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本作は、丸山彩生誕祭記念回となっております。
しかしながら、作中には他作者様のオリキャラが参加をしていたり、私の投稿作品にてまだ未登場のキャラが出ていますので、その辺りをご了承頂きつつ、本編をお楽しみくださいませ。
尚、時間軸は『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』にて現在進行中の時系列に準拠しておりますので、私の投稿作品では扱っていない設定なども多分に含まれている可能性がありますので、先のキャラクターの件も含めましてご了承ください。
長らく更新の音沙汰が無く、お待たせしてしまい大変申し訳ありませんでした。ただ、この投稿ペースだと次の更新は新年明けてからが濃厚と見ておりますので、更新通知の方をお待ち頂けると幸いです。
今回は投稿日の本日、12月27日が『Pastel*Palettes』のリーダー兼ボーカル担当を務めております、丸山彩のお誕生日と言う事で、ささやかですが誕生日回を執筆させて頂きました。
彼女の関連で言えば、約3ヶ月程前に暫く芸能活動を休止されていた前島亜美さんの芸能界復帰、丸山彩役の続投と言うお知らせが入った事があり、その時はX(旧Twitter)の方でも大盛り上がりだったと覚えております。
前島亜美さんの復帰をお祝いして、と言う作品は既に投稿されておりますので、よろしければ其方も併せて読んで頂けると嬉しいです。
前書きが長くなりましたが、この下からはいよいよ丸山彩生誕祭記念回の本編となります。最後までごゆっくりとお楽しみくださいませ。
「ふんふんふーん♪」
今年一年ももう終わり際に近づき、世間はクリスマスムードに包まれた今日この頃……私は自分の部屋で、お出かけする為の服装に着替えていた。
普段じゃ身に付けない暗めのコートも、この時期には少し寒そうに見える短いスカートも……今身に付けている物全てが、これから会う人の為の格好だ。昨年と一昨年は私の方から誘っておいて、その結果遅刻しているから……今年も遅刻なんて絶対に許されない。
「服装はバッチリだし、お財布も持った……携帯も、ポーチも大丈夫。……うんっ、これで完璧!」
私はそんな事を一人声に出し、ベッドの上に置いていた小さいショルダーバッグを肩から提げて、自室のある二階から一階の方へと階段を降りて行った。その際に耳当てや手袋をしてない事に気づいて、一度部屋に戻る事になったのは別の話だけど。
そんな諸々を終えて玄関の扉を開けた先には……この時期ならでは、と言った服装に身を包んだ……
その近くには白を基調とした普通自動車が止まっていて、如何にも私を迎えに来たと言わんばかりの様子だった。
「おはよう、彩。今日は時間ピッタリだったね」
「うんっ! 颯樹くんとのデートが楽しみ過ぎて、早起きしてさっきまで念入りに準備してたんだ〜♪」
「そっか。そう言って貰えると嬉しいよ」
彼とのこのやり取りは、いつもの事だけれど……私にとってはまさに至福の時間。大好きな颯樹くんが居るだけで、私はもう満たされた気分になってしまう。それくらい、目の前の彼に心を奪われてるんだと自覚してる。
自惚れだって言われても良い……自意識過剰だと笑われたって構わない。だけど、私が颯樹くんに向ける感情は本物だ。
そんな会話をしていると、私の後ろからお母さんが顔を出して来た。颯樹くんとの会話の声で気付いたのかな?
「あら、颯樹くん。おはよう」
「おはようございます、由美さん。彩を迎えに来ました」
「朝早くからありがとう。この子ったら、数日前からず〜っとそわそわしてたのよ? もし貴方に見初められたらどうしよう〜って」
「お、お母さんっ!? い、一体何を言って……っ!」
お母さんからの衝撃的なカミングアウトを聞いた私は、顔中が真っ赤に染まる様な感覚を覚えた。それを見た颯樹くんは苦笑していたけれど、私としてはそれ所では無い。
……えっ、もしかして……全部……見られてたっ!?
