冬のとある休日、Pastel*Palettesのベース担当の白鷺(しらさぎ)千聖(ちさと)は想い人である盛谷(もりや)颯樹(さつき)と共に遊園地にデートをしに行く事となった。しかし、それらを遠く離れた所から覗き見る集団が────。

 果たしてデートは無事成功するのか。一冬に起きた出来事が、今始まる……。


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 皆さまこんにちは。もうすぐ2023も終わるのにAve Mujicaの最新話を執筆してるなかむーです。

 今回は、『咲野皐月』さんの要請により、投稿日である今日…12月27日、彩の生誕記念回を投稿しようと思います。

 とある漫画のパロディネタも含まれておりますが、楽しく読んでいただけると幸いです。

 前書きはさておき……それでは、どうぞ。本編をゆっくり楽しんで下さい。


彩りのあの子は追跡者⁉︎

 時は12月中旬、日が経つにつれて寒さも厳しくなってきたこの頃。黒髪の少年…颯樹と金髪の少女…千聖はとあるテーマパークに来ていた。

 

 2人は普段はこういった場所にはあまり来ない方だが、2人とは縁深い少女…花音からテーマパークのペアチケットを譲り受けて此処に来たのである。

 

 ちなみにチケットは花音がバイトの同僚から譲り受けたものである。それを受けたからか、本来は花音が颯樹か千聖のいずれかと行く予定であったが、2人のスケジュールと噛み合わなかった上に、チケットの使用期限最終日に予定が空いていたが、肝心の花音がその日はハロハピのライブと被っていたので、颯樹と千聖に譲るという事になったのだ。

 

 「楽しみね、ダーリン♪」

 「そうだね、ちーちゃん」

 

 2人は仲睦まじく会話しながらテーマパークの受付へと向かい、施設内に入って行った。しかしそんな2人を少し離れた駅前ビルの屋上から監視してる人物と複数の集団がいた。

 

 「颯樹くんとデートなんていいご身分だね千聖ちゃん。これじゃあ私の怒りは収まらないよ」

 

 2人…主に千聖に対して怒りを抱きながらピンク髪…彩は拳を握り絞めていて、その怒りに満ちた眼は千聖を睨んでいた。ちなみに今の彩は、黒で統一されたスーツとネクタイを着用しており、サングラスを掛けて口にココアシガレットを咥えていた。

 

 「だからこの怒りを収めるために千聖ちゃんの命で支払ってもらおうか♪花音ちゃんと纏めて始末しようと思ったけど、いないから後日って事で。ちょっと麻弥ちゃん、悪いけど土台になってくれない?」

 

 そう言って彩はライフルを構えた。しかもスコープが覗くその照準は千聖の頭にしっかりと合わせていた。

 

 「ちょっと待てぇぇぇぇ!何⁉︎いきなり呼び出されて来てみたら、颯樹さんと千聖さんのデートの邪魔をするのが目的かよ!」

 

 此処で彩と同行していた少年…京介が慌てて止めに入る。また京介と彩の後ろには他のパスパレメンバーも控えていた。

 

 「デートじゃないよ!あの腹黒女優と颯樹くんが交際してるなんて絶対認めないよ!」

 「いい加減現実を見ろ!というより俺はアンタがアイドルバンドのリーダーなんて絶対認めないからな!」

 

 彩は険しい顔をしながら颯樹と千聖の行為を認めないと怒鳴りながら公言するも、京介に現実逃避をするなと怒鳴られながら咎められる。

 

 「きょーくん!あたしはきょーくんが羽丘の生徒会長なんて絶対認めないよ!」

 「アンタは永遠に黙ってろ!つかアンタが無理矢理俺に押し付けたんだろうが!」

 

 しかしそこに便乗してか日菜が今の状況で関係無い事を口にしながら京介と彩に首を突っ込んだが、逆に京介に黙るよう咎められた。

 

 「彩さん、俺は帰らせてもらう。あの2人を敵に回すとどんな末路を辿るか、オツムが足りないアンタでも理解できるだろ?」

 「ジブンもパスするっス。颯樹さんと千聖さんは大学生になってから、2人の時間なんて中々取れてないんですよ?だから2人にとって貴重な時間を邪魔するわけにはいかないっス」

 

 彩の奇行に心底呆れた京介は溜め息をしながら踵を返した。麻弥も京介の最もな指摘に賛成のようで、彼と同じく踵を返した。

 

 「何言ってるの2人とも?私がお願いしてるのは千聖ちゃんと…あと花音ちゃんをこの世から抹消させる事だよ?」

 「「もっと出来るか/ないっスよ⁉︎」」

 

