「私は手札から、深海のディーヴァを通常召喚よ」
深海のディーヴァ
ATK/200 星2 チューナー
雪乃のフィールドに、深海の歌姫である人魚がその姿を現した。召喚成功時にデッキからモンスターを呼び出す効果を持つ、1枚でシンクロ召喚を可能とする便利なチューナーだ。
「深海のディーヴァが召喚に成功したことで、その効果が発動。デッキからレベル3以下の海竜族モンスター、海皇子ネプトアビスを特殊召喚」
海皇子ネプトアビス
ATK/800 星1
そして深海のディーヴァの歌声に導かれて、深海を総べる海皇の皇子が続けて出現。敵である暗次を威嚇するかのように、手にした三叉槍を構えてみせる。
しかし深海のディーヴァはともかくとして、海皇と来たか……。確かに雪乃の使う氷結界シンクロとの相性は抜群だが、また厄介なデッキを使ってくれる。
「デッキから海皇の竜騎隊を墓地に送ることで、海皇子ネプトアビスの効果を発動。デッキからこのカード以外の海皇モンスター、海皇の重装兵を手札に加えるわ」
雪乃の命令を受けたネプトアビスは、身体の前で槍を横向きに構えると、なにやら魔法陣を展開して術式を発動。すると雪乃のデッキが光を放ち始めた。
コストで墓地を肥やしつつサーチを行うという、2重にアドを稼いでくる胡散臭い効果だ。まあ、もっと胡散臭いカードを使う俺が言ってもアレなんだけどね!
「そして海皇の竜騎隊は水属性モンスターのコストとして墓地に送られた場合、デッキから同名カード以外の海竜族を手札に加えられる。この効果で、私は2枚目の深海のディーヴァを手札に加えるわね」
「コストになった場合に真価を発揮するカードか……厄介だな」
一気に2枚のカードをサーチした雪乃を見て、暗次が目を細める。
「そして手札からサイレント・アングラーの効果を発動。このカードは自分フィールドに水属性モンスターが存在する場合、手札から特殊召喚できるのよ。来なさい、サイレント・アングラー!」
サイレント・アングラー
ATK/800 星4
あれはナッシュの使ったモンスター! シャークが何故ここに……逃げたのか? 自力で脱出を? ふざけるな凌牙!!
「私はレベル4のサイレント・アングラーとレベル1の海皇子ネプトアビスに、レベル2の深海のディーヴァをチューニング。シンクロ召喚──来なさい、氷結界の龍グングニール!」
氷結界の龍グングニール
ATK/2500 星7
俺が内心でふざけている間にもデュエルは進んでいき……雪乃はシンクロ召喚によって氷結界の三龍の一角にして、クリスタルのように輝く体躯を持つ美しいドラゴン──グングニールを呼び出していた。うーん、何度見てもふつくしいドラゴンだぜ。
「私はカードを1枚伏せ、これでターンエンド」
雪乃:LP4000 伏せカード:1枚 手札:5枚
「レベル7のシンクロモンスターを呼び出したのに、手札が全然減ってません!」
「しかも次のターンに備えて、2枚目の深海のディーヴァまで確保してある……。むう、さすがね」
ターンを終えた雪乃の状況を見て、ゆまは喜びながら。そしてツァンは渋々といった様子で、雪乃のプレイングを褒め讃える。
実際にはそれに加えて、水属性モンスターの手札コストとなった際に相手のカードを破壊する、海皇の重装兵まで確保しているからなあ。雪乃のことだし、相手ターンに手札の重装兵をコストにできるドラゴン・アイスも既に握っていそうだ。
「オレさまのターン、ドロー!」
暗次:LP4000 手札:5→6 SPC:0→1
さて、ここからは暗次のターンだが……修行の成果とやらは一体どんなもんなのだろうか。なにせ共にWRGPを戦う仲間だからな、ワクワクドキドキしてきたぜ。
「オレさまは手札の魔轟神獣ノヅチの効果を発動! 手札の魔轟神獣ケルベラルを墓地に捨てることで、コイツを特殊召喚だ!」
魔轟神獣ノヅチ
ATK/1200 星2
「そして魔轟神獣ケルベラルは手札から墓地に捨てられた場合、特殊召喚ができる。戻って来い、ケルベラル!」
魔轟神獣ケルベラル
ATK/1000 星2 チューナー
暗次のフィールドにツチノコっぽいモンスターと、3つの頭を持つ魔犬・ケルベロス……と呼ぶには少々可愛らしいモンスターが連続で呼び出される。
「さらに手札の魔轟神グリムロの効果発動、このカードを手札から墓地に捨てることで、デッキからグリムロ以外の魔轟神を手札に加える! オレさまはデッキから魔轟神レイヴンを手札に加え、そのまま召喚!」
魔轟神レイヴン
ATK/1300 星2 チューナー
そしてグリムロのサーチ経由でいつものレイヴンを呼び出す……と。なるほど、レイヴンまでのルートがとてもスムーズだ。ドロー運任せだったり、適当な魔轟神を通常召喚した後にグリムロでサーチしてた以前の暗次とは全然違うな。
「魔轟神レイヴンの効果発動! 手札を2枚捨てることで、レイヴンの攻撃力を1枚につき400、そしてレベルを1枚につき1つ上昇させる!」
魔轟神レイヴン
ATK/1300→2100
星2→星4
