ハルのウララの 2XXX海の向こうの甲子園   作:コンスタンチノープル

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 書いていて思いのほかご都合主義なストーリーを展開させていると思うことがあるのですが、本当にご都合主義なら天才的な野球部員が9人集まり、いきなり甲子園で優勝しているのでまだご都合主義のタグは付けないでおこうと思います。

 一応今は付けないだけであって今後付けるべき展開を書こうと思っているのでその時に加えようと思います。

 活動報告で告知したとおり(https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=313225&uid=212399)アンケートがあります。結果は次の第15話から反映します。投票が集まるまで次話に進めないので是非ご投票お願いいたします。



第14話

 市居が肩を作り終え、マウンドで件の彼と対峙する。

 

 横平と市居がマウンドで軽く打ち合わせをする。

 

「キャッチャー経浅いからそっちからサイン出してよ」

 

「分かった、じゃあ……」

 

 2人が打ち合わせを終え、横平がキャッチャーボックスで構える。

 

「ほんじゃま、サクっといっちゃいましょっか」

 

 件の彼がバッターボックスで構える。

 

「へぇ、随分とまあ隙の無い構え。それじゃ、最初はコレ」

 

 市居からサインを送りモーションに入る。

 

 初球はアウトコース低めやや真ん中寄りのストレート。彼は見送って0ボール1ストライク。

 

「ふぅ~ん……」

 

「へぇ……手が出なかったわけじゃなさそう」

 

 横平がそう思っていると市居が次のボールのサインを出し、モーションを起こす。

 

 2球目はインコース高めのシュート。ゾーンに決まり彼が追い込まれた。

 

「へぇ~、じゃ」

 

 ここまで1球もバットを振らない彼に、チャラついた容貌とは違う不気味さを市居は覚えた。

 

「初見だろうから勝負が長引けばこっちが不利になる次で決めよう。コレ」

 

 そう市居が思いながらサインを出し、モーションに入る。

 

 3球目はアウトコース低めのスライダー。

 

「ほいっ」

 

 しかし横平のミットに白球が収まることはなかった。

 

 彼が初めて振ったバットがかなり厳しいコースに制球されたボールを捉えると、打球は右中間を深々と破る長打性の堂々とヒットと言っていい当たりを放った。

 

「マジかよ……」

 

「なぁんか全然手応えねえなぁ。こいでおしまい?」

 

 市居が大したことないのではない。確かにブランクからまだ本調子に戻せていないものの、それでも名門・強豪と云われる高校から最高待遇の特待生の誘いを受けたほどのピッチャーである。件の彼も、所謂「本物」と云われる実力者なのである。

 

「紫電代わって! 俺が相手する」

 

「いいけど、舐めてかかんない方がいいよ」

 

 末松と交代する。

 

「べっつにいーけど大して変わんねーって」

 

 末松が肩を作り横平と打ち合わせする。

 

「どうする? 変化球試してみる?」

 

「いや、まだそこまでの完成度はないから一番自信のあるやつ(ストレート)で押し切る」

 

「分かった」

 

 横平がキャッチャーボックスに戻り構える。彼と対峙し末松からコースを指定するサインが出され、初球のモーションを起こす。

 

 真ん中高めインコース寄りのストレートが横平のミットに突き刺さる。彼のバットはピクリとも動かない。

 

「ふぅ~ん、結構やんじゃん」

 

 横平から返球を受け、次のサインを出してモーションに入る。

 

「っ!」

 

 2球目は真ん中高め、ボールゾーンのストレートだったが彼のバットが空を切る。

 

「へぇ~、凄いじゃん」

 

「あんまり舐めないほうがいいよ?」

 

「そーだねー」

 

 末松が3球目のモーションを起こす。

 

「でも」

 

 鈍い金属音が響いた。

 

「俺のほうが凄い」

 

 真ん中低め、ややインコース寄りのストレートを完璧に捉え、打球は左中間をこれまた深々破る長打性の当たりを放った。

 

「うそ……末松くんのボールが……」

 

「ただの征隆の球じゃないですよ。夏に打たれた時はスタミナ切れで球威が落ちていましたが今のはベストボール。彼、中々やりますな」

 

 彼がヘルメットを脱ぎ末松に頭を下げた。

 

「すまなかった」

 

「?」

 

 詫びた。勝負に勝ったほうが負けたほうに頭を下げるという異常な光景、ウララも吹本も、野球部員たちも彼の行動は理解に苦しんだ。

 