 しかし彩の口から出たのは、アイドル……人間らしからぬ言葉であった。それには思わず京介と麻弥は即答で拒絶する。

 

 「流石に抹消させるのは人として色々…というより絶対マズイっス!」

 「というかアンタは此処にいない花音さんまで標的(ターゲット)にするな!」

 

 麻弥は慌てながら彩を諭そうとした。この時今この場にいない花音まで標的(ターゲット)の対象に入っていたので京介は止めるよう促した。

 

 「だって考えてみてよ。あんな連中(千聖ちゃん達)が颯樹くんを幸せに出来ると思う?私だって颯樹くんが幸せならそれでいいよ。でもやっぱり颯樹くんの隣が私だったらいいのに……と考えて、考えて、考えた結果……あの2人を始末する、という結論に至ったんだよ」

 「トチるを通り越してトチ狂ってんぞ!そして一体どんな思考回路を張り巡らせたらそんな結論に至るんだよ!マフィアでもまともで穏便な判断を下せるぞ!」

 「アイドルなんて皆マフィアみたいなものだよ!」

 「彩さん、アンタアイドルとしてとんでもない事を言ったっスよ!」

 

 しかし彩は京介達の言葉を聞き入れず、常人が見ても明らかに修復不能レベルのバグっている思考の彩は極端な結論を下したのであった。しかもその時彩はマスコミに取り上げられたら完全に炎上する発言をしたので麻弥は思わず言及するのであった。

 

 「彩ちゃんの言う通りだ。この未来(さき)のためなら必要な犠牲はあるんだよ」

 「一ノ瀬、お前何してるんだよ」

 

 京介達が揉めている最中に、彩と似たような黒のスーツとサングラスを着用した男…一ノ瀬が何かを用意しながら話に割り込んで来た。京介は青筋を浮かべながら一ノ瀬に尋ねた。

 

 「彩ちゃんに雇われたんだ」

 「何さも当然の事を言ってるんだよ!彩さん!こいつ絶対標的(ターゲット)間違えてるから!」

 

 事前に持ってきたライフルを構えながら一ノ瀬は京介の問いに答えた。しかし、彩とは違い照準は千聖…ではなく颯樹の頭に定めていた。

 

 「キョウスケさん!それはワタシ達が同じ穴の狢だからです!」

 「お前も何やってるんだよ若宮」

 

 それに合わせるように、白髪の少女…イヴもいつの間にか彩や一ノ瀬と同じ黒のスーツにサングラス姿で、彩の隣でライフルを構えていた。

 

 「若宮ではありません!私はブシドー13(サーティーン)です!」

 「なんですかブシドー13って?というよりその13はなんですか?」

 「縁起のいい数字だからです!」

 「イヴさんその数字縁起悪いっス!もし縁起が良いと思うなら今後一切ブシドーキャラ名乗るのやめて下さい!」

 

 ブシドー13と名乗るイヴに麻弥はジト目で追及した。イヴはこれが縁起が良いと信じてやまなかったようで、ドヤ顔で堂々と言い退けたが、麻弥に厳しく批判される。

 

 「アヤさん!私はアヤさんの行動に敬意を評します!」

 「イヴちゃん…いや、ブシドー13……」

 

 しかしそれでも尚、イヴは彩を賞賛するように彼女に敬礼をした。イヴのその行動に、彩は感動したのか涙を流した。

 

 「今の所に敬意を評するところ無いだろ……」

 「右に同じくっス……」

 

 その傍らで、彩のやりとりを見ていた京介と麻弥は呆れながらため息をついた。

 

 「行こう2人とも!」

 「ラジャー!」

 「ブシドー!」

 

 颯樹達を見失うのを防ぐため、彩は号令を出して2人の尾行を開始した。一ノ瀬とイヴもそれに賛同するように彩の後ろを追いかけた。

 

 「ヤバイ!あの馬鹿共が動き出したぞ!」

 「流石に止めないとマズイっス……日菜さん!日菜さんも黙ってないで止めるの手伝って下さい!」

 

 暴走した黒服3人を止めるべく、京介達は行動しようとした。その時麻弥は先程から黙っている日菜に声をかけた。しかし……

 

 「日菜?誰それ?あたしはヒカワ13(サーティーン)

 「日菜さん……」

 「アンタもしかして……」

 

 日菜も黒いスーツ姿でサングラスをかけていて、片手にはライフルが握られていた。京介と麻弥は日菜の姿を見ると何かを悟ったのか言葉を失った。

 