周りに誰も居ない事を確認して、聞こえない様に枕を顔に押し当ててたりしたのにっ!? お母さんには全部聞こえてた……って事っ!? うぅ〜、外は寒くて今にも凍えそうなくらいなのに、自分の恥ずかしさで逆に暑くなっちゃいそうだよぉ……。
「それじゃあ、彩の事は一日お願いして良いのよね?」
「はい。構いません」
「わかったわ。……しかし、彩も良い人を見つけたわ〜。まさか一目惚れ、だなんて」
「それを聞いた時は、肝が冷えましたよ……。僕なんて、幼馴染の事ですら手を焼いているってのに」
私が恥ずかしさで顔を真っ赤にして悶えてる横で、颯樹くんとお母さんは暫し談笑に花を咲かせていた。できる事なら今すぐにでも制止して、デートに繰り出したい所だけど……生憎、今はそれどころじゃない。しかも、話してる内容が私関連だから、尚更タチが悪い。
……ど、どうしよう……このままだと私、公開処刑待ったナシだよねっ……!? 事実が事実なだけに否定出来ないし、かと言って今のこの状況に割って入れる勇気は無いし……うぅぅ、どうしたら良いの……?
「……あら、彩の事をすっかり放ったらかしちゃったわ」
「そうですね。この続きは、またの機会に」
「ええ。今度は二人っきりでゆっくり、景色の良い所で」
……ダメっ、もう我慢できないっ!!!
「ダメ────!」
「「うわぁっ!?!?!?!?」」
「颯樹くんは私の彼氏なんだもんっ! 意地でもお母さんには絶対渡さないんだからっ!」
「あらあら、娘に嫉妬されるなんて……私もまだまだ捨てた物じゃ無さそうね♪」
私がそう言って颯樹くんを抱き寄せると、お母さんはそれが面白かったのか、少し困った様な顔で笑って見せた。私に未だ抱き寄せられたままの彼はかなり顔を真っ赤にしてたけど、私としては我慢の限界を通り越していたので、至極当たり前の行動をしたつもりだ。
「ほら、行くよっ! 今日一日は絶対に私が満足するまで帰してあげない!」
「え、ちょっと、彩!? いきなり引っ張らないで!? と言うよりも車の運転をするのは僕なんだけど!? ……それじゃあ、由美さん。彩をお借りします」
「ふふっ、土産話を楽しみにしてるわね♪」
未だ意味ありげな笑顔で此方を見てるお母さんを背に、私たちはその場から移動し始めた。もちろん運転は颯樹くんだけど、彼には移動中にこれでもかと言うくらい……とことん厳しくお説教しちゃった。
その時私の心の中には多少の罪悪感こそあったけど、さっきまで受けていた辱めに比べたら、この仕打ちは安いものだろう。
彼の運転の元、車を暫く走らせる事約数分。
私たちは今……ショッピングモールに来ていた。此処には昨年や一昨年も来た事があるけど、今日の様な日には多くのお客さんが集まっている。その為、普段アイドル活動をしている私たちにとっては、姿を眩ませる事のできる場所だ。
「それで、彩? 先ずは何処から行くつもりなのさ」
「うーんとね……最初は……ここだよっ」
そう言ってスマホのスケジュールアプリを開いた私は、颯樹くんに見える様にその画面を映して見せた。
「ん、なになに……。ゲームセンターでプリクラ?」
「そうだよ。思えば颯樹くんって、私とか……俗に言う女の子と一緒にプリクラを撮るって、あんまり経験無い様な気がしたんだけど……」
「あー、うん。そうだね。それで合ってる」
「だったら一緒に撮ろっ♪ たくさん撮ってコレクションしようよ♪」
私は目的の趣旨を伝えた後直ぐに、彼の手を取って周りの迷惑にならない範囲で駆け足になった。それを受けた颯樹くんは、最初こそ驚いていたけれど、直ぐに対応して私に歩幅を合わせて来ていた。
周りからは物珍しい雰囲気で見られてたけど、そんなの全然気にしない♪ 寧ろ……私と彼のデートを邪魔立てするなら、その人には容赦しないよっ♪
そんな事を考えていると、目的の場所に辿り着いた。
