とある呪術の両面宿儺   作:全智一皆

24 / 24
八月三十一日②

 

■  ■

「あっれー? これはこれは、随分と珍しい客人じゃな〜い?」

 

 佐天涙子と別れた後、宿儺は学園都市にある某人気ハンバーガーショップのテラスでまたもや食事を取っていた。

 肉厚ダブルビーフバーガーとポテトとバニラシェイク。コーラとかの炭酸ではない辺り、結構バランスおかしい気がするけど気にしない方向で。

 さて、まぁそれはそれとして、そんな宿儺の所に金髪ロングヘアー巨乳女子中学生がやってきてはキャピキャピしながら話し掛けてきたのだが。

 

「失せろ虫女」

 

 宿儺はソレを目に移す事なくポテトを平らげながら言い放った。

 

「虫っ!? ちょっと前まで牛女でまだ許容範囲内だった優しい罵倒だったのにそこからランクアップして苗字呼びすらどころかさらにランクダウンして虫呼ばわり!? 流石にその罵倒は優しい優しい操祈ちゃんも無視する訳にはいかないゾっ!?」

 

 女子中学生とは思えぬプロポーションをした金髪に椎茸目の少女は、それはもう激怒した。

 食蜂操祈は激怒した。必ずかの邪智暴虐な鬼人の罵倒を訂正せねばならぬ、と。

 食蜂には政治が分からぬ―――ことはない―――。だが、人の悪意には人一倍敏感であった。

 

 両面宿儺。彼女の想い人と同じ高校に通い、さらには同じクラスであり、そんでもって同じ場に居合わせた男だ。

 色々訳あって助けてもらった身だし、恩義みたいなものを感じていないと言えば嘘になるけれど、だからと言ってあの罵倒は看過出来ない。

 虫、虫だ! 確かに食蜂(しょくほう)で名前に漢字の(はち)が入っているけれども、だからと言ってレディに対して虫!?

 この中学生らしからぬ巨峰を以て牛と呼ばれるならまだ分かる。だが虫はダメだ、アウトなのだ。

 

「相変わらず喧しい奴だな、貴様。その喧しさを何故上条の前で出さんのだ」

「いやー、それはなんていうか、踏み込むにはまだアレかなー的な? というか、そもそも会う事も難しいって言うかぁ……」

 

 そりゃ是非とも会いたいしお喋りしたいけど学校の時間割(カリキュラム)的にも時間を作るのが難しいって言うかそもそも私じゃそこまで辿り着けないというか……

 ごにょごにょもじもじと、体をくねらせる食蜂。それにさらに宿儺は顔を歪ませた。

 

「女々しい。行動が遅い。だから貴様は虫なのだ、蜂の癖にとろい動きをするな」

「投げ掛ける言葉がいちいち容赦が無さ過ぎる……!!! 貴方、一応こっちの事情知ってるわよねぇ!? その上でその発言なのかしらぁ、だとしたら肝が据わり過ぎててちょこっとどころか、かなーりすっごくドン引くンですけど!」

 

 だから何だと言うのだ。宿儺はつまらない様に開き直る。というか、そもそも隠そうともしていないのだが。

 なんだって態々気遣い等という面倒な手間をこの俺がせねばならんのだ。巫山戯た事を抜かすな三枚に下ろすぞ貴様。

 なんて、気遣い云々と文句を言えば手刀みたいな構えから不可視な斬撃が飛びかねない。食蜂は敢えてその言葉を飲み込んだ。

 

「知っているからこそ言っている。彼奴は凄まじいぞ、一月もせん内にいつの間にか別の女を侍らす。くだらん諦観で仕舞い込むよりさっさと伝えろ、見苦しい」

 

 吐き捨てる様に宿儺は告げる。

 食蜂操祈と上条当麻の関係は複雑だ。彼もその現場に居合わせていた関係者だ、その現場の状況も結果も全て知っている。

 二人が……と言うよりは、食蜂の方が複雑と言った所だ。

 端的に言えば―――上条当麻は、食蜂操祈という人間の事を記憶する事が出来ない。

 脳の一部部分に問題が発生してしまい、何度出会おうとも記憶する事が出来なくなってしまっている。そもそも視界から外れたその瞬間に、上条は忘れてしまう。

 食蜂にとって上条は想い人だ。それは正真正銘、紛れもない本物の気持ちである。しかしだからこそ、そこには複雑な想いが絡まるのだ。

 自分が忘れられる事を日常として、彼女は受け入れている。大切に想う人から、心の底から好きだと思う人から、忘れられる事を当たり前としている。

 

