お久しぶりですね。久しく投稿が途切れてしまい、申し訳ございませんでした。番外編IF√三つ目の協力√でございます。
遅れた理由と今後の投稿につきましてはまた後書きにてお知らせします。碌な確認も出来ておらず、誤字・脱字・拙い設定だらけでしょうが、寛大な御心で読んでくだされば幸いです。
《ルート分岐③》
・基本的には桜覚醒から兄妹間の溝の途中までは八人目のマスタールートと進みは同じ
・優先順位を考えろ!と叫んだ所で高熱を出し、泥を吐いた後に気絶してしまう所でルートが分岐する
・家には戻れず、衛宮と共に教会に向かう→協力ルート
Side:衛宮士郎
「あ、これは、マズ───っ、ガフッ……!!」
「っ!??慎二!!」
激情しただけでは説明がつかないくらいに顔を赤くさせ、血のようなものを吐いて、慎二の身体が傾いた。俺はすぐに駆け寄ろうとしたが、ルーラーが地面に倒れ伏す前に素早く駆け寄って慎二の身体を支えた。
「ルーラー!慎二の容態は……!?」
傍に行き、慎二の容態を尋ねる。
「……酷い高熱だ。それに、無理したのが祟ったのか傷口も開き始めてる」
「──っ!!すぐに教会に行こう。遠坂と共に治療してくれるかもしれない。済まないが、そのまま慎二を抱えててくれるか?」
相当無理をしていたのだろう。ルーラーの腕の中で、か細く荒い息を吐いている慎二を見て、遠坂の時と同じく心配が募った。既に遠坂が提案した教会にて治療をしてもらうことを、彼にもう一度俺の方から提案した。
「分かった。けれど彼女の方は?」
「俺が運ぶよ。これでも女の子一人くらいは抱えられる」
「そっか……。じゃあ、案内してくれるかな」
「あぁ、勿論だ」
あの時とは違ってすんなりと提案に乗ってくれた事に少し驚いたが、今はそれは気にしている場合ではないと気持ちを切り替えて、すぐに教会へと向かった。
「居るんだろ?!言峰!!」
「何の用かね。衛宮士郎」
そうして教会の扉を乱暴に開け放ち、大声で言峰を呼ぶ。すると暗がりになっている奥の扉から、言峰が現れた。
「慎二と遠坂の治療をしてくれ……!二人共、アレに襲われて……」
「優先度が高いのはどっちだ」
「えっと……どっちも重症なんだが……、多分慎二の方が優先度は高いと思う。でも俺の目じゃ、分からないからまずはどっちも診てほし────」
「彼が抱えてるお嬢さんを先に診てあげて」
「え……?」
俺の言葉を遮って、ルーラーが遠坂を先に診ろと提案してきた。俺は驚いて彼の方を向く。そして、言峰から慎二を隠すように立つ彼の様子を見て、ハッと思い当たった。ルーラーと言峰は初対面なのだ。いくら監督役で、中間的な立場の人間であるとしても、彼にとっては信用出来るか分からない人間。遠坂を先に診ろと言うのも当たり前の事だった。
「あ!ごめん!俺、何も考えずに言っちまった。アンタにとっては初対面だったよな……」
「あぁ、いや、そこまでは気にしてないよ。ただ、ちょっと……ね?」
「・・・・?」
無遠慮だったとルーラーに謝るが、彼は気にしていないと言ってくれた。その事に少しホッとしたが、その後に続いた言葉に引っ掛かりを覚えた。
「どうやら複雑な事情を抱えているようだ。彼の言う通り、まずは凛を診るとしよう。奥の部屋にベッドがある。そこまで運んでくれ給え」
「あ……おう。分かった」
しかし、その引っ掛かりは言峰の言葉ですっかり忘れてしまい、後程ルーラーに尋ねる事が出来なかった。というか、その後は粗方の治療を終えた遠坂を家に送り届ける為に出来なかった、というのもあった。
・衛宮、治療を終えた遠坂を送り届ける
〜衛宮Side 終了〜
〜オベロンSide〜
「……さて。待たせてすまない。そちらの彼の治療を行おうか」
マスターの友人に治療を行い、村正にそっくりな少年に家に送り届けるように言った、言峰という神父がこちらに振り向き、笑みを浮かべた。俺はその笑みの裏に隠れた感情を読み取り、警戒態勢を更に強めた。この神父、俺を、特にマスターを興味の対象として見ているのだ。それはいただけない。
