女でありながら狩人をする。
そしてガールハントも遂行する。
両方やらなくっちゃあならないのが女狩人の辛い所だな。

まあ私はマリア様にハントされたんだがHAHAHA

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マリア様とグチャドロ内蔵攻撃ックスしたいだけの人生だった

「ふぅ……」

 

 星輪草の庭。

 その奥に安置された灯りの側で、私は花を見ながら賢者タイムを楽しんでいた。

 

 時計塔のマリア。そう謳われる女狩人を狩れば、この夢の秘密を垣間見ることができる。

 シモンを名乗る恐ろしく胡散臭い男の言葉に従ってここまで来たわけだが……正直、もう夢の秘密とかどうでもよくなった。

 

 はっきり言って、私はビアンである。

 お礼がしたいと語る娼婦に迫って彼女に『女同士の良さ』を仕込み杖(意味深)したこともあるし、ヨセフカの診療所を占拠していた不審者をすぐに気持ち良くしたり、人形ちゃんの涙を収集したり、このヤーナムに来てから大分やりたい放題してきた自覚はある。知ってるかい? 人はみな、獣なんだぜ……。

 

 一応言っておくが、無理矢理致したということは一切ない。

 不審者については確かに疑問の残る所だろうが、彼女についてはあっちから誘ってきたようなものだ。少なくとも私から見たら完全に誘い受けの体勢だった。「くっ殺せ!」と叫ぶ女騎士と同じぐらい誘ってきていた。

 

 だって「ねえいい子だから、大人しくしなさい。なんにも怖くないのよ、すぐに気持ちよくなるから」とかいわれちゃあ……ねえ?

 私じゃなくてもそうするだろうさ。

 

 さておき、私の所業を列挙すればわかる通り、私はタチなのだ。ばりっばりのタチだ。

 ネコに回ったら喘ぎ声が分からなくて一般的観点から見ても変な声を出して自分でも「えぇ……」ってなるぐらい生粋のタチなのだ。

 

 しかしだな……ちょっと、ネコも悪くないかな、と思いつつある。

 

 きっかけは勿論、マリア様だ。

 

◆◇◆◇

 

「あー、クソがよ。じゃなかった、おクソですわよ。失敗作風情が私の歩みを阻害するなっつーの。大体みんなで協力したら隕石呼べるってなによ。それって言うほど失敗か?」

 

 手にこびりついた血を振り払いつつ、灯りを点ける。

 ここに来るまではひたすらに陰惨で気が滅入る。

 

 太腿にぶち込んで空になった輸血液の容器を投げ捨て、階段を上っていく。

 今度はあの扉を開けばいいのか? というかアレは開くのか? 鍵とかじゃなくて、質量的に。

 

「さて、鬼が出るか蛇が出るか……実験棟の具合を見るに、ナメクジしか出てこないと思うけど」

 

 ふぅっと息を吐き、扉に体重をかける。

 意外や意外。私の10倍はあろうかという扉は、その見てくれに合わない重さでゆっくりと開いていく。

 

 一応、開きはするらしくて安心した。ここから更に『鍵がかかっている』とか言われたらまたあの実験棟を総ざらいしなくてはならないのだから。気が滅入る要素が一つ減って万々歳だ。

 

「おお~……」

 

 そこは、それまでの実験棟の陰惨っぷりを上書きするぐらい美しい場所だった。

 先ほどの星輪草の庭を自然物の美しさとするなら、こちらは建造物の美しさ。

 

 どちらの方が、と言うのは甲乙つけがたい。きっと受け手の好みに寄るのだろう。

 

 幾何学的な穴からの光を背負いながら、一人の狩人が椅子に座っている。

 眠っているのだろうか? 少し体勢を崩して楽にしているようだ。胸元のレースを汚す赤色はテーブルにあるワインか、それとも血液か。

 

 服の意匠からしておそらくは女狩人……いや、こいつが件の『時計塔のマリア』か。

 

「おいおい、こいつぁ……とんでもない美人さんじゃないか」

 

 洒脱な狩り装束に隠れてあまり見えないが、帽子の下から垂れ下がる髪は白……いや、これは銀髪だ。ワイヤーさながらの光沢を放つ銀髪と、病的ともいえる程白い顔は端正な作りで、まるで人形の様、という形容がピッタリだ。

 

 というか、本当に夢にいる人形ちゃんみたいだ。

 彼女はこのマリアと思しき女狩人をモデルに作られたのだろうか?

