寿命を代償にするキャラになりたくて!   作:パレード

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 久しぶり♡


血が着くから嫌です!!

 

 放課後、夕日が差し込みオレンジ色に染まる廊下を小走りで走り抜けアレクシアは約束の教室に向かう。

 

 今日の演習の時間、ナクスに自身の成長を見てもらう為に約束を取り付けたのだ。

 

 ナクスも快く承諾してくれ、楽しみにしながらこの時を待っていた。

 

「私の成長を見せてやるんだから!」

 

 今日はコレがあったから、女に告白されるナクスを見ても心に余裕を持てた。それでもモヤモヤはしたが……。

 

 そうして教室の前についたアレクシアは息を整え、急いで来たのを悟られないようにする。物音が聞こえているので既にナクスは中にいるようだ。

 

 大きなため息をついて、胸に手を当て鼓動が平常だと確認してゆっくり扉を開ける。

 

「待たせたわね。約束通り私の成長を見せ……」

 

 言葉を失った。

 

「あ、やっと来たね。紹介するよ!コイツらは俺の━━」

 

 そこにはナクスの他に3人のエルフがいた。

 

 その内の1人、銀髪泣きぼくろのエルフがナクスの腕に抱き着きアレクシアの方を見て………、

 

 嘲笑した。

 

 どうだ、お前にはこんな事できないだろう?

 

 言葉には出さずともそう言おうとしてるのは明らかだった。

 

「………ざけんな」

「どうかしたかい、アレクシア?」

 

 

 

 

「ふざけんなーーッッ!!!!て、あら?」

 

 気付くとアレクシアは地下室の世界に戻っていた。鎖をガチャガチャやってみるが、都合良く拘束が解けたりはしない。

 

「………夢」

 

 ようやく自分が眠っていて、夢を見ていた事に気付いた。

 

 本来、それは落胆すべき出来事なのだが、アレクシアは何故か安心していた。次に銀髪のエルフを脳内でボコボコにする事で更なる精神の安定を図る。

 

「しばらくはエルフの事は好きになれないわね。これから会う機会があればだけど」

 

 残りの2人も鼻で笑ったの見逃してないからな。クソが。

 

「あら……ごめんなさい、起こしてしまったかしら」

 

 隣にある牢獄に囚われている『化け物』としか言い表せないソレがゆっくり動き出す。

 

 最初こそ恐ろしかったソレだったが途中からは同じ境遇の同居人として愛着が湧いてきた。

 

 目を覚ました化け物はすぐにまた眠りにつく。そう思ったが天井を見上げたまま動かない。

 

 つられてアレクシアも上を見上げ、そこでようやく異変に気付いた。

 

「外が、騒がしい?」

 

 大勢の悲鳴と建物が崩れるような大きな音。一時的な物にも思えたが、外の喧騒は次第に激しさを増してゆく。

 

「………ナクス」

 

 この状況でどうして騎士団ではなく、ただの同級生の名前を呟いたのか。ナクスは首席といえどまだ学生、ストレスで頭が回っていないようだ。

 

 それとも特別な理由があって意図的にナクスの名を発したのか。真相はアレクシア本人でさえ分からなかった。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「厄介払いされたなぁ」

 

 久し振りに人前で命を削る演技ができると気合いを入れて俺は今回の計画にのぞんだ。

 

 小さい頃からは格段にレベルアップした俺の演技力でアルファ達を圧倒しようと思っていた。

 

 しかしベータの口から告げられた言葉は俺を恐怖のどん底に叩き落とした。

 

『パトナー様はデルタと共にコチラの建物を襲撃してください』

 

 そう言って渡されたのは目的地が記されたメモ帳と脳筋犬娘。

 

 別にデルタの演技力を疑っている訳じゃない。仮に実力が低くても俺がフォローするだけだから逆にやり甲斐がある。

 

 じゃあ何が問題なのかというと………。

 

「全部狩り終わったのです!パトナー褒めてー!」

 

 コレだ。

 

 瞬く間に敵を殲滅してしまうので俺の分が残らない。つまり演技をするヒマが無い。

 

