同日。柳洞寺。
衛宮士郎、沙条綾香、アーチャー、ランチャー。その2人と2騎が、死徒とそのサーヴァント、シールダーの前に立つ。
「コイツがあの神父が言っていた……」
「ああ。アレセイア・クリキュラステラ。死徒二十七祖だ。存在自体が人類の脅威であり、そして今回の聖杯戦争においては『優先討伐対象』。駆除すれば教会から追加の令呪が与えられる。」
「え、そんなことになってたの?」
アレセイアはこの聖杯戦争の多くを吸血蝶によって把握しているが、「把握しきれていない」ものもある。
その1つが、冬木教会。
「いやまあ言峰神父はあれで居て敬虔だし、異端退治のためになら預託令呪の贈呈くらいはするか。」
言峰綺礼はそういう男だ。人界における自分の悪性に苦悩し、自分を異端だと自覚しながらも、苦悩するがゆえに「教義上の異端排除」をいとわぬ男だ。
「コイツが……死徒。人類の敵。」
「何を言っているんだ。世の中には良い吸血鬼もいるさ。
「衛宮くん、コイツの言うことに耳を傾けないで。死徒は人の血を吸う。そう言う生き物なの。そして、とくにこのレベルの死徒が表舞台に現れた都市は、吸いつくされて滅ぶ」
沙条綾香は、時計塔の魔術師だ。故に、魔術世界を知り、死徒二十七祖の凶悪さと強大さを知る。
数年前のフランス事変において、どれだけの無辜の民が無残に殺されたかを知っている。そして、この死徒はその事件にかかわったと目される死徒でもある。
「君たちのこの街を愛する気持ちはわかるよ。だからこの街では一滴も吸ってないって。ちゃんと福岡まで行って、しかも殺して良さそうなヤクザ事務所に限って3つくらい吸ってきただけで。」
衛宮士郎の顔が曇った。
(あ、そうか、藤村組……)
衛宮士郎は、第四次聖杯戦争のマスター、衛宮切嗣に拾われた孤児だ。
だが、生活力の足りない切嗣の代わりに、隣家の指定暴力団である藤村組が生活の面倒を見て育った側面がある。
矛盾するようであるが、正義の味方を目指す士郎は、一般的に悪の組織とされる暴力団を家族に持つと言えるのだ。
「だ、大丈夫、藤村組の人たちに手を出す気はないよ、言葉の綾って奴だ!誓ってもいい!」
アレセイアは弁明を繰り返すも、それすらも墓穴を掘るだけだった。
そもそも、「強大な人類の敵が」「なぜか自分の身辺、大切な人たちについて知っている」という状況自体がおかしいのだ。
不気味で仕方なく、そして一種の脅しにしか聞こえず、大切な人たちを守るためにここで殺しておかなければならない、という覚悟を士郎に決めさせるのみだった。
「どこまで知ってる?」
「どこまでってどういう意味だい?そこのアーチャーの真名とか、君の末路くらいは知ってるけどさ」
ギリィ!と、アーチャーが歯噛みする音がした。
(あ、不味い、口が滑った)
アーチャーの真名は衛宮士郎。
即ち、似ても似つかぬ赤毛の少年の未来の姿が、この浅黒い肌に白髪の男だ。
衛宮士郎の末路は、即ちアーチャーの真名である。
「ま、まあそんなわけで、僕は君たちと敵対する気はないんだよ。適当に観光に来たくらいでさ。わかってくれるかい?」
返答となったのは、アーチャーの矢だった。
「じゃあ仕方ないか。戦ってみるのも原作の楽しみ方のひとつだ。」
じゅるり、と音が鳴った。それは舌なめずりか。あるいは、穿たれた腕の肉が塞がる音だったかもしれない。
彼を襲う無数の矢と光弾の前で、高らかに死徒は「ある魔術」を詠唱する。それは、この場には、そしてこの場の人々にも、縁深い魔術だった。
「
体内の時間を外界と隔絶して操作する、封印指定の魔術。加速魔術。
その魔術は。
「それは、爺さんの……」
衛宮士郎の養父、衛宮切嗣の使った魔術だ。
「ああ。そうだね。この血の持ち主、
下手な英霊に匹敵する死徒の身体能力の、更に8倍速。
本来の持ち主ですらも難しい加速ではあるが、それはこの能力と「死徒」との相性が非常に良いことが理由だ。
衛宮矩賢という封印指定の魔術師が、「死徒化によって無限の加速による宇宙終焉の観測に堪えうる」と結論付けた。
それは単純な身体能力と再生能力によるものにはとどまらない。
そもそも固有時制御に加速時間の制約があるのは、加減速の終了後に「世界から時間のズレの修正」が負荷として掛かるためだ。肉体の分子レベルで、世界からの反動を受けるに等しい。
