時の流れを操作したいので初投稿です……。
【山間舞い降りし鬼】
人手不足。
読者の皆様も何度も何度も目と耳にした言葉であろう。現代社会にて少子高齢化が加速してあらゆる仕事に支障をきたしている。
それはこの世界でも同じ、いや、魔物の影響でより酷い。
故にこの光景も日常茶飯事。
「はいはーい!ちゅーもーく!!こちらの商品は──」
スーパーマーケットにて。
一人のうさ耳魔法少女が商品の販促を行っており、それを人々は興味ある者は立ち止まり、無いものは早々に去り、またはやや興奮した様子でカメラに収めるものと様々な反応。
また別の場所では…
「人質の救出完了。秒で終わらせる」
空間魔法を巧みに扱い人質を解放し、爆速で犯人を仕留める軍服姿の魔法少女。
またまた別の場所……
「罠ヨシ!土ヨシ!水ヨシ!日当たりヨシ!ヨシヨシヨシ……」
自室で勉強しながら片手間で複数のドローンで多数の畑を管理するメカメカしい魔法少女。
などなど。
魔法
なに?年齢?ろうき?
ごりごりに15歳以下がいますね……というか軍服魔法少女が13歳ですね。
おい!教えはどうなっ(以下略)と、皆様は思われるが
日本の総人口 9658万人
もはやそうも言ってられない。
無論、政府とて魔法少女をタダでこき使おうとはしていない。昔は危うくその流れになりそうだったが、妖精や魔法少女を守ろうとする人々の働きで
今の魔法少女は憧れであり、人類の希望。
魔法少女になれば政府から多大な支援を貰えて裕福な生活もできる。その分超超超多忙であるが…。
おや、山奥に向かう二人の魔法少女がいる。
どうやら蜂の巣を駆除した後、追加の仕事が舞い込んだらしい。山に遠足で来た園児たちのうち3人がはぐれたようで、警察と念を入れ魔法少女にも捜索の連絡が来たらしい。
小柄と大柄の二人組。
小柄の魔法少女『リトルヘビー』
身の丈を超える戦鎚を巧みに扱う。剛力で振り回し遠心力でどんな硬い物質だろうと砕く。
その一撃は竜さえ怯ませる。
大柄の魔法少女『ファインブック』
通常一人一冊の魔導書を三冊同時に操作できるほどの膨大な魔力を保有する。『支援』『妨害』『攻撃』と状況に合わせ臨機応変に対応できる。
二人は園児を引率する保育士と警察から情報聞き、保育士には先に園児たちと山を降りてもらい警察と手分けして捜索することにした。
リトルヘビーがファインブックに顎で指示する。
ファインブックは微笑みながら支援系魔導書を開き魔力を流す。
「
瞳が淡く光り周囲を見渡すが、すぐに違和感に気づく。
「どした?」
「う〜ん、野生動物がいませんねぇ…」
「魔物か」
「かもですぅ〜」
「急ぐぞ」
「は〜い!」
やや乗り気では無かったリトルヘビーだが、魔物が関与してるのであれば話が変わる。駆け足で山を巡りほどなくしてはぐれた三人の園児を発見。
「わっ!まほうちょうちょだー!」
「ほら!あたちのいうとおり、きたでしょ!」
「おねえちゃんきれい!」
どうやら元気そうだ。
「はいはい、麗しく
「自己肯定感マシマシですねぇ。あっ、魔法少女ファインブックです!よろしくねぇ〜」
片や謎のドヤ顔。片や柔らかな笑み。
園児たちを安心させて、さっさと移動する。
が…
「ギィーチチチ」
音もなく、気配もなく、魔力の痕跡も一切無い2m超えの人型のバッタが背後に立っていた。そのバッタは鉄臭い赤い液体に塗れ、口と思しき場所には青い服の切れ端。
「──」
リトルヘビーは動いた。
瞬時に音速を超えた戦鎚をバッタの頭部に叩き込み、風船が割れたような音とともに上半身が抉れ呆気なく倒れる。
「ヘビー!左から5体来ます!」
「ふんっ!」
左から同じ人型のバッタがほぼ無音で飛び跳ねながら迫ってくる。
リトルヘビーはその場で戦鎚をぐるぐると振り回し、やがて手を離すと戦鎚はブーメランのように飛んでいきバッタを容易く粉砕した。
帰ってきた戦鎚を片手で受け止め周囲を観察する。
