紅魔館に六人のメンバーが集まって、ゆったりとそれぞれの時間を過ごしていた。
しかし突然、氷の妖精チルノが王様ゲームをすると言い出して……?


※東方Projectの二次創作です。
もともと動画にするつもりで書いたシナリオだったのですが、動画を作る時間がなくなってしまったのでサッと小説にまとめてみました。他のサイトを含めて初めての小説投稿ですので、至らぬ点は多いと思いますがどうぞよろしくお願い致します。





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 ※注意
・東方Projectの二次創作です。
・短めのコメディです。
・一応原作既プレイですが、矛盾点があるかもしれません。あったらごめんなさい。
・キャラクターの性格がちょっとおかしいです。
・魔理沙が若干ジゴロっぽいかもしれません。


東方王様ゲーム

 ――紅魔館ロビー。

 長方形の机を囲んで、六人の人間がいた。否、人間だけではない。妖怪と、妖精と、吸血鬼と、それから三人の人間がいた。何故そんなバラエティに富んだ面子がそろっているか、それは考えてはいけないことだ。

 おもむろに妖精が椅子から立ち上がって、高らかに宣言した。

「王様げええええええむ!」

 甲高い幼女の声がロビーに響き渡り、しかし返事はなかった。他の五人は雑談に興じるばかりだ。端的にいえば幼女はシカトをくらった。

 幼女の白い顔がヒクついた。透明な羽がパタパタとはためいた。

 幼女は名をチルノという。氷の妖精だ。

 そして馬鹿だった。

「王様げええええええむ!」

 馬鹿なので繰り返して叫び、また無視された。

 そして馬鹿なので、巫女の頭を引っ叩いた。

「王様ゲームするっつってんだろうがあっ!」

 チルノがどこからか取り出したハリセンが、巫女の頭部でスパーンと快音をあげた。

 それまでロビーを満たしていた雑談が止まった。巫女の隣の魔法使いが心配そうに巫女の顔を覗き込む。

 魔法使いは名を霧雨魔理沙という。巫女と仲の良い魔法使いだった。そして巫女は名を博麗霊夢という。とても怖い巫女だった。一部では鬼とまで言われている、人間なのに。

 霊夢の全身が痙攣するように震えていた。

 キレていた。

 妖精ごときに頭をひっぱたかれて、ブチギレていた。

 霊夢は顔をあげ、仮面のように綺麗な笑顔を浮かべた。綺麗な笑顔が逆に怖かった。

「……はい、じゃあ王様はわたしね。王様は九番の馬鹿を気が済むまで殴る!」

 霊夢は押し殺すように言いながら、陰陽玉でチルノの顔面を殴打し始めた。

「ちょ、ちょ、ストップストップ! 違う! そういうゲームじゃない!」

「王様の命令は絶対だから」

「お、落ち着け霊夢」

 慌てた魔理沙が霊夢をチルノから引きはがした。チルノはちょっと鼻血が出ていて、より悪ガキっぽい顔になっていた。

 チルノは、やめておけばいいのに、大声で霊夢を挑発する。

「仕方ないわね! ルールを理解できないおバカさんのために、あたいがルールを説明してあげるわ!」

「誰が馬鹿だって? ああ?」

「ひっ」

 チルノは一瞬ビビって、それでもなんとか持ち直してルールを説明しはじめた。よほど王様ゲームがしたいらしかった。

「ここに割りばしがあるわ」チルノは六本の割りばしを取り出した。「1から五までの数字が割り振られた割りばしと、先の方が黄色くなった割りばしの六本よ。で、黄色の割り箸を引いた人は、なんでもすきな命令を出来る。ただし、命令する相手は番号で決めること。例えば一番が二番にトランクスを買ってきてあげるとか、三番は王様に土下座するとか」

 最後が地味に自殺ものだった。特に、プライドの高い幻想郷のメンバーには辛いものがあるだろう。

 チルノ以外の五人が、ごくりと唾を飲みこんだ。皆無駄にプライドが高いので、ゲームに参加しないという選択肢は尻尾を巻いて逃げるにも等しいものだと感じていたのだ。だから、参加せざるを得ない。