「この瞬間、墓地に捨てられた暗黒界の尖兵ベージと、魔轟神ルリーの効果が続けて発動! こいつらも手札から墓地に捨てられた場合に特殊召喚できるモンスターだぜ!」
暗黒界の尖兵ベージ
ATK/1600 星4
魔轟神ルリー
ATK200 星1
そうしてレイヴンの効果によって捨てられた2体のモンスター、槍を持った悪魔のようなモンスターである暗黒界の尖兵ベージと、イタズラ小僧のようなモンスターである魔轟神ルリーが次々とフィールドに蘇り……。
「アイツ、一瞬でモンスターゾーンを埋め尽くしたわよ!」
「暗次さん、凄いですねぇ」
あっという間にモンスターゾーンの埋まった暗次のフィールドを見て、ツァンとゆまが驚きの声を上げていた。……いや俺も驚いてるけどね。暗次の上がった腕前と、そして魔轟神の手札消費の荒さに。まあ、フィールドにいるモンスターたちのレベルから察するに、減った手札はすぐに回復できるんだろうが。
「へぇ……大口を叩くだけあって、ずいぶん腕を上げたのね」
「あったりめえだ! じゃなきゃWRGPに出場しようだなんて思わねえよ! それにオレさまの攻めはこれからだぜ!」
雪乃からも上達っぷりを褒められた暗次は、そのまま一気にアクセルを全開にしてスピードを上昇させる……のだが、それでも雪乃に追い付くのが精一杯、というところにマシンの性能差を感じてしまうな。
「フフ、そう簡単には抜かせないわよ?」
「チッ、嫌な女だ。まあいい、オレさまはカードを1枚伏せる! そしてレベル1の魔轟神ルリーに、レベル4となった魔轟神レイヴンをチューニング! シンクロ召喚──出でよ、魔轟神レイジオン!」
魔轟神レイジオン
ATK/2300 星5
魔轟神レイヴンの変化した4つの輪に、魔轟神ルリーが飛び込んでいき……眩い光の中から、魔轟神界の最高階級である“神界”の第二の王である、レイジオンが姿を現した。
「魔轟神レイジオンの効果発動! このカードがシンクロ召喚に成功したとき、自分は手札が2枚になるようにドローする。オレさまの手札はゼロ、よって2枚のカードをドロー!」
そうして2枚のカードをドローした暗次は、ニヤリと笑うと再びその手を前方へとかざす。
「まだまだ行くぜ! レベル4の暗黒界の尖兵ベージとレベル2の魔轟神獣ノヅチに、レベル2の魔轟神獣ケルベラルをチューニング! シンクロ召喚──出でよ、魔轟神ヴァルキュルス!」
魔轟神ヴァルキュルス
ATK/2900 星8
今度はケルベラルの変化した2つの輪に、暗黒界の尖兵ベージと魔轟神獣ノヅチが飛び込んでいき……光の中から魔轟神のNo.2にして神界の第一の王、ヴァルキュルスがその姿を現した。
「この瞬間、私は手札のドラゴン・アイスの効果を発動するわ!」
そうして魔轟神ヴァルキュルスが暗次のフィールドに特殊召喚されたタイミングを見計らって、雪乃はモンスター効果の発動を宣言した。それにしてもやっぱり握ってたか、ドラゴン・アイス。
「手札を1枚捨てることで、このカードを手札または墓地から特殊召喚する。私は手札から海皇の重装兵を墓地に捨てて、ドラゴン・アイスを守備表示で特殊召喚よ」
ドラゴン・アイス
DEF/2200 星5
「ほう、壁モンスターを増やしてきたか……」
雪乃のフィールドに現れた、その名の通りに氷で肉体が構成されたドラゴン──ドラゴンというよりなんか竜人っぽい姿だが──を見て、暗次が眉を顰める。きっと、壁が増えたことでダイレクトアタックが出来なくなっちまったとか、そんなことを考えているんだろうな……。
「あら? この私が、ただ壁モンスターを呼び出すだけで済ませるとでも? 海皇の重装兵は水属性モンスターの効果を発動するために墓地に送られた場合、相手フィールド上の表側のカードをなんでも1枚破壊できるのよ」
「な、なんだとぉ!?」
雪乃から重装兵の効果を聞いた暗次が、その目を見開きながら驚愕の声を上げる。
「海皇の重装兵は雪乃さんが先攻1ターン目に手札に加えたカード……そうか、雪乃さんは最初からこれを狙っていたんですねっ!」
「モンスターの特殊召喚に反応して飛んでくる破壊コンボ……中々厄介ね……」
雪乃の狙いを理解したゆまが賞賛の声を、ツァンは自分が相対した時のことを考えてか、顎に手を当てて考え込む……という反応をそれぞれ返していた。
「私は海皇の重装兵の効果で、魔轟神ヴァルキュルスを破壊するわ!」
墓地からヌッと現れた海皇の重装兵は、その両手の盾を合体させると、暗次のフィールドにいる魔轟神ヴァルキュルス目掛けて猛烈な勢いで突進をかまし……激しく衝突。そのまま双方ともに砕け散っていった。
「く、くそう……オレさまのヴァルキュルスが……!」
まだ魔轟神の手札からポイ捨てして特殊召喚するコンボを繋げるつもりだったのだろう。わなわなと悔しさに手を震わせる暗次だったが、しかしそれで破壊されたヴァルキュルスが戻ってくるわけもなく。
「ええい、バトルだ! 魔轟神レイジオンでドラゴン・アイスを攻撃!」
暗次は仕方なくバトルフェイズに移行すると、そのままレイジオンでの攻撃を宣言した。