周りからは賑やかな音が聞こえていて、確り手を握っていないと逸れてしまいそうな程だった。そう思う中でセンター内を歩いていると、
「ここだよっ」
「……おぉ、これは如何にも、だね」
目の前の光景に驚いている颯樹くんの手を引いて、私は中へと誘導する。そして一旦外に出てから百円玉を三枚支払い、再び彼と一緒の状態になった。最初に機械から指示されたのは、お互いに笑顔でと言うシンプルな物だったり……二人でハートを合わせて形作る、等の恋人らしい物がチョイスされていた。
私はいつものアイドル活動で経験があるから、そこまで難しくなかったけど……反対に颯樹くんの方はと言うと、キラプリがそもそも初めてなのか、少し躊躇っている光景が見受けられた。
……そう言えば、颯樹くんって女の子と一緒に居ても、あまりこう言う事はして無かったんだっけ……。それに、休みの日とかはよく千聖ちゃんや花音ちゃんとカフェに行く事が殆どだった様な……。
なら、これはまたと無い機会……。だったら!
「颯樹くんっ♪」
「なに、彩……て、ちょっ!」
「ほらほらもっと笑って〜!」
私は颯樹くんのほっぺを軽く抓って、笑顔をカメラ口に向ける様にした。後で怒られるのはわかってたけど、せっかく写真を撮っているんだから、笑顔じゃないと勿体無い気がしたからだ。
そして、時間も経って最後になろうとした時……。
機械から流れて来た、アナウンスの内容はと言うと。
「「き、キス……」」
「……これ、作った人
その気になる内容は、颯樹くんと軽く口付けをする……と言う物だった。それを聞いた瞬間、彼は結構訝しげな顔をしていたけれど、私としては待ってましたと言った心持ちだ。
2年前、高校2年生の時にウエディングドレスのモデルになった時……私は彼と結ばれたい、そう強く心に思いながらキスをした。舌まで入れようとしたのは勿論だけど、それは颯樹くんが寸前で止めた事もあって、叶わぬ物となっていた。
でも……今はお互いに大学生。
このまま関わって行けば、嫌でも頭に過ぎるのは……学生生活を終えたその先に待っている将来の事。就職をして、その関わり等を駆使して好きな人とお付き合いをして、行く行くはその人と結婚して……お仕事と家事を両立したり。
「(はうぅ……心臓がドキドキしちゃうよぉ……。でも、あの時出来たんだもん……今この瞬間だって、絶対に出来る……っ!)颯樹くんっ!」
「な、何……? 彩……って!?」
私は隣に居た颯樹くんに声をかけ、彼から反応があった所に空かさずキスをして答えた。普段なら千聖ちゃん達からのお説教待ったナシだけど、この状況下でそれを咎める者は誰も居ない。それに、颯樹くん自身がこの手の事には一番奥手なのも私は知っている……なら、これくらい思い切った方が都合が良い。
「……んっ……ぷはぁ……っ」
「あ、彩……。今の……」
「……颯樹くんっ。後でもう一回……しようねっ」
軽くシャッター音が聞こえた後、惚けた表情が抜け切れていない彼に、私はそう告げて写真の加工作業を始めた。正直こんな展開になるって事は予想していなかったけれど、颯樹くんとまた一つ思い出が出来ただけでも私は満足だ。
プリクラを撮った後は、映画館に移動して映画を観る為の予約作業を行なう事にした。見ようと思っていたのは、前々から話題になっていた恋愛映画で、こう言う物を見るなら彼と一緒にと決めていた作品だ。
そして予約の方は滞り無く進み、その映画の放映は3番スクリーンで15時頃と判明したので、それまでの時間潰しにモール内を散策していた。歩けば歩くほど目に映る物に興味を引かれ、その度に颯樹くんを困らせてしまったのは耳が痛い話だ。
「ねっ、映画を観る前に軽く腹拵えでもしない?」
「良いけど、何か考えはあるの?」
「うーん……せっかくのデートなんだし……」
そう言う私の視線の先にあったのは、外観から見てもわかる様な落ち着いた雰囲気が漂うカフェだった。颯樹くんとしては、何処か知っていそうな感じだったけど、私が行った事が無いから大丈夫だろう。