遠目からでも分かるほど緑色の集団が迫りくる。しかも囲むように四方からも来ている。
これでは逃げながら戦うことも困難。
「数が多い……ブック!籠城戦だ!囲め!」
「はぁい!支援魔法『
魔法とは創造と想像
片方が欠けては魔法に成らず。
創造力が欠けては想像は形にならず、想像力が欠けては創造できず、ファインブックは魔法少女の適正あれど想像力が欠けていた。
ファインブックが扱う魔導書はそれを補うもの。
魔導書には想像力を補う物語が書き連ねており、使用すると使用者の脳内に物語が語られ想像力を補完する。
ただし使用回数に制限がある。
「がんばえー!」
「いけぇー!やっちゃえー!」
「まほうちょうちょかっこいいー!きれーい!」
園児たちからの黄色い声援にリトルヘビーは好戦的な笑みで、ファインブックは微笑みで応えてより激しくバッタを蹴散らしていく。
ファインブックは『煙幕』で遮られた視界を『生命探知』で補いバッタの位置を確認し、それをリトルヘビーに的確に伝達する。リトルヘビーは与えられた情報を元に素早く効率よくバッタを戦鎚のサビに変えていく。
一見有利な状況に思えるが、ファインブックは『生命探知』で奥を見ると途切れることのないバッタの軍団に園児たちに悟られぬようにだが表情が固くなる。
「ヘビー!」
「っ、かませ!」
焦った声にリトルヘビーは察して園児たちに覆いかぶさる。
「すぅ〜〜〜〜……」
瞼を下ろし、深呼吸、精神統一、物語を聞き、想像力を補完して、竜を創造する。
「攻撃魔法『
一日一回きりの切り札。
攻撃系魔導書の一番後ろのページが開くと魔力で構成された巨大な竜の頭部が創造される。
竜の口が僅かに開き、息を吐く。
すると…
「………無事か?ちびっ子たち」
「ぷはあ!つかれたぁ」
「おねえちゃん、ぷにぷにー!」
「やめろ、照れる」
「あーーー!」
園児の一人が叫ぶ。
リトルヘビーが魔物か!?と戦闘態勢を取るが、周りの光景を見て警戒を解く。
「…はは。本当に怖いな、竜は」
思わず笑ってしまう。
先程まで木々やデコボコの地面が鬱陶しかったが、こうまで殺風景になると寂しくなってしまう。
「無事ですかぁ〜ヘビ〜」
「お陰様でな。ブックは……いつも通りすぎて怖えよ」
「う〜ん、まあ…その評価はぁ…しょうがない〜ですぅ、ねえ〜」
辛辣な評価にファインブックは反論せず、言い淀みながらも受け入れる。
リトルヘビーが呆れていると園児の一人が飛び出し、興奮しながら走り回り、体いっぱいに空気を吸って叫ぶ。
「おやまがなくなったーーー!!!」
正確に言えば、山が三角形から台形になった。
例え人間が創造した贋作であろうと竜は竜。
生物の枠に収まらず、自然災害を超える災害。
竜
「はあ〜、茅さんと
「こんなに綺麗さっぱり平らにしても、
「ヘビ〜は茅さんや
「おいおいでけえ体で迫ってくんな!怖えよ!」
2人の魔法少女が戯れあい、その光景を2人の園児が笑い、走り回っていた1人の園児が不自然に盛り上がる地面に気づき近づく。
触れるか触れないかというところで、バッタが顔を出した。
「あっ」
リトルヘビーが気づき、地面を蹴り飛ぶ。
地面から異様に大きなバッタの両腕が飛び出す。
「!?こうげ──
ファインブックが攻撃系魔導書を開く。
未だ反応できない園児に凶手が迫る。
「「きゃーーー!!!」」
幼い悲鳴が響く。
バッタが喰らおうと醜い口を開け──ドゴオオオオオン!!!
「どぉあ!?」
「ぅぅっ、いったい…あっきゃっち〜!」
突然の爆発でリトルヘビーはふっ飛ばされ、ファインブックは飛んできた園児を受け止め怪我の有無を確認する。
どうやら気絶してるだけのようだ。
安堵するがまだ気を抜けない、状況をいち早く把握するために顔を上げると赤黒い目と目が合った。
「…… 」
そこには白髮の包帯まみれの少女が立っていた。
「ぁ、あな、た──」
誰、という言葉は喉で止まった。
どうして赤黒い目の少女は背を向けているのに後頭部ではなく顔が見えるのか?