 「面白そうだからあたしもついてくー!」

 「「ちょっと待てぇぇぇぇ⁉︎」」

 

 好奇心に駆られた日菜は彩達を追いかけて行った。京介と麻弥も慌てながら後を追いかけた。

 


 

 颯樹達が最初に乗ったのはメリーゴーランドで、颯樹は黒馬、千聖は白馬に乗りながら楽しそうに笑っていた。しかし2人から少し離れた背後には彩率いる黒服集団がスナイパーライフルを構えながら茶色の馬に乗っていた。

 

 「やるね千聖ちゃん。まずは此処を選ぶなんて」

 「馬が上下に動くから照準が定まらないよ」

 

 馬に乗りながら彩達は千聖の頭に照準を定めようとしていた。しかし馬が上下に動いているため、その照準が全然定まらなかった。

 

 「ならもっと距離を詰めてみましょう!そうすれば当たる確率が高くなります!」

 「ブシドー13の言う通りだ。でもコレっていつ追いつくんだ?距離が一向に縮まらないんだけど」

 

 此処でイヴが自分達と颯樹達の2人との距離を詰める事を提案した。一ノ瀬もそれを聞いた時は賛同したが、距離が縮まらない事に疑問を抱いていた。

 

 「そりゃ縮まるわけ無いだろ!此処メリーゴーランドだぞ!」

 「土台ごと回ってるから距離を詰める事なんて永遠に無理っスよ!」

 

 黒服集団の後ろでは、白馬が引く馬車に乗りながら京介と麻弥はツッコミを入れていた

 

 「そうだった。遊園地なんて行くの久しぶりだから全然分からなかった……」

 「ウッカリしてた……」

 「ワタシもです……」

 「それは盲点だった……」

 「何この集まり! 馬鹿の集団しかいないの⁉︎」

 

 京介の指摘を受けた黒服集団は致命的なミスをやらかした事を痛感していた。しかし、それは至極もっともな事なので言ってる事は本人達にとっては真面目な事だか、京介達からすればアホらしく聞こえてくる。

 

 そしてその後は流血沙汰が起こるわけもなくメリーゴーランドを無事に乗り終えると、颯樹達と尾行する黒服一行が次に向かったのはコーヒーカップであった。

 

 「しかしきょーくん達も同行してくれるなんて思わなかったよ」

 「もしかして京介くん達も手伝ってくれるの?」

 

 コーヒーカップに揺られながら日菜は何故京介も自分達に着いて来るのか尋ねた。彩は自分達の手伝いをしてくれるのか期待していた。

 

 「アンタらが馬鹿やらかさないか心配で来ただけだよ……」

 

 だがそんな気はハナからそんな気はなく事情を説明すると呆れながらため息をついた。京介の視線の先にはコーヒーカップに楽しそうに回している颯樹達のが姿が見えた。

 

 「皆さん、今一度考え直して下さい。あの2人の邪魔をするのは自分から処刑台に立つようなものっスよ?」

 「無駄だ大和さん。説得してもコイツらがそう簡単に意見を変える気は一切ないのは知ってるハズだ」

 

 麻弥は此処で説得を試みるも、京介はコーヒーカップのハンドルを操作しながら指摘した。(ちなみに京介が回している理由は消去法でこうなったのは言うまでもなかった)

 


 

 颯樹と千聖がコーヒーカップを降りて次に向かったアトラクションはジェットコースターであった。まず颯樹が乗ろうと提案したが、千聖はジェットコースターのレール…というより、複雑なコースを見て若干引いていたが、愛しの颯樹の提案を拒むわけにはいかず笑顔で承諾した。

 

 颯樹達が列に並んでいるのを確認した彩達もまた彼らに気づかれないように並んで乗る事となった。この時、日菜は京介と麻弥の目を盗んで颯樹達の後ろの席になるように予測しながら並んだ。

 

 ちなみにジェットコースターは最大20人乗りで、最後尾から京介と麻弥、イヴと一ノ瀬、彩と日菜、颯樹と千聖、と言って感じで座っている。

 

 「(千聖ちゃんには悪いけど、さっくんを花音ちゃんと一緒に独占するのは目に余るからねぇー……)」

 

 千聖に嫉妬している日菜は上着の裾に隠した小型拳銃(デリンジャー)を取り出し、少し立ち上がる。前に座ってる颯樹と千聖は正面を見ていたため日菜の行動を気づかないとともに、彼らが乗っているジェットコースターは暗いトンネルを通る。

 

 「(全然『るんっ♪』って来ないから此処で天罰を与えるよ!)」

 