それに……千聖ちゃんや花音ちゃんには、この事を伝えて居ないので、万が一バレたとしても言い訳が出来たりする。
「じゃあ、そこに入ろうか。僕の方から奢ろうかと考えてはいるけど、値段は考えてね」
「んもーっ、そこまで考え無しじゃないよーっ!」
「ははっ、冗談だよ。さ、行こう」
……何だか調子狂うなぁ、もうっ。
颯樹くんと関わるようになって2年……もうすぐ3年が経とうとしているけれど、彼のこう言う一面はここ最近になってから見えて来た物だ。やっぱり、複数人と一緒に居ると緊張しやすかったりするけど……今回の様に二人だけの時は、すごく良い顔を見せている。
その調子でもっと見せて欲しい。
……あの二人でさえ知らない顔を、私だけの為に。
そんな事があった後、颯樹くんはそこまでお腹が空いていないのか、コーヒーを注文していて……私は軽めにサンドイッチを頼んでいた。お野菜にハムやチーズなどが挟まれた至ってシンプルな物だったけど、お腹を満足させるには充分すぎる物だった。
一方の彼がコーヒーを飲むだけ、と言う光景には心の中が少しモヤッとしたのも事実だけど……見ているだけで惹き込まれてしまう様な魅力が颯樹くんからは感じられた。
「(颯樹くん、やっぱりカッコイイ……。こんな良い男の子と二人っきりでデートなんて、みんなに少し申し訳ない気がするなぁ……。でも、今日だけは私が独り占め。誰にも邪魔させないからねっ)」
私は心の中でそう決心しつつ、自分の注文をしたサンドイッチを少しずつ胃袋の中に収めて行った。その後のお会計は、店内に入る前に颯樹くんが言っていた通り……彼の全額負担となった。金額的には微々たる物だったけど、少し何処かで罪悪感を感じたのはまた別の話。
そうして昼食も済ませて、映画も鑑賞し終えた後……私たちはここまで来る時に乗って来た車の所へと戻って来ていた。場所としては屋内駐車場の一番角で、隣に車が止まっていないので退出するなら今が絶好の機会だ。
ちなみに……駐車料金の方は、駐車場に抜ける前に見かけた機械で精算を済ませていたので、後は順路を沿って退出するだけとなっている。
「今日は楽しかった〜♪」
「それは良かった。車の免許を取ってから、こう言う所に来た事が無かったからね……良い練習にもなったし、彩が楽しんでくれたなら何よりだよ」
「あっ、ねぇ……颯樹くんっ」
私はそう言って彼の方を見る。
互いにシートベルトはしていて、あとはエンジンを掛けるだけで移動できるので、彼はもうボタンに手をかけていた。そんな颯樹くんの行動を止めてしまった事に申し訳なさを抱きつつも、私は少し間を置いてから、こう伝えた。
「……私、とっておきの場所を知ってるから……そこまで走ってくれない?」
「んーっ、冬の冷たい空気が良いね〜っ!」
「本当にここで良かったの? 見た感じだとベンチくらいしか無いけど……」
「うんっ、少しだけ……本気の話、したくって」
私が彼を連れて来た場所は、普段は展望台として立ち寄る人も多い所。さっきショッピングモールの中でたくさん遊び過ぎたせいか、もう空は陽も沈んで真っ暗になっていて、眼下に望む景色が光を伴っていてキレイに映っていた。
そんな中でこの場所に二人っきり……。
私の中にある颯樹くんへの想い、それを伝えるには充分すぎる程だ。勿論この場所はあの二人は知らないし、もし仮に誰かに道中を見られてたとしても、ここまで来るのは至難の業。
「先ず……座ろっか」
「わかった」
私は颯樹くんにそう伝えてベンチへ共に腰かけ、景色を眺めている様にその方向を向いた。
「……私たち、今日まで色んな事があったよね」
「え、どしたの急に。まあ、それなりに居たからそれはそうだねとは言えるけど」
「颯樹くんと初めて出会った時……私、凄く嬉しかった。それがきっかけで、パスパレで一緒に活動できたり、みんなとも関われて……とても充実してるんだよ」