だが、死徒は違う。死徒は、初めから世界の異物であり、
故に、この魔術の反動を、死徒だけは受けない。
「ってことは、切嗣のオヤジを……?」
「契約によって得たものだよ。彼、死徒の血を欲しがってたからさ」
そしてこの魔術は、衛宮矩賢との等価交換によって得たものだ。
死徒化による根源到達を目指した矩賢には死徒の血を。
本来の歴史でも、矩賢は魔術による死徒化を完成させたが、それは不完全なものだった。
だがこの歴史では、蝶魔術によって部分的だが吸血衝動を克服したアレセイアの血を以て、矩賢はより完成度の高い死徒化薬を作り上げる。
それは、不用意に薬に触れたシャーレイの「より強大な」死徒化を招き、コルネリウス・アルバ、ナタリア・カミンスキー、デルミオ・セルバンテス、カラボー・フランプトンをはじめ、多くの魔術師と代行者が絡む大災害を引き起こす。
それは衛宮切嗣の人生にも大きな影を落とすが、それはまた別の話だ。
速度はアキレウスには及ばないだろう。アキレウスに次ぐ小アイアスにも及ばぬ。
それでも、凡百の英霊では追えぬほど早い。
ランチャーの放つ無数の
「
だが、そんな神速の死徒にも、弱点はある。
「ぐうっ!!」
血の匂いを嗅ぎつけ自動で襲う、英雄ベオウルフの剣。アーチャーが投影によって生み出した矢だ。
この剣、あるいは矢は、血の匂いを追う。ただの追尾ではない。何万の血を啜り内包する死徒に対してはより強く引き寄せられる。
獲物がどれほど疾いかなど関係ない。「血の匂いが強いかどうか」のみがこの剣にとって重要なのだ。
くりぬかれ血の流れる胴体を、アーチャーの矢とランチャーの光弾が襲う。
「
だが、その矢は届かない。
ぐじゅりと再生した脇腹には
その眼で見つめられた矢と光は、ギリィ、と音を立てながら、まるで鋼鉄の壁にぶつかったかの如くへし折れた。
「停止の魔眼!」
「ご名答」
喰らった血肉を肉体に付加して改造可能、という性質は、「魔眼」との相性がいい。なんせ魔眼は、眼球だけで完結した身体機能だからだ。適当な場所に眼球を生やすだけで十二分に機能する。
そしてその眼は、英霊すらも縫い留める。
複数の魔眼を用い、焼き切れるまで『使い捨てる前提の投射』を行っているが故だ。魔眼大投射、という。
ランチャーはクラス上対魔力を持たない。
アーチャーは対魔力スキルを持つが、ランクはDと低い。
だが、ここに一人居る。否、ちょうど今、階段を駆け上がり、衛宮士郎を追って辿り着いたものが居る。
魔力放出と大気の奔流で急加速し、その剣はアレセイアの肉体を両断する!!
即ち。
セイバー、アルトリア・ペンドラゴンの剣は止まらない。
「
ずるり、と両断された腰から上を傾かせながら、死徒は得心したかのように言った。
武器と本体を別個に止めるこの魔眼に対して、アルトリアは究極に有利であった。
神代の魔術すらはじき返す対魔力:Aに、見えないがゆえに魔眼の影響を受けぬ剣を持つ。
「邪悪な気配がすると思えば、あの時の『蛹』ですか」
「嘘でしょ?なんで気付いた?」
「直感です」
本来、アルトリアとアレセイアに面識はない。出会った時は「蛹」の姿をしていたのだから、アルトリアがその存在に気付けるわけがない。
ただし彼女が保有するスキルには「直感:A」がある。自身にとって最適な展開を感じ取るそれは、Aランクともなるともはや未来予知と同義である。
同じ匂いがする、同じ声がする、同じ気配がする。ただそれだけでその怪物の正体を看破することは容易かった。
そして、言葉を交わすのはそこまでだった。セイバーは、上半身のみとなった死徒に対し剣を振るう。
アーチャーとランチャーもまた、宝具を放つ。
セイバーの斬撃は究極の斬撃だ。ランチャーの砲撃は、本体どころか背後の森まで蒸発させる出力を持つ。アーチャーの構えた投影宝具は2本。死徒の天敵となる不死殺しのミスティルテインに治癒妨害の剣スコヴヌング。絶体絶命と言えるだろう。
もしこれが1対3の戦いであるならば。
そこには、シールダーが居た。それは、2対3の戦いであった。
少女は、マスターの前に体を滑り込ませ、大盾にて砲撃を防いだ。
白い髪を靡かせた戦士は、その剣にて2本の矢を切り伏せた。
獅子耳の魔は、騎士の王の剣を正面からその肉で受け止めてみせた。
