異常幻覚:弟の存在があります。
それでもよろしければどうぞ。
12/26。
クリスマス特番も終わり、年末の特番も生放送を覗いては大体収録が始まってるか、終わってるか。
それくらいの時期であろう。
芸能界のスケジュールはよくわからない。
そんな日に、姉から『今日は遅くなる、ご飯はいらないから食べてていいよ』との連絡。
というわけで、飯を食って今は録画してるビデオの消化中。
見てるアニメだったりとか、姉の出てる音楽番組とか、バラエティとか。
録画しといて見ないまま貯めると容量がいっぱいいっぱいになるから、定期的に消化しないと。
「ただいまー…」
と、姉が帰ってきたようだ。
しかし、ただいまの後にばたっと音がしたのは大丈夫だろうか。
心配で見に行ってみると。
「おかえり…玄関で寝るな、部屋まで行け」
「無理ー…連れてってー…」
「じゃあせめて自分の足で立つぐらいはしてくれ」
「うゆー」とか「うにゃー」とか唸ってる姉を背負って姉の自室まで連れて行く。
首に当たるダウンの感触が冷たい、外はだいぶ冷え込んでるようだ。
ベッドで寝かして部屋を出ようとすると、腕を引っ張られる。
「あぶね…」
「ちょっとはお姉ちゃんに構ってよー…」
「…何、飲まされたの?」
「お姉ちゃんがそんなに大人っぽく見えるのかー?」
「違う…いや、まぁ違くはねえか。質問を変えよう、飲んだ?」
聞くと、姉は黙った。
「…飲んだな?」
「飲んでないー!同じような色のやつが混ざっちゃったから飲んじゃっただけー!」
「そうか、水とってくる」
「行くな弟!もっと構え!」
さっきより腕を引く力が強くなる。
やろうと思えば抜けれるし、今のこの状態も別に危ないわけじゃない。
「…姉ちゃんのためを思って言ってんの。水とってくるから、大人しくしてて。できる?」
「うん…」
「ならよし」
部屋を出てコップに水を汲む。
ここまでやっておいてあれだが、姉は未成年であり、押しに弱いタイプでもない。
ならば本当に間違えて飲んだ?というのが有力であるが、弟である俺にはもう分かっている。
姉は飲んでない。
至極真っ当な結論である。
第一、飲ませた方が捕まるんだ、そんなリスキーなことを事務所、及びマネージャー、そして世間が許さないだろう。
そんなほぼ決まった考察を浮かべながら、姉の部屋のドアを開ける。
「姉ちゃん、飲める?」
「ん、ありがと…」
ベッドの上に座って、姉は水をゆっくり飲み始める。
飲み終わった頃合いで、真意を聞いた。
「で、本当は?」
「ほんとう…?」
「飲んだの?飲んでないの?」
「…のんで、ないです」
「よろしい、よく言えました」
俺がそう言うと、姉はみるみるうちに目に涙を溜める。
「泣くな泣くな」
「…ぎゅ」
「はいはい」
姉の頭を右腕で覆って、余った左腕を腰に回す。
「あったかい」
「そりゃよかった。外は寒いからね」
茶化してるけどこれも労わり。
普段営業スマイルを振りまいてる姉だからこそ、こういう時ぐらいは素を出してほしい。
気心…というわけではなく、ただの願望だ。
家族にまで気を使い出したら疲れるだろう。
「…あのさ、お願いがあるんだけど」
「何?」
「明日ね、オフなんだ」
「それで?」
「買い物、付き合ってくれる?」
「…喜んで」
ファンに知られたら刺されそう。
まぁ親族だし、良いでしょ。