「悪いけど、僕からはお断りさせてもらおうかな」
故に俺は、ここに来るまでに抱いていた治療をしてもらうという考えを振り切って、断わりの言葉を述べた。
「なに……?君は己のマスターを見殺しにするとでも言うのかね?」
予想外の反応だったのか、神父の顔にほんの一瞬、陰りが差した。が、それもすぐに先程までの笑みに変わり、今度はこちらを煽るような言葉を放つ。
「まさか!自分のマスターをみすみす死なせるだなんて愚行をする訳無いじゃないか」
分かりやすい挑発には乗らず、それでいて、ねじ曲がらぬ最低限度の言葉を用いて神父の言葉を否定する。
「でもね?悪いけれど、僕はまだ貴方を信用は出来ない。例え、目の前であの少女の治療を行っていようともね」
あの少年曰く、神父は中立的な立場であるので今の所は害は無いと判断しているようだが、俺としてはどうも引っ掛かる所がある。この男に俺は、何か薄気味悪いモノを感じるのだ。
「君がそう言うのならば私は何もしない。だが、本当に良いのかね?」
「…………何が言いたいのかな」
「君の言い分も尤もだ。だが、それが本当に彼の為になるとでも?直接見た訳ではないが、凛の衰弱の原因と間桐慎二のその症状の原因は似ているのではないか?であれば不服だろうが、私に治療を一任するのが適切だと思うが……」
「・・・・・。」
つまり、この男が言いたいのはこういう事か。俺が彼を信用するかどうかは自由だが、だからといって今のマスターの状況を改善出来るのは現状、彼しか居ない。それでも治療を拒み、マスターの衰弱をこのまま見過ごすつもりなのか、という事だろう。確かに、その言い分は正しい。俺の懸念とマスターの命、そのどちらかを天秤に掛けた時、優先すべきは後者だ。
「ルー、ラー……」
「っ!?マスター!」
それでも治療を決め兼ねていた時、青白い顔色をしながらも、きみは目を覚ました。
「言峰は、今は……中立の、立場だ。お前が、心配する事は無ぇ……。だから、ちりょぅ……は……」
「マスター………っ!!」
相当無理をして起きたのだろう。息も絶え絶えに、心配する事は無いとは言うが、治療については言い切らぬまま気絶するきみに、俺は背筋がゾッとするような心地に陥った。
「誰が診ても治療が必要なのは分かると思うが、どうする?」
「…………マスターの治療を頼んでも良いかな」
「あぁ、承った。では、奥のベッドのある部屋に案内しよう」
本当は嫌で仕方がなかったが、かと言って俺が治療出来る訳ではない。ここは大人しく治療を申し出る事にした。もし、少しでもきみを害そうとする意識を抱けばすぐにでも殺せば良い話だ。監督役だとか、中立的立場であるだとかは俺の知った事ではない。俺にとっては、きみだけが大切なのだから。そう考えながら俺は神父の案内に従い、奥の部屋に向かった。
「ほう……これは随分と興味深いな……」
そうしてきみをそっとベッドに寝かせ、神父が患部の検診の為に服を捲る。そして患部を見て神父は、薄ら寒い笑みを浮かべた後にポツリと興味深いとの感嘆の声を漏らした。それを聞いて、俺はさらなる嫌な予感を抱いた。
──是非とも患部を抉り、更に苦痛に歪む様を見てみたいものだ
「っ……!!」
抱いた嫌な予感の下、神父を視たのが悪手だった。悪趣味なその思考に気を取られ、あれだけ警戒していたクセに対処が遅れてしまったのだ。
「ヒュ──ッ?!う、ぁ……??っ、あぁぁ゙ぁァ゙ァア?!!」
「マスター!!」
神父は、何の躊躇いもなく未だ血が流れ続けている患部に腕を突っ込んだのだ。その苦痛にマスターは目を覚まし、一瞬理解できないとでも言うように腕を突っ込まれた患部を見ていたが、すぐに脳が痛みを理解した途端に悲鳴をあげた。そんなのは見過ごす事は出来なくて神父に攻撃しようとしたのだが、
「おっと。テメェにとっては乱暴だろうが、これでもコイツのれっきとした治療でね。マスターの事を思うなら、大人しくしてな」
