呪いの王?―――燕を斬るのとどっちが難しい?

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復帰して小説を書き始めようと思うと、色々と書きたい話が湧き上がってきてしまったので、取りあえず息抜きに投稿します
ちゃんと、メイン小説も書いていますので、許してください。




注意事項として、今回の話は呪術界戦のネタバレを多大に含みます。
それを理解した上で読むようにお願い致します。
ただ、本誌を読んであの宿儺をギャフンと言わせたいな~~と思ったのが理由の一つです



廻る宿願

東京都・新宿区。アジア圏において2位につく経済大国日本における首都東京都の都庁所在地でもあり、日本有数の繁華街が形成された人口33万人を超える大都市。

そんな大都市が今や見る影も無く廃墟の街となっており、多くの人が行き交う活気はない。終末の光景。フィクションなどで語らえる光景が現実となっている。

 

この惨状は2018年10月31日、新宿と同じく東京都渋谷区で起きた未曾有の呪術テロ【渋谷事変(しぶやじへん)】を発端として起きた全国各地で行われている、呪術を与えられた者達による殺し合い【死滅回游(しめつかいゆう)】が原因である。

そんな荒廃した街に、全てに決着を付けるため、2018年12月24日の現在呪術界最強の男と呪術千年の歴史で呪いの王と呼ばれる存在達による【人外魔境新宿決戦(じんがいまきょうしんじゅくけっせん)】が行われ、そして今まさに決着が着いた。

 

それは文字通り世界を斬る斬撃。世界ごと斬る一振りは、歴史上何人も犯すことの出来なかった無下限の無限ごと、現代最強の呪術師五条(ごじょう)悟(さとる)の胴体を真っ二つに両断して見せた。

当然勝者たる呪いの王両面(りょうめん)宿儺(すくな)とて、無傷の勝利では無い。現代最強の呪術師の最後の一撃である「茈」を受け、その身体は死に体に近い。

それでも呪いの王は、何処か何晴れやかな笑みを浮かべ、かつて五条悟だった物に告げた。

 

「天晴れだ 五条悟」

「生涯貴様を忘れることはないだろう」

 

天上天下唯我独尊、己の快・不快のみが生きる指針としている生きる呪いの王両面宿儺に他者を尊ぶという事はない。故にその口から出た言葉は、呪いの王から現代最強の呪術師への心からの称賛である。

そして五条悟その亡骸もまた、何処か満足げに笑っていた。

 

かくして現代最強の呪術師は死。その死を悼む間もなく、彼の後に続きし仲間と教え子達が、呪いの王と凍星、そして無辜の悪へと挑む筈だった…

 

宿儺の耳に近づく足音が一つ。

 

「今は機嫌がいい 頼むから興を削ぐなよ」

 

追撃はわかりきっていた。だからこそ、宿儺は千年来の興奮を削ぐ様な事が無いことを祈り、足音のする方を振り向いた。

近づく人影を認識した刹那、宿儺の脳裏に浮かび上がったのは…

 

―――――忘れがたき■■■■の記憶

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

その日、宿儺は不快だった。普段と変わらぬ、日常の中での鏖殺。だが、その中の弱者(ゴミ)の一人が余りにも的外れの言葉を死に際に吐いたのだ。

曰く何故その力を正しく振るわない。強者の勤めから逃げる卑怯者。

 

――――ああ、虫唾が走る。

 

弱者の分際で、身の程もわきまえない考えを持つ事も、ましてやそれを自身にさえ強いろうとする。それは理解できるが、自分が生涯持ち合わせる必要の無いものだ。

故に、宿儺は不快の絶頂にいた。

その不快を晴らそうにも、近くの里々は既に鏖殺してしまった。仕方なく、専属料理人(ふくしん)をほおって宿儺は付近の野山にて殺害(八つ当たり)できる命を探していた。

 

空を飛ぶ岩燕の鳴き声が蒼天に響く中、ふと宿儺の足が止まる。目線の先に居たのは、枯れ木と見間違うばかりの老爺。

皮と骨だけに近い身体にボロボロの着物を身につけている。唯一、槍と見間違うばかりの長刀を持っているのが特徴だが、宿儺からすればその程度脅威でも無い為、誤差である。

 

――――最早死人ではないか…つまらん

 

半生半死の存在など八つ当たりの相手にすら成らない。それは老爺とってみれば幸運な事であったが、ふと宿儺はその老爺の瞳に興が乗ってしまった。

その瞳に宿るは歓喜だ。迫るの己の死すら忘却してしまうほどの深い深い喜び。その歓喜を今際の際にて絶望に染め上げれば、一体どんな表情で、顔を見せてくれるのか。

少なくともこの不快を消す糧には成るだろう。ニヤリと宿儺は邪悪な笑みを浮かべて老爺へと歩を向けた。

 