 相手がいないのに吐血をしても、ただの病弱な奴だ。

 

 1度だけ生意気を言ったデルタを叩き潰した事があるので俺の言う事を聞くには聞くのだが、彼女にとって目の前の獲物をおあずけされるのはとても大きなストレスになる。

 

 昔は周辺の木々を薙ぎ倒し、庭の金魚を食い散らかし、その流れで畑の野菜も食い散らかす程度で済んだのだが、大きくなった今のデルタが何をしでかすのか分かったもんじゃない。試すつもりもない。

 

「うんうん偉い偉い」

「撫でて!」

「血まみれだからやだ」

「やー!撫でて!」

「血まみれだからやだ」

「いっぱい殺したら撫でてくれるって言った!」

「言ってないよ」

「いったもん…………」

「分かった分かった」

 

 比較的、返り血の量が少ない(と言っても結構血まみれの)ほっぺを撫でる。

 

 普段から血を出してるから平気だろと思われるかもしれないが、俺に言わせれば他人の涎を飲めって言われてるのと同じだ。

 

「あぅぅ、デルタは頭を撫でてほしいのですが……」

「もっと血まみれだからやだ」

「血を拭いたら撫でてくれる?」

「血を拭いたらね」

「じゃあ拭く!」

 

 そう言ってデルタは頭に付着した返り血を拭き取った。

 

 ()()()()

 

 落ち着け俺。今はスライムスーツだ。制服じゃない。

 

 これが学園の制服、特にワイシャツとかだったら黄金の右が炸裂する所だった。冗談だが。あ、頭を押し付けるな。顔面に拭き残ってる血がつくから。

 

 はぁ……。もういいや、満足するまで撫でてやる事にする。ヌチャヌチャしててキモイ。

 

 結局、寿命を犠牲にするムーブは出来なかった上に、戦ってもないのに血だらけだ。臭いを落とすのも楽じゃないんだぞ。

 

 全然思うように行かず、俺はとても不愉快だ。腹いせにデルタに血をぶちまけてやろうか?

 

 獣人のデルタですら視認出来ない速度で足元にあった鋭利な石を使って口の中をカッ割く。

 

「…………いや、まだだ。まだ終わっちゃいない」

「え!まだ獲物いる!?パトナーは絶対手を出しちゃダメなのです!死んじゃうから!」

 

 その時、俺は思い付く。シャドウガーデンのパトナーの活動が終わってしまったのなら、学生のナクスとして動けばいい。

 

 良く考えたら、ソッチの方でも寿命を犠牲にしてしまえば効率が今までの二倍ではないか。どうしてこんな簡単な事を今まで思いつかなかったんだ。

 

 口の中に溜まった血をゲボっと吐き出し服の中をまさぐる。

 

「え………、なんで、血?し、しなないで」

「このくらいじゃ死なないから離れなさい」

「やだ!ずっといっしょにいる!死んじゃいや!」

「大袈裟だなぁ。そんな事よりデルタ、頑張ったご褒美をあげよう」

「ご褒美!欲しいのです!でも、それじゃあパトナーを守れないのです……」

「よしそれじゃあ取ってこい!」

 

 もしもの時の為に常日頃から懐に忍ばせてある金貨を力の限りぶん投げる。この出費はかなり痛いが、元はと言えば数年前に彼女達からポーカーで巻き上げた金だったハズだ。持ち主の手に帰るだけの事。

 

「わおぉーーん!!」

 

 何か迷っている様子だったが犬の本能には勝てなかったな。

 

 デルタの姿が夜の闇に消えたのを見て制服に着替え直す。

 

「偶然アレクシアが誘拐されててラッキーだったな」

 

 ホント、()()誘拐されたのが()()アレクシアで良かった。モブ3人組の次に関わりがある彼女を助ける為なら寿命を代償にしても違和感はないからな。

 

 いやー。奇跡ってあるもんなんだね!