何処に潜んでいたのか、紅い槍を持つランサーらしき人物に邪魔をされ、行動する事が出来なかった。
「退いてくれないかな」
「ソイツは出来ねぇ相談だな。そんな奴でも一応俺のマスターでね。アンタに手出しさせるなと言われてんだよ」
さらりと告げられた言葉に、驚かされた。中立的な立場である筈の人間が、実は聖杯戦争の参加者でもあったのだ。きみは、これを知っていたんだろうか。
「そう……。なら、力ずくでも退いてもらうしかないね」
だが、そんな事を気にしている場合ではない。この間にもきみは激痛に声をあげて苦しんでいるのだ。一刻も早くあの腕を斬り落とさねば。
「ハハッ!そりゃ、無理な話だな。久々の戦闘に俺は心躍ってんだ」
「知らないよ、そっちの都合なんて。それに、僕と君とではまともな戦闘にはなりはしない」
「ほう……?言ってくれるじゃねぇか」
焦りからか、いつもより少々荒い返答で目の前のサーヴァントと対峙する。その返答が癪に障ったのか、彼は槍を構えた。そうして戦闘に移行しようとした時、
「ァ゙、ぐ……!!治療と騒動に、便乗して……、人の身体を゙、弄くり回してんじゃ、ね゙ぇっての……、こ、の゙、エセ神父……っ!」
荒療治とは言え、動くのも辛いだろうにきみは、自らの腹部に突っ込まれた腕を無理矢理引き抜いたのだ。そして、神父を蹴り飛ばそうとしていた。
「マスター!」
俺はすぐさま側に駆け寄り、神父とサーヴァントから距離を取った。
「何て無茶を……!掴むならまだしも、無理矢理引き抜くだなんて!」
「は……っ、治療なんざ、最初の挿入で既に、済んでたさ」
「え……?」
苦しげに患部を押さえながらも告げられた事実に俺は唖然とし、神父の方に顔を向ける。
「おや、あの状況でそこまで分かるとは。随分と大した胆力だな」
「五月蝿えよ。テメェが他人の傷口を抉るようなマネをしなければ起きて自覚する必要も無かったんだが?碌でもねぇテメェの事だ。人の苦痛な表情を見るついでに、何か別の事でも仕出かそうとしたんだろ」
『なぁ?言峰綺礼』と言って滲む汗と痛みに悶える心を抑えつけながら、きみは強気を装って笑い、神父の思惑を巧みに読み取って口にする。その痛々しい様子にすぐにでもこの場を立ち去りたくなるが、動こうとした所で片手で制止させられた。
「……なるほど、道理で。かの王が目を付ける訳だ」
図星を突かれたであろう神父は、微かに笑うだけで何らかの行動に移すような真似はしなかった。
「かの王……ギルガメッシュの事だね。貴方は、彼に一体何を吹き込まれた?」
「吹き込まれた?いいや、それは違う。ギルガメッシュは私にただ気紛れに語っただけだ」
「何を語った」
「なに。特段妙な事は語ってはいない。ただ、一言だけ語ったのみだ。この聖杯戦争において君たちは、素晴らしきモノを見せてくれる、とな」
素晴らしきモノ?一体、それは何だと言うのだろうか。
「ハッ!何処までも道化扱いしやがって。……まぁ、それを望んだ時期もあったがな。行くぞ、ルーラー。ここにはもう用が無い」
そんな俺の疑問を他所にきみは神父達に背を向けると、入口の方へと歩き始めた。その際に神父らに引き止められかけたが、それを無視して、きみの後に続いた。
〜オベロンSide 終了〜
・教会を後にした慎二は自宅に帰宅
・泥の汚染&言峰の荒治療による負傷で一旦お休み→イリヤ救出は原作通り言峰と衛宮が共に行く
・蟲爺は退場済みだが、アサシン(受肉済み)が衛宮達を襲う→言峰と衛宮、これにて別行動
・アサシンと言峰との対決中にて原作とは異なる会話があるかも(臓硯の死やアサシン自身の目的など)
・アサシンとの戦闘後、桜が言峰の前に現れて原作通りに心臓潰しを行う
・その後のランサーのマスター権の譲渡、令呪の譲渡、アンリマユと接触までは本編と同じ流れ
「あ、そうだ士郎」
「ん?何だ?慎二」
「もし起きてるならアイツら、遠坂とイリヤスフィールを呼んでくれないか?」
「遠坂とイリヤを?何でだ?」
