最強のハゲには、男の娘かつ最強電気使いの弟がいる   作:雨を呼ぶてるてる坊主

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「今話で、イサム君パートは終了だよ。」


六十八撃目:天才少年を照らす二つの光

フェニックス男を拳で押さえつつ、童帝は怪人協会の最下層にある水源まで一直線に急下降していた!!

 

 

「これで、どうだぁぁぁ!!」

 

 

「ガバボバボボ!!」

 

 

そして斜面を下りながらも、童帝はブレイブジャイアントの活動限界時間を確認する。すると、そこには残り時間二分一秒と書かれている。

 

 

(活動限界まで、もう時間が無い!これで決めないと・・・!!)

 

 

そう腹を決める童帝の視界に、とあるものがチラッと映った。それはなんと・・・両手を万歳したままウォータースライダーを楽しむか如く滑り落ちるサイタマだった!!

 

 

「ハゲマントさん!?」

 

 

そんな彼の言葉にサイタマは手を振りながら叫ぶが、童帝はサイタマの声が聞こえていないのか首を傾げるばかりだ。そんな彼に分かりやすいように、サイタマは耳を指差し塞ぎ『音が五月蠅いから、静かにして』とジェスチャーをするが、童帝は勘違いをして解釈をしてしまう。

 

 

「えーと、頭?ハゲの事?・・・は聞きたくない?・・・から、言わないで?」

 

 

「違うわ!!」

 

 

「よく分かんないよ!!」

 

 

そうツッコミを入れていた童帝だったが、そんな彼の操縦するブレイブジャイアントからフェニックス男は"フェニックスペンギンモード"に変身すると水流に乗って抜け出してしまう。

 

 

「逃がすか!!」

 

 

そう言いながらフェニックス男を捕まえようとするが、ペンギンモードとなったフェニックス男の肌は滑りが効いているのか中々捕まえられない。

 

 

(うなぎ)か!!」

 

 

そう言いながら呆気にとられる童帝を他所に、フェニックス男は用水路の水を凍らして作った氷塊をブレイブジャイアントに叩き付ける!!そして、勢いそのままにブレイブジャイアントは地下深くに落ちて最下層の床に激突する!!

 

 

「クソッ!ズルいぞ、後出しで次々と!!」

 

 

「君が言うか。」

 

 

そう癇癪を起こす童帝だったが、そんな彼の眼前には衝撃的な光景が広がっていた。なんと、そこには地底人達の死体の山が築かれていたのだ!!

 

 

「何だ此処は!か、怪人の死体・・・!?」

 

 

「おあつらえ向きだな。終点が、先住民共の墓場とは。」

 

 

「この!!」

 

 

そう言いながら、ブレイブジャイアントの頭頂部に立っていたフェニックス男を振り払おうと童帝は腕を振るうがあっさり避けられてしまう。

 

 

「おっと。」

 

 

すると、丁度そのとき地底に流れる滝に乗ってサイタマも最下層に到着した。そんな彼に、童帝はワガンマを引き渡す。

 

 

「ハゲマントさん、すみません!!今から人質をそちらに引き渡します!僕はこの怪人に集中しますので、人質を御願いします!!」

 

 

「お、おぅ?」

 

 

そう困惑するサイタマの前に、乗り物酔いしたであろうワガンマがブレイブジャイアントのランドセルから降ろされる。

 

 

「よ・・・酔っ・・・。おえっ!」

 

 

「ワガンマ君しっかり!!僕はこの怪人との戦いに集中するけど、隣に居るヒーローが君の事を守ってくれるからね!!」

 

 

「えっ!?こ、コイツがヒーロー・・・?・・・弱そーだな・・・。」

 

 

そんな愚痴を(こぼ)すワガンマに注意する暇も無く、童帝は再びフェニックス男と対峙する!!その余波でワガンマが吹っ飛ぶが、間一髪でサイタマがキャッチする!!