「はい、じゃあスタート!」

 そんな皆の思いを知ってか知らずか、チルノが無邪気に割りばしを差し出した。

 六人が、割りばしを引いた。

 王様ゲームが始まった。

 

 初めに王様割りばしを引いたのは霊夢だった。

「おっ、わたしが王様ね」

 霊夢は笑顔で即、こう命令した。

「じゃあ、チルノは今すぐ死ぬ。はい、王様の命令はぜーったいだから早く死ね」さきほどのハリセンがまだ尾を引いていた。

「根に持ちすぎだろ……」隣の魔理沙は若干引いていた。

 チルノがバン、と机を両手で叩いた。

「数字で命令しなさいよ! さっきルール説明したばっかりよ!? 理解できなかった? それとももう忘れたの? 鳥頭? ばあああか!」

「もう殺すわ。今すぐ殺す」

 マジギレする霊夢を、魔理沙が羽交い絞めにしながら諭す。

「落ち着け霊夢。そもそもこいつ死なないから。妖精だから」

 チルノは死なない。妖精だからだ。馬鹿でも妖精なのだ。むしろ、妖精だから馬鹿なのかもしれない。

 王様ゲームは、初戦から滅茶苦茶だった。

 ところで、ここは紅魔館ロビーである。であるからして、紅魔館の人間ももちろんいる。吸血鬼もいる。

 紅魔館の主、レミリアスカーレットが、あのなんか両手を前に出すカリスマっぽいポーズをとりながら気だるげに言った。

「どうでもいいから早くしてよね。下らないことで時間をとらせないで」

 カリスマ溢れるセリフに、カリスマ溢れるポーズだった。

 しかし、かっこつけることに集中し過ぎた所為で、割りばしの番号が五人に丸見えになっていた。二番だった。

「番号見えてるぞ」魔理沙が冷静に指摘した。

 魔理沙の拘束から解放された霊夢が、巫女服を整えつつ実に面倒くさそうに言った。

「分かったわよ。待って、いま考えるから……そうねえ……決まったわ。じゃあ、一番から五番まで全員わたしに有り金全部献上する」

 確かに番号を使っているが、番号の意味がまったくなくなっていた。

「だからそういうゲームじゃないっていってるでしょ!」

 とチルノ。霊夢は鬱陶しげな顔をして、

「注文が多いわねえ。じゃあ、二番は従者の胸を揉む」

 明らかに思い付きの適当な命令だった。

 レミリアの後ろには、いつも通り瀟洒な従者――十六夜咲夜が控えていた。

 レミリアはそちらを振り返って、困った顔をする。

「胸がないのだけれど」

「あります。勝手に決めないでください」

 咲夜が平坦な声音で即答した。ネタが定番過ぎてリアクションもおざなりだった。

 レミリアは、訳が分からないまま、ぎこちない手つきで咲夜の胸を触り始めた。

「む、むむう……こ、こんな感じでいいかしら、咲夜?」

「完璧です、お嬢様」

 咲夜は少し嬉しそうだった。命令した当人の霊夢はどうでも良すぎて明後日の方向を見ながら今晩の献立について考えていた。他のメンバーもおおむね同じようなものだった。

 盛り上がらない王様ゲームだった。ただ、やる気満々のものもいた。

 チルノが鼻息荒く立ち上がって言った。

「はいじゃあ、次、二回戦始めるわよ!」

 

「王様だーれだ」

 掛け声とともに、六人が割りばしを引いた。

 両手を上げて喜んだのは――なんと、チルノだった。

「やったあ! あたいが王様ね!」

 チルノは小躍りしている。さながら欲しかったおもちゃを買い与えてもらった子供のようだった。

 反面、おおむね他のメンバーはどうでもよさそうな感じだった。やる気がなくなっていた。

 しかし、ただ一人だけ、歯噛みして悔しがっているものがいた。

「うぐぐ……何故、運命を操る程度の能力を持つこのわたしが、王になれないのかしら」

 紅魔館の主、レミリアスカーレットだった。見た目だけなら彼女もチルノと同じ子供だった。かっこつけているが子供だった。

 そしてかっこつけている所為で、また番号が丸見えになっていた。二番だった。

「番号見えてるぞ」魔理沙が冷静に指摘した。

 チルノが、ピコーンと、さながら頭上に電球が灯ったようなヒラメキ顔で、

「命令が決まったわ! 二番はあたいに土下座する!」

 レミリアが狙い撃ちされていた。

 レミリアは慌てて、

「は、はあ!? で、で、出来るわけないでしょ!」

「ダメ、王様の命令は絶対」チルノがウザいドヤ顔で、レミリアのウィークポイントを攻める。「それとも、紅魔館の主ともあろうものが、王様ゲームごときでビビって逃げるの?」

