八幡はあらゆるチートを自在に支配し、全てを手に入れる…!?

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八幡は最強無敵の英雄

 

 

な訳ないじゃん。

 普通に考えて一般人だし、ボッチなのは、孤高じゃなくてハブられているからだ。

 自分から他人を遠ざけても、その人に価値があれば、それでも人は集まってくる。

 逆に価値がなければ、自分から近寄っても逃げられるか追い払われる。

 

 明確に負け組な弱者が、勝ち組に必死に食らいついて、客観的には負けはするけれど、自分にとっての大切なものを貫くというのが俺ガイルの主題である。

 

 更に加えるのなら、プラスの価値を持つ八幡が多くの人を助けるのではなく、多くの人に助けられて来た事を自覚して感謝して、マイナスをゼロに戻していくストーリーが副題となっている。

 

 

 

 

 八幡は、最弱の英雄なのである。

 走ればトロいし、喧嘩したら負けるし、スポーツでも負ける。

 その上陰キャのクセに勉強が出来ないというのは、社会的には価値は低い。

 

 八幡のスペックになったところで、それで今よりパワーアップする人は、余程の底辺だろう。

 殆どの人は、八幡よりもスペックが高いのだ。

 

 

 では、何故主人公足り得るのか。

 

 

 それは、クソザコナメクジなのに、ライオンやオオカミに挑むからである。

 そこが凡百の一般クソザコナメクジとの明確な違いであり、主人公になれるかなれないかのライン引きである。

 

 

 ジョジョでいうところの、ジョナサンではなくポコの立ち位置である。

 オールマイティにハイスペックで正統派な主人公ではなく、卑怯で弱くて情けなくて惨めで無様な脇役だ。

 

 けれども、ザコ敵にも勝てないポコが、強敵に挑む勇気を見せた。

 本編を通して言えば、やはり主人公はジョナサンだが、しかし、あの瞬間だけは確かにポコが主人公だった。

 

 

 八幡は、隙間産業を駆け抜ける勇気ある弱者なのだ。

 

 

 

 

 

 原作八幡の中身が別人の強い身体に取り憑いたとしても、強者としての戦い方や振る舞いは八幡の真逆にあるから、本能的に行えない。

 また、中身クソザコナメクジな別人が、原作八幡の身体に入っても、弱者なりの戦い方や維持を無くした八幡という、ただのクソザコナメクジになってしまう。

 

 

 

 

 

 さて、数年前まで、原作とは似ても似つかない、八幡という名前なだけのハイスペックな何かに転生するものが流行っていたらしい。

 

 俺は、南来(なぐる)圭流(ける)

 キックボクサーの母親と、地下格闘技のオーナーの父親の間に生まれた。

 

 最近は偽八幡狩りが流行っていて、偽八幡相手になら何をしても良いという法律も出来た。

 それで内閣の支持率が20%程増えた。

 ウチの親父も表舞台での放映を始めた。

 

 偽八幡自身には生産性はないが、それは偽八幡の使い方を知らないからだ。

 ウチの親父はそれを知っている。

 なので、ウチの親父は偽八幡を捕まえてくれた人には、百万円の報酬を渡している。

 

 高額な報酬と言える。

 でも良いのだ。

 偽八幡をリングに上げて、それをボコボコにするショーを見に来るお客様方から、百万円が霞む程のマネーが出る。

 

 偽八幡は、このショーに出るために誕生したんだろう。

 

 

 …そろそろ俺の出番だ。

 

 

 

 

「赤コーナー、本日五人目の比企谷八幡」

「青コーナー、廃人制作工場。南来(なぐる)圭流(ける)

 

 

 資産家達は、八幡(偽)がノックアウトするか降参するかに賭けている。

 一応、八幡が勝つという選択肢もあるが、そちらに賭ける人はいない。

 

 

「試合開始ッ!!」

 

 

 審判の声と共に、八幡は喚き出した。

 

「身体は剣でうんたらかんたら〜無限の────」

 

「うるっせぇっ!!」

 

 顔面にパンチを叩き込んだ。

 鼻は潰れただろう。

 

 

「ひぇっぐっっ、ひぃぇっぐっっ、えぐじゅかりぶぁぁ」

 

 八幡が何か言っているが、何も起こらない。

 どうやら八幡(偽)達には、何かが見えているらしいが、現実には何も起こっていない。

 八幡同士を戦わせると、何も起こっていないのに、お互いに何か技名を叫び合って、「やるなっ」「貴様こそ」と、本人達しか分からないおままごとが始まる。

 

 

 ここで、特別ルールを発動した。

 八幡を四人追加でリングに入れたのだ。

 

 

 「俺は仮面ライダーに変身する」とか言っている奴は、良く分からない技名を叫ぶ奴もいた。

 「いっけええええ」と他の八幡も叫んでいるが、結局何も起こっていない様にしか見えない。

 奴らには一体何が見えているんだ?

 

 「この不可視の剣で倒してやる」とか、何かを持っている仕草をしていたが、案の定何も起こっていない。

 俺は最前席にあるタバコの吸い殻スタンドを貰うと、一番手前にいた奴の頭を叩き割った。

 

「『騎士は徒手にて死せず』だと…っ!!」

 

 いや、普通に鈍器でかち割っただけだが、こいつ等頭大丈夫か?

 …まあどうでも良いか。

 

 

「いや、違う。

ただ普通に、俺達のチートが無くなってるんだっ!!」

 

 一人の八幡が何か言い出した。

 

「俺達に、チートが無かった事にされてるのか?」

 

 他の八幡も何か言い出した。

 

「八幡が最強無敵の英雄でないのは間違っている。おかしいおかしいおかしいおかしいおかし─────ぐぅぼえぇー」

 

 

 

 取り敢えず、八幡達をどつきまくる。

 

 

「ごめんなさい」

「一般人として生きていくから許してください」

「ゆるして、ゆるして」

「しにたくないよお」

 

 俺としては、別に助けてやっても良い。

 彼等がもう変なことを言わずに、普通に底辺職でも真面目さを取り柄に頑張ってくれるのならそれでいいんだ。

 ありもしないチートを身内だけで信じ合って偉そうにするのなら生かす価値も無かったが、社会の使い捨て歯車として扱われても、社会の為に尽くそうとするのは好感しかない。

 

 ありもしないチートごっこをするよりも、弱者として精一杯生きる事にこそ、本物の八幡に通じるところがある。

 偽物でしかない彼等も、本物の様に生きられたかもしれない。

 ヒロインもイベントもハッピーエンドもなくても、そんな素朴で地味な人生を一生懸命生きていれば良いのだから。

 

 でも────────

 

 

「「「「「こーろーせー、こーろーせー、こーろーせー」」」」」

 

 観客がそれを許しはしないだろう。

 偽八幡達は、せめて一矢報いようとかかってはこなかった。

 やはり最後まで偽物でしかなかった。

 やはり彼等のチート全部盛りはまちがっていた。

 

 …本物の八幡なら、チートなんか捨てて、負けると分かっていても、俺に、観客に、疵痕(きずあと)を残そうとしただろう。

 俺に勝てるチートがあっての保証された挑戦ではなく、俺に絶対に勝てない事を分かった上で挑んで来たはずだ。

 若しくは、俺や観客が思いもしない何かを見せてくれただろう。

 そうやって試合に負けても、彼が通したかった信念だけは貫けただろう。

 だが、彼等にその手段も伝もコネも、何より心意気がありはしなかった。

 この、最後の緊急事態でも、それを見せなかった。

 

 

 

 

 

 

「すまんなあ」

 

 

 せめてもの慈悲で、一人一撃で頭を叩き割った。




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