 

 

そんな彼等に構う事無く、童帝はひたすらフェニックス男に攻撃を続けていくが・・・。

 

 

「無駄な足掻きを・・・。キェェェェェ!!」

 

 

フェニックス男がそう叫ぶと、周囲の風景は一瞬にしてフェニックス空間へと転じてしまう。そうして、フェニックス男は童帝の横にゆっくりと腰を掛ける。

 

 

「これ以上やっても、時間の無駄だ。俺とのレベルの差も、分かっただろう。」

 

 

「くそぉ!また・・・しつこいぞ!!」

 

 

「ギャーギャー言わず、周りをよく見てみろ。御前にヒントをくれているぞ。例えば、あの死体の山。違和感がないか?」

 

 

そう指を指して示した先に映っていたのは、長閑(のどか)な空間に似つかわしくない暗黒の空間だった。そして、そんな空間には地底人の死体がゴロゴロ転がっていた。そんな異様な光景に、童帝は顔を(しか)める。

 

 

「殺し合ってる・・・!?」

 

 

「そう、結束を崩されたんだ。脆いもんさ・・・。」

 

 

「・・・何が言いたい。」

 

 

「ヒーロ協会も怪人協会も、何時(いつ)かはああなる危険性を孕んでいる。利害や哲学が、バラバラの集団だからな。精神を共有する我々着ぐるみ怪人の結束とは、比べるまでもない。そら、伝わるだろう・・・?こうして、言葉によらず・・・。」

 

 

次の瞬間、真顔だった童帝の顔がどんどん蒼褪めて行ってしまう。よほど、ショッキングな内容が頭に流れ込んできたのだろう。呼吸も浅く成り始めている。

 

 

「何だ・・・?これ・・・今、僕に何を伝えた・・・!?」

 

 

「ヒーロ協会の上層部が、裏でやってる悪事。」

 

 

そうなんて事も無い様に告げるフェニックス男の横で、流れ込んできた映像が余程ショッキングだったのか。童帝は吐き気を催してしまう。

 

 

「うぷ・・・!!」

 

 

「御子様には、ちょっと刺激が強すぎたかな?これが出鱈目(でたらめ)かどうかは、御前ならすぐに調べが付くだろう。御前は何も知らんまま、悪事の片棒を担がされてたんだ。どうだ?これでもまだ、ヒーローに未練はあるかね?」

 

 

そんなフェニックス男の言葉に乗せられるように、ドンドン童帝の思考は負の感情に支配されていってしまう。何故、大人達は自分にこんな隠し事をしていたのか。もしかしたら、他のヒーロー達も自分を欺いているのかもしれないのではないか。

 

 

『所詮は、御子様と言わざるを得ないぞ。』

 

 

そんなシッチの言葉も思い出した童帝は、闇に呑み込まれそうになるが何とか耐える。

 

 

(しっかりしろ、童帝!!こんなのは、動揺を誘う精神攻撃だ!!)

 

 

しかし、そんな彼の思考を読んでいるかのようにフェニックス男は童帝の思考を否定して畳み掛ける。

 

 

「攻撃じゃない、友人としてのアドバイスさ。御前は、勘違いしているよ。怪人化は救いだよ。・・・俺は長年、スーツアクターとしてドンカンバードを演じていたんだが・・・。ある日、あっさり首を切られたんだ。もちろん、納得できなかった。他の誰よりもドンカンバードを愛し、理解し身を捧げてきた筈なのに・・・。俺が着ぐるみを脱ぐのは間違っている。そう思っていたら、着ぐるみが脱げなくなり怪人化していた。」

 

 

そんなフェニックス男の顔は、スーツアクターを首にされたという哀しみの表情から高揚感に満ちた表情に変わっていった。

 

 

「だが怪人化した事で俺は、この無限ともいえる力を手に入れた。ドンカンバードは、俺に自由をくれたんだ。俺は嬉しかった。薄汚れた大人たちに着せられた、そのヒーローという着ぐるみは身を捧げて尽くす御前に答えてくれたか?力をくれたか?自由をくれたか?認めてくれたか?」