 レミリアはバッと椅子から立ち上がり、さながら探偵にトリックを見抜かれた犯人のように動揺しながらチルノを指さし、

「なな、なによ!? わたしに何か、怨みでもあるって言うの!?」

 チルノは、そんなレミリアからそっと目を逸らして、かなり失礼なことを言った。

「だって……あたいとちょっとキャラかぶってるし」

「どこが!?」

「おバカな幼女キャラがかぶって――」

「ないわよ全然! 失礼すぎでしょ!」

 キャラがかぶっているかどうかは、各々の判断するところだろう。

 誰もそこにはつっこまなかった。

 二人の幼女の微笑ましい言い合いを見かねた咲夜が、諭すようにこう言った。

「お嬢様、仕方ありません。一度決めたルールですから従いましょう。それが大人というものです。自分が気にいらないから駄々を捏ねる。それでは子供です」

「う、うう……咲夜まで……」

 涙目のレミリアに優しく微笑みかけてから、咲夜は皆に向けて言った。

「さて、二番が土下座だったわね。お嬢様は一番だから違うとして、二番は誰?」

「え?」

 レミリアは慌てて番号を確認する。一番だった。確かに二番を引いたはずだったのに、手の中には、一番の割りばしがあった。

「げっ」

 と漏らしたのは魔理沙だ。魔理沙の手の中には、二番の割りばしがあった。さっき確認した時は一番だったのに、それが二番に変わっていたのだ。

 まるで、レミリアの割りばしと交換されてしまったような――というか事実そうだった。

 魔理沙は、苦虫を噛みつぶしたような顔で咲夜を見る。

「……お前、使っただろ」

「はて、なんのことやら」

 咲夜はすまし顔で目を逸らした。

 魔理沙は思った。アイツ、絶対能力を使ったぞ、と。それは禁じ手だろ、と。

 そう思いつつも、何も証拠がないので反論できない。

 しかし実際のところはやはり、咲夜が時を止めて魔理沙の割りばしとレミリアの割りばしを交換していた。

「そらそら、土下座しろ!」

 チルノが威勢よく言う。魔理沙は歯を食いしばる。

「く、屈辱だ……」

 普通の魔法使い霧雨魔理沙が、チルノに土下座した。

 今度ばかりは、他のメンバーもそれなりに興味ぶかそうに、その珍妙な光景を鑑賞していた。

 

 