「……そっか。それなら良かった」
私の心の内に秘めた感情……颯樹くんは何処までわかってるんだろう。たぶん彼の事だ、何もかもわかったつもりでいるのかもしれない……でも、彼はこう言った恋心とかには少しだけ奥手になりやすい。
なら、私がそれを取り去ってしまわないといけない。
彼の負担にならない様に……少しずつ、だけど確実に。
「私……この気持ちをどう伝えようか、色々考えてたよ。でも、もうここまで来たんだ……思い切って言うね」
「……わかった」
颯樹くんが短くそう答えた後、私は少し息を吸って言葉を続けた。その傍らで少しタイヤの擦れる音が聞こえたけど、そんなの構ってられない。……言うんだ、言え……私っ!
「私と……け、結婚を前提に……付き合って下さい」
「あら、私たちの存在を忘れて大胆な告白なんて、随分と甘く見られましたわね?」
「……え?」
意を決して発した私の言葉は、予想外な所から聞こえて来た言葉に遮られてしまった。その方向を見てみると、如何にも『怒ってますよ』と言わんばかりの顔をした三人が立っていた。
その中に立っている一人……千歌ちゃんは同い歳だし、花咲川に通ってた事もあるから覚えてるけど、問題は残り二人の方。
千聖ちゃんと同じ様な髪色でショートヘアにした子と、グレーの髪を腰まで延ばしていて、左右のひと房を黒を基調にしたリボンで留めている女の子……誰だろう、何処かで会った事はあるんだけど、名前が思い出せない……。
「すまない
「構いませんわ。
「ごめん、恩に着る」
「御礼なら初華に言ってくださいな、彼女が気付かなければもっと遅くなっていたかもしれないんですから」
颯樹くんは祥子と呼ばれた女の子と話をしていて、その後に初華って女の子にお礼を言っていた。その口振りから察するに、三人には何らかの深い関わりがあるのだろう……勿論、未だに目が笑っていない笑顔のまんまな千歌ちゃんも含めて。
……正直、颯樹くんと関わり始めてからその度毎に迎えたクリスマスの時期……毎度毎度良い所を邪魔され続けていた私からすれば、今回のこの横槍は流石に我慢の限界に来ていた。
いつもの千聖ちゃんだったら、同じバンドメンバーのよしみと言う事で、まだ考えてあげられたかもしれないけど……今回は完全に部外者からの妨害行為。それに、告白しようとしていた所に入り込んで来たから、もう弁明も何も聞く道理は無い。
「ちょっとどう言う事っ!? 私は颯樹くんと大事な話をしていたの……そんな良い瞬間を、しかも随分と甘く見られたなんて、どう言うつもり!?」
「おや、機嫌を損ねさせるつもりは無かったのですが……それは出過ぎた真似をしました。ですが、私たちは
「迎えに、来た……? 私の、この告白を邪魔してまで、やりたかった事が、それなの……? たった、それだけの為に……?」
……もう、良いよね。素直になっても。
「ふざけないでよ! 貴女たちの予定に颯樹くんは関係無い、私からすればはた迷惑っ! 祥子ちゃんって言ったっけ……貴女が颯樹くんとどう言う関係なのかは知らないけど、私の大事な瞬間を邪魔して良い理由にはならないよっ!」
「……そうですか、残念です。丸山さん、貴女がここまで融通の利かない人だとは思いませんでした」
「……え……っ?」
私の言葉に被せて来たのは、今まで私たちの傍らでずっと沈黙を貫いて来た……千歌ちゃんだった。高校時代によく聞いた……いや、大学生になって更に凛とした真っ直ぐで厳しい声音で、私への反論を始めた。
「貴女は颯樹の言動に気付かなかったんですか? 彼は一体いつから、貴女の望みを叶える為だけに動いていたと思いますか?」
「……っ、そ、それは……っ!」
千歌ちゃんから発せられた言葉には、私の中で思い当たりがあった。確か家を出る前……彼は『一日』と言っていたはずだ。その中の何処にも『翌朝までかかります』なんて言葉は言っていなかった……まさか!
