『本編完結』「魔族でも美味しく酒が飲める魔法」   作:照喜名 是空

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今まで更新が止まっていて恐縮ですが、実はこの作品を一次創作化して完結まで書いてました。
もしよければ手に取っていただければ幸いです。


原作世界線:『バイバイシスター』その①

 その夜、アタシはどこだかわからない場所で強制キャンプをしていた。

 焚き火にそのへんの鳥を焼き鳥にして酒呑んでベース弾いて歌う。

 

「遠く弾ける鉄のドラム~それが俺たちのララッバ~イ。突き抜けろこの地獄を~」

 

 なんかさあ……クエストっていうのかな。その場所でやるべきことらしきことをしたら時代も場所もめっちゃ飛ばされるんだよね……

 事前に霧がでる夜に寝たら起きたら良い感じの無人の場所にいかされるんだよ……

 あのカス女神がパシリにしやがって……次は鼻を折るからな覚えてろよ。

 

「素敵な音楽ね。私こんなに音楽で感動したのは初めてなの。旅の芸人さんかしら。よかったらお話を聞かせて?」

「あー……お前かぁー……ソリテールね。はいはい。まどろっこしいしアンタ話なげえから手短に行くわ。アタシ元魔族。時間飛ばされてきました。今いつのここどこ。あとアタシの名前はイブキで、魔族だった証明は魔力探知してみろ人間じゃねえから」

 

 おっ、ソリテールがちょっと驚いてる。でもこの状況でも胸の前で指いじいじするぶりっこポーズすんのなお前。

 

「……未来の私はよほどおしゃべりだったみたいね。それでどうやって死んだの? きっと素敵な命乞いをしたと思うけど」

「あー……アタシを道連れに心中しやがったよ。アンタのいつも使ってる魔弾で」

「面白いわね。もっとよく聞かせて? あなたはいったい何をしてそこまで私を追い詰めたの? ああ、今はそうね……最近の出来事だと黄金郷のマハトから逃げおおせたエルフがいるらしいわ。ここは北部高原ね」

 

 こいつさあ……同族で会話が成立する相手には本当に二手三手先を読んで遠慮なく話すよね。

 まあ、話が早くて良いけどさあ。ある種の愛好家が好きな事を話すときの早口みてえだよ……お前もう噺家になれ。

 こいつが早口になりだすとこっちも頭の回転はやくしなきゃいけねえから疲れるんだって! 

 

「500年前かー! マジかあ……500年かあ……。まあいいや。どーせ今回も長い話になっからさあ、まあ座りなよ。メシ食う? 酒いく? いっとくけどアタシの魔法の関係でアタシらでも酔うよ」

「そうね。せっかくだしいただこうかしら。ああ、面白いわね。未来は相当愉快なことになってるようで楽しみだわ」

 

 体育座りだよ……こいつ500年前からぶりっこしてんの? アタシが言うのも何だけどこいつ頭おかしいよ。

 まあいいや。魔力からコップ出して魔法で酒出してわたす。両手で受け取りやがんの……

 

「乾杯しよっか」

「かんぱい?」

「あー、この時点だとまだ知らないか……コップをちょっとだけ上げてなんか祝う……こう、酒呑む前の挨拶的なヤツだよ」

「へえ、それも人間の習慣? 面白いわね。お祝い……じゃあ、面白い出会いに」

「ああ、再会に乾杯。ほらぐいっといっちゃいなって」

「ええ、いただくわ」

 

 一口飲んでソリテールが少し驚いた。

 

「なるほど。これが酔うという感覚なのね」

「ああうん。それ本来クヴァールさんにあげたやつだからね? ちゃんと初心者に飲みやすいヤツだよ」

「そう、それは光栄ね。おいしいわ」

「そりゃよかった。まあなんだ……こうやってアタシが逃げずにアンタと酒を飲んでるからわかるだろ? 未来でアタシとアンタは殺し合ってたけど、でも憎み合ってたわけじゃなかった。なんだろうな……思想の違いっていうかさ……初手喧嘩したからそこから引っ込みつかなくなったっていうか……アンタがあまりにもヤバいやつだったっていうかさ……とりあえず何があったか言うよ。その上でアンタが判断しろ」

「ええ、聞かせて。どうせいざとなったら私を制圧できる自信があるからでしょう?」

「そうだよ。今のアンタならまあ……まあたぶんギリなんとか……とりあえず聞いてくれる?」

「ええ、いいわ」

 

 それからアタシはできるだけ刺激を避けつつ、罠を解体するみたいに慎重に順序を選んで未来であったことを話した。

 

「……ってわけで女神の顎に一発いいのをくれてやったら、小間使いにされたんだよねー」

「それは私に話して良いことなのかしら」

「さあ? でもこれはまだ起こってないことで、今この場でアンタと出会ったら遅かれ速かれバレることだ」

「ええそうでしょうね。興味深いことだわ。なら、あなたが今ここに寄越された理由は解ったかしら」

 

 あっ、これコイツは答えがわかってる顔だな……おめーはそういう女だよ……

 

「アンタはまだダチが生きてて、共存にもそこまで失望してねえな?」

「ええ。私は人間のことを心底興味深いと思ってるし、文化というものも、おしゃべりも好きだわ。好きで好きで大好きで……味も悲鳴も知りたくなるの」

 

 カス女神よぉ……こいつ更正させろってか。この魔族の中でもいっとうヤバくて頭がキレて殺しあいが得意な女を。

 勘弁してよぉ……こいつはおもしれーヤバ女だけど、頭の回転速すぎて長々と話すとマジ疲れるんだよね……

 

「結論から言うとさあ……人間殺さないってんなら疑似脳作る薬と『契約を絶対に履行させる魔法』あげっからさあ……それを魔王様の手土産にして、アンタはダチ連れて逃げな? ってかそれダチじゃなくって男じゃん。もうつきあっちゃいなよ……ていうか男だけでもエンデまで下がらせてもらったら?」

「エンデでは人間を知る事はできないわ」

「そ~だけどさあ! アンタがここで彼氏死なせた結果としてめっちゃくちゃ荒れてクレイジーサイコ女になるんだって! 魔族基準でもマジヤバイよ未来のアンタ」

「そうね、友達が死ぬのは困るわ」

「だろぉ!? ハイ選んで! 1.二人して後方に引っ込む。2.人間を殺さない契約して二人して人間の振りして南端まで駆け落ち」

「3.あなたから全部もらって誰にも言わずに友達たちと逃げる。これはどうかしら」

「ヒト殺したら足がつくって! そこからシュラハトが多分でてくるじゃん……それを防ぐには初手で魔王様と直に契約してシュラハトを下がらせる必要があんだよ……あとアタシから奪うてんならまあそれもいいけどさあ……その場合アタシがアンタをボコボコにして契約とかで殺人やめさせる一手間が増えるからヤダ」

 

 うわあ! スイと自然なムーブで立ち上がるな! これからブッ殺しますよって自然体の構えをとるなって! 

 

「そんなこと言わずに、魔族らしく魔法で解決しましょう?」

「……本当におもしれえ女だよアンタは! もー勘弁してよ本当にさあ……」

 

 アタシにとって第二ラウンド、ソリテールにとって第一ラウンドが幕を開ける。

 こいつ戦闘センスが半端ないから本当に戦いたくないんだけどね……

 

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