ギギネブラの苗床となって、一生を終えたいと願った女性がいた。

※この作品は、Xfolioにてマルチ投稿しております。

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ギギネブラたんの苗床になりたい人生だった

 

 自分自身の常識とは、他人にとっては非常識。

 隣人のおせっかいは、当人にとっては厄介。

 

 誰かの言ったらしい言葉である。

 集団で生活している限り、百の心地良い状態など存在しないし、全員が全員同じ考えのはずがない。

 

 人里離れて雪原地帯、通称凍土。

 万年雪の降り続けるこの地に訪れる人間は限られている、ハンターと呼ばれる者達だ。

 ある者は素材を求めて──

 ある者は戦を求めて──

 ある者は救いを求めて──

 また、ある者は──

 

 同じハンターとて、これだけ部類される。

 この日人里に被害の出た原因である、モンスターを討伐すべく二人のハンターが駆り出された。

 

 「──ギギネブラたーん!!私と子作りしようぜー!!お前、竿役な!!」

 

 ──人は彼らを、モンスターハンターと言う。

 

 

 ※

 

 サリナ・ターコイズは一途である。

 初恋はもちろん、勉学に修行に対してもひた向きで一途である。

 

 ある日彼女は恋をした。

 そして、彼の子供が欲しいと思った。

 ギギネブラである。

 

 「いや、意味わからんわ」

 「なんでやねん」

 

 凍土探索二日目。

 ギギネブラは見つからなかった。

 

 「いや、サリナちゃんの言葉の意味はわかるよ。でもさ、その、なんで、どうしてそうなったの?」

 「一目惚れって知ってる?」

 「その一言で片付かないから混乱してるんだよ」

 

 キャンプで焚き火を囲いながら、一日の疲れを癒すはずが余計な心労がプラスされそうだ。

 討伐対象が増えかねない。

 

 「リックはしたことないの?初恋?」

 「少なくともモンスターにしたことはないよ」

 「まじで?」

 「僕がおかしいみたいな目を向けるのはやめてもらえないかな?」

 

 パチパチと音を立てる焚き火は周囲の温度を一時的に保ってくれる。

 サリナはと言うと、恐らく気温とは無縁の汗を流している?

 

 「だってさ、ギギネブラたん、よくね?」

 「どこが?」

 「子沢山なところとか、面倒見がいいところとか、包容力ありそうなところとか、毎晩愛を囁いてくれそうなところとか」

 「何一つ共感できない場合はどうすればいいんだ?」

 

 そう、サリナは現在ギギネブラに一途なのである。

 

 「──犯されて、卵の苗床になって、たくさんのギィギちゃん達を、孕みたい」

 

 一緒にハンターとしてバディを組んで四年になるが、相棒のことを何一つ理解できないリックであった。

 ギギネブラというモンスターはそこそこ厄介なモンスターである。

 体内に猛毒を持ち、近くの死骸に卵を植え付ける。

 そこから幼体であるギィギが大量に産まれ、人に噛みついては血を吸われるというものである。

 

 実際、ギギネブラ単体による被害も勿論だが、ギィギの被害も多く報告されている。

 子供が噛まれただの、人里に現れては駆除依頼が来たりと。

 そして、彼らは卵を無限に産む。

 比喩表現でなく、一個体だけでの産み付けができてしまうのだ。

 交配をせずに生息域のあちらこちらに産卵するのだからタチが悪い。

 

 その産卵行為を自らの身体にして欲しいと願ってる相棒、かなりタチが悪い。

 ホットミートを頬張りながら、明日探索するエリアについての相談を交える。

 

 「もう少し上に行ってみよう、洞窟が見つかれば住み処にしてる可能性も高い」

 「なら、こっちからのルートにしようよ。今日マッピングしたところの続きからだから、効率もいい」

 「賛成だ」

 

 ──この女、こういうときは阿呆みたいに真面目だから対応に困るんだよな。

 リックの相棒への評価は大変辛辣である。

 

 「今日は寝るか、見張りは僕からするが大丈夫か?」

 「大丈夫よ。旦那様と会うために美容と保湿、苗床の身体ケアはしっかりしないとだからね!」

 「なんなら、このまま村に帰ってくれてもいいぞ?」

 

 翌朝。

 サリナとリックは予定していたルートへと、足を進めていた。

 適度にホットドリンクを補給しながら、寒さに体力を奪われないように気を付ける。

 ギギネブラの討伐、本来の目的のために力を発揮できなければ意味がない。

 