「そう、颯樹は用事があったんです。日中は確かに貴女との為に時間を使っていましたが、私たちとの約束は夕方……その時間に近付いていたにも関わらず、貴女はこの場所に彼を誘ったんですよ」
「で、でも……それじゃあここに千歌ちゃん達が居る理由の説明には……っ!」
「ご生憎様、ここは
……やられた。私だけが来た事ある場所なのかなと思ったけれど、千歌ちゃんもここに来た事があるとなると、もうこの場所は使えない。内緒の話をするなら、もっと別の場所を使わないと……。
それを聞いた私は、音も無く膝を地面に着いた。
冬の空気を受けて冷たくなった地面に膝がダイレクトに当たったので、少し鈍い痛みを感じてしまった。でも、私の胸の内はそんな事すら考える暇など無かった。
自分のやってしまった事への後悔と、颯樹くんに対しての申し訳なさ……それが私の心を否応無く蝕み、黒く淀ませていく。一度ならず二度も……そして、三度目の正直である今回ですら、私の想いは届かず終い。
颯樹くん以外と恋愛する気は無い私に、周りの女の子たちは揃いも揃って否定的な言葉をかけて来る。それどころか、失敗している私を見て嘲笑ってすら居る……この事実が酷く腹立たしい。
「丸山さん、自宅までは私が送り届けます。颯樹は祥子さんと初華さんを乗せて自宅まで。
「そうだね。車の中に彩のポーチがあるから、そっちに載せようか」
「分かりました」
「……お願いします、千歌ちゃん」
すっかり意気消沈した私は、千歌ちゃんの車に乗って自宅へと帰宅する事になった。その傍らで颯樹くんは、初華ちゃんと祥子ちゃんを車に乗せて自分の家へと向かい始めた。彼の方は楽しそうな雰囲気だったけれど、私の方はどんよりとした重い空気が車内を包み込んでいた。
……結局、私って弱いままだな……。
でも……私は、絶対に諦めないからねっ。誰が立ちはだかったって、最後に笑うのは……この私だよっ!
「……よし、これなら大丈夫そうだ」
これから行われるクリスマスパーティに出すブイヤベースの味付けを終えた僕は、別のコンロの上に移動させた後は別の鍋を取り出してもう一品作る所であった。
ん、僕が誰だって? そういえばまだ自己紹介をまだしてなかったね。まあ一部の読者もさっきの一言で誰か割り出す事なんて無理だろうし。
……改めて。僕は
で。今は僕の所属してるバンド……
今現在、ケーキを作り終えて冷蔵庫に一旦閉まった後は、オーブンでご馳走となる七面鳥を醤油で味付けしてから香りつけのハーブを載せて時間になるまで加熱している最中で、今さっきブイヤベースが出来上がった所である。
「獅音さん。野菜の方は一口大に切っておきました」
そのもう1人というのが、今僕に声を掛けてきた、隣にいる黒い髪で先端が外ハネにしてる少女……
そんな海鈴さんは僕が頼んだ野菜のカットをお願いした。この切った野菜は今からホールトマトを入れてミネストローネにするところだ。本当ならトマトからカットする予定だったけど、時間を短縮する為とトマトの値段が高かったからやむなくそうしたんだけどね……。
ちなみに余談だけど、海鈴さんとの出会いはバンド結成時の顔合わせ……ではないけど、それは長くなるので、今後追々説明しましょう……。
「…………」
しかしそんな矢先、キッチンを覗き見してる薄い黄緑色のロングヘアの子が目の前にいた。その目からは無気力さしか感じられないが、それと同時に興味ありげに見つめていたのだった。
この女の子……
そんな睦さんだけど、もう1人と飾り付けを任されたが今は彼女しかいなかった。
「睦さん、にゃむさんは?」