魔轟神レイジオン ATK2300 VS ドラゴン・アイス DEF/2200
レイジオンの放った光弾を受け、ドラゴン・アイスが爆散する。その際に発生した爆煙が雪乃を飲み込むが……しかしドラゴン・アイスは守備表示。故に雪乃は何事もなく、そのまま煙を突き抜けていった。
「あら? いいのかしらドラゴン・アイスを破壊しちゃって。また次のボウヤのターンに、同じことが起こるかもしれないわよ?」
「白々しい……残しておいたら、次のターンにシンクロ召喚の素材にするつもりだろ? お前が前のターンで深海のディーヴァを手札に加えたこと、覚えてるんだからな!」
バトルを終えると同時に飛んできた雪乃の煽りに、暗次は腕を振り上げながら言い返す。まあドラゴン・アイスを残しておいたら、間違いなくトリシュが飛んでくるもんな。深海のディーヴァで適当なレベル2を呼び出してさ。
「オレさまはこれでターンエンドだ!」
暗次:LP4000 伏せカード:1枚 手札:2枚
カードを追加で伏せなかった、ってことはあの2枚の手札は両方ともモンスターか。もし雪乃がドラゴン・アイスを使わなかったら、やはりヴァルキュルスの効果で魔轟神をポイ捨てして、そのまま追加展開していたんだろうな。……本当に強くなったなあ、暗次。山籠もりってスゲー。
「私のターン、ドロー!」
雪乃:LP4000 手札:3→4 SPC:1→2
「私は氷結界の龍グングニールの効果を発動。手札を2枚捨て、魔轟神レイジオンとその伏せカードを破壊するわ!」
ターンが回って来て早々、雪乃はグングニールの効果で暗次の伏せカードを剥がしにかかる。雪乃の手札には1枚でシンクロ召喚を可能にする深海のディーヴァがいる以上、ここで何もできないと暗次の敗北が確定するわけだが……。
「チェーンして罠カード、弑逆の魔轟神を発動! 手札を1枚選んで捨て、墓地から魔轟神ヴァルキュルスを特殊召喚! そしてさらに、お前のフィールドの氷結界の龍グングニールを破壊する!」
とか心配してたら、ずいぶんと強力な罠を伏せてるじゃないか。手札コストが必要とはいえ、破壊と蘇生を同時にこなすとかエグいねえ。
「どうだ! これで形勢逆転だぜ!」
「……少しはやるようね。でも、喜ぶにはまだ早いんじゃないかしら? 私はまだ、通常召喚すら行っていないのよ?」
雪乃は目を細めながら、調子に乗る暗次へと釘を刺す。どうやらガッツポーズをして勝ち誇る暗次を見て、少しばかりイラっと来たご様子。
「でもグングニールの破壊効果を使う為のコストとして手札を2枚も使っちゃったから、雪乃の残り手札は2枚……ここからどう立て直すのかしら」
「この状況を立て直せる、深海のディーヴァ1枚から呼び出せるシンクロモンスターといえば……やっぱりA・O・Jカタストルですよ! 以前、雪乃さんが使っているところを見ましたしっ!」
俺の両隣にいるツァンとゆまが、雪乃の次なる一手を予想し合って盛り上がる。確かにゆまの言う通りに、カタストルを呼び出してヴァルキュルスを粉砕。罠カードでも伏せてターンエンド、というのが無難なところではあるが……雪乃って結構前のめりというか、攻撃的なデュエルを好むんだよなあ。
雪乃の“私用”に付き合わされた先で行ったタッグデュエルでも、俺がサポートに回らないと危ないって場面が多々あって……。
「私は深海のディーヴァを召喚して、その効果を発動。デッキから深海のセントリーを特殊召喚するわ」
深海のディーヴァ
ATK/200 星2 チューナー
深海のセントリー
ATK/400 星2
深海のディーヴァの歌声によって、今度は厳つい顔をしたガタイの良い
「深海のセントリーの効果! このカードが特殊召喚に成功した場合、自分のデッキの上から2枚を墓地に送ることで、墓地からレベル4以下の水属性モンスターを回収できる。私が回収するのは、海皇の重装兵!」
深海のセントリーが手にした三叉槍で適当な空きスペースを指し示すと、そこから水が勢いよく噴出してきて──その水流に乗って、海皇の重装兵が飛び出してきた。
「またソイツか……厄介なカードを!」
「まだまだ行くわよ? そして墓地から水属性モンスター1体を除外することで、手札から水の精霊アクエリアを特殊召喚!」
水の精霊アクエリア
ATK/1600 星4
雪乃の墓地にいたサイレント・アングラーが次元の渦に吸い込まれていき、その代わりに少女の姿をした精霊が雪乃のフィールドに現れる。
これでレベルの合計は8か。墓地からドラゴン・アイスの弾となる重装兵をサルベージしつつ、レベル8シンクロの準備を整えるとは。
「上手いな」
「ええ、攻撃と防御を同時に行う完璧な一手だわ」
「さすが雪乃さんです!」
俺の漏らした呟きにツァンとゆまが反応をし、そしてデュエル中の雪乃もまた「どうかしら?」とでも言わんばかりの流し目を送ってきたので……とりあえず両手を軽く上げ、降参のポーズを送ってみる。すると、雪乃は満足気に微笑みながら暗次へと向き直った。
「行くわよ。私はレベル4の水の精霊アクエリアと、レベル2の深海のセントリーに、レベル2の深海のディーヴァをチューニング! シンクロ召喚──来なさい、スクラップ・ドラゴン!」