「───ヒュ」
「…… ッ!」 ゴキッ
少女は右手で顔を掴むと強引に正面に戻した。
「おい!何があった!?っか、あいつ誰だ?」
復帰したリトルヘビーがファインブックに聞くが、さきの光景にショックを受け口がパクパクと動くばかりで言葉が出てこない。
ファインブックの異変にリトルヘビーが大丈夫か?と口にするのを遮るように地面が大きく振動した。
「な、地震か!いや
リトルヘビーの読みは正しく、白髮の少女の前にある地面が砕け飛び出してきたのは余りに大きい不気味なバッタだった。
およそ10メートルはある巨体。顔はバッタ、上半身は人型で女性のような胸の膨らみとしなやかな両腕もあり、しかし下半身は完全にバッタ。
まるで人間の女性とバッタを合体させたかのような歪な特徴を持つバッタの魔物。
「ギィーーー!!!」
同胞を殺された恨みか、眠りを妨げられたからなのか激しく興奮している。
「こいつどっから…いや考えは後だ!ぶちのめすぞ!」
「ぁ、ぐ、ぅぅ、は、はい!!」
なんとかショックから抜け出して戦闘態勢を取ろうとした瞬間。
「ヴァ ァグガ アァ !!」
地獄から響き渡る亡者の怨嗟の声。
そう形容する他ない絶叫が白髪の少女から突如発せられた。
そこからは一方的な虐殺であった。
先に手足を潰し満足に動けないようにすると、わざと急所を外し苦しめるかのように内臓を引きずり出しては踏みつけ、噛み千切り、さらに筆舌に尽くしがたい行為にも及んだ。
リトルヘビーは2人の園児に再び覆いかぶさり、耳を塞ぎ目を閉じろと怒鳴る。
一方、ファインブックは気絶してる園児を抱きかかえて呆然と見ているとふと今は亡き祖父の昔話を思い出した。
(山には鬼がいる)
「ガァア アァ アア!」
「ギキ゚ ギ 」
巨体は地に倒れ伏し、大地を体液で染めていく。
もはや何もせずとも死に絶えるほど虫の息だが、それでも少女はとどめを刺さずに嬲り続けた。
まるで復讐するかのように。
10分
経った時間はそれだけだった。
10メートルの巨体を持つバッタは、今や見る影も無い。
地面に広がる緑色の液体、バラバラになった肉片、その惨状のなか静かに立つ白髮の少女。
「…」
少女は俯いていて顔は見えない。
2人の魔法少女は動けずにいる。もしあの尋常じゃない暴力がこちらに向いてたら園児どころか自分たちの命さえ危うい。
警戒心が高まり空気が張り詰めるとふと白髮の少女が魔法少女がいる方向に歩き始めた。
リトルヘビーが2人の園児の前に立ち戦鎚を構え、ファインブックは園児を抱えたまま三つの魔導書を宙に浮かせ戦闘態勢に入る。
「…」
しかし白髪の少女は気づいてないのか変わらず俯いたまま歩き続け、やがてファインブックのすぐ横を通り過ぎ──
「……まって」キュ
いつの間にか起きていた園児が白髪の少女の顔にある包帯を掴む。
その拍子に包帯が解けて白髪の少女の顔があらわになる。
「………?」
白髪の少女が顔を上げ、園児に顔を向けた。
「…わあ」
「っ……!」
惨い
顔のほとんどが焼け爛れ、筋肉どころか一部骨まで露出、下唇は無く歯茎も丸見え。左目の瞳孔は歪み濁っている。
唯一無事なのは右目のみ。
ファインブックとて魔法少女として6年と戦い続けた。その中で零れ落ちた命を目の当たりすることも少なくなかった。
それでも目の前の少女の傷は余りに惨すぎる。
しかし、絶句しているファインブックと違い園児は瞳を輝かせて手を伸ばし
「おめめきらきら〜!」
白髮の少女の顔に優しく触れた。
「…?………!?」
白髮の少女は予想外な反応だったのか目を見開く。
「あっ、おかあさんがいってた!たすけてもらったら、ちゃんとおれいをいいなさいって。しろいおねえちゃん、たすけてくれてありがとう!」
園児の小さな手が白髮の少女の頭を撫でながら感謝を伝える。
園児の反応に2人の魔法少女が固まっていると白髪の少女の目から大粒の涙が零れ頬をつたい、やがて決壊したように涙が止まらなくなる。
「……っっ…グゥ…ッ」
