【完結】都合のいい女ぶってる美少女たち、実は湿度高めで愛が重かった。   作:黒い床

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終章#71 I live with...

 SIDE:友斗

 

「澪っ、いく、ぞ……っ」

 

 ――ビリリリリっ

 甘美な稲妻が弾ける。どく、どくどく。意思と綯い交ぜになった身体が、否応なしに震えた。鼓膜をノックする少女たちの嬌声は、他の何物にも代えたくないほどに心地いい。

 多幸感と解放感、それからどこまでも心地のいい疲労が胸の中を満たした。虚無感も虚脱感もないのは、そんなことも考えられないくらいに獣性に犯されているからだろうか? 多分違うだろう、と勝手に決めつける。

 

「んんっ……」

「ふふっ、お姉ちゃん気持ちよさそー」

「だね……でも、ちょっと気持ちは分かるかもしれません。痛かったけど、凄く幸せです」

「そだね~。相手が友斗くんだからなんだろうけどさ」

 

 セミダブルのベッドに、四人の少女が寝転んでいる。

 ぐしゃぐしゃに乱れた髪は、汗を糊にして派手に貼りついていた。

 澪はまるで眠る前の子猫のように、それはもう心地よさそうに目を細め、余韻に浸っている。雫は自分の腕に顎を乗せ、子供を愛でるかのように澪を見つめていた。大河は澪に腕枕しながら、満更でもなさそうに微笑む。来香はすっかりヘトヘトで、泥のようにぐでーと溶けている。

 

「友斗先輩も、お疲れ様です」

「あ、あぁ……悪いな、俺と澪でシてる時間が長くて」

「しょーがないよ。あたしが最初にバテちゃったし……てゆーか、二人の体力がおかしくない? 澪は分かるけど、友斗くんも余裕ありすぎ!」

「それは……まぁ、相手が四人だからな。体力がなくてもがっついちゃうというか……」

「ゆ、ユウ先輩! 急にそういうことを言うのはズルいです!」

「それは今更じゃない? お姉ちゃんと友斗先輩がシてる間もいっぱい触ってもらってたんだし」

「それはそれ、これはこれだよ。恥ずかしいものは恥ずかしいというか……」

「でも嬉しがってるのは見れば分かるよ。入江会長、意外とむっつりっぽいしね~」

「……っ、そ、そんなの分からないじゃないですか! その判断は早計だと思います! 第一、月瀬先輩はさっきまで休んでましたよね?」

「だからこそ見えるものもあるんだよー? あと、休んでたとか言わないでくれるかな。あたしが体力ないみたいじゃん。自覚してても人に言われるのは不服なんだよね~」

「むっつりって言ってくるよりはマシだと思います」

「休みながら私たちのえっちを見てた来香先輩が一番むっつりまであるよね」

「雫ちゃんはすぐあたしの敵に回るね!?」

 

 明け透けで可愛らしい会話を繰り広げる三人。

 本当に可愛い子たちだと思う。

 俺には勿体なくて、でも俺のことをどこまでも贔屓するという重大な欠陥を抱えている、最高の女の子たちだ。

 

「痛かった……よな?」

「もちろん。すっご~く痛かったです」

「でも……ユウ先輩と澪先輩がたくさんほぐしてくれましたから」

「二人とも、だいぶエッチだよね~。どれだけシてたのってカンジ」

「あ、あはは……。それはまぁ、そうだな」

 

 何せ澪とはかなりシていた。下手すると三桁いってたかもしれん。それなりにプレイの幅も広かったので……ね?

 

「というか……私はよく分からないですけど、こんなに幾つも一度に使うものなんですか……?」

 

 大河は火照った顔と声のまま、ちゅぷん、とコンドームをつつく。

 ベッドとか澪の体の上には、口を縛ったコンドームが散乱している。数にして五個、いや最後に使ったのを含めると六個か。

 大河たち三人と()るのに一個ずつ、澪と()るのに三個使った。

 

「いや、普通は一回で終わりだな。俺は澪とシてたことと……あと元々の体質で、割と多めにできるけど――でも久々なのに六回ってのは疲れた」

 

 澪とセフレとしてシてたときは、六回シたこともある。だがその後は一週間ほど()る気にならなかったし、そもそも四回目くらいからはほとんど――って、俺は何を真面目に考えてるんだか。

 

 くたくたになった俺は、彼女たちの間に倒れ込む。

 川と州の間の字になった俺たちは、ふぅ、とベッドで一息ついた。

 

