何かが解かれる感覚。光。寒さ。嫌な
そして次に訪れたガシャガシャとたくさんの重たい金属がぶつかる音と、それを縫うようにカシャンと鳴った軽い金属音の正体を見て彼女は呟いた。
「何これ」
――天秤? と足元に落ちた物体を確認しようとしたところで、その視野はぐるりと揺れ、目の前は地面から開けた夜空へと放り出される。
ザリッザリッとまた足元から音がした。誰かが近付いてくる。その人物は動かせない彼女の
「……一応尋ねるけど、お前『アウラ』だよね?」
月を吸収したように
「エルフ?」
「――お前は、」
……返答が不味かったか、と彼女は思うもどうにもならない。口も動かせたことに今更気付くが、自分が何者であるか、それよりも尋ねた相手が何であるかが出てしまったのだ。
そして、その後になって尋ねられた『アウラ』という名前を心で反芻しても、彼女には誰のことだかわからなかった。
「私は……アウラ、――」
「……」
声に出してみてもやはり何もわからない彼女が、わかったことはただ一つ。
目の前の人物が放つ威圧感が強くなったということ。
「……違うっ、私、は、アウラじゃない……です――!!」
見えない何かに押さえつけられている。苦しい。この人が? 痛い、つらい。なんで。私は、
「誰、な……んで――」
意識はそこまでしか持たず、ぷつりと彼女の目の前は闇に落ちた。
「……どうしよ」
フリーレンはいつもと変わらない調子で、しかし結構な困惑の渦に寒空の下放り出されていた。
しゃがみ込んで覗く目の前の存在、それはついさっきまで対峙していた魔族、『断頭台のアウラ』で間違いなかった、はずだ。
一瞬のことだった。
自分へと差し向けられた首のない鎧たち。その一部の魔法を、――アウラに掛けられた服従の魔法を解いた、ほんの一瞬。
伏せていた視線を目の前に戻した時、その時にはもう、対していたはずの不死の軍勢なぞ存在してはいなかった。
倒れていく首無し鎧を背に、――水平になった天秤を指先から、続けて視線も同じように足元へと落として行く、そんな角のない少女がひとり。
『断頭台のアウラ』と変わりない姿形のまま立っていた。
「……」
目の前で倒れている、いや、自分が倒したアウラだったはずの存在。フリーレンの目には魔力も感じられないほど希薄な存在にしか映らない。
「――影武者? あの一瞬で? ……やるかな」
大魔族が? しないでしょ、とフリーレンは自己完結してしまう。……そして問題は解決しないまま。
「……」
このアウラ、だったものをここで殺すべきか。
フリーレンは目を細めた。
魔族は殺さないと駄目だ。七崩賢の『断頭台のアウラ』なら尚のこと。
街にはアウラの配下たちが紛れ込んでいるし、……まあフェルンたちが片付けてくれるけど。
でも、
「……泣いてる」
気を失ってる少女の目尻にフリーレンは触れた。乾いた涙のあと。
――顔立ちも髪型も服装も、どう見てもアウラでしかないのに『違う』と言ったこの小さな存在。
ふとフリーレンは少女の横に転がった服従の天秤に目をやる。手を伸ばして拾い上げてもその天秤は『ただの天秤』として水平を保つだけだった。こちらも魔力の一切が、消えている。
「まさか私があの時のヒンメルみたいになるなんてな……」
……フリーレンは天秤に魔力を込めた。これではどっちが人真似をしてるのやらと、今更かとも思いつつ、見様見真似が再現出来るか、それを探りながら。
「やっぱり物凄い魔法だ。だからこそやりたくもないけど、――仕方がない」
粗方の算段を済ませ、フリーレンは少女の