 「元気なギィギちゃんを産むため、本来の目的のために体力がなくなったら意味はないからね!あ、リック、活力剤いる?」

 「ホットドリンクで事足りてるよ」

 

 もうツッコミを入れるのも億劫になっていた。

 サリナ・ターコイズはこういう女、そう思わねばバディを続けていくことは無理だろうと思ったからだ。

 

 今日の凍土は昨日よりも吹雪いている。

 たまたま見つけたルートが洞窟と直結していたため、屋根のある場所に潜り込めたのは幸運である。

 

 しかし、だ──

 

 「──ギギネブラたーん!!私と子作りしようぜー!!お前、竿役な!!」

 

 そして冒頭となる。

 リックは頭を抱えるしかなかった。

 

 「会いたかったぜ、ギギネブラたん!」

 「もう出会ってるし!?」

 

 目を離した隙にこれである。

 二日も探し回ってたのに、こんなにあっさり見つかるなんて釈然としないリックと興奮するサリナであった。

 

 「──まぁ、いいや!予定通りいくよ!」

 「任せとけ!こっちとら、S◯Xの準備は万端だぜ!」

 「直球すぎる発言やめて!!R18の世界線にしないでくれるかな!?」

 

 この作品はR15です。

 

 「しゃおらー!!」

 「いくらホットドリンク飲んでるからって全裸になるのやめてくれないかな!?ここ凍土だよ!!?」

 

 常識と節度から身につけた方がいいんじゃないのか、この女。

 スラッシュアックスの腕は教官も認めるくらい凄いのに、ギギネブラへの愛が一途すぎる。

 というか、リックはあれを愛とは認めてない、狂気として認識している。

 

 しかし、相棒として共闘経験が多いことから、彼女の奇行はある程度想定内である。

 リック・ブランタールというハンターはこの程度の事態では動揺しない、落ち着いて貫通弾を装填する。

 

 「ギギネブラたーん!」

 

 モザイクに身を包んだサリナが天井を這うギギネブラに向けて飛び上がる。

 ギギネブラの双頭がサリナを目視、案の定というか猛毒の塊を吐き飛ばす。

 

 「ポイズン!」

 

 その程度で彼女が止まるなら、リックは苦労してない。

 

 「うぉぉぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 重力に逆らったサリナ・ターコイズはギギネブラの背に跨がり、五指で肉を捉えしがみつく。

 モンスターにもある程度知性はある、あるがゆえにギギネブラは一瞬何が起こったのか理解が追い付かずに行動が遅れてしまう。

 リックの撃った貫通弾がギギネブラの両翼を穿ち、サリナと一緒に落下する。

 

 暴れるギギネブラ、構わず抱きつくサリナ(全裸)

 冷気が霧となり、土埃が舞うのも加わって視界を奪われる。

 

 「サリナちゃん!」

 「大丈夫!もう少し、もう少しで、私!ギギネブラの、苗床になれる!!」

 「何も大丈夫じゃねぇ!?」

 「だから、リックはこのままキャンプに戻ってて!」

 「なんでモドリ玉こっちに投げてんの!?ちょ、サ──」

 

 

 ※

 

 考えが追い付かない。

 というか、リックは自分がどうするべきなのか分からずしまいだった。

 

 「ていうか、モドリ玉ってあんな使い方できたんだ」

 

 現実逃避最高。

 装備を整えてギギネブラ狩猟に頭を切り替えた。

 

 リック・ブランタールがサリナ・ターコイズをギギネブラから救出すると信じて!

 

 「僕の戦いは、これからだ!」

 

 サリナ・ターコイズが元気なギィギでサッカーチームを作ることを夢見て!

 

 「──う、う、産まれるぅぅぅぅぅぅ!!」

 

 ハッピーエンドは人それぞれ。

 少なくとも、サリナ・ターコイズにとってはハッピーエンドを迎えることはできたとだけ記載しておこう。

 追記すると、彼女が孕み産んだギィギは三十三体だったとか、なんとか。

 

 「ふぅ、幸せな時間を過ごしてしまった」

 「……僕、あんたを助けてよかったのかな」

 

 ──幸せは、人の数だけある。

 そんなお話。




感想、評価、批評、罵倒、その他諸々お待ちしてます(^^)

R18版の執筆…

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