 

 もうちょっと詳しく確認してみよう、と暫定・マリアの顔に手を伸ばす。間違っても傷など付けないよう、慎重に。

 

「死体漁りとは、感心しないな」

 

 突如腕を掴まれて、グイィッと引き寄せられる。

 

 グワーッ、顔が良い!!

 

「だが、わかるよ。秘密は甘いものだ」

 

 それはもしかしてこれから一緒に甘い秘め事を始めようとかそういう意味!?

 

「だからこそ、恐ろしい死が必要なのさ」

 

 あれ、なんか違うっぽいな。

 

「愚かな好奇を、忘れる様なね」

 

 落葉ってそんな大きな音立てて変形する武器だっけ?

 もしかしてマリア様技術足りてないから筋力で強引に変形させてない?

 

「アバーッ!!」

 

 邪念を咎めるかのような一閃。

 体力に振っていなければ即死だった。

 

「こ、この『加速』のステップは! やはり古狩人か! つまりお前が! 『時計塔のマリア』だなッ!」

 

 そうとわかれば話は早い。

 私は手に持った『教会の杭』を変形させる。

 

「この夢の秘密の守り人よッ! その甘い秘密とやら、味わわせてもらうぞッ!」

 

◆◇◆◇

 

 マリアとの戦闘は熾烈を極めた。

 直前にいた失敗作たちはまさしく前座、という事だろう。

 

 重厚な杭の刺突と流麗な刃の乱舞は交錯を続け、銃や道具も織り交ぜられたその戦闘はお互いの命を着実に削っていく。

 

 そこでマリアが突如奇行に走る。

 

「切腹した!?」

 

 あまりにも予想外の行動。

 ゆえに私は一手遅れた。

 

 直後に飛んできた交差斬りに対応できなかった。

 

「がっ!」

 

 戦闘でアドレナリンでも出ていたのか、痛みはないが……もろに喰らって体勢を崩してしまった。

 マリアの『加速』はその崩れた所を逃さない。

 

「『二手』遅れたようだな……」

 

 抱き留められるかのように優しく捕らえられ、腹に貫き手が突き刺さる。

 

「あふん♡」

「えっ?」

 

 戦闘に興奮していた所為か痛みはないが、流石にここまで強烈な一撃を喰らうと感じるものはある。

 薄れた触覚をそれでも塗りつぶす程の一撃は、私の体に愛撫として認識されてしまった。

 

 さしものマリア様も困惑顔である。

 

 困惑しつつも染みついた技は健在で、ゆっくりと腸が引き出されていく。

 抜ける力に沿って横たえられた私は、薄れゆく意識の中で一言呟きながら夢へ帰る。

 

「マリア様……とっても……技術ビルド(テクニシャン)……♡」

 

◆◇◆◇

 

「ふぅ……」

 

 繰り返すが、賢者タイムである。

 失敗作たちを駆逐したことで誰もいなくなった星輪草の庭はやはり美しく、星輪草より百合の花を咲かせてしまった私は悪夢の秘密を暴くことにもはやモチベーションが存在しない。

 

「とりあえず、夢に帰ろうか」

 

 灯りに手をかざした私は夢へと帰り、そこで人形ちゃんより先にゲール爺を見つけた。

 

 正直今人形ちゃんと会ってしまうと変な気分になってしまいそうだから助かった。

 

「ねえゲール爺、さっきマリアって人にグチャドロ内蔵攻撃ックスしてもらったんだけど、人形ちゃんとマリア様ってなんか関係あるの?」

 

 ゲールマンはこの日、生まれて初めて暴力による解決を決意した。


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