 

 

そんな彼の畳みかえるような言葉に、童帝は息を荒げながら体を震わせる。そして、次の彼の言葉で体をびくりと震わせる。

 

 

「先程、御前の記憶を見たときに激雷の天使との記憶も見た。どうやら、あの男に心酔しているようだが・・・。本当に、あの男はお前を大事に思っているのか?」

 

 

「ど、どういう・・・意味だ。」

 

 

「電子操作能力・・・。この力の出力はピンキリだが、使用者によっては人の理を逸脱し神の次元にも届くと言われている能力。現に、激雷の天使の実力は戦慄のタツマキを凌駕するほどの実力だ。そんな神ともいえるような男が、御前の様な子供に優しさだけで接していると思うのか?」

 

 

「そ・・・れは。」

 

 

「それに、御前は元々はS級5位のランクを保っていた。だが、奴が到来した事によりあえなく順位を奪われてしまった。奴がその事に、一度も言及したか?内心では、御前に対して優越感を抱いて見下していたかもしれないぞ?ぽっと出の自分に負けた、敗北者のガキとな。」

 

 

その言葉に、童帝の頭の中にぐるぐると様々な感情が回っていく。無論、童帝は心の底からホタルの事は尊敬している。それに、一度もランキングを奪われた事を(ねた)んだ事は無い。

 

 

・・・そう、その筈だった。だが、度重なる精神攻撃。そして、協会内の闇を見せられ疑心暗鬼に成っていた童帝に、正常な判断能力は残されていなかった。

 

 

「・・・・そんな。」

 

 

自分に対して無償の優しさを見せてくれていた、心優しいお兄さん・・・。そんな彼が自分を見下しているのではないかと一度思考してしまった童帝の心はどんどん沈んでいく。

 

 

そんな彼の背中を、フェニックス男はポンと叩いて励ましの言葉を掛ける。そんな彼の言葉に、童帝の心を闇が侵し始めようとする。

 

 

「俺は認めるぞ。御前が作り上げたブレイブジャイアントも、きっと認めて力を与えてくれる。童帝!俺と一緒に来い!!共に、真の栄光を掴もうじゃないか!!」

 

 

そう宣言して、完全に童帝の心を悪に堕とそうとしたフェニックス男だったが・・・。そんな彼に、声を掛ける男が居た。

 

 

「怪人化して悪さすんのが、栄光な訳ないだろ!!」

 

 

そう・・・我らが最強、サイタマである!そんな彼の登場に、シリアスな雰囲気は吹っ飛びフェニックス男と童帝は思考を止めてしまった。

 

 

(・・・・え?・・・・え~と・・・え?誰?このハゲ、何で居んの?)

 

 

(え・・・?こ、ここって精神世界じゃないの?な、なんでハゲマントさんが?)

 

 

そんな彼等の心を読んで疑問に答えるかのように、サイタマはなんて事もないかのようにあっさりと答える。

 

 

「ノックしたら、開いたんで。」

 

 

「・・・ここ、精神空間なんですけど・・・。」

 

 

「なんか小競り合いしてんなと思ってたら、ヒソヒソしてるから俺の頭の事言ってんのかと思った。」

 

 

「自意識・・・。」

 

 

そう辛うじて言葉を絞り出すフェニックス男に、サイタマはズイと顔を近づけるとマジ切れ説教をかまし始める。

 

 

「しかし、さっきから聞いてりゃ何なんだオメーは。子供相手にネチネチネチネチ。やりたい事があるんだったら、趣味として自分で勝手にやってろよ!!悪事だったら、ぶっ飛ばすけど!!子供巻き込んで、困らすな!!」

 

 

「ハァ・・・。」

 

 