スクラップ・ドラゴン
ATK/2800 星8
シンクロ召喚の演出である光の中から、廃材でその身を構成したドラゴンが現れ──身体の所々から突き出たパイプより蒸気を噴出しつつ、雪乃のフィールドへと舞い降りた。
「スクラップ・ドラゴンの効果発動! 私のフィールドの伏せカードと、ボウヤの魔轟神ヴァルキュルス。この2枚を同時に破壊するわ!」
スクラップ・ドラゴンの吐いた火炎によって、暗次のヴァルキュルスが破壊され……そしてそれと同時に、スクラップ・ドラゴンを構成するパイプから噴き出てきた蒸気によって、雪乃の伏せていたカードも破壊される。
伏せカードは攻撃の無力化か。ドラゴン・アイスと重装兵のコンボが再度使用可能になった今では、もう無くても問題ないという判断なんだろうな。……しかし俺もそうなんだけど、ツァンとよくデュエルするようになった連中が、いつの間にか攻撃の無力化をデッキに投入してるこの現象はなんだろうね。元から入れてたゆまはさておき、俺やアキさんに雪乃と、無力化の輪が広がっていってるのを感じる……。
「バトルよ。私はスクラップ・ドラゴンでプレイヤーにダイレクトアタック!」
そうして暗次のフィールドを更地にした雪乃は、そのままバトルフェイズに移行して攻撃を宣言。雪乃の命令を受けたスクラップ・ドラゴンは、再びその口に火炎を溜め……無防備な暗次目掛けて一気に放出した。
「ぐっおおおぉぉ!?」
暗次:LP4000-2800=1200
爆煙に飲み込まれた暗次が叫び声を上げ、それと同時にそのライフが大きく減少していく。頑張って、暗次! ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、雪乃に勝てるんだから! 次回、暗次死す。デュエルスタンバイ!
「私はこれでターンエンドよ。さあ、足搔いてごらんなさい?」
雪乃:LP4000 伏せカード:0枚 手札:1枚
手札は1枚のみでフィールドがすっからかんの暗次に対し、雪乃はフィールドには万能除去持ちのスクラップ・ドラゴン、そして手札にはドラゴン・アイスの弾となる海皇の重装兵を抱えている。ぶっちゃけもう雪乃の勝ちじゃね? ってくらいの状況だが……はてさて、暗次はこれをひっくり返せるのだろうか。他人事だから無責任にワクワクさせて貰おうじゃないか。
「クソ、アカデミアの女王の名は伊達じゃねえって事か……だが! オレさまのターン!」
暗次:LP1200 手札:1→2 SPC:2→3
勢い良くカードをドローした暗次は、ドローカードを確認した途端にその目を鋭くした。どうやら、この状況を打開するカードが引けたようだ。
「手札からSp-エンジェル・バトンを発動! デッキからカードを2枚ドローして、その後手札を1枚墓地に送る! そして墓地の魔轟神獣アバンクの効果! 手札の魔轟神獣ガナシアを墓地に捨てることで、このカードを墓地から特殊召喚する!」
魔轟神獣アバンク
ATK/1000 星2 チューナー
「そして魔轟神獣ガナシアは手札から墓地に捨てられた場合、フィールドに特殊召喚できる! 来い、魔轟神獣ガナシア!」
魔轟神獣ガナシア
ATK/1600 星3
白く発光する魔法陣を潜り抜けて、暗次のフィールドに青い体毛を持つビーバーと、ちっこいゾウさんが連続で特殊召喚される。あら可愛い。
「墓地の魔轟神クシャノの効果を発動! 手札の魔轟神クルスを墓地に捨てることで、このカードを墓地から手札に加え……墓地に捨てた魔轟神クルスの効果を発動! 墓地から魔轟神グリムロを復活だ!」
魔轟神グリムロ
ATK/1700 星4
「最後に、今手札に回収した魔轟神クシャノを通常召喚!」
魔轟神クシャノ
ATK/1100 星3 チューナー
暗次の連続召喚はそれで止まることなく、続けて烏の羽根を持つ堕天使風の魔轟神、グリムロと、眼鏡をかけた学者風の魔轟神、クシャノが呼び出された。
「あの状況からここまで……暗次さん、凄いです……!」
「なるほど、修行してきたって豪語するだけはあるわね……」
あっという間にモンスターを再展開してのけた暗次を見て、ゆまが感嘆の声を上げる。そしてツァンも渋々ながらとはいえ、ここに来てようやく暗次の腕を認めたようだ。
いやしかし、2枚の手札でここまでやるとは。……でも暗次はブリュトリシュといったお高いシンクロモンスターは持ってないだろうし、それに雪乃もドラゴン・アイスと重装兵を温存してるしで……これはわからなくなってきたな。
「さあ行くぜ女王様よ! オレさまはレベル3の魔轟神獣ガナシアに、レベル3の魔轟神クシャノをチューニング! シンクロ召喚──出でよ、魔轟神アンドレイス!」
魔轟神アンドレイス
ATK/2400 星6
クシャノの変化した光の輪にガナシアが飛び込んでいき、眩いばかりの光が弾けた後に姿を現すのは、大剣を手にした銀髪の堕天使という、俺も見たことのない魔轟神だった。
一万以上の種類がある──もうストロング十九の名言はいいって?