 此処で絶好のタイミングと踏んだのか手に持っているデリンジャーを千聖の後頭部目掛けて構える。しかしこの時日菜にとって予想外な起こった。

 

 「(えっ⁉︎)」

 

 ジェットコースターが急に速度を上げたのだ。流石の日菜もバランスが崩れてよろめいてしまった。しかしそれに構わずジェットコースターはトンネルを抜け外に飛び出した。

 

 「風圧が凄いっスね!」

 「嗚呼、ここまでとは……!」

 

 最後尾にいる麻弥と京介はジェットコースターの凄さを実感していた。安全バーをしていなければ一瞬で後ろに吹き飛ぶほど風の力も強かった。

 

 「ヒナさんは大丈夫でしょうか?」

 

 イヴは前にいる日菜を心配してたのか、前を覗き見るように前に身を乗り出そうとした。しかし身を乗り出す前に何かがイヴの隣を横切った。

 

 「あぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎

 「フヘッ⁉︎」

 「大和さん⁉︎」

 

 突風が吹き荒れる中麻弥が前から何かが飛んで来た。もちろんその場から動く事が出来ないので麻弥は飛んで来た何かと顔面をぶつけた。

 

 「日菜さんアンタは何やってるんだ⁉︎」

 

 飛んで来たものの正体は日菜で、京介達の席に捕まって踏ん張っていた。

 

 「安全バー締めるの忘れてたぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 「やっぱり馬鹿だろアンタぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 どうやらジェットコースターに乗る時に自分の不注意で安全バーを締め忘れたようで普段では見られないくらいパニックになっていた。その後は京介と麻弥で日菜を助けようとしたが、ジェットコースターが更に加速した上に複雑なコースで軌道を変えながら移動しているため2人は日菜を中々引っ張る事が出来なかった。

 

 その後はジェットコースターに乗っている人達の悲鳴が轟く中、それに乗るかのように京介と麻弥と日菜の悲鳴がジェットコースターの最後尾から聞こえるのであった。

 


 

 「彩さん、もう充分だろ。あの2人は純粋に遊園地を楽しんでるだけだぞ。もうこれ以上は何もしないはずだ」

 

 ジェットコースターを無事(?)乗り終えた彩達は、先程の一件でダウンしている麻弥をベンチで休憩させながら監視を続けていた(ちなみに京介は何とか無事に、日菜は元より素のポテンシャルのおかげかケロッとしていた)。もちろん颯樹達の様子が見える範囲ではあるが。その颯樹達は近くのキッチンカーで買ったチュロスとホットティーをベンチに座りながら飲食していた。

 

 その時京介はチャンスかと思い彩の説得を試みた。彩は京介の言っている事が正論と感じたのか俯いた。

 

 「……うん、そうだね。もうこれ以上はやめ「彩ちゃん、大変だよ!」…どうしたの日菜ちゃん?」

 

 京介の説得が届いたのか、彩はこのまま尾行は中断しようとした。しかし途中で日菜に遮られた。

 

 「さっくんと千聖ちゃんが観覧車に乗ろうとしてる!」

 

 続け様に日菜は観覧車の方を指差す。そこには観覧車の列に並んでいる颯樹と千聖の姿が見えた。

 

 「なん、だって……」

 「観覧車といえば、告白すると成功すると言われている、遊園地でのデートスポットでも有名ですよ!」

 「なにぃ!そんな事はさせんぞ!」

 

 此処にいる全員…というより彩は観覧車のジンクスを知っているため、先程の京介の説得は完全に忘れて日菜の言葉を間に受けてしまった。

 

 「こうなれば手段は1つ……行くよ皆んな!」

 『オー!』

 

 何としても観覧車のジンクスを阻止すべく彩達は血相を変えて走り出していった。その場に残ったのは黒服集団を止めようとした京介と、ベンチで休憩している麻弥だけだった。

 

 「なんだろう、これ以上あの馬鹿達に付き合う義理も無くなったんだけど……」

 

 京介は今日の出来事で完全に疲れ切ったのか、彩達の行動を止める事をやめようと考え出した。

 

 「京介さん……」

 「どうしたんすか、大和さん」

 

 そのまま帰ろうとしたその時、麻弥は京介に疲弊しながらも声をかけてきた。

 

 「あの人達を、止めて下さい……でないと、颯樹さん達のデートが台無しになるっス……」

 

 麻弥の途切れ途切れだが、その言葉に説得力を感じた京介は思い留まる。昨年自分の知らぬ間に似たような事を自分の妹がしていたのを瑠唯から聞いたからか、京介は頬を掻いて立ち上がりもう一度颯樹達の方を見る。その眼は何処か京介なりに決心したようだった。