手傷こそ追いながらも、一騎の英雄としてはあり得ざるほどの、大英雄3騎の宝具を防いだ絶技である。
「
アーチャーはその剣を知っている。ギルガメッシュ王の宝物庫より流れ、トロイアのヘクトールの手を経てアカイアの大アイアスに渡り、後には聖騎士ローランの宝具となる、その剣を。
肉を切らせながら、矢を打ち払った絶世剣はそのままセイバーの頸に伸びる。
飛びのいたセイバーは、その剣を剣で受ける。
「シールダーでありながら、剣まで使いますか……!!」
「槍も弓も使えるさ。それが、英雄、だろ!!!」
ギリリ、と音を立てながら2つの剣が鍔迫り合いをする。それは、聖剣の頂点2つの戦い。
先に音を上げたのはセイバーの剣だった。その纏う大気の奔流が、デュランダルによって切り裂かれ、内部より黄金の聖剣が顔を出す。
これは駄目だ。セイバーは歯噛みした。
究極の盾と究極の剣を持ちながら、その肉体に負った手傷さえ巻き戻るように肉が蠢き、再生していく。
正面からの「正当な剣戟」においては、誰も勝てない。
なにより、そんな耐久性に身を任せた我慢比べは、マスターである士郎の魔力供給が保たない。
「士郎!!無理やりですが宝具を解放します!!」
だから、士郎から魔力を絞りあげてでも、この場で究極の聖剣
その決断をセイバーが下した次の瞬間。
その一瞬。
その場の誰もが停止した。
停止の魔眼によるものではなく、その、死徒すら遥か凌駕する「悪性」を感じ取ったためだ。
「なんだ……
それは影だ。
それは虚数領域より生み出された汚染そのものだ。
いうなればそれは、この世全ての悪の煮凝りだ。
「待て、なんでHeaven's feelに……?しかもあれは僕の……」
「第三魔法、
「いや違う。違うけど……違わないな。あれは第三魔法により生み出された『大聖杯の穢れ』そのものだ」
それは、聖杯の汚染、即ち
おそらくは既にこの街の人々を殺し喰らっている。死徒の食欲すら超えた、邪悪そのもの。
「アレがこの時点で出てきてるとなると……間桐桜はどうなってる?」
それは、間桐桜が間桐臓硯によって小聖杯の欠片を埋め込まれ、「マキリの杯」となったことの副産物。
それは、汚染された聖杯の魔力が間桐の魔術特性である吸収、そして桜の虚数魔術と結びついて生まれた端末。
……そしてそれは、桜の精神が安定している
「まさかお前、桜を……!」
当然、死徒の口から自分を慕う後輩の名が出た衛宮士郎はこう考える。「人質」。あるいは、もう食い殺されている可能性すら。
「違うよ。違うんだ。僕が人質に取っているとか、食い殺してるとかより
だが。事実はそれよりも最悪だ。
もしアレセイアが黒幕なら、倒して助ければハッピーエンドだ。
もし間桐桜が殺されていれば、所詮単純で小規模なバッドエンドに過ぎない。
それでも、今回よりはマシだ。なんせ原作よりも
「端的に言うと、
余談でアイアスちゃんのFGO風性能を供養しておきます。
FGO風性能
アイアス ☆5:シールダー
カード
BBAAQ
スキル
神獣の裘:A CT:8
自身の攻撃力をアップ(3T)&「通常攻撃時に自身のHPを回復」する状態(3T)&〔武器を持つ敵〕特防状態を付与(3T)を付与。
アカイアの守護者:B CT:9
自身にターゲット集中状態を付与(1T)+味方全体の〔アカイア〕にガッツ状態を付与(1回・HP1)&NPを増やす(最大30)
原理血戒:EX CT:10
自身のクラスを〔バーサーカー〕に変更する&Busterカード性能を大アップ(3T)&「通常攻撃時に自身に呪い状態(3T)を付与する」状態(3T)を付与【デメリット】
宝具
熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス):A
Arts
味方全体にダメージカット7つを付与(それぞれ7回、6回、5回、4回、3回、2回、1回・3T)[Lv]&宝具威力をアップ(3T)<OC>
(バーサーカー時宝具変更)
絶世の魔剣(ドゥリンダナ):A-
Buster
敵単体に超強力な攻撃[Lv]&自身のHPが少ないほど威力の高い追加ダメージ<OC>
多分こんなもんだと思います。シールダーからスキルでバーサーカーにチェンジする、高級ジキルハイドみたいな奴になると思う。