すこし離れたところで、俺は見ていた。建物が紅蓮の炎に飲み込まれて倒壊していく傍で、少年と消防士はそこにいた。少年の顔は見えないが、声はやけに鮮明に聞こえた。
「とうさん!かあさん!」『ま〇!こ〇は○○○い、ち○○○○……』
ガバッ
「………夢、か」
おもわず呟きながら枕元の時計を見る。
『5:00』
起きるには少し早いが、二度寝をするには微妙な時間だった。仕方ないから、少しゲームをしてから学校へ行こうか、と思いながら眠気以外でも重い頭を覚ますために洗面所に顔を洗いに向かった。
(いつか、必ず…)
心の中でくすぶる、炎を忘れるためにも。
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お昼時、みんなが教室や中庭で昼食をとっている間、少し急ぎで階段をのぼって屋上へと向かっていた。いつもここであいつと食べるんだが、遅れると目に見えるほど不機嫌になる。厚く重いドアを押し開け、近くにあるベンチへと向かった。
「おせーな。何してたんだよ、怜。」
「すまん。少し自販機が混んでたんだよ、龍珠。」
お気に入りメーカーのコーヒーを持ちながらベンチに座った。
「あれ?今日は弁当なんだな」
「ああ。今日は……たまたま、早く起きたからな」
「…そうか」
なぜか龍樹は少し気まずそうに答えた。
でも、そこからは楽しい会話が続いた。よく話すのはゲームの話で、今週はどこを周回するか、とかイベントの進み具合について話す。そんなこんなしていると、
「なあ、怜。一つもらってもいいか?」
龍珠はタコさんウィンナーを指さしながら言った。
「ああ、いいぞ」
特に断る理由もなかったので、弁当箱を龍珠のほうに渡そうとすると、龍珠はそれを軽く押し返し、口を開けてきた。理解できず、固まっていると
「どうした?早くくれよ」
と、催促された。
………バカップルみたいなことをやれと!?
人がいないとはいえ、さすがに気恥ずかしい。
「龍珠、普通に」「……」
「だから」「……」
……どうやっても引かない時だな、これは。
「わかった。…………あ、あーん」
ぱくっと龍珠の口の中にウィンナーが消えていった。
…………顔に熱が上がってくるのが嫌でもわかるほど恥ずかしかった。
「ん、おいしいな。…なんだ怜、照れてんのか?」
事の発端の龍珠は兵器そうだった。
「…………いや全然?」
「そんなに赤い顔で言われても、全然説得力ねーけどな?」
「……」
完璧に龍珠にからかわれていた。今度、イチゴ味と間違えるような程よく辛いマシュマロを作ろう。ひそかに決心した。
「…これで少しは楽になったか?」
「………なんのことだ?」
何となく話したくなくて俺ははぐらかしてみようとしたが、
「とぼけんなよ。お前、ひでぇ顔だったぞ」
「……ばれてたのか」
「なにか、あったのか?」
細かい内容は伝えずに龍珠に「ただ嫌な夢を見て、気分が落ち込んでるだけだ」といった。
「そうか……」
「ま、なにかあったら遠慮なく頼ってくれ。ストーカーとかだったら組のみんなにお願いしてつぶすこともできるからな」
茶化すように、竜樹はそんなことを言う。
「ありがとございます、姐御」
「誰が姐御だ、誰が」
「あっ、姉貴のほうがよかったですか?」
「お前!あまりふざけるとガチャがすり抜ける呪い移してやるぞ!」
「ごめんごめん許して!龍珠の推しキャラのガチャ運あげるから!」
朝の鬱屈とした点k多は変わり、春の陽気が校舎を照らしていた。
次回、恋愛相談編