「飾り付けが終わったけど、見映えがいいから写真撮ってくるって言ってた」
じーっと見ている睦さんにもう1人……にゃむさんについて尋ねた。写真を撮るとの事だけど、リビングは睦さんの言う通り飾り付けは終わってたけど、そこにはにゃむさんの姿が見えなかった。
「……海鈴さん、暫く此処をお願いします。睦さん、海鈴さんの手伝いをお願いします」
「分かりました」
「分かった」
何をしているか心当たりがあるため、海鈴さんと睦さんにキッチンを任せて僕は一度リビングを出た。すると廊下には薄紫色の髪を短く切り揃えた1人の女性が何やら自撮りする感じで撮影をしていた。
「こんにちにゃむにゃむ〜!」
撮影始めだろうか、特徴的な挨拶をしていた。この人は
「今日は、『友達の家でクリスマパーティを開いた』をお送りしまーす! いやー、今年も早いねー! 去年のクリスマスが数日前と感じちゃうよー! それにあと1週間もすればお正月に……わわっ⁉︎」
しかし裏を返せば、Ave Mujicaの情報をリークする立場でもあるため祥子ちゃんはそれを危険視してる。彼女が出かける前に「獅音、私が留守中此処は貴方に任せます。あと重視するのは祐天寺さんの監視です。徹底的にお願いします」と残すほどだもの……。
確かにAve Mujicaで一番重視してるのは世界観。その世界観をぶち壊されたら今後のバンド活動に支障をきたす可能性もあるので、動画の撮影中なんてお構いなしににゃむさんのスマホを取り上げた。
「にゃむさん、動画の撮影はあれだけ禁止って釘を刺したのに懲りてないんですか……?」
「いいじゃん、ちょっとくらいー! 個人的な動画だよー!」
「祥子ちゃんに禁止と念を押されたのにですか?」
「れおことさきこもケチすぎだからだよー!」
にゃむさんは文句を言いながら僕の手にある自分のスマホを取り返そうとしたが僕も負けじと彼女に取られないようにしていた。しかしにゃむさん、その『れおこ』ってやめてもらえますか……? 僕は男性なんだけど……。
ちなみににゃむさんはバンドメンバーの事を……初華さんだったらういこ、睦さんはむーこ……と言った感じで、最後に『こ』って付けたがる。ちなみに僕の場合は『れおこ』って言うんです、はい……。
というよりも、この前海鈴さんに『にゃむこ』って呼ばれた時は、『にゃむち』って訂正してたじゃないですか。自分勝手もいいところですよ……。
「……ねぇ、
するとにゃむさんはスマホを取り返すのを一旦止めて僕に抱き着いた。しかも声の高さも何処か大人びいていて、妖艶な感じで声を低くして誘惑してきた。
余談程度で説明すると、Ave Mujicaはステージに立つ時は祥子ちゃんが付けたバンドネームで呼んでいる。例を挙げると、にゃむさんの場合は『アモーリス』、僕の場合は『ソリトゥス』って呼ばれている。後から祥子ちゃんに意味を聞いたらラテン語で『アモーリス』は『愛』、『ソリトゥス』は『孤独』、って意味だそうだ。
不意にバンドネームで呼ばれて戸惑いを隠さなかったチャンスからか、にゃむさんは僕の手に持ってる自分のスマホを取り返そうと、そっと手を延ばすが、魂胆が丸見えなのですぐ正気を取り戻して取られないように難なく躱す。
「れおこのケチー。こうなったら身体で「身体で……何ですか?」……だから身体で……!」
痺れを切らしたにゃむさんは実力行使をしようと踏み込んだが、途中誰かに遮られた。にゃむさんが錆びた機械のように首を声のした方へ向けると、そこには腕を組んでにゃむさんを睨みつけている祥子ちゃんがいた。
「さ、さささささきこ⁉︎ いつ帰ってきたのー……?」