「お前らと停戦協定を結ぶ為だ。それと、桜救出の為の協力を持ちかける為にな」
・このIFルート一番の分岐点である、衛宮邸でのルールブレイカー引き渡し後、衛宮呼びから士郎呼びに変わり、桜救済の為に協力を持ち掛ける
・今後の展開について知っているので、イリヤに天の衣を着て大聖杯の元に来るなと警告する慎二
・慎二の知識の秘密を語るなど、紆余曲折の末に協力を受け入れる衛宮陣営
「…………イリヤスフィール。お前に一つ、言いてぇ事がある」
「何?」
「お前は大聖杯を閉じる為に天の衣を着て来るつもりだろうが、絶対に来るんじゃねぇぞ。大聖杯の破壊は俺が請け負う。お前が犠牲になる必要なんざ無ぇよ」
俺が知る筈もない事で警告してきたのを驚いてか、イリヤの目がこれ以上ないくらいに見開かれた。側に居た士郎達も犠牲となる、という言葉に釣られてかイリヤと同じく驚いた様子を見せた。
「っ?!どうして貴方が
「そりゃ、俺の
「貴方の出生が、ですって?」
俺があえて存在はなく出生、と言う引っ掛かる言い方をした事に、イリヤは食い付いて来た。
「あぁ、そうだ。俺は随分と特殊な生まれでな?この聖杯戦争の一部始終の記憶を持っているんだよ」
「「「なっ……?!」」」
「そんな!あり得ない!!この聖杯戦争の一部始終って言ったって、先が判るだなんて事、千里眼……いえ、未来視の魔眼を保有していると言っているようなものよ?!」
遠坂の主張も尤もだ。確かにそんな事を言われれば魔眼の線を疑うだろう。だが俺の場合、それは正解ではない。
「いいや。俺は魔眼を持っていねぇよ」
「はぁ?じゃあ、さっきの発言はどう説明付けるつもりよ」
「そこで俺の出生が関わってくるってワケ。まぁ、厳密には記憶って言った方が近いんだが、まぁそれ程変わらねぇだろ。あー、そうだな、士郎。お前、変だとは思わなかったか?」
「え?な、何が?」
いきなり話を振られるとは思っていなかったのか、士郎はキョトンとしていた。その顔にアホ面だなぁと笑いそうになりながらも、俺は言葉を続けた。
「何故俺が柳洞寺でテメェの事情は理解していると言ったのか、とか。後はお前と、アーチャーの治療薬の件とかも妙にタイミングが良かったと思わないか?」
「っ!」
俺の言葉に今更思い当たったのか、士郎は『確かに!』とでも言うかのような驚きの表情を浮かべていた。前半の内容は士郎しか知り得なかったが、後半の治療薬の件はイリヤと遠坂にも思い当たる節があったのか、士郎みたいに驚くとまでは行かなくとも、考える素振りは見せていた。
「なぁ、何故だと思う?」
「それは……使い魔とかで?」
「前者は確かにそれで説明はつくな。だが後者は?あの場に間に合う事は出来てもわざわざ適した治療薬までは持ってない筈だろ?怪我はまだしも、英霊を長時間現世に留める薬なんてそうそう作れない。それこそ
「まさか……!!」
ここまで言えば流石の鈍い士郎も何を言いたいのか気が付いたようで、俺はニヤリと笑みを浮かべた。
「そのまさかだ。俺は、この聖杯戦争の行く末を
「「「なっ……?!」」」
「そ、それこそあり得ない!過去の記憶ならまだしも未来の記憶だなんて知っている筈が無い!」
俺の言葉に驚いた皆が反応を見せたが、いち早く立ち直った遠坂が俺の主張を否定した。
「言っておくが、お前らにとっては未来の出来事だろうが、俺にとっては
「巫山戯た事を言うのも冗談を重ねるのも大概にしなさいよ慎二!!知っていたって、過去だって言うのなら、桜が人殺しになるのも、この状況もアンタには全部分かってたって訳?!」
「そうだ。と言いたいが、その全部がこの状況を指すのならばそれは否だ」
「はぁ?」
遠坂達は俺の主張に訳が分からないと言う顔をした。
「デジャヴって知ってるか?初めて経験する事なのに親しみや懐かしさを感じる事を言うんだが、俺の今の状況はそれに近い。なんてたって、俺は
「な、ちょっ……!ほ、本当に意味が分からない!ちゃんと説明しなさいよ!?この際、