「王様だーれだ!」

 三回戦目がスタートした。

 王様を引いたのは――。

「あれ、またわたしが王様だ」

 霊夢だった。二回目だった。

 レミリアが不満の声を上げる。

「なんでよ! 主人公ズルい!」

「そんなこと言われてもねえ……っていうか、あんまり興味ないなあ……」

 霊夢はどうでもよさそうに逡巡してから、

「じゃあ、四番が五番にキスをする、とかどうかしら。いかにも王様ゲームっぽいし」

 自分が蚊帳の外だからか、割とギリギリのラインを攻めていた。

「四番はわたしだな」

 と、魔理沙が言った。

 レミリアが番号を確認する。一番だった。咲夜は二番だった。チルノは三番だった。

「あ、わたしだわ、五番」

 という声に、レミリアと咲夜と霊夢とチルノとそれから魔理沙が、目を見開いた。そして、声の主に疑念の視線を注いだ。

 五番を引いたその少女は、皆の視線を受けてたじろぐ。

「え、な、なに?」

 沈黙の天使が通り過ぎる。

 静寂を破ったのは、霊夢だった。

「え、いたの?」

 その言葉は――アリスマーガトロイドに向けられたものだった。

 三回戦目に入ってようやく、皆がアリスの存在に気が付いたのだ。

 レミリアがアリスに無慈悲なことを言う。

「え、いつからいたの?」

「最初からよ!」

「え、誰だっけ?」と言ったのはチルノだ。

「アリスマーガトロイドよ! って、なんでわたしだけ自己紹介しなきゃいけないのよ!」

 アリスは腕を組み、ふんと鼻をならしてそっぽを向く。

「というか、さっきの命令だけどやらないから」

「なんでよ。やりなさいよ」と霊夢。

「キスなんか出来るわけないでしょ!」

「はい皆ちゅうもーく」おもちゃを手に入れて元気になった霊夢が、皆に言う。「王様の命令はー?」

「「「「ぜったーい」」」」

 見事な連携だった。

 当然、アリスは憤慨する。

「急に意気投合させてんじゃないわよ! さっきまであんなに仲たがいしてたじゃない!」

 そしてアリスはまた、腕を組んでそっぽを向いて、

「とにかくわたしやらないから。……だ、だいたい、魔理沙だって、こういうの、嫌だろうし……」

 そう言いつつも、アリスはチラチラと視線を魔理沙に投げていた。顔が若干赤かった。

 複雑だった、いろいろと。

 ところが、当の魔理沙は竹を割ったような性格だ。躊躇いなくアリスに近づき――

 なんと――キスをした。

 してしまった。

 突然のキスに、アリスの顔がみるみる真っ赤になっていく。

 アリスの主観で一〇〇年の時が過ぎ――実際は三秒くらいで魔理沙は唇を離した。そして、

「別にいいだろ。キスくらい。女同士なんだし。

 さ、次行こうぜ、次」

 魔理沙はなんてことないという風にまた自分の席に戻った。顔も赤くない。いたって正常だ。

 こうなると、一人で盛り上がって赤面していたアリスは惨めだ。

 アリスの目元に、涙が溜まって行く。

 ああ、わたしは女として見られていないんだ、と。いや、それは当然のことなのだが、複雑なのだ、いろいろと。

 アリスは行き場のない感情を適切に処理できず――。

「魔理沙のばかああああああああ!」

 乙女走りで泣きながらロビーを出て行った。

 三回戦目でようやく存在を認識され、その三回戦目での早すぎる退場だった。

「あ、おい」

 魔理沙が立ち上がって手を伸ばす。

 アリスが消えた廊下を見ながら首を傾げ、魔理沙は椅子に座った。

「……なんだ、あいつ。そんな嫌がられると傷つくんだけど」

「女たらし。反省しなさい」

 隣の霊夢が言った。

 

