熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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奮戦する蝶 進化した飛蝗

サンスポット、ヒューストムのいずれの戦線でもプリキュアが押されてしまっている頃。バッタモンダーと対戦するバタフライの方も完全に押されてしまっていた。

 

「ッ、きゃあああっ!?」

 

「あーっはっはっはーっ!口程にも無いなぁ!キュアバタフライ!大した事無さすぎだぜ」

 

バタフライがバッタモンダーからのエネルギー弾をまともに喰らうと吹き飛ばされてしまう。

 

「う……ううっ……」

 

バタフライはこの時点でバッタモンダーとの実力差を感じつつあった。勿論諦めるつもりなんて少しも無かったのだが……戦力の差は歴然だった。

 

「あれぇ?“弱い犬程よく吠える”とか調子の良い事を抜かしていたけど……その弱い犬って君の事を指してるみたいだねぇ」

 

「(コイツ……。また調子に乗ってダサい事言ってるけど……。実際このままじゃ私に勝ち目が無い)」

 

前回の一騎打ち、そして今回もここまでの戦いの中でバッタモンダーの実力が本当であると彼女は感じつつあった。

 

「(ほんと、少し前までランボーグに指示を出す事とか卑怯な手ばかり使ってくる性格悪い奴って認識だったけど……こんなに強いなんて)」

 

「あれれぇ?さっきまでの威勢の良さはどこに行ったのかなぁ?」

 

「まだ……まだぁっ!」

 

兎に角隙があったら煽りを入れてくるバッタモンダーに対し、バタフライは体に力を入れて立ち上がりつつ構える。

 

「はぁああっ!」

 

バタフライはバッタモンダーへとラッシュを放つが、バッタモンダーはそれを余裕な顔つきのままあしらってしまう。

 

「おいおい、これで全力か?どうやら僕は強くなり過ぎてしまったみたいだよ」

 

「ホント、あなたってちょっと強くなったくらいでイキり過ぎじゃない?そんなのだからすぐにカッコ悪い所を見せるんだよ」

 

自分よりも遥かに強いバッタモンダーに対してバタフライはあくまで一歩も退かない姿勢を見せる。対してバッタモンダーは苛立ちからか、口角をピクピクと動かしながら言い返す。

 

「本当に生意気な元外野だねぇ。そんなにお望みなら徹底的に潰してやる!」

 

バッタモンダーはそろそろ反撃するとばかりにバタフライへと本格的に打撃による攻撃を激化。そうなると今度はバタフライがパワーの差から防戦一方になってしまう。

 

「くっ……ううっ……」

 

「(……そういや、コイツさっきから全然あのミックスパレットとかいうやつを使わねぇな。こいつの頭の回転を考えればアレを使うという思考に思い至らないはずがねぇ)」

 

バタフライにはミックスパレットというプリキュア側にバフをかけるアイテムを持っている。それを駆使する事でプリキュア達は瞬間的にパワーアップしてランボーグ達を相手に有利に戦っていた。

 

そう考えるとここで使わない選択肢は無いはずである。そのため、バッタモンダーはその事が気になったのかバタフライへと問いかけた。

 

「……そういえば、キュアバタフライ。ずっと気になっていたんだけど……どうしてミックスパレット?とか言うパワーアップアイテムを使わないのかなぁ?」

 

「ッ……」

 

バタフライはそれを聞いて言葉に詰まってしまう。ミックスパレットでバタフライ自身の能力を強化すればバッタモンダーと互角……とは行かずともそれなりに善戦くらいはできるはずだ。

 

しかし、先程からどれだけ戦況がバタフライ不利に陥っても彼女は一向に使おうとすらしない。その事実から彼の脳内にある仮説が浮かんだ。

 

「もしかしてさぁ。ミックスパレットのバフ能力を使っても、自分自身は強化できなかったりするのかなぁ?」

 

「ッ!?」

 

バタフライはその言葉が図星だったのか凍りついてしまう。ミックスパレットの弱点、それは発動者であるバタフライ自身には効果が及ばないという点だ。そして、その事実を知ったバッタモンダーは邪悪な笑みを浮かべた。

 

「あははっ!だったら君に勝ち目なんて最初からねーんだよ!」

 

バッタモンダーはバタフライに自分への対抗手段が無いと感じると更に勢いづいて彼女の元に突撃。バタフライは咄嗟にバッタモンダーと組み合う形でどうにか止めるが、バタフライが全力を使ってようやく押し留めているのに対してバッタモンダーは余裕そうな顔を見せていた。

 

「ううっ……」

 

「本当に健気だよねぇ。勝ち目が無いって最初からわかってるのにわざわざ抵抗してくる所とか。俺から言わせりゃ何でそこまでするのかってくらいだよ」

 

「……そこまでするよ」

 

「あん?」

 

バタフライは歯を食いしばりながらバッタモンダーからの凄まじいパワーに耐えつつそう呟く。

 

「私はさ……ずっとアンタの言う通り外野だった」

 