「俺を空振らせるなんておめーはすげーよ。バカにして悪かった」

 

「……もう一回」

 

「え?」

 

 末松の眼は燃え上っていた。

 

「もう一回勝負しろ」

 

「いやだからさあ、悪かったって言ってんじゃん。おめーはすげーんだって」

 

 しかし末松は引き下がらない。

 

「うるさい。打たれて謝られてそんなんじゃ納得しない」

 

 内心、末松は彼が急に大人びた対応をしてきた、鹿されていると思って面白くない。

 

「えぇ……」

 

「君」

 

 吹本が彼に声をかける。

 

「なんすか?」

 

「もうちょっと付き合ってやってくれないか?」

 

 遊びはやめてもらいたいと思っていた吹本から勝負継続の提案。隣のウララはもう尻尾や耳が硬直しオロオロしている。

 

「うえぇ~……メンド、はあ、俺が悪かったっつってんだけどなぁ……まあ教師に反抗したらあとがよけーメンドそーだし、いーよ。勝負しちゃる」

 

 彼は渋々勝負を受け入れることにした。

 

「あの、吹本先生。どうして……」

 

「よゅ」

 

「ほゎ」

 

「にゅぇ」

 

「おょ」

 

「くみょ」

 

 末松は5打席分勝負したが彼はクリーンヒット性の当たりで返す。

 

「ねーもー終わろーぜ? 俺が悪かったっつってるっしょ?」

 

「まだだ」

 

「えー……カントクさんとウララちゃんからもなんとかいってよー」

 

「すまないが気のすむまで付き合ってくれるか?」

 

「わたしは……」

 

 ウララは末松が勝つまでと言いかけたが、過度に贔屓しているような気がして呑み込むのであった。

 

「うーん、俺も疲れてんだけど? コッチで相手していい?」

 

 彼はバットで左バッターボックスを指すとそのまま左に立ち位置を移した。

 

「マジかよ! アイツ、スイッチヒッターだったのか!」

 

「スイッチヒッター!? なにそれ!? カッコよさそう!」

 

 有賀はウララにスイッチヒッターの説明をする。右と左のバッターボックスを主に相手投手の右投げ左投げによって変えるのがスイッチヒッターである。

 

「でもサウスポーの征隆相手に左に立つなんてセオリー無視じゃん」

 

「せおりーむし? なんで?」

 

 滝山が右バッターで岸葉が左バッターなのでジェスチャーを交えてウララに説明する。一般的に右バッターは左ピッチャーのほうが、左バッターは右ピッチャーのほうがボールを投げる瞬間のリリースするポイントが見やすいなどの理由から有利とされる。つまりスイッチヒッターであれば相手ピッチャーが右投げのときは左バッターボックスに、左投げのときは右バッターボックスに立つのがセオリーである。

 

「特に左対左は圧倒的にピッチャーが有利って言われていて、プロ野球には相手チームの良い左バッターを打ち取ることに特化したサウスポーが何人かいるんですよ」

 

「えっ!? じゃああの子はむずかしいほうでやろうとしているの!?」

 

「舐めてるとしか言えないですよ」

 

 彼が左バッターボックスで改めて構えると末松はより面白くない。

 

「舐めやがって……」

 

 末松は投球モーションを起こす。

 

「りぅ」

 

「しみゆぇ」

 

「ぷきゃ」

 

「ゔぬぉ」

 

「ら゙ぺゎ」

 

 再び5打席分対決したが空振りを取ることこそあったものの最終的に全てクリーンヒット性の当たりをお見舞いされた。彼が打つ時に発する謎の言葉は一体なんだろうか……

 

「もうやめにしよう」

 

 そう言ったのは横平であった。

 

「嫌だ」

 

目。今のユキは冷静さを失って力任せの棒球になってる。やるだけ無

 

「や、だから俺を空振らせるなんてすげーんだって言ってるっしょ?」

 

「ぐぬぬ」

 

 末松はぐうの音出ずに引き下がった。

 

「ねえ、キミ」

 

「なに? ウララちゃん」

 

 ウララは件の彼に思い切って問ってみることにした。

 

「野球がカンタンだっていうんなら、野球部に入ってくれない?」

 

 彼はウララと距離を詰めると顎クイをしながら答えた。どちらかというと挑発行為的な意味合いで、今の時代よほどのことが無い限り教師が生徒に武力行使することが許されないのを理解し、反撃できないことを分かった上でやっている。