 

 「仕方ない、此処はヤツらに天罰を与えるよ。手荒になるが、構わないよな?」

 「ありがとうございます、京介さん。でないと懲りませんのでドンドンやっちゃって下さい。何かあったらジブンが責任を取りますので安心して下さい!」

 

 麻弥から言質を取った京介はスマホを取り出して何処かに連絡を取った────。

 


 

 観覧車に乗った颯樹と千聖は向かい合いながら外の景色を見ていた。時刻も夕方に近くなっており薄暗くなっていたが、園内の飾りのおかげか何処か幻想チックで風情のある景色であった。

 

 「今日は楽しかったわねダーリン♪でも花音がいなかったのは流石に残念だけど……」

 「仕方ないよ、花音もハロハピのライブだから。でも後日一緒に行くって約束したからね」

 「それもそうね」

 

 千聖は笑顔でそう言うと颯樹も笑みを浮かべていた。この時颯樹は花音に対してのフォローを忘れずに行う事を約束した。しかし……

 

 「「えっ?」」

 

 そのムードをぶち壊すが如く、外の景色を見ていた颯樹達の前に1台のヘリが彼らを乗せているゴンドラに近づいてきた。2人はもちろん驚きを隠さなかった。

 

 『お命頂戴!』

 

 そしてヘリの扉が開いた。そこにはサングラスをかけていた彩率いる黒服集団がスナイパーライフルを構えていた。そのライフルの照準は千聖の頭に合わせており、いつでも撃てるように引き金に指を当てていた(ちなみに1つは颯樹の頭であるが)。

 

 「何やってるんだ、アイツらぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」

 「彩ちゃん⁉︎それに日菜ちゃん達まで……⁉︎」

 

 彩達に狙われて焦っている颯樹と千聖は動揺しながら何故こんな事をしているのか尋ねようとした。しかし、彩達の足元に何かが当たる音が複数聞こえた。彩達は何事かと思いライフルを降ろして辺りを見渡した。

 

 「見てあれ!」

 「えっ……」

 

 何かに気づいたのか、彩は颯樹達を乗せてるゴンドラ…ではなく、その1つ隣のゴンドラの屋根の上に1つの人影ある事に気づいた。そこには、サングラスをかけてライフルを構えた京介の姿があった。

 

 「き、京介……?」

 「何してるのかしら?」

 

 颯樹と千聖は内心驚きながらゴンドラの上にいる京介を尋ねる。

 

 「京介?知らないねぇ。俺は通りすがりの何でも屋……ルカワ13(サーティーン)

 

 しかし京介はあくまでもシラを切って別人であるかのような立ち振舞いをする。

 

 「早速だけど……人の恋路を邪魔する馬鹿共は馬に蹴られて吹っ飛びな!」

 

 名乗りを終えた京介…ルカワ13は何処ぞの蛇の名を持つ男の如く、ライフルからロケットランチャーに持ち替えると同時に構えて、瞬時に引き金を引く。するとその放たれた弾はヘリのローターに見事命中した。

 

 「えー!ヘリのローターが⁉︎」

 

 するとヘリは飛行能力を失ったおかげでそのまま下に急降下するのであった。

 

 『ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎』

 

 そして4人の黒服集団を乗せたヘリは、真下にある池へ『ドボンッ‼︎』と大きな音を立てて墜落していった。そこから暫くするとルカワ13が乗ってるゴンドラが下まで降りていった。

 

 「邪魔者を成敗したので俺はこれで失礼。デート、楽しんでいってねー」

 

 そう言うと、ルカワ13…京介はサングラスを外すと、颯樹達に気づかれないようにそう呟きながら即座にその場を立ち去った。そして麻弥と合流してテーマパークを後にするのであった。

 


 

 一方、その頃……

 

 「ヤバいよ……千聖ちゃん達に私達の姿見られちゃった……」

 

 命からがらヘリから脱出して池から出た彩達だが、颯樹達に尾行がバレて目を回しながら怯えていた。

 

 「彩ちゃん!こうなったら世界の果てまで逃げよう!そうすればいくらさっくん達でも追ってこれな「何処に逃げるって?」えっ……?」

 

 しかし日菜は颯樹達に捕まらないように逃げる事を提案した。しかし、その考えは無情にもその場で崩れ去る事になった。何故なら彩達の背後には腕を組んだ黒い笑みを浮かべている千聖と、その背後で指を鳴らしている颯樹が控えていた。

 

 「さ、さささささささささ颯樹くんこんにちは!デート?」

 「彩、誤魔化そうとしても無駄だからな?」

 