「えへへ、五人でくっつくとあったかいですね」

「ちょっと暑苦しいかも」

「だなぁ。暖房、消すか?」

「消すのは冷えてしまいそうですし……温度を下げる程度にしませんか?」

「ん……シャワーがいい」

 

 四人で話していると、澪が寝ぼけた猫のような声で言う。

 

「シャワー、ですか?」

「そ。シた後は熱湯を浴びる。そこまでが作法なんだよ」

「なるほど」

「いや違ぇから。あくまで俺たちがそうしてたってだけだから」

「ちぇっ」

「み・お・せ・ん・ぱ・い?」

 

 大河がじっと澪を睨むと、べっ、と悪戯っぽく赤い舌を出した。

 やばい……シた後に裸でそういうことしてるの見ると、めっちゃ胸にクる。

 

「あ~。でも二人がそーしてたなら、私たちもシャワー行きません? 汗掻いちゃって気持ち悪いんですよね」

「確かに。汗でぐっしょりだよね~」

「でしょ。だからシャワーなんだよ」

「お姉ちゃんの目が今までにないくらいに活き活きしてる!?」

 

 得意気に澪が語り、何だかんだ五人で浴室に向かう。

 来香はまだ疲れが残っているらしいので、俺が支えて歩く。裸でこんなに密着するのはなんだかなぁと思いながらも、今はグッと堪える。来香はライブでもだいぶ消耗してるはずだしな。

 

「お湯は――って、44度は熱すぎません?」

「これがいいの。シた後に熱々のお湯を浴びると最高に気持ちいい」

 

 ぴっ、とまた1度お湯の温度を上げる澪。

 流石に五人だと浴室は狭くて、シャワーの音とそれぞれの声がよく響く。

 ボディーソープで体を洗いっこする四人を横目に捉えつつ、熱湯を浴びて汗を流した。

 

「浸かるのは流石に無理だし、出よっか」

 

 シャワーを止めて、俺から順に浴室を出た。

 二人分のタオルを五人で使い回す。四人はぽんぽんと丁寧に体を拭き、かと思えばお互いに手が届かないところを拭き合っていた。

 エロいのに日常感がある、幸せな光景。自然と頬がだらしなく緩んだ。

 

「あっ、友斗先輩。見てくださいよっ!」

「ん、どうした?」

 

 雫に言われ、脱衣場の鏡を見遣る。

 

「見ろって、何を? 俺たちが映ってるだけなんだが」

「首ですよ、首。お揃いです♪」

「ああ、そういうこと」

 

 俺たちの首元には、それぞれ四か所の内出血がある。

 そこまで痛くないその内出血は、いわゆるキスマークと呼ばれるものだ。シてる間に盛り上がって五人でつけ合ったんだった。すっかり忘れてた――ってか、

 

「これ、めっちゃ恥ずくね……?」

 

 キスマークとかイマドキ流行らないし、そもそも高校生でそれをつけてる時点で色々とアレなわけで。

 な?と四人を見るが、はてと首を傾げられた。

 

「え、よくないです? 結構好きなんですけど」

「独占されてる感あって、乙女的にはポイント高いよね」

「私も……皆で繋がれた証みたいで、ちょっと嬉しいです」

「そうそう。好き合ってる証拠みたいでいいじゃん?」

「お、おう……四人がそれなら、それでいいんだけど」

「てゆーか、友斗先輩が一番ノリノリでつけてましたしね」

「だね。ユウ先輩のだけ、少し歯形も残ってますよ?」

「友斗って割と支配欲みたいのあるもんね」

「友斗くんのえっちぃ~♪」

「うぐっ」

 

 否定できねぇ……確かにキスマーク自体は憧れてたんだよなぁ。たかが内出血だと分かっていても、行為の名残みたいで悪くない。

 体を拭き終わっても、誰も服を着ようとはしない。

 下着だけは新しいのを着けて、当然のように部屋に戻る。

 コンドームとシーツを処理して、それが終わったらごろんと五人でベッドに寝転がった。

 

 いつかのように見送る必要はない。

 セフレはピロートークなんてしないだろうけど、俺たちは恋人だから。

 これからも、お互いに恋をし続ける――そんな恋人。

 

 だけど、恋人のまま家族にもなる。

 少し歪かもしれないけれど、俺たちは俺たちなりに繋がっていくんだ。

 