「というか、テメーさっき俺の弟の事を馬鹿にしやがったな?ホタルの優しさが、偽りだ?んな訳ねーだろ。アイツはな、常日頃から怪人と人間が共存できるように頭を捻らせながら頑張ってんだよ。俺みたいな馬鹿とは違ってな。御前みたいに、子供を困らすような奴も助けようと試行錯誤してんだよ。分かってんのか?あ?」

 

 

そんなブラコンモードにチェンジした、サイタマの圧倒的な圧と怒気に細胞レベルで恐怖を感じたフェニックス男は無意識にフェニックス空間を解除してしまった。そして、サイタマの方を確認すると様子見に徹する事にする。

 

 

そのとき、童帝の通信機から一人の男の声が聞こえ始める。その声はもちろん、超ド級の心配症ヒーローのホタルだ!!

 

 

『ガッ・・・!ザ、ザザーッ!!・・・テステース!マイクテス!!イサム君、聴こえてる?』

 

 

「その声・・・お兄さん!?」

 

 

『良かったぁ!ようやく、通信が繋がったよ!!ゾンビマンさーん、イサム君無事みたいですよ!!』

 

 

そんなホタルの声に、彼と通信していたのかゾンビマンの声も童帝の耳に聞こえ始める。

 

 

『そうか・・・。無事で良かった。』

 

 

「ゾンビマンさんまで!?ど、どうしたんですか!?」

 

 

そんな童帝の疑問に答えるかのように、ホタルとゾンビマンから戦果が発表される。

 

 

『いやね。さっき通路を歩いてたら、メカみたいな怪人さんと出会ってね。イサム君の共有してくれた弱点を叩いて倒したんだよ。そしてら、首尾が気になったのかゾンビマンさんから通信が入って御話ししてた感じかな?』

 

 

『あぁ。俺も何体かロボットに遭遇したんだが、何とか倒せた。』

 

 

『ですよね。僕はEMPを流して倒せたんですけど、フラッシュさんが手古摺(てこず)っちゃってたんですよ。瞬殺丸で外殻が斬れないとか言ってて。』

 

 

そんなホタルの言葉に、フラッシュが失態をごまかす様な咳払いをするかのような音声が通信機越しに聞こえてくる。そんな咳払いが終わると、ホタルとゾンビマンは童帝に御礼を言う。

 

 

『そんなロボット共を倒せたのも全部、童帝・・・お前が弱点を暴いてくれたからだよ。・・・大の大人が、揃いも揃って御前に頼りっぱなしですまんな。』

 

 

『みんなに変わって御礼を言わせてくれる?・・・ありがとうね。』

 

 

『本当に、御前が居てくれてよかったと思ってるよ。』

 

 

そんな彼等の言葉に心を打たれたのか、童帝の瞳が潤み始める。そんな彼に気付いているのか居ないのか、ホタルが童帝に話し掛ける。

 

 

『ねぇ、イサム君。この任務が終わったら、ゾンビマンさんと喫茶店で御茶する予定なんだけど良かったら来ない?パンケーキでも、何でも奢っちゃうよ。僕とゾンビマンさんで。あ・・・それから、フラッシュさんがイサム君に言いたい事があるみたいだよ。』

 

 

『おい、激雷の天使・・・。』

 

 

『フラッシュさん?』

 

 

そんな柔らかくありつつも、威圧的ともいえるホタルの声色に観念したのか、フラッシュはいつもの声と比べて小さい声で童帝に話し掛ける。

 

 

『・・・その、童帝・・・。戦ってる最中に・・・発信機を落としてしまった・・・。その・・・徹夜して作っただろうに・・・。す、す・・・まなかった。』

 

 

「え?あ!い、いえ!不慮の事故というものですし・・・。」

 

 

『う、うむ・・・。』

 

 

そして、そんな彼等の言葉を(まと)め上げるかのようにゾンビマンが童帝に話し掛ける。その声は、通信先に居る彼を安心させるかのような声色だ。

 

 

『まぁ・・・何はともあれ、御前の御陰で全員何とか生き残ってるよ。そっちの首尾はどうだ?』

 

 

「も、もちろん問題ないですよ。御三方も気を付けて。こっちは・・・大丈夫ですから。もう、大丈夫ですから!!」

 

 

そんな彼の言葉に、頬に一筋の涙を伝わらせながら童帝はその涙を腕で拭う。そうして、拭い終わった彼の声はとても力強いものだった!!