「へぇ……?言ったな?」
中々こちらを信用する素振りを見せなかった遠坂からのその言葉を待っていた俺は、嘲笑を浮かべて話を続けた。
「まず前提として俺は、この世界の行く末、つまりは聖杯戦争の結末を知っていた。では、それは何故か。それは俺が別世界から来た人間だからだ」
「別世界?」
「俺はな、士郎。お前を主人公とした
「え?お、俺が主人公……?」
俺の言葉に士郎はキョトンとした顔を浮かべていた。だが、俺はそれを無視して話を続けた。
「なあ、俺が先行きを知っていた以上に、出来過ぎだと思わなかったのか?」
「何がだ?」
「冬木大火災の唯一とも言える生き残り。使える魔術は数知れた程度の魔術師半人前以下の一般人にも等しかった最弱のマスター。それが、何も分からずに最優とも言われるセイバーを召喚して、聖杯戦争に参加する?これを出来過ぎと言わずして何と言うんだ?」
「そ、れは……」
俺の主張に、士郎は言い淀んだ。意識はしていなかったが、第三者から言われて漸く自覚したと言う感じだろう。俺は再び話を再開した。
「まぁ、お前が主人公云々は今は関係ない。だって俺にとって一番の問題はこの世界が物語の世界である事を俺が知っていた事が問題なんだからな」
何故、それが問題なのか。この世界が物語の世界だと言うのならば、それは良くも悪くも物語通りに進むという事になるからだ。それでは駄目だ。その理由はただ一つ。
「何故ならば
「「「!?」」」
俺の言葉に、全員が目を見開いて驚いて言葉を失っていた。それを良い事に俺は、俺がずっと思っていた事を吐き出した。
「物語通りに進めば俺は死ぬ?主人公は俺じゃなくて士郎だと?この世界はアイツの為に用意された世界だ?巫山戯るんじゃない!俺はモブキャラなんかで収まるような器じゃねぇし、そう簡単に死んでたまるかっての!!」
記憶を思い出した当初から変わらぬ思いだった。死にたくない。誰かの踏み台となって死ぬようなモブキャラで終わりたくない。俺の人生は俺のものだ。
「俺は俺の人生を生きるんだよ!何者にも踏み躙られない、成人する事なく死ぬカスみたいな人生だなんて真っ平御免だこの野郎!!」
「慎二……」
「貴方の事情は分かったわ。でも、それならどうしてその事を私達に話したの?貴方の話が本当なら、それは大きなアドバンテージだった筈よ。なのにそれを今、私達に話した理由は何?」
喚き散らす俺に対して同情の仕草を見せる士郎に対して、遠坂は魔術師的考えでこれを冷静に分析すると、話の真意について聞いてきた。これなら遠坂にはもう、推測がついているのかもしれないな。
「お前ならもう想像ついているんじゃねぇか?」
「えぇ、ある程度はね。でも、貴方の口から確かに聞かないとそれはあくまでも推測の域を出ないわ」
ほらやっぱり。同情という要らぬ一段階を挟んでいる士郎と違い、遠坂は先に俺の話の真意を推測する事を選んだ。要は、この話の早期解決を選んだ訳だ。
「んじゃ、お望み通り話してやるよ。何故俺が今になってお前らにアドバンテージを捨ててまで話したのかを、な」
そう言うと、この場に居る全員の視線が向いた。
「理由は至極単純。俺の知る未来ではなくなったからだ」
「……どういう事。さっき貴方はこの聖杯戦争の行く末を知っているって言ったじゃない。だから私が小聖杯である事も犠牲になるつもりがあったのも知っていたんでしょう?」
俺の言葉に、イリヤが訝しげな顔をして尋ねてきた。それに対して俺は一つ訂正を入れる。
「一つ訂正させろ。俺はあくまでも聖杯戦争の行く末を知っていたという過去形で言った。知っていると言うのは正しくない」
だって俺は未来視の魔眼は持っていないからな。これからの事に『知っている』と断言は出来ない。その結末はたった今、彼女に忠告する事で変えたのだから。
「そんな主張はめちゃくちゃよ!殆ど変わらないじゃない!」
「それでも重要な事だ。お前らが勝手に解釈して、違ったら俺のせいだと言われるのは洒落にならないからな。だから今、わざわざ言ってんだよ」
