爽やかな水色の巨体が打ち付ける波を立たせながら、ラプラスはリリルカ達を乗せて海原を進んでいた。
あの後、ラプラスがお詫びとして背中に乗せてもらい、別の島へ運んでくれる事になったのだ。
行先はアローラ地方では最大の島とされているウラウラ島である。
「ん~~っ!気持ちいいね~!」
「やっぱり船よりもラプラスに乗って海を渡る方が最高ですね」
「はい。論理的結論として、わたくしは船酔いしてしまいますから...」
レフィーヤの言う通り、背中の甲羅にある突起が椅子代わりとなって、高波にも揺れる事なく安定感のあるその乗り心地は抜群だった。
リリルカも酔ってしまっては島巡りが台無しになるという心配がなくなり、海を眺めて潮風を浴びて大きく伸びをする。
そして、これから自分が行くであろう島に思いを馳せていると...ふと、ラプラスのある生態について疑問が浮かび上がった。
「そういえば、仲間の姿が見えませんけど...ひょっとして、はぐれてしまったのですか?」
「ラープ」
「あぁ、群れから独り立ちを...それなら安心しました」
本来、ラプラスは家族や他の仲間と群れを成して穏やかな海を回遊しながら暮らしており、ある程度成長した子供は巣立ちとして群れを離れて独り立ちする習性があるそうだ。
今、リリルカ達を乗せているラプラスもその例に漏れず、独り立ちしたラプラスという事だ。
1人ぼっちでいた訳ではない事を知り、リリルカはほっと胸を撫で下ろす。
「こうして出会ったのも何かの縁だと思いますし...パートナーになってもらってもらうはどうですか?
「え?ラプラスさんを、ですか?」
唐突にアーディがそう提案してきて、リリルカは困惑した。
一瞬波の音に紛れてしまって、聞き間違えたのかと思ったが...どうやら聞き間違えてはいなかった。
「はい。群れの中からゲットするにはリーダーのラプラスから許可を得る必要がありますけど、独り立ちしているのなら問題ありませんから」
「そうでしたね!論理的結論ですね!リリルカさん、どうでしょうか?」
「で、ですが、幻のポケモンとまではいきませんが、ラプラスさんは希少なポケモンとされていますし...」
「あぁ、余所ではそうみたいだけどアローラはものすごく沢山いるから大丈夫だよ?」
アーディ曰く、アローラの環境下では適度に減り過ぎず増え過ぎず、ラプラス達の生態系はラプラス達の生態系はまさに絶妙なバランスで維持されているそうだ。
人懐っこい性格から大人にも子供にも人気が高く、島巡りをする子供達のパートナーに大人気らしい。
群れの中からゲットするというのも、どこかのショタジジイがアローラ条約に”群れのリーダーから許可を貰って初めてパートナーに出来ると”いうルール制定して、それがラプラスと人間の平和的な共存に繋げている。
なので、このラプラスをリリルカがゲットする分には問題ないという事だ。
それなら、とラプラスに話しかけようとしたところでウラウラ島が見えてきた。
半円形に並ぶ大きな岩の間をすり抜け、ラプラスはリリルカ達が濡れないようにと気遣って砂浜へ上陸した。
そこはウラウラ島の裏側にひっそりと広がる、うらぶれた雰囲気がするウラウラ裏海岸であった。
リリルカを先頭にティオナとアーディ、レフィーヤも甲羅の突起を掴みながら降りていく。
全員降りたので、リリルカはラプラスがそのままどこかへ行く前に呼び止めようとしたが...不思議な事に、その場に留まって何かを待っているかのように佇んでいた。
その行動にリリルカは首を傾げていると、ラプラスは長い首を伸ばして目の前まで近付ける。
「ラープ」
「え...?パ、パートナーになっていただけるのですか...?」
「ラープ」
小さなリリルカをそのつぶらな瞳で優しく見つめていた。先程、リリルカ達が話していた事を聞いていたのでパートナーになってほしいと理解したのだ。
リリルカもそんなラプラスの想いを感じたのか、そっと手をラプラスの顔へと伸ばして触れてみる。
嫌がったりなどせず、寧ろ頬ずりをして喜んでいる様子だった。
「ほらほらリリ!熱烈大歓迎って感じだからゲットしてあげなよ!」
「ここで断ってしまったらラプラスが可哀想です。というより私が許しません」
「リリルカさん、どうかラプラスのお気持ちを汲み取ってあげてください。論理的結論です」
「皆さん...わかりました。ラプラスさん、ゲットさせていただきます」
「ラープ!」
ティオナ達も応援してくれているので、リリルカは一度深呼吸をしてラプラスに宣言した。
懐から空のモンスターボールを取り出すと、開閉スイッチを押してラプラスの額に軽くコツンと当てる。
開いた蓋の中から溢れる赤い光に包まれたラプラスがモンスターボールの中へ吸い込まれていった。リリルカの掌の上で数回揺れ動き、やがてカチッと音が鳴った。
2体目のパートナーとしてラプラスをゲット出来たのにリリルカは胸がいっぱいで、思わずモンスターボールをギュッと握り締めた。
「ラプラスさん...これからよろしくお願いします」
そう呟くとボールの中からラプラスの嬉しそうな鳴き声が聞こえた。
リリルカは開閉スイッチを長押しして縮小させるとベルトに固定させた。既にラティアスが入っているボールの隣に。
「おめでとうございます、リリルカさん!」
「よかったですね。ラプラスと仲良くするんですよ?」
「この調子でどんどんパートナーを増やしていこう!」
「はい、皆さん。ありがとうございます」
祝福してくれるティオナ達に感謝しながら、リリルカは頷いた。