 

 

「光あれ!!」

 

 

次の瞬間!!フェニックス男がそう叫ぶと、周囲に横たわっていた息の無い筈の地底人達が立ち上がり、一斉に童帝に向かって襲いかかる!!

 

 

「えっ!えっ!?」

 

 

「フェニックスの名に恥じぬ、ナイスな能力だろ。面倒な事になりそうだから、ちょっと冥界から援軍を読んだのだ。ヤロー共、さっさとケリを付けるぞ。」

 

 

その命令を聞くと、蘇った地底人達はブレイブジャイアントの身体に一斉に纏わりつく!!そんな地底人共を振り払おうと、ブレイブジャイアントは暴れるが力が強く引き剥がせない!!

 

 

「ぐぁぁぁ!!し、死体を操るのか!!」

 

 

「やっと、恐れいってくれたか?遅いんだよ。因みに、コイツ等は脳みそが好物らしい。殻を割って、カニ味噌にあり付きたくて仕方ないんだとさ。」

 

 

そう話している間にも、地底人達はブレイブジャイアントの装甲を剥がそうとしている!!そして、そんな中にはホタルとフラッシュに両断されたはずのウインドとフレイムも催眠を掛けられ襲いかかってくるという地獄絵図だ!!いや・・・何で、御前等二人が居るんだよ・・・。

 

 

そんな彼等の猛攻に、コックピットの中に居る童帝は苦しそうな声を上げる!!

 

 

「ぎゃぁぁぁ!!」

 

 

「壊されるのが先か、時間切れで機能停止するのが先か・・・。さぁ、もう選択の余地はないぞ。」

 

 

そう言うと、フェニックス男は掴んでいた怪人細胞をブレイブジャイアントの上に落とす。すると、ブレイブジャイアントのボディの隙間から怪人細胞が侵入し、童帝の眼前まで迫って来る!!

 

 

「ぐぅぅぅっ!!」

 

 

そんな怪人細胞を飲み込むまいと、童帝は必死に口を閉じるが構う事無く侵入しようとしてくる。そんな彼を心配したワガンマに地底人達が襲い掛かって来るが、サイタマのパンチの衝撃波で全滅する!!

 

 

「童帝ー!!・・・あ、あれっ?何だよこのゾンビ、滅茶苦茶脆いじゃん・・・。どうなってんの?」

 

 

そうワガンマが呆然とする中でも、ブレイブジャイアントの中からは童帝の悲痛な呻き声が上がっていく。そんな彼を見かねてサイタマは助けに行こうとするが・・・。呻き声が止むと、中からは覚悟を決めた様な童帝の声が上がる。

 

 

「ぐぐっ・・・!あんたの話、面白かったよ鳥のおじさん。でも、例えが間違ってる。ヒーローは、着ぐるみなんかじゃない。中身なんだ。着ぐるみみたいな、借り物の上辺の力に振り回されて怪人化したのがアンタだ・・・。僕は僕の、なりたいヒーローの背中を追うよ。」

 

 

そんな童帝の脳裏に浮かぶは二人のヒーローだ・・・。一人は怪人の様な超再生体質を持ちつつも決して諦める事無く文字通り何度でも戦い続け、気遣いも忘れないヒーロー。もう一人は、常に他者への気遣いを忘れず敵にすら手を差し伸べる慈愛の化身ともいえるヒーローの姿だった。

 

 

そんな童帝の決断に一呼吸を置くと、フェニックス男の口から地を這う様な低温が響き渡る。そんな彼の眼差しは、加虐に満ちたものだった。

 