「魔轟神アンドレイスの効果発動! このカードは特殊召喚に成功したとき、デッキからカードを2枚ドローして、その後手札を1枚選んで捨てる!」
「ドローをした後に“捨てる”効果ね……」
暗次の説明を聞いた雪乃が警戒に目を細める。
「ただし、相手は手札を1枚捨てることでこの効果を無効にできる! さあどうする? 無効にするか、しないのか!」
なるほどな。あわよくば雪乃の握っている重装兵を叩き落そう、という魂胆でのシンクロだったか。この状況での2ドロー1捨ては大きいが、しかしドラゴン・アイスと重装兵による壁召喚&破壊のコンボを捨てるほどではないだろう。
「無効にはしないわ。その効果、通すわよ」
「チッ、そう簡単に乗ってこねえか。まあいい、ならばオレさまは2枚ドローだ!」
「でもその効果にチェーンして、墓地のドラゴン・アイスの効果を発動よ。手札を1枚墓地に捨てて、このカードを特殊召喚するわ! 捨てたカードはもちろん、海皇の重装兵……!」
結局、雪乃はアンドレイスの効果こそ通すものの、その誘発効果にチェーンしてドラゴン・アイスの効果を切ることに決めたようだった。
まあ、ここで暗次が魔轟神キャシーやグラファのようなカードを引き当てたらアウトだもんな。使わざるを得ないというか。
ドラゴン・アイス
DEF/2200 星5
「カード、ドロー! そして手札を1枚墓地に送るぜ?」
チェーンの逆順処理により、まず雪乃のフィールドにドラゴン・アイスが復活して、その後アンドレイスの効果によって暗次はカードを2枚ドロー。その後、引いたカードのうち1枚を墓地に捨て……。
「オレさまが墓地に捨てたカードは、暗黒界の龍神グラファ! このカードは効果で手札から墓地に捨てられた場合、相手のカードを1枚破壊できる効果を持つ! オレさまはこの効果でスクラップ・ドラゴンを破壊する!」
案の定とでも言うべきか、グラファの効果が発動。しかもそれだけでなく──。
「さらに魔轟神アンドレイスの第二の効果も発動だ! アンドレイスは相手の手札から墓地にモンスターが送られた場合、そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚できる!」
続けて発動した、魔轟神アンドレイスの更なる効果が雪乃を襲う。
なるほど。第一の効果で相手に手札を捨てさせておいて、捨てたのがモンスターだったら、第二の効果でそれを奪い取ることができる……ということか。中々いやらしい効果をしている。
「私のモンスターを奪うですって!?」
「もっとも、この効果で奪ったモンスターの効果は無効になっちまうけどな」
「……でも、私がさっき捨てた、海皇の重装兵の効果の発動を止める事はできないようね。魔轟神アンドレイスの効果にチェーンして、私は海皇の重装兵の効果発動! 魔轟神獣アバンクを破壊するわ!」
雪乃がチェーンを宣言した事で、再び逆順処理が開始される。まず海皇の重装兵の捨て身タックルによって魔轟神獣アバンクが砕け散る。そして次に暗次のフィールドに海皇の重装兵が守備表示で特殊召喚され、最後にスクラップ・ドラゴンが雷に撃たれて爆散する。
「海皇の重装兵は頂いたぜ!」
「くっ……それでも、チューナーである魔轟神獣アバンクは破壊したわ。これでボウヤの攻め手は途切れたも同然よ」
自分のモンスターを奪われた雪乃は少々悔し気な表情になりながらも、しかし暗次のチューナーを葬ったことで、暗次が更なるシンクロ召喚によって強力なシンクロモンスターを呼び出すことを封じたと喧伝する。しかし……。
「手札からSp-ヴィジョンウィンドを発動! その効果により、墓地に存在するレベル2以下のモンスターを特殊召喚する! オレさまは墓地から魔轟神レイヴンを特殊召喚だ!」
魔轟神レイヴン
ATK/1300 星2 チューナー
暗次は残る最後の手札によって、墓地からチューナーを復活させてしまった。これには雪乃も思わず渋い顔。
「誰の攻め手が途切れたってぇ? あぁん?」
「……器の小さい男は、女のコからモテないわよ?」
ここぞとばかりにふんぞり返ってみせる暗次に対し、雪乃は不愉快そうに眉を顰めながら負け惜しみを口にする。
……いや負け惜しみなんだろうが、美少女であるゆきのんがそれを言うと……なんかこう、洒落にならない破壊力があるんで、やめてもらっていいっすかね? 身内デュエルでツァンを大人気なく煽り散らかしてる俺にも刺さるし(小声)
「ククク……わかってるぜ? テメエがシンクロモンスターの魔轟神アンドレイスを無視してまでチューナーを葬って、必死こいて出させまいとしてるのは……コイツのことだろ?」
しかし流れ矢で勝手にダメージを受けてる俺と違い、暗次は雪乃の煽りを全く気にしていない様子で、ニヤリと笑いながら1枚のシンクロモンスター、魔轟神獣ユニコールのカードを雪乃に見せつけていた。
いやマジで調子に乗りまくってんなアイツ。絶好調やんけ。あまりにも絶好調すぎて、なんかこう、逆転負けのフラグが立ったのをひしひしと感じるんじゃが。
「……そう思うのなら、呼び出してみればいいんじゃないかしら?」
薄い笑みを浮かべたまま、ほんのわずかな間のみ軽く目を閉じ──そうして再び目を開いた雪乃は、前方をしっかりと見据え、暗次を振り返ることなく加速していく。
「ヘッ、強がりを……! ならお望み通り呼んでやるぜ! オレさまはレベル2の海皇の重装兵に、レベル2の魔轟神獣アバンクをチューニング! シンクロ召喚──出でよ、魔轟神獣ユニコール!」
魔轟神獣ユニコール
ATK/2300 星4
雪乃の言動を煽りと受け取ったのだろう。暗次は意気揚々と、シンクロ召喚によって頭部から一本の角が生えた白馬──魔轟神獣ユニコールを呼び出した。
……魔轟神についてはあまり詳しくないが、それでもこの魔轟神獣ユニコールというカードについては詳しく知っている。自分と相手の手札が同じ枚数、という面倒臭い条件こそあるものの、それさえ満たしてしまえば、問答無用であらゆるカードの発動を無効にしてしまう強力なモンスターだ。
とはいえその効果の特性上、普段なら手札を伏せるなりなんなりして、お互いの手札の枚数をズラしてしまえばそれで終わりなのだが……。
「まずいわね。魔轟神獣ユニコールはお互いの手札枚数が同じとき、相手の発動した魔法・罠・モンスターの効果を無効にして破壊する効果を持つ。次のターン、雪乃の手札は1枚になるけれど……」
「あのカードは効果処理時の手札枚数を参照するからな。スピードスペルにしろモンスターにしろ、カードをプレイした瞬間に手札はゼロに逆戻り。魔轟神獣ユニコールの永続効果に引っかかってハイ無効、って訳だ」
「そ、それじゃあ大ピンチじゃないですか!? 雪乃さんファイトです、ファイトですよーっ!」
ツァンと俺の解説を聞いたゆまが、大慌てで雪乃に声援を飛ばす。普段いがみ合ってるツァンも、なんだかんだで雪乃の応援っぽい雰囲気だし……。うーん、同じ男子のよしみで暗次を応援してやりたいところだが……すまんな。俺ちゃんは可愛い女の子の味方なのだガッハッハ。というわけでゆきのんがんばえー!