「今ので一人減ったわよ」レミリアがむっとしながら言う。「誰か補充してきて」

 霊夢があきれ顔で、

「ええ……まだやるの? もういいでしょ」

「よくない! わたしが王様になるまで続けるのよ!」

 とレミリア。完全に子供だった。

 同じく子供のチルノも、やる気に満ち溢れていた。

「まだまだ! まだ勝負はついてないわ!」

「いや、勝負がつくゲームじゃないぜ?」

 魔理沙が冷静に指摘した。

 結局、咲夜がメンバーを確保することになった。

 禁じ手が使える咲夜なので、メンバーの確保は一緒で終わった。

 咲夜の隣に、紫色の魔法使いがいた。ビタミンAが足りていないような、そんな顔をしている。

「パチュリー様を連れてきました」

「消極的に参加するわ」

「よし!」とレミリア「始めるわよ! 王様だーれだ!」

 四回戦目がスタートした。

「あ、またわたしだ」

 また霊夢が王様だった。徹頭徹尾、彼女は主人公だった。

 レミリアが抗議の声を上げる。

「おかしい! ズルしてんじゃないわよね!」

 チルノも続けて抗議の声を上げる。

「卑怯者! 馬鹿! 脇! ワキガ!」

 霊夢は二人の煽りを無視し、ちょっと考える仕草をして、

「じゃあ、三番は五番に抱き着いて耳元で愛を囁く。なかなかハードじゃない?」

 さっきのアリスの反応が気に入ったらしい。同じ路線で攻めてきた。

 そして、神の悪戯だろうか――いや幻想郷で神の悪戯もなにもないが――とにかく、また彼女が選ばれた。

「あ、わたしが三番だ」

 魔理沙だった。

 そして――

「む、わたしが五番ね」

 五番を引いたのは、パチュリーだった。

 レミリアが顔を引き攣らせる。

「おいばかやめろ」

「やっべ」

 霊夢がチロッと舌を出す。

 そしてまた、アリスの時と同じように命令が実行された。

 そしてまた、パチュリーだけが赤面し、魔理沙はすまし顔で、パチュリーのプライドとか恋心とか複雑ないろいろが粉砕され――

「魔理沙のばかああああああああ!」

 涙を流して乙女走りで、パチュリーがロビーから出て行った。

 チルノが口元を手で覆い、恐怖に体を震わせる。

「王様ゲーム、なんて過酷なゲーム……」

「ごめんなさい。もう人数を減らしてゲームしましょう」

 咲夜が、頭痛に苦しむようにこめかみに指を当てながら、そう言った。

 その隣で、またしても王様になれなかった紅魔館の主レミリアが、悔しさに顔を赤くしていた。

 

 脱落者が出たので割りばしを一本減らして、五回戦目がスタートした。わざわざパチュリーを連れて来ずとも最初から割りばしの本数を減らせば良かったのではないか、とは誰も言わなかった。

「王様だーれだ」

 五人が割りばしを引く。

 王様の割りばしを引いたのは――。

「やった、あたいが王様よ!」

 チルノだった。

 レミリアが急かすように声を上げる。

「ああもう! 早く命令しなさいよ! で、早く次行くわよ!」

 どうしても王様をやりたいレミリアだった。

 急かすレミリアに、しかしチルノはもったいつけるようにたっぷり悩む時間を使ってから、さながら学術的価値ある発見をしたかのように大袈裟な顔をして、

「よし! じゃあ、一番は二番の胸を揉んでキスして抱き着いて耳元で愛を囁く! 全部交ぜてみたわ!」

 とりあえず全部交ぜてみるというのが、いかにも単純なチルノらしかった。

 そして間違いなく、今までで一番難易度の高い命令だった。

「あ、わたしが一番だ」

 と言ったのは魔理沙だ。彼女も別の意味で、徹頭徹尾主人公だった。

 そして、その隣の少女が、愕然とした表情で声を震わせた。

「う、うそ……わたしが二番よ」

 二番を引いたのは霊夢だった。いままで散々他のメンバーを命令で苦しめてきた霊夢が、初めて命令される側にまわってしまったのだ。

 ずっと好き勝手してきた霊夢に、当然逃げ道はない。

 そして――

 命令が実行された。

 

「……チルノのばかああああああああああああああ!」

 魔理沙にアレコレされてしまった霊夢は頭がパンクして、チルノの顔面を長机に叩きつけた。

「ぎゃっ!」

 チルノは、妖精が出してはいけない声を出して、白目を剥いて気絶した。でも大丈夫。妖精なので死んでいない。死んではいないが、死体みたいにピクリとも動かなくなってしまった。

 赤面して涙を浮かべた霊夢は、自分が手を下したアリスとパチュリーと同じ末路を辿り、乙女走りでロビーから去って行った。

「おい霊夢! どこ行くんだ? おい!」

 魔理沙もその後を追って消えた。

 

 ロビーには、レミリアと咲夜と、それから気絶したチルノだけが取り残された。

 咲夜は気絶した妖精のほっぺを突っつきながら、さてこれはどこに捨てればいいのだろうか、と考えていた。

 レミリアは――いまにも泣きそうだった。

「王様……わたしも王様、やりたかった……」

 咲夜はレミリアを見て、苦笑する。こんなことならやはり、時間を止めてでもお嬢様を王様にしておけばよかったか。まあ、そこまですることはないか。と思った。

 咲夜は、長机の上に放置された割りばしから、黄色い割り箸と、それから一番の割りばしだけ手に取った。

 そしてそれを、泣きそうなレミリアの前に差し出して、微笑んだ。

「二人で続けましょうか、王様ゲーム」

「え?」

「別に二人でやってはいけないというルールはないでしょう」

 まったくその通りだった。

 レミリアは、目元の涙をぬぐって、笑顔を浮かべた。

「そうね。じゃあ……」

「はい。いっせーので引きますよ。――いっせーの」

 

「「王様だーれだ」」

 

 

 

 

 


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