白髪の少女はその場でしゃがみ込むと何かを堪え、顔を両手で覆い嗚咽する。
堪らなくなった2人の園児、そして抱えられていた園児がファインブックの腕から降りて寄り添うと、背や頭を撫で「だいじょうぶ?」「いたいのいたのとんでけー!」など拙いながらも優しく声をかけ白髪の少女を慰める。
その光景を見た2人の魔法少女は事態を悟と同時に己の不甲斐なさを痛感した。
この少女も、助けを必要としている子どもだと。
「ヘビー、すぐに救急と本部に連絡を」
「もうした。数分待ってたらヘリ来るだろ……それより、今更だが」
「はい、魔力が無い。恐らく捜索対象の『
「…そうか。この子が、か」
今も背を丸め嗚咽している白髪の少女をリトルヘビーはなんとも言えぬ表情で見る。
ファインブックも同じように見やるとおかしな点がある事に気づく。
『
その効果は視界内に存在する生命体を障害物越しでも
白髪の少女には
いや、よくよく見ればある。
白髪の少女の左胸辺り、心臓と思われる場所にドス黒いオーラと腹部にも黒く丸いオーラがある。
(これは…っ、生命のオーラじゃない……魔物でもこんなオーラは、まさかのろ)
そこまで考えるとふと周りが静かなことに気づく。
見ればリトルヘビーや園児たちが虚空を見つめて心ここにあらずな様子。
「ヘビー?一体どう──!?」
何者かに顔を氷のように冷たい手で掴まれ強制的に下に向けされられると赤黒い目ががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががが
「──ぇ」
気づけば、病院のベット上だった。
その後、医者が言うにはヘリが到着した時には2人の魔法少女と3人の園児が眠っていたらしく、白髪の少女は行方不明。
一応、健康状態は全員問題無し。
魔物対策本部も山の周辺を調査したが手掛かりになるものは無く、代わりに一緒に捜索していた警察の遺体が見つかった。
リトルヘビーに何があったのか聞くも覚えておらず、それはファインブックも同様に何が原因で眠ったのか記憶に無い。
茅からは
「『
と言われたが、ファインブックもとい
私は
数多の脅威から人々を守り、それと同じくらい物語を語り人々を笑顔にさせた。
にも関わらず
真っ先に声を掛けたのはただの園児。
「傲っていた…のですかねぇ……」
病室にある窓を見ると夕日に染まった街並みがある。
悠鳴はぼんやりと眺め、なぜ魔法少女になったのか思い出そうとする。
「私は──」
それ以降、悠鳴は口を閉ざし窓に反射している自分を見つめ続けた。
【蟲難去ってまた蟲難去ってまたetc】
買い物を済ませた翌日。
四苦八苦しながら確保した仮拠点にて。
「ダァラボケカス!邪魔じゃアホンダラ!!」
開幕から口が悪くて申し訳ない。吸血鬼だ。
えー、ただいま確保したホテルの一室に目掛けて4〜5mくらいの大芋虫の大群が押し寄せてます。
なんででしょうねえ?
「
つい数分前に
聞くに街の中央にある塔を包むように30メートルのクソデカ繭の中から取ってきたみたいですね。
はい。
「クソボケェ!?どう考えても卵を取り返し来てんじゃねえかあああ!!!」
「トス! タス! チェストォ! って、おいゴラァ!わんこ蕎麦じゃねえんだぞぉ!!?」
地中から「コンニチハ!」する大芋虫を適当に千切った看板*1で叩き潰したりぶった斬ったりするが、すぐに地中からおかわりが出てくる。しかもこの大芋虫…生意気にも防御魔法や結界魔法を纏ってる奴もいる。
同じことを既に30分繰り返しているが、どこか既視感を感じる。なんだっけ……
ガリッ
「うおっ!こんんのォ!」
羽音が聞こえ咄嗟に頭を下げると背中を引っ掻かれた。背骨まで逝ったろこれ、神経ギリ無事か……。
鬱陶しい、本当に鬱陶しい。
無限沸きする大芋虫だけでも面倒なのに空から羽付き虫が捕まえようとしつこい。
でも
「ボケどもガアァ!せっかくゲッチュした部屋を取り壊されてたまるか!」
この際精神の負担なんぞ考えてられん!