「そーいえばさ、友斗くん。時雨さんたちに渡したっていう小説、あたしたちにも読ませてくれるんだよね?」

「え゛」

「あーそうでしたっ! 『恥ずかしいから読ませない』はなしですからね?」

「い、いや、でもだな……」

「姉さんが読んでいるのに、恋人の私たちが読めないのはおかしいと思います」

「ぐっ、せ、正論を」

「諦めたら? 生き恥を晒すのは慣れてるでしょ?」

「別に慣れてないからねっ!?」

 

 生き恥を晒してるつもりは一ミリたりともないんだけどなぁ……。

 まぁ、恥ずかしいだけで読まれたくないわけじゃない。

 むしろ読んでもらおうとは思っていた。

 だってあれは、俺なりの誓いだから。

 

「また今度、見せるよ。まだ最初の方しか書けてないから、これから書いていくことになるだろうし」

 

 俺たちのラブコメは、これからも続いていく。

 この心音が鳴り続ける限り、いつまでも。

 恋に産み落とされたこの命は、恋に殉じることを望んでいるから。

 って感じで上手いこと話をまとめられたかなぁと思っていると、澪が何かを思い出したように口を開いた。

 

「ところで友斗」

「澪といい来香といい、思い出したように何かを言うのやめようぜ。今日はもう安眠する流れだろ……?」

「それはそうなんだけど。でも聞いてないじゃん? 誰が今日のMVPだったか」

「「「あっ」」」

「…………」

 

 触れられないまま今日を終えられそうだった懸案事項が掘り返され、ぷいっと顔を逸らす。……が、四人に囲まれている以上、逃げ場などあるはずもないわけで。

 

「友斗く~ん? ちゃんと決めてくれるって約束したよね?」

「私たち、頑張ったんですよー? きちんと答えを出すのが男の人の義務だと思います!」

「私も勝ちたくて色々と頑張りました。……選んでほしいです」

「うぐっ」

 

 選びたい気持ちはあるのだ。三曲目のステージを大河が企画したって話も聞いたし、雫は衣装決めで、澪や来香はライブで輝いていた。

 だが、いいや、だからこそと言うべきだろう。

 四人ともめちゃくちゃ輝いていたから、選びようがないのだ。

 マジでうん、ほんっとに。一番とか決められる奴がいるなら出てきてほしい。俺がぶん殴ってやる。一番を決められるわけがねぇだろ、バーカ!

 

「友斗?」

「ユウ先輩?」

「友斗先輩?」

「友斗くん?」

 

 半裸のままの四人に迫られる俺。

 どこのハーレム主人公だよって感じの状況を他人事みたいに俯瞰して、ははは、と思わず苦笑した。

 全く――本当に幸せだ。ハッピーエンドと呼んでしまってもいいくらいに。

 

 でもエンディングを迎えるつもりはない。

 かといって、これから先の人生を蛇足にしたくにない。

 だからこれからもっと、俺たちは幸せになっていくんだろう。

 

「……今回のライブで一番輝いてたのは――」

 

 ……こんな風に、修羅場を乗り越えながら。

 

 

 ◇

 

 

 春の訪れを報せるのは、回ってるお寿司の匂いなのかもしれない。

 母さんと美緒の命日を明日の控えた、嘘つきの日(エイプリルフール)

 俺たち五人は、何故かオキ寿司にやってきていた。

 目の前にはやけに真剣な顔の父さんと、ソワソワした様子の義母さんがいる。

 

『大切な話があるんだ』

 

 下手すりゃ俺たちの結婚報告のときより重々しい口調で父さんが言ってきたのに驚いた俺は、家族なんだから他人事ではないだろうと思い、大河と来香にも同席してもらうことにした。

 席順で前のように揉めた――という裏話はさておくとして。

 

「で、大切な話って?」

「あ、ああ。実はな……」

 

 妙に父さんの口が重い。

 え、マジでなんなの? 急な呼び出しで状況が理解できてないこともあいまって、「エイプリルフールの仕込みなのでは?」とさえ思えてくる。

 素知らぬ顔で寿司を食べ始めてる澪、先月末からサービス開始したスマホゲーにはまってその話をしてる雫と来香、まだ緊張してるらしい大河を横目に、俺は大人しく二人の話を待つ。

 すると義母さんはふふふと上機嫌にお腹をさすりながら口を開いた。

 

「あなたたちにね、妹か弟ができるの」

「「「は?」」」

 

 と声が被ったのは、俺と雫と澪である。

 遅れて、

 

「「え?」」

 

 と残る二人の声が続いた。

 ……いきなり何言ってんだ、この人。

 

「……そんな馬鹿みたいな嘘を吐くためにわざわざ休みを取ったわけじゃないですよね? 二人とも毎日休みなく働いてるんだし、俺としてはサクッと話を済ませて今日くらいはゆっくりしてほしいんですけど」

 

 義母さんが結構アレな性格をしてることは分かってる。顔合わせのときとかだいぶ変人っぽかったしな。

 父さんがわざわざそれに付き合うってのも考え物だが……ま、ラブラブだと思っておくとしよう。再婚して一年。仲がいいのはよいこと――って、あれ? 全然反応が返ってこないんだが……?