 

「交渉決裂・・・か。仕方ないとはいえ小僧相手に散々譲歩した挙句、後ろ足で砂を掛けられたんじゃあな・・・。腹いせに、脳を啜られて何処まで自我を保てるか見せて貰うぞ。」

 

 

「ハゲマントさん!!ワガンマ君を護って!!残存エネルギー!全解放!!」

 

 

そう言いながらブレイブジャイアントに心の中で別れを告げると、童帝はブレイブジャイアントの自爆装置を起動させる!!その自爆攻撃・・・"ギガボルトスマッシュ"は、周囲の地底人達を一掃させるほどの破壊力だ!!

 

 

そして、爆風の勢いそのままにフェニックス男に突っ込んでいった童帝に、フェニックス男は攻撃を加えようとするがサイタマに阻まれる。

 

 

「くっ・・・?」

 

 

そんな一瞬の攻防を理解する事の出来なかったワガンマは、呆然としながらもブレイブジャイアントを失った童帝を心配する。

 

 

「す、すげぇ・・・ゾンビが皆・・・。だけど、肝心の鳥怪人がピンピンしてんじゃん・・・。ロボット、バラバラに成っちまってどーすんだよ・・・。」

 

 

「大丈夫だろ。中身の方が強そうだぜ。」

 

 

そう呟くサイタマの目の前には、威風堂々とした立ち姿の童帝が居た。そんな彼の瞳には、濁りの様なものは一切無い!!

 

 

「制限時間前に、自ら着ぐるみを放棄したか・・・。天才少年と言えど、万策尽きれば破れかぶれの特攻に出てしまうのは悲しいね。何も着ずに、勝ち目が有るとでも?」

 

 

「まぁね。あんたは、ガワに依存しすぎてるから・・・。」

 

 

「はっはっは!馬鹿め!御前の直接攻撃では、俺の眼球にすら傷一つ・・・。」

 

 

そう高らかに宣言しようと瞬間、フェニックス男の動きがピタリと止まる。次の瞬間、怪人協会内部地下に大きな笑い声が響いた!!その犯人はもちろん、フェニックス男である!!

 

 

「ははははは!!ヒャヒャヒャヒャ!!きっ!きさっ!貴様何をしたぁ!!」

 

 

「小型ロボット"コチョコチョ虫3号"。クチバシと顔の隙間から、放り込んだんだ。」

 

 

「こっ、この・・・。わはははは!!ぐぬぅぅ・・・!!ぎゃはははは!!」

 

 

「くすぐったいなら、おじさんも早く着ぐるみを脱ぎなよ。笑い死ぬまで体中這い回って、くすぐり続けるよ。」

 

 

そう乾いた眼差しを向けながら忠告する童帝の眼差しには、厚顔無恥のワガンマさえもドン引きしてフェニックス男に同情するレベルだ。

 

 

「おっそろしい奴だな・・・。」

 

 

「ハヒーッ!!ヒッヒヒヒ!ぬっぬっ!!脱ぐだとぉ!?冗談じゃない!ドンカンバードは、俺の魂!全存在!!ぶははは!金輪際脱ぐもんか!!」

 

 

「筋金入りだなぁ・・・。」

 

 

そう呆れる童帝を他所に、フェニックス男は笑い続ける!どうやら、本当になにがなんでも着ぐるみを脱ぐ意思はないようだ。しかし、次の瞬間・・・とんでもない事が起こった!!