 それでも、彼女は諦めていない。諦めない。いつか彼が自分の事を思い出してくれる日を信じている。

 だからこそ―――宿儺にとって、彼女の行動は見るに堪えないものでしかなかった。

 

「隠し、誤魔化し。貴様がやる事は全て回りくどい。忘却がなんだと言うのだ、貴様は信じているのだろう? 奴がいつか自分の事を思い出すと。ならばその自分が信じるいつかの為に貴様がすべきは、その面倒な誤魔化しを止める事だ」

「ふぐぅ……貴方って、本当に容赦ないわよねぇ? 普通、そういう事情に対してそうもズカズカ踏み込まないと思うんだけどぉ」

「見るに堪えない上に見苦しい無様な醜態を晒しているからだ、戯けが。貴様の諦観は面倒臭い」

 

 またもやバッサリ切り捨てる鬼人。

 食蜂のメンタルは既にボロボロだった。

 ただでさえ上条が絡むといつもの様な調子からふとした事で頬を染める乙女になるのに、それの更に深い所まで踏み込んでさらに切り捨てられるのだ。

 しかも面倒臭いなんて言われちゃ、レディとして文句の一つや二つくらいぶつけなきゃ割にあわない!!!!!!!!!!!!

 

「面倒臭い!? 女の子に対して言っちゃいけないセリフランキング堂々の上位に入る言葉を平然と発言する辺り容赦とかじゃなくて人格的に問題があると思うんデスけどぉ!!!!」

「何を今更。分かり切った事を何度も言うな、鬱陶しい」

「ほんとなんでこの人あの時手を貸してくれたのかしらぁ……思い返しても疑問しか浮かばないんだけど」

「上条に言え。基本的に彼奴が俺を巻き込むから意図せぬ手助けをする羽目になる。マジ巫山戯るな」

「あまりの怒りで口調が変わってる……」

 

 上条当麻、その場に居らずとも宿儺を不機嫌にする男。マジ        。

 はぁ……という小さな溜め息と共に、シェイクを啜る。

 ――――――あぁ、やはり食事は学園都市外のものに限る。宿儺はそう思う他なかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

Fate/stay night [Alter Ego of Calamity] ――理外の双貌 (作者:りー037)(原作:Fate/stay night)

冬木市で行われる魔術師たちの殺し合い『第五次聖杯戦争』。▼必勝を期して最強の剣士(セイバー)を召喚したはずの遠坂凛の前に現れたのは、万能の杯すら鼻で嗤う「呪いの王」両面宿儺だった。▼伏黒恵の肉体(全盛期の力)と、一度敗北を知り丸くなった(?)精神。▼二つの極致を併せ持つアルターエゴにとって、この命懸けの儀式は単なる「暇つぶし」でしかない。▼機嫌を損ねれば即・…


総合評価:3919/評価:8.46/完結:52話/更新日時:2026年06月05日(金) 22:51 小説情報

成り代わりギルガメッシュは星核ハンター(作者:──)(原作:崩壊:スターレイル)

スタレの世界でギルガメッシュの肉体と力を得た男が好き勝手する小説です。


総合評価:3350/評価:8.46/連載:9話/更新日時:2025年12月27日(土) 06:44 小説情報

とある幻想の夢想天生(作者:大嶽丸)(原作:とある魔術の禁書目録)

彼女は博麗霊夢だった。▼しかし、そこは幻想の楽園ではなく、科学と魔術が交錯する街だった。


総合評価:13295/評価:8.7/連載:78話/更新日時:2026年05月26日(火) 22:24 小説情報

呪術廻戦υ(ユプシロン)(作者:ホシカワ)(原作:呪術廻戦)

夜の杉沢第三高校。▼そこで同じ学校の先輩を助けるために両面宿儺の指を飲み込んだ。▼だが両面宿儺が現れない。▼しかし膨大過ぎる呪力を帯びる肉体。▼更に先ほどまでのあどけなく呪術界の事を全く知らなかった少年もいない。▼少し大人びた表情の虎杖悠仁。▼彼は後方にいる伏黒恵を見て微笑む。▼「伏黒――若いな……」▼しかし呪霊が虎杖を喰らおうと襲い掛かる。▼「せっかく旧友…


総合評価:8051/評価:8.05/連載:13話/更新日時:2026年05月22日(金) 18:00 小説情報

ここだけシド君に人間性をブレンドした世界線(作者:読者その1)(原作:陰の実力者になりたくて!)

感情の起伏が小さいシド君に、人間性をブレンドして原作シド君より感情豊かにした話。▼人並みに怒って、人並みに欲のあるシド君が見たかったので書きました。▼※タイトル少しだけ変えました


総合評価:14988/評価:8.96/連載:43話/更新日時:2026年07月30日(木) 12:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>