「っ……」
「良いか、遠坂。俺はあくまでも士郎が主人公であった場合の聖杯戦争の行く末を知っていただけで、今この状況を全部知っている訳じゃない。知っているならば俺は既にこの場には居ないし、あの愚妹に殺されてる」
「な……!?桜がアンタを殺す、ですって?」
驚く遠坂に、お前知っていた筈だろ?と言いかけたが、そういえばコイツは桜の襲撃を受けて気絶していたわ。俺が大切だから殺して自分のモノにして守るだなんて言う巫山戯た矛盾を聞いてなかったんだったわ。と、今気が付いた。
「そういや、お前は桜が宣戦布告しに来た時には気絶してたもんな。そりゃ知らねぇか。アイツ、俺を見つけた途端に歪みきった笑みを浮かべて頬を赤らめたかと思いきや終いにゃ、自分のモノにする為に死んでくれって言ってきやがったんだぜ?とんだイカれ女に成りやがった」
まぁ、流石に死んでくれとまでは言われてないが。けれども、死んでも直すと人をモノのように扱いやがったので、このくらいの事実湾曲は許されるだろうって事で、桜の様子とその時の発言を簡潔にまとめて説明した。我ながら捻くれてやがるなとは思う。
「ちょ、慎二!そんな言い方は……」
「テメェの目と耳は腐ってんのか?あの桜の様子と発言でまだ正気だって言えるワケ無ぇだろうが。テメェ、本当に桜を助けたいのか?だったらいい加減アイツに幻想を見るのは止めろ。今の桜は殺しを何とも思わない執着に狂った怪物だ」
「っ……」
俺の桜に対する言い方に士郎が物申そうとしてきたが、俺が語気を強めて正論を言うと、心底悔しそうにして口を噤んだ。
「さて、話を戻そうか。とにかく、今のこの状況はもうとっくに俺の知っていた未来とは違う。だけど未だ俺の死ぬ可能性は残っているからこうして、心当たりのある件は変えつつ俺なりの最善を目指す為にお前らにわざわざ話したってワケだ。分かったか?」
「……えぇ。納得はいかないけれども、理解はしたわ」
そう言う遠坂に同意する様にイリヤも真剣な顔つきで頷く。士郎も先の気持ちの整理はついていないようだが、気持ちの切り替えは出来たようで、ワンテンポ遅れてイリヤと同様に頷いた。
「それじゃ、今俺が知り得る限りの
・以下の相違点を語る慎二
・間桐慎二は本来、魔術回路を持たぬ人間である
・その繋がりで
・更にその繋がりかは分からないが、今の世界は二つの世界線(UBW→HF)が混ざり合った進み方をしている
・しかも後から混ざった世界線は一番面倒な世界線(HFルート)である
・桜の執着の相手に俺が追加された
・現在時点で即戦力に成り得る人物の確保に成功している、等など……
「何か、大体アンタが原因じゃない?」
遠坂がそう言いながらジト目でこちらを見てきた。
「…………そりゃ、俺が認知してる限りの話なんだからこうなるだろ」
「本当に?」
「・・・・・。」
いや、まぁ、魔術回路云々とか、即戦力の確保とかは自覚はあるっちゃあるが……。それでもアンリマユにも指摘されたし、やはりいくつかの原因は自分ではないと否定しきれないので、苦し紛れに目線を反らして誤魔化した。しかし、どうもこういう時にはハッタリを効かせられないので、心が読めるオベロンや俺の表情を注意深く見ていた遠坂達にはバレたようだ。
「あー……慎二。確かお前、即戦力を確保してるって言ってたよな?それは一体誰なんだ?」
気まず気な空気を読んだ士郎がその空気を断ち切るように、俺の記憶との相違点にて挙げられた即戦力について尋ねられた。俺は密かに士郎のこの行動に感謝した。
お前、とことん空気の読めない奴だなとか勝手に思ってたけど、見直したわ。気まずい雰囲気が士郎の質問のおかげで断ち切れたんだしな。
「今から呼んでやるよ。──出て来い、ランサー」
そんな事を考えながら、俺は霊体化して近くに待機していたであろうランサーを呼んだ。
「呼んだか?マスター」
「「「ランサー!?」」」