「おい、老爺。

早速で悪いが、貴様を殺す。特に理由は無い」

 

宿儺から発せられた声音には自身の姿を見た老爺がどの様な反応を見せるのか楽しむ愉悦を含んでいる。老爺は声がした方に振り向くと、その瞳を大きく広げる。

四つの腕に異形の貌、二つの口を持つ宿儺の姿は、多くの者に怯えと嫌悪を与える。今までの経験から、目の前の老爺も似たような表情を見せる判断するが…

僅かな間の後、老爺は小さく呟いた。

――――ありがたい

小さく呟かれた言葉であったが、不思議と宿儺の耳にも届いた。全く想定していなかった言葉に宿儺の顔が歪む。その言葉を聞いた宿儺は本当の意味で半生半死の老爺を意識に入れる。

その顔を一目見て宿儺は目の前の老爺の驚愕が、自身に対してではない事に気がつく。視界の殆どを闇の帳に覆われながらも、微かに映る光で自分の先を見ている。

その事実が宿儺には気に入らない。死にかけの老爺という弱者が、己という強者を前にしても意にも介さない。それは弱者が持ってよい物ではない。

だからこそ、宿儺は己の身体に刻まれている術式に呪力を流し、無作為に腕を振るった。

己が斬撃によって、腕の一本でも奪えば、己の立場をわきまえ無残な悲鳴を上げるだろうと…。

しかし――――

 

「なに―――?」

 

不可視の斬撃が老爺に届くよりも先、老爺は斬撃が来る地点から半身を逸らし最低限の動作で回避してみせる。熟練の平安の猛者でも、特級といえる呪霊でさえも、宿儺の知る限り此処まで見事に自身の攻撃を回避して見せた存在は記憶に無い。

目の前の現実を只のまぐれだと断言するほど、宿儺は慢心していない。寧ろ、今までの感じた老爺への不快感が、興味に変わり始める。

 

「面白い。興が乗って―――――ッ!!」

 

背後を飛ぶ岩燕の鳴き声を合図に、只の八つ当たりから暇つぶしへ。宿儺が動き出そうとした刹那、まるで時間を切り取った様に老爺が刀を構えて肉薄してきていた。

起こりも、気配も感じずに起きた事態に流石の宿儺も驚愕を隠せない。そして肉薄した老爺が呟いた。

 

「――――」

 

刹那、宿儺を斬撃の檻が囲った。

 

◆

 

一呼吸の後、宿儺は生きていた。

 

「………」

 

しかしそれは、宿儺が斬撃の檻を回避したからでも破壊したからでも無い。

 

「――――――」

 

宿儺の眼前に、事切れ死体となって膝を突く老爺だった物がある。宿儺を知る者がいれば信じられないと思うほど、唖然とした表情で宿儺は死体を見て、己の首筋を触る。

宿儺は猛者である、故に戦闘に置いて読みを外すことは少ない。先程の起きた斬撃の檻。あれは隙の無い連続斬撃等という陳腐な物では断じてない。

あの瞬間、確かに刃は三つあったのだ。極限まで突き詰め単純にすれば、あの瞬間刀が三本に増えていた。だが、武具を増やすという術式と考えれば、それは無理くりだが説明が付く。だがその程度の種ならば、宿儺は驚きも何もしない。

宿儺が唖然としている理由は一つ。

 

――――呪力を全く感じなかった…だと

 

そう斬撃が三本に増える瞬間、術式を発動する時にできる呪力の起こりを一切感じなかったのだ。そして老爺が持っている長刀は、珍しくもあるが呪力も感じない只の鉄の棒きれだ。断じて呪具ではないし、それを誤認する筈が無い。

そして自身の意表を突いた動きも、最初に気配(じゅりょく)を僅かに感じたことから天与呪縛による身体強化では無かった。

つまり自分の目の前で膝を突く死体は…。

 

――――術式を使わずに、術式と同じ事象を引き起こしただと…ッ!!??

 

宿儺は呪いに呪術に精通しているが故に、己の頭脳が導き出した解答に驚愕を隠せないでいる。

あり得ない解答だ。だがそれ以外に説明が付かない。思考の整理が若干出来たことで僅かだが冷静に動く部分が生まれるが、次の瞬間にはそれさえも霧散する。

もしも目の前の老爺に後一呼吸分の寿命が残っていれば、あの時に生み出された斬撃の檻は間違いなく自身の首を両断しただろう。

 

「は―――?」

 

肉体を修復できる反転術式を使えるといえど、首と胴が泣き別れてしまえば意味をなさい。

つまり今、自分が生きている事はただ…。

 

「運が良かっただけ」

 

宿儺は戦士では無い。呪術師である。故に正々堂々という思考は持ち合わせていない。それでも自身が上澄みも上澄みの絶対的強者であるという自負と矜恃(プライド)を持ち合わせている。

