秘封俱楽部を解散した蓮子とメリーが同棲中!?
でも蓮子はメリーへの愛が暴走状態!loveが止まらない!!
メリーは毎日蓮子が「消えてしまうんじゃないか」「死んでしまうんじゃないか」って考えちゃって鬱になちゃった!

相思相愛で幸せな蓮メリがイチャイチャloveloveする3.5×10^3文字の読み切り短編小説。
続編の予定はないから気軽に読める甘々小説です。

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今日も目が覚めると一緒のベッドで蓮子が寝ていた。毎朝その寝顔を見て、体温を確かめる。この瞬間が私の人生で一番幸せ。

 気が付くと私は暗い森の中にいた。背の高い木々の隙間から空を望めば、曇天であった。今にも振り出しそうな鈍色の空のせいで、森の中はおそらく天気のいい時よりも幾分にも暗くなっているのだろう。

 このままここに立ち尽くしているだけでは、この夢の謎は解けない。と意気込み、私は周囲の探索へ動き出した。

 初めに気が付いた場所から真っすぐ、方角は分からないが進んだ。

 すると、道路に出た。

 いや、道路とは、何も舗装されている道を指す言葉ではない。舗装されていても、誰にも使われない道は最早道ではないだろう。道路として使われていたものと言った方がより正確だ。アスファルトは罅割れ、ところどころ大きな凹みがあったり抉れていたりして、アスファルトの下の痩せた土が見えていた。

 周囲を見回してみると、電柱があった。これもまたアスファルトと同じくボロボロだ。電線も何本か切れてぶらりと垂れている。

 また暗く茂った森の中を歩くよりは。と、ボロボロの道路だとして使われていた道を歩き出した。窪んでいても、罅割れていても、歩きなれたアスファルトは道なき道よりもずっと歩きやすかった。

 しかし、いつもそうだ。インシデントは予測できない。

 突然空から鴉の死体が落ちてきた。

 びちゃびちゃと血が私の3メートル先のアスファルトに落ちてきた。そういえば血しぶきが少しブーツに掛かってしまっていた。お気に入りの靴だったのに。

 そのときはそんなことを考える時間もなく、その血の持ち主が落ちてきた。羽を広げて仰向けになって、ピャンッという水音を立てて。

 このときに血が飛んできてスカートについちゃったんだった。長いスカートを穿いていたから? ズボンでも同じか。

 私は吃驚したけど、この程度のハプニングには冷静だった。取り敢えず死体から距離をとった。10メートルくらい。

 沢山の羽音と鳴き声がして、上を見ると、鈍色の空を覆うほどの生きた鴉の群れが旋回しながらカーカーと五月蠅く鳴いていた。どんどん電柱の席が埋まっていって、やがて鴉は地面に降りてきた。

 鴉にはネクロフィリアの趣味があるって、昔何かの記事で読んだ。死体を見つけると死体を犯すらしい。恐ろしいことに同じような趣味を持った人間がいるらしい。私には考えられないけど。

 しかし、鴉は死体を犯すのではなく啄み始めた。確かに戦国時代とかのイメージで戦場後で鴉が人を食べてるけど、共食いもするのかな?

 死体に群がる鴉はどんどん増えていき、死体も見えなくなった。もうずっと距離をとるために刺激しないようにゆっくりと後ろに下がっている。もう30メートルは離れた。

 さっきまで静かだった電柱にとまった鴉たちが鳴き始め、今までとは比較にならないほど五月蠅くなった。真夏の蝉よりもずっと不快だ。

 すると死体に群がっていた鴉と電柱にとまっていた鴉、空を飛んでいた鴉が一斉に私めがけて飛んできた。

 振り向いて全力で走ったけど、私運動部入ったことないし。人が鴉よりも早く走れるわけもないからすぐに追いつかれて、突進を受けてバランスを崩し、俯せに転倒。

 人間お腹より背中の方が硬いし、臓器も遠いけど啄まれて痛かった。肉と皮が引き千切られる感覚。思い出したくもない。頭を守っていた手から脹脛まで満遍なく啄まれた。ブーツのおかげで足首は無事だった。

 しかし、そんな地獄のような苦しみはそう長くは続かなかった。私の体感では30秒はあったと思うが、きっと長く感じていただけで、本当は10秒もなかったと思う。気が利くことに、魘されていた私をメリーが起こしてくれたのだ。

 

 起き上がって手を見ると手の甲から指までびっしりと痣ができていて、ところどころ切り傷があったり、少し抉れていたりしてそれはひどい有様だった。メリーの能力が見せる夢なのだから、夢の中の怪我を持ち帰ってしまうことはよくあることだ。仕方がない。ただ、いつもは夢で受けた傷をそのまま現実に持ち帰ってきていたのに、今日は夢の中よりも傷が少ない気がした。