「さあ、バトルといこうか! オレさまは魔轟神獣ユニコールで、ドラゴン・アイスを攻撃!」
魔轟神獣ユニコール ATK/2300 VS ドラゴン・アイス DEF/2200
暗次から命令を受けた魔轟神獣ユニコールは、ドラゴン・アイス目掛けて突進を開始し──そのまま体当たりで、氷のドラゴンを真正面からぶち抜いて砕け散らせた。
「続けて魔轟神アンドレイスでダイレクトアタック!」
ユニコールに続いて命令を受けた魔轟神アンドレイスは、手にした大剣を大きく振りかぶりつつ、雪乃に向かって飛翔。そのまま大剣を振り下ろし、Dホイールを駆る雪乃を斬り付ける。
「きゃああっ……!」
雪乃:LP4000-2400=1600
雪乃が可愛らしい悲鳴を上げるとともに、これまで無傷だったそのライフが大きく削り取られていく。
「へ、オレさまはこれでターンエンドだぜ! このデュエルは貰った!」
暗次:LP1200 伏せカード:0枚 手札:0枚
勝利を確信した暗次は、ターンエンドを宣言するとともに大きくガッツポーズ。そのまま勝利宣言をかますのだが……さっき当の暗次が「アイツ終わったな」って状況をひっくり返したばかりだからなあ。それに。
「驚いたわ、まさかボウヤがここまで楽しませてくれるだなんて。でも残念ね、このデュエルはこのターンで終わりよ。もちろん、私の勝利でね」
「……つまんねー冗談なんか言ってねえで、さっさとカードをドローしな!」
雪乃に気圧された様子が全くないってのが気になるんだよなあ。今も元気に、暗次に勝利宣言をやり返してるしさ。
「つまらない冗談かどうか、その目で確かめてみなさい。私のターン!」
雪乃:LP1600 手札:0→1 SPC:3→4
「私は墓地の罠カード、氷結界の効果を発動。このカードをゲームから除外することで、デッキからレベル5以上の水属性モンスターを墓地に送る。私はデッキから彩宝龍を墓地に送るわ!」
カードをドローした雪乃は、すかさず墓地に眠っていたカードの効果を発動させる。
……なるほど、そう来たか。ドローフェイズに増えた手札を抱えたまま、カードの墓地効果を使って動くと。確かにこれなら、魔轟神獣ユニコールの効果を回避できるな。
「そしてその後、墓地から水属性モンスター1体を手札に加えることができる! 私は今墓地に送った彩宝龍を手札に回収! そして彩宝龍は効果によって墓地から手札に加わった場合、特殊召喚できる!」
彩宝龍
ATK/0 星5 チューナー
雪乃のフィールドに、宝石のように美しく輝く水の龍が現れる。
「さらに墓地からクリスタル・ガールの効果を発動! このカードは自分フィールドにレベル5以上の水属性モンスターが存在する場合、墓地から特殊召喚できる!」
クリスタル・ガール
ATK/200 星1
続けて雪乃は水色髪の可愛らしい魔法使いを、その墓地効果によって蘇生。手札を消費することなく、チューナーと非チューナーを並べてみせた。
「ユニコールの効果を回避してモンスターを並べただと!? だがそれでも、オレさまのモンスターたちを突破してライフを削り切ることなんて出来っこねえ!」
嫌な予感を感じ取ったのだろう。暗次は、まるで己自身を鼓舞するかのように大声を上げ、雪乃の見通しを間違っていると否定する。しかし暗次の批判を耳にしても、雪乃の態度は崩れることなく……。
「甘いわね……私はレベル1のクリスタル・ガールに、レベル5の彩宝龍をチューニング! シンクロ召喚──来なさい、
雪乃はそのままシンクロ召喚によって──その名の通りに白いオーラを纏った──白いイルカのモンスターを呼び出した。
ホワイト・オーラか……確か漫画版ARC-Vの敵キャラ、蓮が使ってきたカテゴリーだったよな。レベル8シンクロの
ていうかさ、コイツを出してきたってことはさ。もしかしてゆきのんってば……白闘気白鯨の方も持ってたりすんの? あの効果盛り盛りのげきつよシンクロを。いやさすがにねーよなHAHAHA!