故に赦せない。自己の生を幸運に感謝するなど。それこそ自身が弱者と虐げる者と同じに他ならない。

それなのに奪うはずの己が奪われかけた。しかも回避出来たのは、自己の技量でも何でも無い、ただの運。

 

「巫山戯るな」

 

そう思考が定まってしまえば、先程の驚愕も、今までの思考も全て一つの感情に塗りつぶされる。最早重要なのは、それでは無いのだ。

 

「■■■■■■■■■■■■■■ッ!!!」

 

宿儺から吐き出されたそれは声とは思えぬ怒りの絶叫。

ただ運が良く生き残った。この事実が宿儺にとっては耐えがたい屈辱である。報復を行おうにも、肝心の相手は目の前で物言わぬ死体に成り下がっている。

最早、この傷を癒やす術は生涯ありはしない。その事実がより一層宿儺の怒りを加速させた。

 

そしてその激昂が己の存在を辺りに知らしめた事で、宿儺討伐のため、藤原家直属“日月(にちげつ)星進隊(せいしんたい)”

“ 五(ご)虚(くう)将(しょう)”と、天使と呼ばれる術師が所属する安部家の精鋭と菅原家与党で編成された“涅漆(でっし)鎮撫(ちんぶ)隊(たい)”を鏖殺し、世に呪いの王という地位を不動の物とした。

 

されど、宿儺の怒りは生涯晴れることが無かった。

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

振り返った先、宿儺の目の前にいたのは時代錯誤な一人の侍だった。姿も、佇まいも、まして呪力(けはい)さえも違う。しかし、その身に纏う静謐の雰囲気が、何よりもその手に持った槍と見間違うばかりの長刀が。呪いの王 両面宿儺の記憶を刺激する。

 

「貴様ッ!!貴様はっ!!」

 

己が見間違うはずが無い。瞬間宿儺は、今まで意図的に中断していた受肉後の変身を再開させる。それによって宿儺の瀕死だった身体は、万全の全盛期へと戻る。

それは、人間(器)である伏黒恵の肉体から、呪術全盛の平安の時代を生きた姿へ。即ち、人から呪いの王への転身である。

完全なる受肉への移行。顕現するは人から外れた忌み子たる四つ目・四腕・双口を持った真の御形。

 

元来の姿に戻った宿儺は、同じ轍は踏まぬと全身に呪力を行き渡らせる。放つは世界を断つ斬撃。最早、油断も慢心も無い。

あるのは、決して晴らす事の出来ぬと思われていた怒りを晴らす好機への感情。

故に五条悟との決闘以上の気迫を持って、呪詞が唱えられる。

それは呪力の圧は最早、絶対的な圧を持った死だ。もしも仮に【死】という概念に物理的なモノが付加されるとするならば、今の宿儺の事を指すだろう。

息をする行為にすら多大なる労力を与え、居るだけで生命活動が困難となる領域。

その場にいる者は全てまな板の鯉の心理を理解するであろう。

しかし、視覚化された死が災害が目の前にあってなお人外魔境新宿に現れた無銘の侍は、静謐を崩さない。

迫る脅威を前に、薄く笑みを浮かべると刀を構えて呟いた。

 

現代最強術師 五条悟の死から僅か42秒後

雷神(らいじん)・鹿紫雲(かしも)一(はじめ)及び、凍星(いてぼし)・裏梅(うらうめ) 豪運(ごううん)・秤(はかり)金次(きんじ)が戦場に到着するまで

およそ、13秒

 

「秘剣――――」

 

「番いの流星――――」

 

即ち13秒後、呪いの王と無銘の侍の勝負が決まる




Q.最後に現れた侍って受肉体?

A.いいえ。ただのド田舎の農村生まれ、YAMA(ヤマ)育ちの猿です。
完全にメロンパンの計画と計算の外側の一般人です。
 加えて言えば、あの老爺と血の繋がりもありません。

◆
Q.猿なら呪霊は見えないの?

A.見えませんが感じ取っているので問題は無いです。某剣豪泳者(プレイヤー)と同じです。

◆

Q.じゃあ何で宿儺が面影を感じたの?

A.サブタイトルが答えです。

◆

Q.なんで新宿に来たの?

A.あらすじの通りです。

◆

Q.どれくらい強いの?

A.虚空の月に一閃を入れられるぐらい。

◆

因みにですがあの時、老爺の目はほぼ機能していませんでした。
そして彼は最期の最期まで宿儺を眼中にも入れていません。
彼が最後まで追い続けたのは、皆さんなら分かると思います。
宿儺も何となくそれを察しているのがより怒りを感じている理由です。

◆

そして、え?此処で終わりと思われる方がいるかも知れませんが、はい!此処で終了です。
これ以上は続けることが出来ません。

ただ本当に自己満足の息抜き作品ですが、少しでも皆様が楽しまれたなら幸いです。

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