桐藤カノンは二重人格である。   作:あるふぁせんとーり

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可憐なる怪物

「好きなの頼んでいいですよ。大人なりに腐る程金は持ってますから」

 

 そう言って先生はメニュー表を回す。値段は無い。店内には僅かな香の香りと琴の音色が響いている。そんな店内の誂えを見る限り、ナギサが時たま俺を連れて行く店のランクにもそう劣らない。「任せる」「お任せします」と俺とハナコが答えると「殊勝ですねぇ」と先生は店員を呼んだ。

 

「それで、お話というのは?わざわざこんな高級店じゃなくて教室で……」

「お腹空いちゃったので。それにこういう高いお店の個室じゃないと信用出来ませんし」

「信用?秘密保持が必要な話か?」

「だって必要じゃないですか?トリニティ最大派閥のトップの妹さんと当代トリニティ最高の天才が相手なんですから」

 

 「流石の先生()でも無駄なリスクは取りませんよ」とクスっと笑う先生。見た目はどうであれその所作と思考は洗練されている。そして彼女はコースの前菜であるテーブルの上のカニ玉を取りながら口を開いた。

 

「で、何企んでます?」

 

 緊張が走った。適当な言葉じゃない。明らかに確信を持った目。それが当然の言葉であるかのように微笑む口元。自らよりも35cm近く背の低い幼子のような容姿から向けられる鋭い眼光。「最初はノータッチで行こうと思ったんですけど、やっぱり我慢できないんですよねぇ、私」と軽く聞こえる言葉に宿っているのは意思か、或いは好奇心か。ハナコとアイコンタクトを取ると「誤魔化しようがない」と合意する。そしていつ答えるかとタイミングを測っていると彼女は「あ」と思いついたように声を上げた。

 

「待ってください、当てます」

「当てる?」

「取り敢えず二人とも「トリニティの裏切り者」じゃないですよね。どっちかと言うとハナコちゃんは勇気は無いけど才能はありすぎた破滅願望者って感じですし、カノンちゃんは二重人格ってだけの重度のシスコンですかね?」

「え……?」

「っ……?!」

「ってことは……ごめんなさいちょっとだけ失礼しますね?」

 

 そう断りを入れて先生は煙草に火を点ける。その余裕と対照的に俺達は料理を取り、口に運ぶその手を止めた。あり得ない程の考察力。俺もハナコも、人生で誰かに明確に知能で出し抜かれるという経験がそう無いからか、思わず目を見張っている。彼女の煙草からは前世での父が吸っていたものと同じ匂いがした。そして彼女はどこか虚空を見つめながら煙を吹かし、そして一、二分ほど経ってから「あ、そういうことですか」と煙草の火を消した。

 

「ティーパーティーの三人目、探してますよね?」

 

 結論から言おう。それは俺達の想像を超えた怪物だった。




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