俺ぇ!邪魔だどけぇい!!
ちょ、は?わたs うぼら!?
「『
魔法が主力の異世界で編み出した俺考案のオリジナル魔法。俺を中心に半径1〜500mの範囲にあらゆる魔法を消し去る魔法を全方位に放てる。
魔法が存在しない世界を
要約:いてつくは◯う
ただし消せるのは『魔法』で『魔力』にあらず。
起きている
しかもこれ使うと自分に掛けてる陽の光から守る結界も消えるから使いどころ間違えると死ぬ。
ホテル一室を保護している結界を消さないように、今回は半径50mを地面に向けて放つ。
こぉんの
ハア!?なんd ゔぉが!!
「『
両手の爪で互いの手の平を引き裂いて合掌する。
合掌した手から鉄臭い黒い液体が溢れる。本能で危険を察知したのかはたまた鉄の臭いに釣られたのか空を飛ぶ蟲たちが一斉に吸血鬼に突撃する。
一匹の大型蝿が今まさに吸血鬼の首を獲ろうと距離を詰めた瞬間
「──?」
大きな複眼が映したのは黒。
黒一色の世界
ドプン
遅れて全身が液体に包まれる。
外気を断たれ、気門を塞がれこのままでは窒息死すると慌て羽と手足を動──
「…!?」
抵抗も許されず、一瞬でサッカーボールサイズにまで
だが実態は吸血鬼の小指の上に乗るたった0.5mmの水滴の中、つまりノミよりも小さい。
元は人魚姫*2が持っていた魔法を吸血で奪い取り、のちに初見殺し用に魔改造したもの。
液体を媒介に触れた生物の大きさ質量問わず液体の中に引き摺り込み圧殺する。さらに時間経過で液体は無制限で増殖し、たった30秒で25mプールから溢れるほどである。
要約:触れたら即死のバ◯バイン
なぜ『初見殺し』なのかは結界魔法に弾かれるからだ。
事前に結界を張られては引き摺り込めないし、無制限に増殖するものだから維持するにも魔力をドカ食いされるし*3と運用を間違えたら干物になる。
まあその結界も『
「飛んで火に入る夏の虫のゴトクッ、そのままぜんぶぜーんぶ堕ちちまいなあ!!」
10秒が経過して多量に増殖した液体を水魔法の応用で複数の球体に固め吸血鬼の周りに浮かせて空から突進する蟲の迎撃。
「ガア──アア、グゥギギギ!」
やはり今の貧弱な肉体で扱うのは厳しい。
急速に減る魔力を補充しようと取り込んだ血が消費され、肉体は血を欲して吸血衝動が高まり、喉が痛いほど渇き、視界があかくアカク赤く紅く赫く染まり理性が削れる。
「ウ ヴヴ ルガアアア!!」
ガンガン痛む頭を食いしばりで耐え、真っ赤な視界で近づく蟲が居ないのを確認するやいなや更に増殖した液体を地面に叩きつけ大芋虫の殲滅。
地面に黒い液体が広がり、何も知らない大群の大芋虫は移動で疲れた体が本能のまま液体に口付け、地中から消え去る。
その後はひたすら吸血衝動に呑まれないように30秒まで耐える。
耐える
耐える
たえる
たえ…る
た…………
(……知ってる天井だな)
気づいたら確保した一室で仰向けで大の字で寝ていた。
「 ァ ッ ヴ 」
(声が出ねえ…喉が逝きやがった…)
状況確認
・氷魔法でカチコチの冷蔵庫の中に貯蓄していた血は全滅。衝動を抑えるために全部飲んだのだろう。
その変わり卵がぎっしり詰まっていた。後で全部燃やしてやる!
・血袋が死んではいないがゲッソリしている。確か「芋虫に苦戦するとかザーコ♡ヨワヨワ吸血鬼ー♡」と煽られたので腑をひき(とてもおグロイお規制ですわ!)にした気がする。
・外は豆粒サイズまで丸く潰れた無数の蟲の残骸がある。
えーと、結果はホテルの防衛成功。やったね☆
(じゃねえわバカチンが!朝から予定があったのにもう昼過ぎじゃねえかちっくしょーめ!)