「ああ、そうだったなぁ?他のプリキュア達が戦ってる中、1人でプリンセス・エルのお守り役を引き受けて」

 

「皆は私がエルちゃんを守ってくれるから憂なく戦えるって言ってくれたけど……正直私自身は情けないと思ってたよ。だって、あの子達は皆普通の中学生で。本当なら私が守るべき立場なのに実際は逆なんだから」

 

バタフライことあげははプリキュアへの覚醒が遅かった事もあって長い事戦線に参加する事ができなかった。勿論その間自分にできる事をやってきたつもりだったが、正直な所歯痒い思いをし続けたのは事実だ。

 

「だけど、私はこうしてプリキュアとして戦えるようになった以上……今まで戦えなかった分……皆を守りたいって強く思うようになったの!」

 

「ッ……コイツ、さっきよりも力が増した?」

 

バタフライは先程まで完全に押されていたバッタモンダーのパワーに対して少しずつ対抗できる程に力を発揮しつつあった。勿論バッタモンダーとの戦力差が埋まったわけでは無い。それでも今の彼女には仲間を守りたいという気持ちが強い力として発揮されつつあったのだ。

 

「だから……アンタ達のような、卑怯な奴になんて負けたく無い。それに、私は皆を守れる最強の保育士を目指してるの。こんな所で……終われないのっ!!」

 

「な、何!?」

 

バタフライは油断していたとはいえ、まさかのバッタモンダーを押し返すとそのまま踏み込んで接近。口元に手を当てる。

 

「バタフライキッス!」

 

「ふん、そんな攻撃でこの僕を倒せるとでも……」

 

するとバタフライキッスの力がいつも以上に強くなってるのか……普段よりも大きな蝶が生成されるとバッタモンダーへと飛んでいき、爆発。

 

「ぐあああっ!?ば、馬鹿な!?」

 

「残念だけど現実だ……よっ!」

 

バタフライはバッタモンダーが動揺している間に接近しつつ反撃を開始。バッタモンダーへと回し蹴りをぶつけて怯ませている間に拳をガラ空きの腹に命中させて彼の顔を歪ませる。

 

「ぷぎっ!?ま、まさか……お前も手を抜いてたのか?」

 

「違うよ。私はさっきからずっと全力。だけど、強いて言うなら……夢見る乙女の底力ってやつかな」

 

「はぁ!?別作品のネタを出してるんじゃねーよ!!」

 

バッタモンダーが思わずメタツッコミをしてしまうと逆襲に転じてきたバタフライを潰すべく突っ込む。

 

「ほらほら、当たらないよ!」

 

「テメェ、調子に乗ってるんじゃねーよ!」

 

バタフライはバッタモンダーからの攻撃をまともに受けてもパワーの差で圧倒されると感じたのか。自分に力が湧くのを利用して攻撃回避とカウンターに注力を注いだバトルスタイルに切り替えた。

 

これは先程までのように回避する余裕さえも無い状況から少しだけだが回避できるだけの余裕ができた今だからこそバッタモンダー相手に刺さるスタイルだった。

 

「ぐ、コイツ攻撃が当たらなねぇ……」

 

「だって当たらないように立ち回ってるからね。ここからは一気にアゲていくよ!」

 

「チッ、だったらこれでどうだ!」

 

バッタモンダーが手を翳すと手からエネルギー弾を生成。それをバタフライ相手に連射する。バタフライはそれを蝶の舞のような軽やかな動きで回避。

 

「コイツぅうっ!」

 

「そろそろお遊戯の時間はお終い!お昼寝の時間だよ!」

 

バタフライはバッタモンダー相手にそろそろ大きな一撃を決めるべきと考えていた。何しろ有利に立ち回れているとはいえバッタモンダーの方が実力的に上なのは変わらない。それにこの回避もいつまでできるかわからない以上、早い段階で大きなダメージを与えるべきなのだ。

 

「良い加減俺の力の前に平伏せよ!!」

 

バッタモンダーが火事場の馬鹿力と言わんばかりに力を一気に解放。バタフライが反応できないくらいの超スピードで接近するとその腹に渾身の一撃を突き刺すように放つ。

 

「オラァァアアッ!!」

 

「が……っ」

 

バッタモンダーがとうとう翻弄されていたバタフライの動きを捉えて一撃を決めた……と思われた時。突如としてバタフライの体にピシピシとヒビが入るとそれが割れると同時に体から大量のピンクの蝶が飛び出す。

 

「なっ!?コイツは……」

 

「それは私のバリアで作った偽物だよ。本命はこっち!!」

 

「はぁっ!?」

 

バッタモンダーは自身の真上からいきなり声が聞こえた事に困惑。慌てて真上を見上げるとそこには巨大な蝶の盾の更に上にいるバタフライがいた。

 

どうやら、先程のバタフライキッスの直後から回避に徹していたのはこの攻撃をできるようにするための溜め時間を稼ぐためだった。

 

「う、嘘だろ……」

 

