼の前には、『
ヒンメル達という仲間が居て、奇跡的に勝てた相手だ。
1人で勝てるはずが無い。
『最も人を殺した魔族』はチリと化し、彼女の瞳に青い髪が映る。
「『魔王』っていうのは、『勇者』に討たれるのが物語の鉄則だろ?」
『勇者ヒンメル』がそこに現れた。
「私達も居ますよ」
「よお、元気そうだなフリーレン」
視界にハイターとニヒツが映る。
「フリーレン様、ご無事ですか」
「フリーレン、待たせたな」
崩れた結晶の壁を越え、フェルンとシュタルクが戻ってくる。
動揺するゲシヒテ。
ただ、動揺してるのは彼だけではない。
「ハイター様…」
「あなたは…?」
フェルンは銅像でしか知らない若い姿のハイターに戸惑う。
名前を呼んで欲しい。頑張ったと褒めて欲しい。抱きしめて欲しい。
でも、このハイターは物語の人物。
つまり、『まだ
フェルンはハイターへ伸ばそうとした手を下げる。
しかし、その手は届いた。
「あなたがフェルンさんですね。ニヒツから聞いています」
その手は温かい。
「頑張りましたね。そして凄い魔法使いになりました。未来の私がそれを最後まで見届けてられなかったのは残念ですが」
フェルンは堪らずハイターに抱きついた。涙が溢れる。でも今そんなことをしている場合じゃない。感情を制御できない。
少し戸惑いながらもそれを受け入れるハイター。
そこに1人の男が前に躍り出る。
2人を背に、七崩賢へ斧を向ける。
「フェルンを頼む、ます。少し会話するくらいの時間、稼いでみせるぜ」
ハイターは彼の背中を見つめる。
良い戦士だ。
『仲間の前に立つ勇気』と『敵に対する恐れ』を同時に持ち合わせている。
その背中に『ドワーフの戦友』が重なる。
ハイターは思う。
彼が居ればこの子はこの先も大丈夫だろう。
ハイターの手が優しくフェルンの頭を撫でた。
七崩賢とヒンメル達の戦いが再び始まる。
『最も人を殺した魔族』がいなくなったとはいえ、ヒンメル達も戦ったことがない七崩賢が3人もいる。
元々ヒンメル達は七崩賢を1対5で撃破している。
むしろ、7対7で拮抗できている今の状況が不自然と言えた。
「君は…」
「勇者様方、失礼します。僕はレンゲ。フリーレン達の仲間です」
ゲシヒテから距離を取ったレンゲが素早く挨拶を行う。
ヒンメルは彼女から言いようのない
ただ、今それを言及している場合ではない。
「『
「つまり、俺らがここにいるのは『
ニヒツの仮説に少し表情が曇るヒンメル。
今ここにいる自分は本物の勇者ヒンメルではない。
「本物じゃなくてもいいさ。僕達がここで七崩賢を全員倒す。そうすれば本物だろうが偽物だろうが関係ない」
「そうですね。私達の役割を果たしましょう」「だな」
ヒンメルの肩を叩くハイターと拳を当てるニヒツ。
彼らも現状を受け入れる。
切り替えが早くないと冒険者などやっていけないのだ。
「それにしても、自分で敵まで作ってしまう魔法ってのはどうなんだ。バカだろそれ」
「アウラの魔法にもデメリットがあった。もしかしたら七崩賢の魔法は、強力な代わりに何かしらデメリットを抱えるものなのかもしれない」
フリーレンが全員分の防護魔法をかけ直す。
既にこの防護魔法によって、一部七崩賢の魔法を無効化している。
これなら戦いになるかもしれない。
「いるぞ」
魔王城の天井を破壊しながら、1人のドワーフが舞い降りる。
ヒーローとは、遅れてやってくるものなのだ。
■ 実績解除
* 【DOING】ヒンメルとフリーレンのふれあいイベントを加える
* 【DOING】原作にいない七崩賢との戦い
* 【DOING】最弱の七崩賢
■ 『第三の壁』
著者:不明
詳細:不明
■ 終焉と再誕の神話
特徴:再生と魔法耐性
弱点:脆い体。体全体への衝撃で砂山のように崩れる。
著者:不明
詳細:聖典の一節より派生した神話
■ 山運び神話
特徴:物理攻撃無効の肉体
弱点:魔法過敏体質、ひとつ目を貫かれて死亡
著者:不明
詳細:中央諸国建国記の国土創造を担った厄災にして大英雄
魔族が身も心も人間になりました。あなたはどうする?
-
ゾルトラーク
-
人間になったので許す
-
法律で罪を裁く
-
経過を観察する
-
友達になる
-
嫁にする