時は冷戦時代、八幡は魑魅魍魎溢れる世界で暗躍していた。

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八幡、国家の裏方として暗躍する

八幡はいばら姫ことヨルに殺された。

彼の出番は此処で終わりである。

 

八幡にはスパイとなるための能力はなかった。

一見、目立たない容姿がスパイ向きには思われるが、実はそうではない。

美男美女なら怪しまれる、地味だから怪しまれないというのは、統計的にも誤りだ。

そもそも詐欺師には不細工な者の方が多い。

美形は普通にしていても成功するために、わざわざ捕まるリスクのある犯罪は行わないし、小さな頃から周囲に優しくされてきているので、周囲にも優しい。

 

だが、詐欺師としての成果を見るのならば、美男美女の方が成立の可能性も単価も高くなる。

人間は正しいものを信じる生き物ではなく、自分が信じたいものを信じる生き物だ。

フツメンや不細工が何かをしている事を怪しいと思ったら、そのまま疑いを深めていく。

しかし美形が何かしていても、信じたい、助けてあげたい、仮に嘘でも構わない、この人の為になら、やっぱり信じたい、そういった感情になる。

ホストが成立する根拠の一つでもある。

不細工は少しでも疑われたら終わり。

イケメンなら疑われてもリカバリーが何重にも効く。

故に成功率が全く異なるのだ。

 

故に八幡はスパイにはなれなかった。

人を引き付ける魅力も、咄嗟の機転も、戦闘能力も無いからだ。

だからこそ八幡は、スパイではなくその補佐の補佐にあたる、秘密道具開発拠点契約代行部に所属していた。

これはスパイが使う秘密道具を開発する人達が使う研究室を研究員の代わりに契約する係だ。

凄腕のスパイの活動は、裏方の更に奥にいる裏方が支えている。

 

表向きは、土地の売買を行う投資家として生活している。

ターゲットが都市部にいる以上は、その関連機関の関連機関も都市部に近くなる。

 

都市部の土地はインフレし続けるので、都市部の土地を買える資金さえあれば、買って寝かせて売れば、通貨が過剰インフレしない限りは利益となる。

不動産会社が何処でも幾らでもあるのに、それぞれ存続できる理由はそこにある。

資金は土地に変えて運用すれば良いのだ。

というより、物価は常に上がり続けるのに、資産の大半を通貨で持つ事はインフレに置いていかれる愚かな行為である。

 

挙げ句、資金は国から拠出されて、失敗しても国が非公開で税金から補填してくれるので、八幡は気持ち良く投資家気分を味わえた。

 

だが、そういったスパイの支援活動の支援活動は、敵国へとバレてしまっていた。

 

表立っては土地転がしの投資家であったが、その正体は敵国に知られていた。

 

何故バレてしまったのか?

それは、そういった土地転がしを行っていて、利益を度外視した動きを見せる者を調査する部署が、敵国にもあったからだ。

 

スパイの支援者の支援者を調査する部署まで存在して、総力戦で殴り合うのが冷戦というものだ。

その部署の凄腕調査員である葉山によって、八幡と彼が購入した土地で研究する者達が知られてしまった。

 

よって研究員共々八幡は暗殺されてしまったのだ。

国家の本気とは、実に恐ろしいが、これが冷たい戦争なのである。




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