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「騎士団は何をやってるのかしら。こんなに煩いと眠れないじゃない」

 

 全身を拘束され、魔力も封じられた状態のアレクシアにとって睡眠は唯一の暇潰しの手段だ。しかし今は外から聞こえる騒音でそれどころじゃない。

 

「派手に壁をぶち破ってくれないと割に合わないわよ。あなたもそう思うでしょ?」

 

 少しの期待を込めて化け物に問いかけるが、当然言葉が帰ってくる事は無い。アレクシアには目もくれず、起きてからずっと同じ調子で天井を見上げている。

 

 突如、扉が勢いよく開いた。

 

 反射でアレクシアはその方を向いたが、入ってきた人物が白衣の男だったので落胆する。

 

「ちくしょう、ちくしょう!」

「ごきげんよう」

「あと少し、もう少しなのに!」

 

 とても焦っている様子の男を見て機嫌が良くなったアレクシアの挨拶を無視する。

 

「な、なんなんだアイツは!奴らじゃない!騎士団でもない!ご、護衛も全部殺られた!!」

 

 その言葉を聞きアレクシアは考える。

 

("奴ら"っていうのは謎だけど、騎士団じゃない?外の騒ぎとは無関係な誰かの可能性がある)

 

「ただの学生がなんで、アレ、アレ程の力を持ってる!!」

「学生?」

 

 一瞬、ナクスの事を思い浮かべた。こんな場所、知っている訳が無いのに。

 

「しかししかし、しかーし!残念だったな、試作品は既に作ってある!こ、これなら、出来損ないのお前でも役に立つ」

 

 そう言って、白衣の男は針の付いた装置を化け物の腕に押し付ける。

 

「やめておいた方がいいわ。なんだか嫌な予感がするの」

 

 しばらく一緒の空間にいて情があったのか、真面目に嫌な予感がしたのか、アレクシアは言った。

 

 白衣の男は当然それを無視して、化け物の腕に針を突き刺しドロドロした何かを注入する。

 

「さ、さぁ、見せてみろ、ディアボロスの片鱗をぉ!!」

「わー、楽しみね」

 

 すると、少しの間痙攣した後、化け物の体が膨張した。

 

 見る見る内に肥大化した体には似合わない甲高い咆哮を上げながらも、左腕は変わらず何か大切な物を抱き締めるかのように癒着している。

 

「す、素晴らしいぞぉぉぉお!!コレが完成すれば、ラウンズの空席を気取ったあの男から奪うことだって……よ、よし!手始めにアイツから殺し」

「うぇ……」

 

 言い切る事無く、拘束具を弾き飛ばした化け物の右腕に潰され、後ろの壁に肉が付着する。

 

 その後も執拗に死体を踏み付け、男だった物を床のシミにすると次はアレクシアに目を付けた。

 

「えっと……随分成長したわね?」

 

 体と一緒に脳も成長している事に賭けて話しかけてみるがそんな事はなく、ズドンズドンとゆっくりアレクシアに歩み寄ってくる。

 

「そうだ。私なんてほっといて上に行ったら?今日はお祭りの日なの。きっと楽しいわよ」

 

 咄嗟に出任せを言ってみるが化け物はアレクシアの前で止まると禍々しく肥大した右腕を振り上げる。

 

「……ッ!」

 

 化け物の右腕の動きを注視する。あのバカみたくペチャンコになって死ぬのだけはごめんだ。

 

 頭と胴体さえ無事ならいい。可能な限り身を捻り、致命傷だけは避けようとする。

 

 しかし化け物がその体勢から動く事は無かった。

 

「え?」

 

 キンッと音が鳴り、下半身は立ったまま、化け物の上半身が石造りの地面に滑り落ちた。

 

 たった一太刀で化け物を両断した事に驚いたが、それをやった人物に更に驚愕した。

 

「なんであなたがここに……?」

 

 化け物の半分が無くなって、見えるようになったその奥の景色には剣を鞘に戻す学友であり、ついさっき夢にも出てきたナクス・ジュミョーが立っていた。

 





 1週間も使ってたったの4000字って一体何をやってたんだ?(自問)

 しかもベータとデルタの名前ミスって申し訳ない。(修正済み)

七陰視点とかいる?

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