 

 

「ガハハハハ!!ドッ!ドンカンバードは、永久に不滅・・・はがっ!!」

 

 

そんな断末魔を残すと、フェニックス男の身体が爆散してしまったのだ!!そんな漫画のような展開に、ワガンマは驚きサイタマは呆れかえる。

 

 

「爆発した!?笑い過ぎで!?」

 

 

「どんな原理だ。」

 

 

そうして爆発の煙が収まると、そこから出てきたのは・・・レベル竜の面影は何処かへ消え去った、災害レベル狼未満の小さいヒヨコ男だった!!そんなヒヨコ男に、ワガンマは調子付いて踏みつけようとし始める。

 

 

「ハハハ!見ろよ!縮んじまったぜ!!踏んずけてやる、コイツ!!」

 

 

「ふ~・・・。ヒヤヒヤしたぁ・・・。」

 

 

そう言いながら気力が抜けたのか倒れそうになる童帝を、間一髪のところでサイタマが受け止める。そして、サイタマは童帝を労わるように声を掛ける。

 

 

「おっと、すげーな御前。子供かと思ったら、ヒーローなんだな。」

 

 

「あ、ありがとうございます・・・。ハゲマントさん・・・。」

 

 

「サイタマで良いよ。」

 

 

「さ、サイタマさん・・・。あ!ワガンマ君の護衛有り難う御座いました!助かりました・・・。タツマキちゃんの言う通り、もの凄く強いんですね。」

 

 

「あー、あんがとな。」

 

 

そうこう話していると、逃げ回っていたヒヨコ男が何者かに蹴り飛ばされる!そこに居たのは、フェニックス男の催眠から解けたウィンドとフレイムだった!!

 

 

「どういう事だ・・・?フラッシュと激雷の天使と戦っていたはずが、気が付いたらこんな所に。」

 

 

「奴め、逃げおったか。」

 

 

「ほぉ・・・。そこに居るのは、S級ヒーローの童帝じゃないか。ボロボロの様だが丁度良い、フラッシュと激雷の天使を誘き出す餌にでもなって貰うか!!」

 

 

そう言いながら超スピードで童帝に襲い掛かる両者だったが、そんな企みはサイタマにぶん殴られて水泡に帰するのだった。

 

 

「いい加減、休ませてやれよ!!」

 

 

「はびゅ!!」

 

 

そう呻き声を上げながら倒れた両名の顔を確認した童帝は、ネットを駆使して二人の素性を調べ上げる。その結果、ウィンドとフレイムは特S級の賞金首だという事が判明した!

 

 

「こりゃ、特S級の賞金首ですよ!きっと怪人協会と繋がってたんだ、御手柄ですね!」

 

 

「マジか!御金貰えんの!?」

 

 

「はい!・・・ところで、サイタマさんはこれからどうするつもりなんですか?」

 

 

「あー・・・とりあえず、怪人王とかいう奴ぶん殴りに行きたいんだけど・・・。」

 

 

「あ!そ、そうなんですね!!えーと・・・分かりました!じゃあ、ワガンマ君は僕が地上に連れて行きますので、サイタマさんはオロチを倒しに行ってくれますか?」

 

 

「いや、取り敢えず人質の安全が優先なんだろ?御前等二人とも運んでやるよ。」

 

 

二人がそう話していると、突然通路の奥から何者かが降り立つような音がした。その音に全員が振り向くが、そこに居たのはなんと、童帝の発明品の一つ・・・カマセイヌマンだった!!

 

 

「ワンワンッ!!」

 

 

「カマセイヌマン!!ど、どうやって此処まで!?・・・え?僕の匂いを辿って?」

 

 

そんな童帝の質問に、童帝の顔をペロペロ舐めながらカマセイヌマンはコクコクと頷く。そんなカマセイヌマンの仕草から、童帝は解決策を導き出す!!