「魔轟神アンドレイスを対象に、白闘気海豚の効果発動! このカードは1ターンに1度、相手モンスターの攻撃力を、ターン終了時まで元々の攻撃力の半分にできる!」
「な、なんだとぉーっ!?」
魔轟神アンドレイス
ATK/2400→1200
白闘気海豚の纏っているオーラが魔轟神アンドレイスを包み込んだかと思えば、アンドレイスはゼェハァと肩で息をし始め……その攻撃力が大きくダウンしていく。そして暗次の残りライフはちょうど1200、と。彼はもう終わりですね。
「バトルよ! 私は白闘気海豚で、魔轟神アンドレイスを攻撃!」
白闘気海豚 ATK/2400 VS 魔轟神アンドレイス ATK/1200
雪乃からの命令を受けた白闘気海豚はその口を開くと、そこから魔轟神アンドレイス目掛けて強烈な水流を発射。絶賛弱体化中のアンドレイスはその水流に耐えられず、に爆散し……。
「ぐおおおぁーっ!?」
暗次:LP1200-1200=0
その際に発生した戦闘ダメージにより、ジャストキルが成立。暗次のDホイールが白煙を吹いて強制停車し……それと同時に、モニターに雪乃の勝利が表示される。
◇
「お疲れさん、2人ともいいデュエルだったぜ!」
「雪乃さんも暗次さんも、凄かったですよー!」
どうせこの時間は俺たちしかいないのだからと、俺とゆまとツァンの3人はコース上の暗次と雪乃のところへと駆け寄っていき……その内の俺とゆまが、暗次と雪乃の双方を称える言葉を口にする。
「クッソー、負けた負けた! ユニコールをシンクロ召喚したときは、絶対勝ったと思ったんだがな……まさかあんなシンクロモンスターが出てくるとはよぉ」
すると暗次が、悔しさ全開といった感じの言葉を口にしながらメットを脱ぎ。
「うふふ、どうかしら? WRGPに備えて用意した新たなカードよ。……本当は、ボウヤの為に用意したカードだったのだけれどね。ゴメンなさい……ハジメテ、奪われちゃったわ……」
同じくメットを脱いでDホイールから降りてきた雪乃が、泣き真似をしながら俺の腕へと抱き着いてきた。
「こ、コラ! 人前でなにしてくれてんのよこのバカ!」
「人聞きの悪いこと言うんじゃねえ! ていうか、だったら大人しく負けとけや!」
当然、ツァンと暗次の2人が雪乃のその行動と発言を咎めるものの。
「イヤよ。私は欲張りなの。勝利もこのボウヤも、どっちも私のモ・ノ♡」
雪乃はノリノリでプンスカと怒る2人に言い返しつつ、その顔に心底楽しそうな笑顔を浮かべていた。……なんというかこう、今ので暗次と雪乃の立場が決まった気がするな。弄る側と、弄られる側って感じで。
俺? 俺は今まで弄られる側だったが、最近になってようやく対処法を覚えてな。そう……。
「ああー、雪乃にコントロールを奪われちゃう~!」
下手に照れたりするんじゃなく、ゆきのんのフリに乗っかっていくという対処法を!
なんかこう、今までのパターン的に、雪乃は色仕掛けや過激な言動で相手の動揺を誘い、そこから弄りに行くってのが基本だからな。なので下手に反応するんじゃなくて、逆に乗っかっていく方が被害が抑えられるって寸法よ。
まあそんなわけで、俺は最近覚えたこの対雪乃戦法をさっそく実行。抱き着いて来る雪乃から逃げようとするのではなく、逆にノリノリで受け入れる姿勢を取ってみせる。
「アンタもふざけてないで、さっさと離れなさいっての!」
「おっとっと」
すると案の定、ぷんすかとお怒りモードに入ったツァンがズンズンと歩み寄ってきて、俺と雪乃を無理矢理に引き剥がしてくれた。
ま、ざっとこんなもんよ。俺のイメージを下げることなく、ゆきのんの色仕掛けを切り抜ける……フッ、我ながら完璧な対処法だぜ。
でもこれはツァンみたいなツッコミキャラが、フィールド上に存在する場合限定の対処法なんだけど。以前、ゆきのんと2人きりの時にこの対処法をやってみたら、なんかやってくる色仕掛けがどんどんエスカレートしていってね? いやー、あの時はヤババナイトだったわ。主に俺の理性が。
「ところで、デュエルは雪乃さんが勝ったワケなんですが……これってどうなるんですか?」
そうして俺が雪乃から引き離されたタイミングで、ゆまが首を傾げながら暗次の扱いについてを口にした。そういえば、このデュエルって暗次と雪乃、どっちが俺たち3人と一緒にチームを組むかってのを賭けたデュエルだったね。
……確かに負けはしたけど、このデュエルで暗次もかなり強くなったことが判明したんだし、別に5人でチーム組めばいいんじゃねえかな? チーム5D'sもベンチ要員でアキさんを、ピットクルーって事で龍亞龍可を入れてたし。いやでもなんだかんだでみんな大会でデュエルしたいだろうし、人数多すぎても困るか……でも男が俺だけってのはなんかアレだしな……。ここはやはり、なんとかして暗次を巻き込みたいところだが。
「あら、そんなの決まってるじゃない」
そんな俺の内心を知ってか知らずか。デュエルの勝者という事で、暗次の人事権を握った雪乃が一歩前へと出てその口を開く。雪乃は得意気な表情を浮かべながら、暗次、ツァン、ゆま、そして最後に俺の順で周囲を見回し……。