 とはいえ、痛むから確認してみると、手だけでなく背中から脚までびっしりと手のような傷がついていた。

 まあ、脚はともかく背中やお尻の傷を自分ではよく見れないからメリーに確認してもらったんだけど。メリーには悪いことをしたなあ。蓮子が怪我をしたのは私の眼のせいだから私のせいだ。なんて言ってわんわん泣いちゃって落ち着かせるのが大変だった。

 大怪我だけど、医者に見せられる傷ではないからメリーに消毒して抉れて出血しているところに絆創膏を貼ってもらった。

 その間もメリーはずっと泣きながら謝っていて参っちゃったわ。秘封倶楽部の活動は私がメリーを誘って始めたことなんだから、私の怪我は私の責任なのに。

 

 夢の中でメリーが化け物に襲われて死にそうになって、私も重傷だったけど気絶したメリーを背負って、必死に逃げて二人で夢から醒めることができたあの日から、私たち秘封倶楽部の活動は終了した。私が始めた秘封俱楽部でメリーが死ぬなんて私は耐えられない。メリーに死んでほしくないから私はあの日、秘封倶楽部を終わらせた。私は境界を暴き、世界の謎を解き明かすことよりもメリーの方が大切だから。

 私が始めて私が終わらせた。だからメリーは私の好奇心と我儘に付き合わされていただけなのに、勝手に責任を感じて薬を飲んでないと急に蹲ってぶつぶつと譫言を言うくらい精神が壊れてしまった。私が面倒を見るって言わなかったら精神病院に入院だったのに、私が大怪我して入院しちゃったらメリーも入院することになっちゃう。

 でも今回のこの一件でメリーも余計に病んじゃうんだろうな。

 

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 今日蓮子の魘される声で目が覚めて、嫌な予感がしたから慌てて起こしたら案の定だった。私のせいで悪夢を見たみたい。私のせいで夢の中の傷をそのまま基底現実に持ち帰ってしまった。全部私のせいだ。

 どうしたってあの日のことが忘れられない。秘封俱楽部が解散したあの日のことが。私が私の夢の中で死ぬのはいいの。いずれそうなることは分かっていたから。私はこの眼に喰い殺される。でも蓮子は違う。蓮子は私の眼に魅入られたから、私の眼に殺される。私がこんな眼を持っていなかったら蓮子が私に殺されなかったのに。

 今でも遅くないから蓮子と別れて蓮子に私の眼の能力が及ばないようにすれば死ぬのは私だけでいい。なのにいつまでも逡巡して、私が一緒にいたいと思うから、私が蓮子を離さないから蓮子は私と一緒に死ぬ。私が一緒に死にたいと願うから、私の我儘のせいで蓮子は死ぬの。

 ある日、目が覚めると私が基底現実にいなくて、永遠に夢を一人彷徨い続ければ、蓮子は私から解放される。

 そうなって欲しい。そうなって欲しい。と何度冀っても、その時は来ない。

 今日だって私のせいで、私のせいで蓮子は夢の中で鴉に啄まれて体中に痣ができて、肉を喰われて、血を啜られて。

 今日は私が気付いて起こしたからそれ以上傷つかなかったけど、明日は分からない。

 明日起きると蓮子が隣で死んでいるかもしれない。

 そう考えると怖くて、恐ろしくて、寝られない。でも蓮子が私に薬を飲ませて無理やり寝かせてしまう。私ももっと拒絶すれば寝ずにいられるけれど、いつも蓮子は私と同じベッドで寝ていて、そうすると私は幸せな夢に生きていられる。朝起きるとすぐに蓮子の体温を感じられて、基底現実に私が蓮子と存在していられることを感じた瞬間に私は恍惚としてその幸せを噛締める。

 私は今蓮子と一緒に生活している。秘封俱楽部が解散したあの日から私の部屋に蓮子が居候して。私が精神病院に入院した方がいいってお医者さんが言った時も、蓮子が私のことをずっとみるから入院の必要はないって言ってくれて、私は蓮子の傍にいていいんだって思えた。

 ああ、なのに蓮子は私のせいで死んじゃうの。私が我儘だから。私が一緒にいたいって思ってしまったから。蓮子の隣にいるとそれだけで幸せになるから。私は入院するべきだった。私は今幸せなんだ。幸せだから死にたくないと思ってしまう。だから私は幸せな夢ばかり彷徨ってしまう。私が入院していれば、精神病院のコンクリートの函の中で栄養の整えられた健康的な食事と適度な運動と薬と管理された生活習慣と。蓮子のいない監獄で人間として完璧な生活を強いられるんだわ。蓮子のいない世界で私は生きられない。入院していれば私はこんな未練を抱かずに失踪できた。夢の中を永遠にさまよい、二度とこの基底現実に戻らなくなれた。私が消えて亡くなれば蓮子は死なないのに。私のせいで。


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