まだ怠いが動ける、視界も普通、吸血衝動は……若干ある。
(肌と肌が触れ合う距離じゃなきゃ大丈夫だろ、たぶん、きっと、メイビ--)
精神がヘロヘロになりながらも外出──途中、街の結界に引っかかって危うく吸/血鬼になるとこだった…──して、外に待たせていた
今日の用事は新たな仮拠点の捜索。
今回はどうにかなったが、いつ
早めに逃げ先を見つけておきたい。
「カー!」
なんだ
なら、空か。
よし飛ぼう!貰った靴の風魔法を利用してジェット機のようにぶっ飛ぶぞ!
やけくそ気味に叫ぶ
もし時を戻せるならば、私はこの時の俺に感謝するけどぶち殺すだろう。
5分後
くぁwせdrftgyふじこlp
無軌道に空を飛ぶ吸血鬼。
靴からジェット機のごとく風の奔流が噴き出し続けている。しかし靴底からではなく、履き口から、つま先から、踵からとバラバラで制御のしようがない。
そんな暴走する足に引っ張られて体、特に頭が振り回されて短時間のうちに何度も激しい脳震盪を繰り返している。
これが人間だったらセカンドインパクトでそのまま天に召されるだろう。
だが彼女は吸血鬼。
例え頭の中がぐちゃぐちゃ(直喩)になっても決して死ぬことはない。
そう。頭から地面にダイブしても決して──
ドゴオオオオオン!!!
死ぬことはない。
ただし無事とは言ってない。
(ぐおぉわあぁぁあぁああ!!?頭がーー!!きぼぢわるいいいい!?)
クッソッッッタレメ!
何が起きた!?いきなり暴風に巻き込まれたせいでなんで靴の風魔法がめちゃくちゃになったろうが!!!
(畜生が!ピントが合わないからぼやけて何も見えねえし、つうかこれ首折れてるだろ。ふんっ!!)
180度曲がった首を力づくで戻すが再生できないので、首があらぬ方向に曲がらない程度に折れた部分を『硬擬血』で接着する。
「ギィーーー!!!」
何か聞こえるが耳もイカれたのか耳鳴りが邪魔で聞こえない。
目と耳がダメ。残りの触覚は鈍いし嗅覚だけじゃ限度がある。
なら叫ぶか。
「ヴァ ァグガ アァ !!」
うえぇ…喉が裂けた……。
ん?別にヤケになって発狂してる訳じゃねえぞ?蝙蝠と同じよ、超音波の反響。
んで、目の前のやつはだれ……………
また
(あああああ!!?!?ふぅ↑ざあ↓けぇ↑るる↓なあああ!!!!ぁんでまたまたまたまた蟲を相手しなきゃならんのだそんなにわおたれしをおこくらそむしが)
吸血鬼ちゃんは理性ある方だがそれでも過度にストレスが溜まると一気に
そも
少しのキッカケで増大して暴走する危険な存在だ。
「ガァア アァ アア!」
「ギキ゚ ギ 」
こうして解説してる間に蟲はまともに抵抗できず虫の息。蟲だけに
それでも吸血鬼ちゃんは止まらない。
流石に1000年も経つと神の気遣い*4による
「…」
大暴れして蟲が死んだ後も1000年蓄積し溢れた負の感情は消えず、むしろ暴れた分また増大した。
今は蟲が死んだのと多少血を飲み復活した理性の欠片が何とかしようと奮闘している。
「…」
僅かな理性は、これ以上余計に暴走しないように静かな場所に移動しようととにかく足を動かす。
「……まって」キュ
「………?」
しかし真横から幼い声が聞こえ、思わず足を止めて見てしまう。声の主を見るがまだピントが合わずぼやけて見える。
「…わあ」
「っ……!」
(なあになただだれだれ???たのむおねがいからだからからじゃますしんないでなくれれれ)
感情の濁流に呑まれて*5いるが、一応正気は保っている。
「おめめきらきら〜!」
とても温かい何かに顔を触られた。
吸血鬼になってから熱いも寒いも感じにくい体だが、唯一温もりを感じるのは人肌。もっと正確に言えばその皮の下にある血液。
「…?………!?」
温もりに戸惑っているとようやく耳鳴りが止み、目のピントが合うと視界いっぱいに幼い子供の満面の笑みが映っていた。
「あっ、おかあさんがいってた!たすけてもらったら、ちゃんとおれいをいいなさいって。しろいおねえちゃん、たすけてくれてありがとう!」
瞬間、吸血鬼ちゃんの脳内に溢れ出した存在した記憶。
「……っっ…グゥ…ッ」
ぷはっ!?な、んだ?今回はやけに速いな。
ん……げっ!?みんな離れろ!!