 

 

「そうか!マップにも無い深部まで流されてきたけど、カマセイヌマンの嗅覚が有れば迷わず帰れるぞ!!」

 

 

そう嬉しそうに語る主人である童帝の言葉に嬉しさを感じたのか、カマセイヌマンは舌を出しながら笑顔になる。そんな彼の真意をサイタマは読み取る。

 

 

「役に立てて嬉しいみたいだな。」

 

 

「カマセイヌマン・・・。今まで、カマセだなんて言ってごめんよ・・・。」

 

 

そんな感動的な場面に、サイタマは『犬良いなぁ・・・。』と独り言ちていたのだった・・・。なお、怪人協会戦が終了した暁に、何か滅茶苦茶強い犬を飼う事をサイタマは知らない。

 

 

そうして、抱擁が終わるとカマセイヌマンは皆に背中に乗れとジェスチャーする。そうして、三人はカマセイヌマンに乗ると、童帝はサイタマに合図を出す。

 

 

「サイタマさん!このまま一気に、地上へ飛び出ますよ!!ワガンマ君を、支えてあげてくださいね!!」

 

 

「おう!!」

 

 

そう言うと、サイタマは自慢の脚力で一気にジャンプする!!そうして、一気に地上までいける・・・と思ったそのとき地下から巨大な蛇の様な怪人が襲ってくるが、サイタマはそれを一蹴する。

 

 

「・・・?サイタマさん、今何かしましたか?」

 

 

「いや、問題無いから前見な前。」

 

 

そうこう話していると、カマセイヌマンは壁に張り付くとゆっくりと地上までよじ登り始める。そんな中、ワガンマに童帝が質問を投げ掛ける。

 

 

「そう言えばワガンマ君、君の他に怪人に捕まっている人はいなかった?」

 

 

そんな質問にワガンマはタレオの事を思い出すが、タレオの件を伝えると脱出が後回しになってしまうと考えた彼は嘘をついてしまう。ただし、その顔には罪悪感が募っていたが・・・。

 

 

「いや・・・い、いなかったよ・・・。」

 

 

「分かった!脱出を急ごう!!」

 

 

その言葉と共に、カマセイヌマンはクライミングの速度を速めたのだった・・・。




「ウェブ版の漫画で、ウィンドさんとフレイムさんが地底人と一緒にブレイブジャイアントに襲い掛かってるのシュールだよね。」
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総合評価:5805/評価:8.97/完結:27話/更新日時:2020年06月22日(月) 11:45 小説情報

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私は霧雨魔理沙。に、なってしまった一般人。▼原作にわかオタクが魔理沙に転生して、歯を食いしばって努力して原作通りにしたい話。▼なお人外はそれを見て悶える。▼※以前arcadiaのチラシの裏で投稿していました。紅魔郷その7までは昔のもの。▼※その8以降からが2024年再開の新しい話で、加筆部分になります。▼※東方二次創作の要素が濃いです。独自解釈や設定も含まれ…


総合評価:8263/評価:8.89/連載:88話/更新日時:2024年12月20日(金) 13:27 小説情報

TSしたから女子校で電波系女子ごっこをしていたら、いつの間にかヤンデレ美少女に囲われていた件について(作者:ペンギン3)(オリジナル現代/恋愛)

せっかくTS転生したので、前世では出来なかった厨二期を存分に楽しむことに決めた主人公は、ミステリアス美少女ごっこを誰もいない屋上で繰り返していた。▼そんな中で、ふらっと屋上に現れた女の子に全力ミステリアスムーブをかました結果──気が付けば近い将来、情緒を滅茶苦茶にされヤンデレ化したメンヘラ女子に監禁されることになるアホの物語。▼小説家になろう様とカクヨム様に…


総合評価:11258/評価:8.99/完結:28話/更新日時:2025年04月12日(土) 18:10 小説情報

苦労人転生者はヒーローの世界へ(作者:鬼塚虎吉)(原作:僕のヒーローアカデミア)

これはもしもの話、隻眼の黒竜との決戦にてベル・クラネル達を守って命を落としてしまった藤堂ケンマは死後の世界と行くと思われていたが、たどり着いたのは【僕のヒーローアカデミア】の世界だった。▼この世界に転生したのかは解らないが、ヒーローへの道を歩いて行くのだった。▼タグは順次追加予定


総合評価:501/評価:5.78/連載:12話/更新日時:2026年02月17日(火) 16:00 小説情報


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