俺がルーラー以外のサーヴァントのクラスを呼んだ事、はたまた彼が俺をマスターと呼んだことに驚いてか、皆一斉に驚きの声をあげていた。
「よ!坊主。セイバーと戦ったあの夜以来だな。元気にしてたか?」
「え、あ、おう……?確かに俺は元気だけど……えっと、慎二、さっきランサーがお前の事をマスターって呼んだよな?どういう事なんだ?慎二はルーラーのマスターなんだろ?だって、あの時召喚してたのはルーラーだった訳だし……」
一度自分を殺し損ねた筈の人物が、何も気にすること無く上機嫌に挨拶して来た事に、士郎は戸惑いを隠せないで居た。だが、それよりも彼が俺の事をマスターと呼んだ事が気になったのか、恐る恐るといった感じで事実確認をして来たのだった。
「あぁ、俺が召喚したのは間違いなく
「だったら何故?貴方はサクラと違ってあちら側に繋がっている訳でもない。かと言って、リンのように
確かにイリヤの言う通り、俺は遠坂のように天才ではない。生まれ持った才能は無く、殆ど
「あぁ。だから教会側の不正を利用した」
それは、言峰綺礼が聖杯戦争の中立的立場として保有を許されていた令呪の強制譲渡だ。アニメを見ていた俺はどの言葉がその役割を担っていたのかを知っていたので、そのアドバンテージを利用して、ランサーと契約を結べるだけの魔力を宿した令呪を言峰綺礼から強制譲渡させたのだ。
「教会側の不正って……アンタそれ、綺礼の持ってたヤツじゃない?!アンタ、自分がどんな事を仕出かしたのか分かってるの!?」
ずらした袖から見える令呪を見た遠坂が心当たりを口にしながら驚き、叫んでいた。
「勿論理解しているが?俺は使える物は何でも使う。教会側が不正してるのならこちらが逆利用して不正したって何の問題も無ぇだろ」
「いや、慎二お前……一回問題って意味を辞書で調べて来いよ……」
なんてこと無いように言うと遠坂は顔を顰めて頭を押さえ始め、士郎は呆れ声で俺に辞書を引けと言って来やがった。
「ぁ゙?お前が指図すんな」
現状、負け犬状態の士郎に指摘されるのは無性に腹が立ったので、俺は半ば八つ当たり気味に言葉を放った。それに対して士郎はと言うと、何故が怯むでもなく生暖かい視線を寄越しやがった。そういう所だぞ馬鹿士郎が。そんな事を思いながら俺は、逸れた話の軌道修正を試みた。
「あー……とにかく。俺はこの知識と違いを利用して俺が望む未来を掴み取る。識っている範囲でなら情報共有してやるから協力してやるよ。てか、協力しろ。俺は死にたくねぇんだ」
「ちょっと?何で上から目線なのよ。そこはもっと少しは謙虚さを出すべきなんじゃないの?」
「ハァ?この俺が謙虚さ丸出しでお前らに頼み込むぅ?何それ気持ち悪ぃ。我ながら鳥肌が立つぜ。ただでさえ校内で優等生ヅラしてるのも嫌だってのによ」
「アンタねぇ……!!」
遠坂の求める謙虚さなんて微塵も無い態度で俺は吐き捨てる。すると、遠坂はそれが気に食わなかったのか怒りを露わにするとこちらに掴み掛かろうとして来た。
「落ち着け遠坂!駄目だって!!」
それを見た士郎が素早い対応で遠坂を抑え込んでいた。褒めるのは少々癪だが、今のはナイスファインプレーだと思う。何故ならば士郎が遠坂を抑え込まなければ、オベロンが遠坂を今すぐにでも殺さんばかりの殺気を放っていたからだ。
「おい。手ぇ出すんじゃねぇぞ。
「……止めないでくれるかな。マスター」
隠しもせず殺気を放つオベロンに、俺は制止の声を掛ける。するとオベロンは口では笑みを浮かべているが、目の底は心底冷えている顔を向けて、明らかに不満ですと言う表情をしていた。
「お前が今ここで遠坂に手を出せば、俺が協力を持ち出した意味が無くなる」
「でも……!彼女はマスターを───」
「お前は俺に自分のサーヴァントの手綱も握れねぇ駄目マスターの烙印を押させるつもりか?」
「っ……」
俺がそう言うと、漸くここでオベロンは殺気を引っ込めた。それを見て俺は、忠誠心が高いと言うのは魔術師が扱うサーヴァントとして完璧だろうが、こういう例外的な場面では危うさを感じたので後で釘を差しておこうと密かに思った。まぁ、オベロンの奴には筒抜けだろうがな。