「私の事を侮り過ぎたね!」

 

バタフライがそう言うと先程バタフライの身代わりから飛び出した蝶がバタフライの盾とバッタモンダーの間に一列に並ぶように展開するとそれが盾へと変化しつつサイズアップ。バッタモンダーは完全にハメられたこの状況に恐怖を感じつつあった。

 

「ヒッ!?」

 

「ひろがる!バタフライプレス!」

 

バタフライは自らの技、バタフライプレスを発動させると自身の真下に出現させた盾を蹴り込むようにしてバッタモンダーに突撃。

 

ただ、今までのバタフライプレスと決定的に違うのは最初に自身が呼び出した盾に加えてバッタモンダーとの間に並べた何枚もの盾を全てが重なる形となってバッタモンダーを押し潰した事だ。

 

「はぁあああっ!」

 

「ぐ……ぐああああっ!?」

 

バッタモンダーはバタフライプレスの盾が何枚も重なった事で物理的な質量が増えた押し潰し攻撃をまともに喰らうと爆発が起きる。そして、その中からバタフライが飛び出すと着地した。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

しかし、バッタモンダーに攻撃を当てたバタフライの方も多重で蝶型のバリアを召喚した事で負担が大きく。かなり消耗していた。そして、バッタモンダーもやはり今の攻撃でやられる程ヤワでは無く。

 

「く……ううっ……」

 

「ッ……そんな……」

 

バッタモンダーはダメージこそ負っていたものの、倒し切るにまでは至っておらず。しかも最悪だったのが中途半端にダメージを与えた事で彼の中の屈辱の炎が引火してしまった事だろう。

 

「ぐ……うう。この俺様をよくもここまで……今のは痛かった。痛かったぞぉおおっ!」

 

どこぞの冷凍庫の名前を模した怪人のような台詞を叫びつつバッタモンダーは怒りを露わにする。そして、その怒りがバッタモンダーの更なる進化のトリガーを引いてしまった。

 

「はぁあああああっ!」

 

超バッタモンダーのパワーが更に上昇すると筋肉は一段階パンプアップし、カバトン並みの筋肉量を獲得。そして逆立っている髪が少しだけ広がると体に纏ったオーラが激しく燃え盛る。

 

「嘘……これって……」

 

「ッ……このパワー……くくっ。どうやら俺様はお前にしてやられた屈辱で更なる進化を遂げたようだ」

 

それはスーパー○イヤ人の第二形態とも言える姿であり、バッタモンダーはその姿に達した事で先程までよりも飛躍的なパワーを獲得するのだった。

 

「ああもう!何でこんな時に……」

 

「くっくっく……この僕の進化に驚いているようだね。……確かに僕自身も驚いているさ。まさか君への怒りと嫉妬でここまで強くなれるなんて思わないからさぁ!」

 

バッタモンダーはそう言うが実際の所は少し違う。もし仮に怒りや嫉妬でバッタモンダーが進化していたのなら今まで何回でもそのチャンスはあったはず。しかし、その時は進化にまでは至らなかった。

 

理由は単純。純粋な彼の実力不足である。だが逆に言えば……ヒューストムによって鍛えられた事でバッタモンダーの前には進化の道筋が開かれた事を意味する。

 

「それでも……私は、退くわけにはいかない!」

 

「ふーん。だったらさ……」

 

すると次の瞬間。バッタモンダーの姿が一瞬だけブレるとバタフライは目を見開く。何故なら、彼女の真後ろにいきなり寒気が走ったからだ。

 

「ッ!?」

 

「遅せぇよ。オラッ!」

 

「きゃああっ!!」

 

バタフライが後ろを振り向く前に成す術無くバッタモンダーから背中を殴られて痛みと共に地面へと前のめりで倒れてしまう。

 

「う……ううっ……」

 

「どうしたぁ?そんな物か!」

 

バッタモンダーは地面に倒れたバタフライの元に歩いていくと倒れている彼女を容赦無く横から蹴り飛ばす。

 

「がはあっ!?」

 

バタフライは地面をゴロゴロと転がるとそのまま建物に激突。体中に痛みが走る中、彼女は苦しそうにしつつもバッタモンダーを睨む。

 

「ゲホッ、ゴホッ……くうっ……」

 

「立てよ。俺が受けた屈辱、何倍もの痛みにしてお前に返してやる。お前が苦痛に歪む顔をソラ・ハレワタールが見たらなんて思うんだろうなぁ……今から楽しみだね」

 

「誰が……そんな事を……」

 

バッタモンダーがここにはいないソラへと自分が離脱したせいでバタフライ含めたプリキュア達が苦しむ目に遭っている様子をソラへと見せつける事を画策。

 

そして、バタフライはそんな事をさせないためにもどうにか立ち上がる。勿論このままでは勝ち目なんて無い。それでも、ここにいないソラやカゲロウの中に囚われてしまっているアサヒのために最後まで戦い抜く事を誓うのだった。




また次回もお楽しみに。
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