「私とボウヤがスタメンで固定。残り1枠をツァンとゆまが交代で回して、そしてヘッドバンドのボウヤは緊急時の補欠……そんなところじゃないかしら?」
そのまま自身の思い描くチーム編成について語った。
「うーん、私も本当はスタメンが良かったですけど……。それより、よかったですね暗次さん! 雪乃さんに認められたみたいですよ?」
雪乃の提案を聞いた他のメンバーの反応は様々であり、ゆまは──少々不満げな様子ながらも──その案を受け入れる模様で、暗次のチーム入りを歓迎して。
「お、おう……。なんか都合よく使われてるだけのような気もするが……でも負けちまったのは事実だしなあ……」
暗次もまた、デュエルに敗北した手前からか、雪乃の案に全面的に従う姿勢を示していた。
しかし、なんやかんやで雪乃案を受け入れるっぽいゆまと暗次に対し、納得がいかない様子のお姫様が一人。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
そう、雪乃をライバル視しており、対抗意識がバリバリなツンデレ娘のツァンである。暗次とゆまが雪乃の提案を飲むのが意外だったのか、ツァンは慌てた様子で声を上げ。
「なんで後からやって来たアンタが、シレっとスタメンに入ってるのよ! ボクとコイツとゆまがスタメンで、アンタが補欠でしょ!?」
眉を吊り上げながら、元からつるんでいた自分たち仲良し3人組こそがスタメンに相応しく、そこに後から来た雪乃こそ譲るべきだと主張するのだが……。
「ボウヤ、実技1位。私、実技2位。実力を考慮した結果よ、他意はないわ」
「ぐ、ぐぬぬ……!? 私情100%のクセに……! でも言い返せない自分が憎い……!」
実技試験の結果を盾にされ、そしてそれに反論できない自分自身に対し、全力で悔しがっていた。
制圧タイプのデッキを使う自分こそ様子見の先鋒に相応しいとか、その気になればいくらでも文句をつけられるだろうに……変なところで律儀というかなんというか。でもまあ、スタメンに関しては今ここで慌てて決める事でもないだろう。後でじっくり話し合って決めればいいんだからな。
「まあまあ、とりあえず誰が出るかってのはその場に応じて決めるとしてさ。それよりメカニックとか、そっちの方の問題はどうする?」
俺はそんな事よりもとばかりにスタメン関連の話題を打ち切ると、とりあえず前々から気にしていた事を口にする。俺たちってデュエル要員ばかりいて、Dホイールの面倒を見られる人間がいねえんだよね。まさか遊星たちに頼るわけにもいかねえし。
「メカニック、ねえ……それ、必要なの?」
しかし、俺の話を聞いたツァンから帰ってきたのは意外な返事だった。
「そりゃあ、専用にチューンアップしたDホイールを駆る、プロデュエリストたちにとっては必要な存在でしょうね。でもボクたちはただの学生なんだし、普通のメンテナンスで十分じゃないの?」
「言われてみれば確かに……」
確かに、ツァンの言うことも一理あるな。俺のDホイールは遊星やブルーノが定期的に弄ってくれているとはいえ、所詮は市販のパーツしか使ってねえしな。高い金をかけたりチームとしてのコネを使って最新のパーツを仕入れ、最高のDホイールを組んできているプロのチームに比べたら、メカニックの必要性は薄いか……。
「ツァンの言う通りね。まあ、いないよりかはいた方がいいのは確かだけど……試合前に、業者にメンテナンスを依頼する程度でいいんじゃないかしら?」
「なら、オレさまが腕のいい修理屋を紹介してやるよ。店の宣伝にもなるって言えば、きっと大喜びでやってくれるだろうぜ」
雪乃がツァンの意見に同意を示し、そして暗次が業者の紹介をしてくれることに決まったことで、俺の懸念事項は無事消滅した。……となれば、だ。
「そうか、じゃあとりあえず……チーム・アカデミア、ここに結成だ!」
「0点よ。捻りが無さすぎるし、そのまんますぎるわ」
俺は拳を突き上げながらチーム結成の宣言をするのだが、しかし雪乃からダメ出しを食らってしまった。……わかりやすくていい気がするんだけど、駄目か。
生憎と、ここでパッと格好いいチーム名を思いつけるほどのセンスは俺にない。ならば。
「……チーム名はまた後で決めるとして、とりあえずチーム結成だ!」
俺は俺自身の特殊効果を発動! 俺は1ターンに1度だけ、問題を先送りにできる!
というわけでチーム名は後回しにして、とりあえず結成の宣言だけでも済ませておくことに。
そうして俺の宣言を聞いた雪乃たち4人がそれぞれ右手を掲げ、「おおー!」やら「イェー!」やら、各々好き勝手に鬨の声を上げるのだった。
ゆきのんのデッキは深海のディーヴァを始めとした深海シリーズ+海皇+フィッシュボーグやらの水属性サポートを詰め込んだ水シンクロデッキでした。相手モンスターを次々と魅了()してコントロール奪取するグレイドルや、ホワイト・オーラやら色々と考えたんですが、まあ最終的にこんな形に。
それにしても魔轟神、できることが多すぎて難しい……作者の独断と偏見に基づく独自レギュ&キャラの立場に合わせたEXデッキ縛りが入ってくるせいで余計に……。