 彩は苦し紛れに偶然を装うとしたが、即座に颯樹に一蹴された。もちろん彩はしょんぼりとした。

 

 「たった今、京介くんと麻弥ちゃんからの報告があって、あなた達が私達のデートの邪魔を企ててるって聞いたからのよ。それは本当かしら?」

 「(きょーくん、あたしら裏切ったな……!)」

 

 千聖は彩達が言い訳して逃げられないように、事前に話を聞いていた事を伝えた。ちなみにこの報告は彩達が池に墜落して京介が麻弥と合流した後、麻弥が千聖に連絡したものである。

 

 それを聞いた日菜は京介と麻弥に対して毒づくが、2人からしたらとばっちりなのと庇いだてする理由も義理も無いので溜まったものではない。

 

 「颯樹。まずは京介くんと麻弥ちゃんと合流してさっき言った所に先に行ってちょうだい。私も後から合流するわ」

 「了解したよ」

 

 そして千聖は颯樹に指示を出す。颯樹も了承してその場を後にする。ちなみに余談だが、その後颯樹は京介と麻弥と合流して寿司屋で寿司を食べていたのはまた別の話である。

 

 「さて、あなた達……」

 

 颯樹が立ち去ったのを確認した千聖はニッコリと笑いながら彩達を見た。彩達は蛇に睨まれた蛙の如く、固唾を呑んで正座をする事しか出来なかった。

 

 「お説教が必要かしら?」

 

 そう言うと共に、1時間くらいの千聖の説教が始まった。それ。受けた彩達は正座をしながら説教を受ける事しか出来なかった────。

 


 

 「結構貰ってるわね……」

 「俺はいらんと言ったんだけどな」

 

 その数日後…羽丘学園あと少しで終業式が終わって冬休みに入る時期目前のこの頃、京介と咲恋は食堂で昼ご飯を食べながら京介の預金通帳を見ていた(咲恋の場合は覗き見であるが)。ちなみに京介はかけそば、咲恋はカレーを食べていた。

 

 実はあの騒動の翌日、彩達が起こした一件がパスパレが所属してる事務所のお偉いさんの耳に入り、マネージャーの颯樹とプロデューサーのナオと協議の末、騒動を起こした彩達3人の給料を2ヶ月の80%カットという判決を下されて、その分を颯樹と千聖、麻弥と京介に均等に分配される事となった。

 

 この時京介は最初拒んだが、颯樹に「迷惑をかけたお詫び」と諭されて渋々受け取る事となった。ちなみにその金は一括は無理なので2ヶ月の分割払いとなり、その1ヶ月分は昨日京介の口座に振り込まれる事になったのであった。

 

 「隣いい京介くん?あとイッチーはどうしたの?最近学校来てないけど……」

 

 京介が昼食を摂っていたその時、食堂に足を運んだひまりに声をかけられていた。ちなみにひまりの後ろにはAfterglowが控えていた。

 

 Afterglowは基本屋上でお昼を食べるのだが、この日は生憎雨が降っていて屋上が使えなかったからである。それと朝の天気予報では午後3時辺りにならないと止まないため、渋々屋上から食堂でお昼を摂る事となった。

 

 「あの馬鹿は永平寺という、とある山奥にある日本一厳しい寺で1ヶ月修行する事になったよ。彩さんと日菜さんと若宮もそこで1ヶ月の密着ロケって名目でその寺に預かってるそうだ」

 「なんでまた……」

 

 京介は通帳を制服の内ポケットに仕舞いながら一ノ瀬及び彩達の顛末について説明した。一ノ瀬だけならともかく何故彩も一ノ瀬と同じ罰を受けてるのか蘭は疑問に思っていた。そんな蘭の疑問を答えるかのように、京介は先日起こった出来事を簡潔に話した。その時咲恋は事情をあらかじめ聞かされていたのか頭に手を抱えていた。

 

 『うん、それは自業自得だ(ね)』

 

 京介の話を聞いた蘭達は即座に彩達の所為であると頷きながら納得した。

 

 「だろ?それと、今日の放課後に颯樹さん達と一緒に焼き肉行くけど着いてくる?」

 「あたしも行くわ。あとはMorfonica全員とレイちゃんも来るけど?」

 『行く/行きます』

 「了解。今から連絡するよ」

 

 全員から納得された京介はそれに追い討ちをかけるかのように食事に誘った。しかも颯樹達も一緒のためか、全員が了承した。それを受けた京介はスマホを手に取り颯樹に電話をかけるのでがあった────。

 


 

