書き終わったのが23時59分なので許してください。
他の界隈に行っても、本を作って即売会で売っても、私は奥沢美咲の事が大好きです。
――こいつに異性の魅力があるか無いか言われれば、あたしは迷わず『無い』と即答するだろう。
どちらかと言えば、あたしは理屈を並べて物事を決めるタイプだと思う。初めて訪れる喫茶店でも、何十枚も重ねられたパンケーキをを頼む事も無ければ、どうしても決断しないといけない時には色々考えた末に、物事を決めていたりする事が多い。
更にハロハピの影響で最近は、目を離すと直ぐに視界から消えてしまうこころに向けて、彼女の興味をそそりそうな話をして、何処にも行かせないように手綱を握り、いつも何かしらを考えて行動していた。
だけど、そんなどこか一般的な女子高生の枠組みから外れている自分でも、腐れ縁のただ家が近かっただけの、こいつの前では何も考えずに過ごす事が出来てしまう。
「……にしてもこいつ、全然起きないな」
もうそろそろ完全下校時刻だというのに放課後の教室で寂しく一人、自分の目の前で机に突っ伏して寝ているこいつを、視界に収めながらため息をつく。
冬休みも終わり新年あけてから初めての学校で、一週間の終わり即ち金曜日。しかも来週まで特に予定はなく、こころからの呼び出しも無ければ、ミッシェルとしての仕事も無い、久しぶりに訪れた平穏な休日を有効活用する為に、その事前準備として放課後に残って課題をしていた。
もう少しで本格的に意識しなければならない『受験』という言葉。幸か不幸か成績は普通の水準よりちょっと上である自分は、このまま成績を落とさなけらば充分に推薦を狙える範囲。だがそれでも、安心できるとは言い難い。だから土日はしっかり勉強でもしようかと思っていた。推薦がダメでも、試験の点数でも合格できるように――だというのに。
「今年、受験生であるはずなのにこの男はずっと寝ている、と……しかも、こういうやつに限って赤点は取らないし、全国模試でも良い順位とるのが腹立つな、ホントに」
呆れたような表情から妬ましい表情へ、変えながら目の前の席へと座る。椅子を引いた時にかなり大きな音が出てしまったが、よほど眠りが深いのか起きる気配はなかった。どうせ夜遅くまでゲームしてたのだろう。
「勿体ないなぁ、もう。その意欲を別の事に活かせばいいのに」
呟きながら、人差し指で寝ている彼の前髪を掬いあげる。同級生の女子曰く、こいつの顔はイケメンでもなければブサイクでもない、言わば普通の顔。だが男子高校生にしては色が白く、こいつの顔が好みという女子生徒もいるらしい。
「いやいや、外にも出ずにゲームばっかりしてるだけだよ、白いのは」
前髪から指を離しながら思わず苦笑を浮かべる。いつもそうだった、何かと小学生の頃からこいつはモテてるとは言えないが、意外と女子から謎の人気が出ていた。
ただ幼い頃からこいつの事を知っている自分からすれば、モテてる要因は全てこいつが自堕落した結果という事に笑いを隠せなかったのは懐かしい思い出だ。
「……あの子たちに、本当のあんたを教えたらどうなるんだろうね」
もし自分の様に捻くれてる性格の人物なら、こいつの本性を人に教えたりするのだろうが、自分は教える気はなかった――だって、そうだろう。
「こいつの良さも悪さも知ってるのは、あたしだけで充分だよ」
大人っぽい見た目なのに子供舌の所とか、実は英語が得意な所とか、困っている人を見過ごせない所とか。ベッドの下ではなく本のカバーで偽装して隠しているいかがわしい本の数とか、口では異性として見てはいないと言っておきながらも、自分を異性として見ているのも、知っているのは自分だけでいい。
――あんたが居なければハロハピには居なかったし、ここまで続けられなかった。その事に凄く感謝してるんだからね。
「……起きたら、ココアでも奢ってあげようかな」
ポツリ呟きながら、目の前の人物が起きてくるのを待った。
バンドリ祭の主催、お疲れ様でした。
またこういう企画があったら戻ってきやすいので、お願い致します。