「まぁまぁ、そうカリカリすんなって。ちょっとルーラーの坊主への想いが漏れただけだろう?」
「ランサー……」
最悪仲違いで協力関係不成立か、と言う場面であったのにも関わらず、ケロッとした様子で話に割り込んでくるランサーに肝が座ってんのか空気が読めないだけなのか分からず、呆れた声が漏れた。あと、想いが漏れた云々は完全に一言余計だ。言う必要無かっただろうが。
「あー……収集がつかねぇからもう一度言うが、俺と協力しろ。俺はサーヴァントを失ったお前らとは違って戦力は持っているが、計画を成す為の人手が足りない。お前らは桜を助けたいが、セイバーを討つ為の戦力が足りない。組めばそれらが解消され、何よりデメリットが殆ど無い。協力しねぇ道理は無ぇだろ?」
なんて言葉は飲み込んで、俺はもう一度協力の話を士郎達に持ち掛けた。
「そうは言っても貴方の話を全て鵜呑みにする訳にはいかないわ。ここは一旦時間を────」
「分かった。協力してくれ、慎二」
「ちょ……?!衛宮君?!ここはもっと慎重になるべきでしょう?!慎二の話は荒唐無稽過ぎるっていうのに!」
遠坂は渋る様子を見せていたが、士郎は俺の申し出に乗る事にしたようだ。自分の言い分を遮られ、さらには考える素振りもなく俺の申し出を了承した士郎に、遠坂は驚きを露わにしていた。
「今までの状況なら、多分遠坂の言う通りにするのが良いと思う」
そんな遠坂に対して、士郎はすぐさま肯定の意志を示した。
「だったらどうして慎二の提案を受け入れた訳?明らかに頼み込む態度じゃないし、何より出来過ぎた提案よ。裏が有ると思わなかったの?」
「慎二はそういう奴じゃない」
「あ゙?」
「はぁ?あのね、衛宮君。今は大事な局面なのよ?それなのに貴方の私情を持ち込むのは───」
「伊達に付き合いは長くないからな。俺は慎二の事、よく分かってる。言い方はアレだけど、慎二なりの敬意で俺達に協力を持ち掛けてくれてるんだよ」
「士郎、テメェ───」
何を勝手に人の気持ちを捏造してやがるんだこの馬鹿が。俺の事よく分かってる?何にも分かってねぇよクソ野郎!!と叫びたかったが、それは叶わなかった。言っている途中で、オベロンに止められたからだ。
『何故止めたオベロン』
『マスターにとっては癪だろうけど、これ以上話し込むのは得策ではないと思うよ。僕らの目的は彼らと協力関係を結ぶ事だろう?』
『チッ……確かにそうだ』
中途半端に止められた事により、オベロンに対する苛立ちを覚えたが、念話にて語られたのはこの場において尤もな意見だったので引き下がる事にした。
「それに、今慎二の事が信用ならないからって協力を断ってしまうのは良くないって考えてるのは遠坂もだろ?」
「……リン。私もこの協力にデメリットはあまりないように思うわ。受け入れましょう?」
「…………えぇ、そうね。確かに衛宮君達の言う通りだわ」
緊迫した状況、そして士郎とイリヤからの説得を受けて遠坂は俺と協力関係を結ぶ事を渋々了承したのだった。
⇒これにて協力ルート爆誕
・慎二側からはセイバーへの対抗戦力としてランサーを付け、衛宮側からは計画実行の為の人手としての協力をする事を条件に締結
・次の日の晩に計画を実行の為、慎二らは道具を揃える為に一時帰宅する
IFルート3-2の執筆は未だ進んでおりませんので、またかなり先になると思います。楽しみにしていただいている方がいらっしゃいましたら、誠に申し訳ございません……。次回3-2は衛宮邸の前でイリヤが「準備はいい?」と語りかける所から始める予定です。
今回遅れた理由としましては、支部の方での投稿をまた始めてしまった事が主な原因でございます…。そちらの方でも有り難いことにランキング入りなどをさせていただきまして、調子に乗り、こちらの執筆が疎かになってしまいました。気分屋で本当に申し訳無い……