 一方、時同じく……

 

 「千聖ちゃーん!颯樹くーん/さっくーん!ご慈悲をー!」

 「ブシドー!」

 

 白で統一された作務衣(さむえ)を着た彩達は悲痛な声を上げながら滝行をしていた。この時一ノ瀬は丸坊主になっていて、寒さに震えながら彩達と同じく滝行をしていた。

 

 「ダメよ彩ちゃん達。あと1ヶ月はそこで反省してなさい」

 

 一方、彩達のおしおきの様子をモニター越しで見ていた千聖は紅茶を啜りながら呟いた。一緒に見ていた麻弥は苦笑いせざるを得なかったのはまた別の話件であった────。

 

丸山彩生誕記念回『彩りのあの子は追跡者⁉︎ ─完─

 


 

〜後日談 とあるクリスマスパーティ〜

 

「千聖ちゃん、こっちは飾り付け終わったよ〜」

「ありがとう花音。私たちの方も、もう直ぐでひと段落つきそうよ」

「……はい、OK。これで全部かな」

 

 

 そんな事を話しながら、僕たちは各々の準備に取り掛かっていた。リビングの周りは花音が忙しなく動き回り、クリスマスリース等の如何にもと言わんばかりの装いが成されていて、これから起こる事への期待感を感じさせた。

 

 

 そして僕とちーちゃん……千聖が手に持っているのは、パーティーで食べる為の料理だ。料理……と言ってもそこまで凝った物では無く、連日の寒さを考慮してお鍋としている。

 

 尤も、今回やるお鍋はキムチ鍋なので、辛いのが苦手だった場合には少し我慢して欲しいとは思うのだが。

 

 

「それじゃあ、あとは皆が来るのを待つだけね」

「ふふっ、何だかこう言うホームパーティーって、すごくわくわくして来ちゃうね〜」

「そらそうだよ、何せルームシェアしていると言え、自分の家に他人様を招くんだよ? わくわくしない方がおかし……あっ、来たかな」

 

 

 僕が花音の一言にそう答えている最中に、玄関先のインターホンが音を立てて鳴り始めた。二人にはもう少し待つ様に伝えつつ、来客かそうで無いかを判断するべくモニター画面を確認したのだが、そこに映っていたのは……。

 

 

「はい、どちら様ですか?」

「あっ、お待たせしました。千歌です。京介さんと咲恋さんを迎えて来ましたので、中に通して頂けますか?」

「そうだね。お迎えありがとう、千歌」

 

 

 僕はモニターの下にある、解錠と記されたボタンを押す事でフロントに居た三人を中へと通し、来客を出迎える為の準備をする事にした。ちーちゃんや花音は先程の会話で誰が来たのか察した様で、足早に飲み物やお鍋の具を取り分ける用の木製の器を人数分用意し始めた。

 

 ちなみに余談だが、二人が出している木製の器は、ルームシェアを始める前に僕が百均にて買い足した物だ。実家の方にも無い事は無いのだが、新居にも幾つかあった方が良いだろうと踏んだ物だ。

 

 

 そうして少し経つと、今度はドアを3回ノックする音が聞こえたので、僕は鍵を開けて扉を奥に押して対応した。

 

 

「お待たせしました、颯樹。お手数をお掛けして申し訳ありませんでした」

「いや、このくらい全然構わないよ。京介や咲恋もいらっしゃい、待ってたよ」

「颯樹さん、今日はお世話になります」

「私たちも誘ってくれると京介から聞いた時は、とても嬉しかったです。私の方こそよろしくお願いします」

 

 

 そう言ってお互いに簡単な挨拶を済ませ、僕は三人を中に招き入れた。外は少し雪が積もっていて、千歌の運転する車も多少の渋滞に巻き込まれたらしいが、各々の身に付けている服装から察するに、そこまで身体を冷えさせる事は無かったのだと納得出来た。

 

 

 ちなみに京介の服装は、黒で統一されたロングコートとパンツで、その中に紫のシャツと黒のジレベストを着用していて……咲恋の方はと言うと、隣の京介とは正反対の白のブラウスとベージュのカーディガンで、ワインレッドのプリーツスカートを履いており、そして防寒対策として白を基調としたファーコートを羽織っていた。

 

 ファッション等にはそこまで造詣は深くない僕だけど、二人の格好を見るだけでも驚いてしまうのだから、それなりの裕福な家庭の育ちなのだと実感させられた。

 

 

「……あっ、咲恋ちゃんに京介くん、千歌ちゃ〜ん!」

「もう準備は出来てるわよ。上着は近くのクローゼットにあるハンガーに掛けてくれるかしら? みんな揃った事だし、始めましょうか」

「ありがとうございます、白鷺さん」

 