「つい先程です。気づいていなかったのですか?」
どうやら帰ってきたのはほんの数分前のようだ。祥子ちゃんの後ろには颯樹先輩と初華さんも控えていた。
「それで祐天寺さん。貴女は
「それは「仕事サボって襲われかけてた」れおこ⁉︎」
「ほう……それはいいご身分ですわね」
僕の報告を聞いた祥子ちゃんがにゃむさんに対して冷たい視線を向けると同時に怒りを増していた。
「祐天寺さん、少しお話しましょうか?」
「は、話ってナニカナー?」
「パーティの準備をサボって動画撮影していた事と
するとそれに追い討ちをかけるように祥子ちゃんは玄関の扉を指差してニッコリと笑いながらこっちに来いとジェスチャーしてにゃむさんに実質の死刑宣告を出した。
「祥子、僕もにゃむのお話に参加するよ」
「私もです。貴女の行動は目に余りますので」
更に颯樹先輩と千歌先輩も、にゃむさんのお話に加わる事となった。あのー……これ、もしかしなくてもオーバーキルになるよね……?
「ありがとうございます。では獅音、初華と一緒に八幡さん達と合流して引き続きパーティの準備をして下さい」
「分かったよ」
その後は祥子ちゃんが颯樹先輩と千歌先輩を引き連れてにゃむさんとお話するために一旦外に出始めた。僕の方は初華さんと一緒に海鈴さん達と合流してパーティに出すご馳走作りを再開した。
そこから数十分、ご馳走を無事作り終えた。そこにちょうどいいタイミングで祥子ちゃん達がにゃむさんとのお話を終えて戻ってきた。当のにゃむさんはお話の影響か項垂れていた。
それ以外は何も支障無くクリスマスパーティが始まった。一般的なクリスマスパーティと同じくらい盛り上がる事ができた。しかしその時、にゃむさんは懲りていなかったのかさりげなく動画撮影しようとしたけど、颯樹先輩が無言の圧力で黙らせたり、初華さんや睦さんに詰め寄ったりしてた。あの人、ホントに懲りない……。
「楽しいか?」
「えぇ。初めてだから何とも言えないけど、楽しいのは確かです」
僕が少し離れた所でパーティの様子を眺めてたら、颯樹さんが隣に座ってきて楽しいか尋ねられた。実は僕は、家庭の事情でこの手のホームパーティを一度もした事が無く、その話をAve Mujica全員に話したら驚かれて、クリスマスパーティを開いたのが始まりだった。
「そうか。ならカラオケ大会で更に盛り上げようか」
「分かりました」
そして一度カラオケで盛り上がってる全員の所に集まると、睦さんにマイクを手渡され歌うよう促された。その隣には同じくマイクを持った祥子ちゃんも控えていた。
「さあ獅音、久しぶりのデュエット……大いに盛り上げましてよ?」
「分かったよ祥子ちゃん」
そういうと同時に音楽が流れてきて、僕と祥子ちゃんは歌い始めるのだった────。
今回はここまでです、如何でしたか?
彩の普段の性格を考えれば、何処かで詰めを誤るのではないか……と考え、このお話を制作しておりましたが、過去を思い返してみれば、そこそこ彼女って不憫な目に合ってますよね……と冷や汗モノになったのはまた別の話です。
今回のお話の後半に出ておりました、新しいオリキャラである……
そのお方とは事前に話を済ませており、今回の生誕祭記念回だけで無く、新年より始まる予定の新規作品でも登場致します。ですので、機会がありましたら是非最後に追記致しますURLより、獅音くんの登場作品も読んで頂けると嬉しいです。
それでは、また次の更新でお会いしましょう。
【雨宮 獅音くんが主人公を務める作品】
『迷子になるか、仮面を着けるか』
[URL]https://syosetu.org/novel/326730/