 と訝しんでいられるのは一瞬だった。

 

「あのな、友斗。……マジの話なんだよ」

「――は?」

「……ママ?」

「ふふふっ、本当の話よ? 2月の終わりにあなたたちが結婚の挨拶をしてくれたでしょう? あれから救われた気分になったというか……余計に孝文のことを愛おしく思ってね。そうしたら――できちゃった♪」

「できちゃったじゃないでしょ。ママ、何歳だと思ってるの? アラフォーで出産は流石に……」

「大丈夫! 私、安産体型だから! 体も若く保ってるし、お医者様にも『頑張りましょう』って言ってもらったのよ」

「「そういうことじゃない!」」

 

 ツッコミの声が被るのはしょうがないと思う。

 いやまぁ、義母さんの言っていることは分からないでもない。仕事に打ち込んでて生活リズムが崩れてるはずなのに、義母さんはいたって健康に見える。経産婦な分、出産経験がないよりはマシだろうしな。

 

 それにしたって……なぁ?

 

「い、いいと思います。おめでたいことです。もちろんリスクはありますが……私にできることがあれば、何でもさせてもらいます!」

「大河!?」「トラ子!?」

「あたしも! これでも健康については詳しかったりするので、お義母さんのこと精一杯サポートしますね♪」

「「来香まで!?」」

 

 大河と来香は全力応援の立場を取るらしかった。

 大河の方は緊張してるだけ……なはずがないか。いくら緊張してても、自分の意見はちゃんと言うタイプだろうしな。

 来香に至っては本気でノリノリっぽいし。

 

「友斗先輩、お姉ちゃん。二人のラブラブっぷりを考えたら、いつかこーなるかも、って思ったりしてませんでした?」

「いや、雫もさっき俺たちと一緒に驚いてたよな?」

「しれっと自分は予想してたみたいな顔させないからね?」

「……んんっ。私は分かってました。二人はラブラブしちゃうなーって。そーゆうことをするのがどれだけ幸せなのか、知っちゃいましたし」

「「…………」」

「なので! 私もお母さんのこと、応援するよ! だいじょーぶ! 何せ友斗先輩にはお嫁さんが四人もいるからねっ! 無事にお母さんが赤ちゃんを産めるように、いっぱいサポートするから!」

 

 ダメだこいつ、俺たちの話を聞く気が無ぇ。

 あと、そういうことを外で言うなよ。恥ずかしいし色々と思い出せちゃうだろうが。

 

「ありがとう、三人とも。……そう言ってくれると、安心してこの子を産めるわ」

「だな。……友斗と澪ちゃんも、どうだ? 折角美琴に宿ってくれた命、ちゃんと産んで育てたいって思うんだけど」

 

 この流れで俺たちが反対できるわけがない。

 澪は小さく溜息を零し、やれやれと肩を竦めながら言った。

 

「いいよ。ママに負担がいかないようにできることはしてあげる。ま、やれる範囲で、だけどね」

「もちろんよ。澪には追いかける夢もあるものね」

「……ん」

 

 最後に、全員の視線が俺に集まる。

 まったく……ちっともゆっくりさせてくれないんだから、人生ってやつは慌ただしい。死んでるみたいに止まり続けた頃に比べたら、今の方が遥かに良いけどな。

 

「家族ですからね。助け合いますよ、これからも」

 

 店の外では、きらきらと桜の花びらが降っていた。

 季節が巡る。

 新しい命が芽吹く。

 新章開幕って言葉が脳裏によぎって、口の中だけで笑った。

 

 笑って、泣いて、喧嘩して、苦しんで。

 春も、夏も、秋も、冬も、その次の春も。

 俺はこれからも、全力で生きていく。

 とくんとくんと鳴り続ける、この心音を聴きながら。

 

 

“Heartbeat songs” End.

“I live with my heroines.”

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