 

 奥に居たちーちゃんからの指示を受けて、千歌たちは身につけていたコートをハンガーに立て掛け、テーブルの周りに座って準備を終えた。そうして全員が席に着いたのを確認した僕は、お鍋の蓋を取って、完成した様を見せる事にした。

 

 

「おぉ……これは、如何にもですね」

「確かに、外も寒いのでお鍋をするには絶好の機会です」

「ありがとうございます、颯樹。それと……食後のデザートにはなりますが、これを。私たちからのささやかなプレゼントです」

「あら、ありがとう千歌ちゃん。それは先ず冷蔵庫に入れておいて、ご飯が終わってから出しましょうか」

 

 

 そう言われた千歌は、冷蔵庫にその持って来た物を入れ直して、もう一度席に着いた。

 

 

「それじゃあ……食べようか」

「そうね」

「うんっ」

「それでは……まずは、この言葉から」

 

 

メリークリスマス!

 

 

 クリスマスの時期ならでは、と言うお決まりの文句を全員で合わせて食前の挨拶をした後、僕たちは各々鍋の中にあるお野菜やお肉などに手を伸ばして行った。

 

 お鍋の中に入れている具材は、ここ最近白菜などの葉物野菜が値引きされていた事を受けて、野菜を多めに投入している。勿論その中にはウインナーや豆腐……しらたきに餅巾着等の定番ネタもあるので、食べていて飽きが来ない様に用意した物だ。

 

 

 そうして食べていると、ココ最近の話になり……。

 

 

「そう言えば丸山さんに日菜さん、若宮さんに一ノ瀬さんはどうしているでしょうか」

「あの4人なら、今は永平寺に居ますよ。何でも『日本一厳しい寺』だとか。これで懲りてくれりゃ問題無いんですが……」

「仕方ないわよ、彩さん達だもの。それに、やった事がやった事だし言い逃れは出来ないわ」

「そうだね」

 

 

 ……そう、数日前の話にはなるのだが、僕とちーちゃんは共に出かけていた所を彩たちに尾行されていたのだ。しかも僕たちの関係を知ってか知らずか、その気になれば抹消される寸前まで来ていた。

 

 愛ほどゆがんだ呪いはないよ、と何処かの現代最強の某人気ジャ○プ漫画のキャラも言っていたが、ここまで来ると一種の狂気すら感じて怖いまであるが。

 

 

「それに……彩ちゃんたちは暫くお給料も天引きされるでしょうし、私たちに何ら問題はないわ♪」

「そ、そんな事があったんだね……」

「しかも、その気になれば花音だって消されかねなかったのよ?」

「ふぇぇっ!?」

 

 

 ……全くもう、仕方ないなあの4人は。

 

 いや、イヴと日菜に関して言えば完全に悪ノリしたと言う方が正しかったりするのだが。

 

 

 そうしてお鍋を食べ終えた後、僕たちは千歌が来る途中に買って来た物……クリスマスケーキを食べながら、ひと時の休息に身を委ねて行った。まあ……ウイスキーボンボンとか言う、1個食べるだけで酔ってしまいかねないお菓子は無かったので、僕としては一安心と言った所だ。

 

後日談 完!




 最後まで読んでくださいまして、ありがとうございます。こんな拙作読んでくださるなんて感謝感激です。

 今回は、彩の生誕記念回という事で、彩メインにしましたが……やはり彩はシリアスでなくギャグが真っ先に思いつくのは宿命だろうか……?

 話としましては何処ぞの公園前派出所のようにオシオキという名の左遷オチだったり、SF人情なんちゃって時代劇コメディーのパロディだったり、ギャグメインになってしまいました。恋愛やシリアスを期待していた読者様、すみませぬ……。

 あとは後日談ですが、この話を持ちかけてくれました『咲野皐月』さんの書き下ろしとなってます。皐月さん、ありがとうございましたm(_ _)m

 今度は近い内にAve Mujicaの話でお会いしましょう。それでは、また次回。

 今回のお話は『咲野皐月』さんの作品である『新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.)』と、私の作品である『白き蝶に導かれて……』を基盤として書いています。此方も併せて読んでいただくと楽しさもより理解しやすくなるのと楽しくなるかもしれません。下にリンク先を貼っておきますので、宜しければご覧ください♪

『新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.)』のリンク先↓
https://syosetu.org/novel/249478/

『白き蝶に導かれて……』のリンク先↓
https://syosetu.org/novel/258703/

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