ほわああああああああ!!!!!
(ああもううううくいいい!愛いいいい子ねええええ!!?そんなにまん丸できれいなお目目で見つめっちゃってぇ〜!そうそうよ?御礼、感謝は大事よ!ちゃんと想いを伝えて人と人の繋がりを大事にし続ければいずれ貴女にも私の夫のように素敵な人に出会えるわああああ!!!)
母は強し。
負の感情の濁流が溢れる母性の濁流に押され拮抗している。因みに俺はその間に挟まれ激流に身を任せ同化している。タスケテ。
(あっ、だめ。ダメよ、夫はだめ……私の想いを無視してこんな化け物した馬鹿夫なんか一番ダメ。人の想い無視する人なんか付き合ったらダメよ。だからちゃんと会話するのよ?ちゃんとお口を使って、相手の目を見て、自分の想いを正直に伝えるの。そうして相手も正直に想いをぶつけてくれる人とお付き合いするのが一番よ、そうこんな風にね!)
何をトチ狂ったのか躊躇無く魔眼『暗示』を使い3人の園児の目を見る。
園児たちの自我が眠りにつき、次に異変に気づいた戦鎚を持ちが飛びかかるのを先に足を踏んで阻止し目を見て同じように自我を眠らせる。
「ヘビー?一体どう──!?」
そして最後の一人の自我を眠らせた。
(さあ見て学びなさい。これが
はいはいそこまでだ私。大人しく帰りましょう、ね!
──ゔっ!?)
はあああ…。何回泳いでも慣れねえな、あの濁流。
とりあえず絞め落としたこの
さて、どうしようか。
「……」
「…」
「「「………」」」
──本当にどうしようか。
吸血鬼ちゃんは頭を抱える。
何故ならゴリゴリに魔法少女が居るからだ。
やべぇよやべぇよ…。駆除対象されちまうよ、しかも空からなんか近づいてきてるし悩んでる時間もねえぞ!?
「わ…す……ろ…ねぅ……え!」
2度の超音波による喉の酷使で吐血しろくに喋れてないが、命令が届いたのか頷き全員横になり目を閉じた。
よし、ひとまずこれでいい。
いやよくないけど、これ以上の物理的干渉は暴走を招いちまう!
ごめん、本当にごめんなさい。さよなら。
吸血鬼ちゃんは苦い表情のままその場を後にして、空の彼方に飛んでいった
当初の目的であった次の仮拠点に向かった、が……
全部サッカーボールサイズ
(
「
爆発オチってサイテー!
魔法の解説
吸血鬼ちゃんが過ごした異世界はその辺の野生動物でも魔法を使ってくるほど魔法が主力の世界。例えばドブネズミが捕まりそうになると発光して目眩まししてくる。
『俺』が吸血鬼として目覚めた最初の10年は野生の熊に捕まり死なない都合のいいサンドバックになり、その時の屈辱・恐怖・腹の底から無限に湧く憤怒を原動力に初めて開発した魔法。
なお肝心の熊相手には使う隙もないほど猛攻を受け、結局不死性を活かした持久戦で粘り勝ちした。
まともに運用できたのは全盛期の約400歳ときのみ。
初めて使った時は「この魔法鬼つええ!!このまま敵全員ぶっ殺そうぜぇ!!」と調子に乗ったが、まだまだ魔力の扱いが下手くそのため5秒で干物になった。
この魔法を使うと死体が確定で圧縮されるため、魔法具の素材にも使えず血も吸えず魔力ドカ食いと使うだけで赤字になってしまう三重苦の欠陥魔法。
なお、まともに運用できた全盛期でも聖騎士団長が相手だと、島国を埋め尽くすほどの液体を地面に聖剣を突き刺しただけで全部蒸発させやがった。
ばーか
魔法少女について小話
魔法少女に変身する度に肉体が徐々に変質する。
肉体が魔力に馴染み変身しなくとも簡単な魔法が扱えたり、髪色が得意な魔法(火は赤、氷は青、雷は黄)に変色。
髪色の変色は魔力を持たない、つまり一般人には認識できないので身バレすることはない。