 

「だぁめ。俺サッカー部だから、試合の時呼んでくれたら出たげてもいいよ」

 

 ウララには全く効果が無い。

 

「えっ!? サッカー部!? ちょ、ちょっと待って。キミ、名前は?」

 

 この期に及んで件の彼の名前を誰も知らなかった。

 

松梛(まつなぎ)伊織(いおり)、1年です。ショックだなぁ、ウララちゃんの授業も時間割に入ってんのに」

 

「えっ、そうなの!? ごめん……」

 

「じゃ、試合あったら呼んでね~。でもサッカー部優先だからそこんとこヨロ~」

 

 件の彼こと松梛はさらに「チャオ(¡Chao!)」と言ってグラウンドを後にしていった。

 

「やな奴」

 

「でもかなりやるな」

 

 実際に打たれた末松と市居がそう話していると吹本が声をかけた。

 

「できれば練習にも少し顔を出してほしいな」

 

「えぇ……やめましょうよあんなの」

 

 確かに立ち居振る舞いには多少問題はあるが末松と市居、そして有賀の今後のためにも松梛の存在は必要だと吹本は語る。

 

高実(うち)は人数がいないから練習試合がそう易々とは組めない。だから同じ学校で練習時に限られるとはいえ力のある打者と対戦できる機会は有益だ。実際に二人とも完膚なきまで打たれたわけだから当面は松梛を打ち取ることを目標に定めるといい」

 

 ウララもこの意見には同調した。

 

「わたしがトレセン学園にいたときもね、併走っていうのがあってね。いっしょに走るとたのしいしすごくさんこうになったんだよ」

 

「征隆、紫電、有賀も、3人とも発展途上だ。まだ上には上がいるし、強豪や名門と云われる学校でも甲子園優勝という目標は常に挑戦だ。その強豪・名門に我々は挑戦していくわけだから並大抵のことでは甲子園出場すらできないぞ」

 

「先生たちは……」

 

 末松は少し絞り出すように口にした。

 

「先生たちは、俺たちよりも松梛(アイツ)のほうがいいですか?」

 

「そういう話ではない」

 

「そ、そうだよ。でも、もし来年新入部員が入ってこなかったら、松梛くんにも試合の助っ人にきてもらったほうがいいと思うよ?」

 

 市居が末松をなだめる。

 

「まあ、これからちょくちょく挑戦状叩き付ければいいんじゃない? でもその時は一緒だからな? 抜けけ禁止。いいね?」

 

「わかったよ」

 

「有賀さんもそれでいいですよね?」

 

 自分に話題が振られるとは思わなかった有賀との間に一瞬変な間が生じた。

 

「……えっ? いや、俺は別に……」

 

 吹本は有賀の弱気と少しの怠惰ともいえる慢心を見抜いた。

 

「有賀、あまり自分のことを卑下するんじゃない。征隆がいて紫電がいるからと自分に登板の機会が回ってくることは少ないと思っているんならそれは大きな間違いだ」

 

「そうだよ有賀くん! 有賀くんだってすごいピッチャーだよ」

 

「例えばどこがですか?」

 

 その返しにウララは返答に困った。

 

「それは……わたしはみてるだけだから、でもわたしのわからないすごいとこがあるとおもうよ」

 

「無理しなくていいですよ。自分に才能が無いのは自分で分かっています。でもだからって諦める訳じゃないです。甲子園優勝を目指しているんなら、無才にもやれるだけのことをやれるだけ突き詰めるだけですから。でも、今のこのチームは末松から始まったって言ってもいいんで決めるトコは末松が行かないと目ですよ」

 

「自分のことを無才というがお前の腕と指の長さと身体の柔らかさは持って生まれた才だといっていい。正しく磨くべきだ。それに、私は一人の投手を酷使するつもりはない。有賀も先発させるつもりだからそう思っていてほしい」

 

 ウララは腕や指の長さなんかは見れば気付けたと思い悪いことをしたと思いつつ、有賀にも試合で活躍することが出来る日が来ることを願うのであった。




 松梛(まつなぎ)という姓は珍しい姓ですが高知に少数実在するそうで、モデルとなった人物の苗字とひらがなでも漢字でもローマ字でも1文字しか変わらないので彼の苗字は松梛に決まりました。

 当の松梛伊織については名前と経歴、プレースタイルを参考にしたプロ野球選手がいるのですが、それとは別に草案ではメジロラモーヌみたいなキャラクターの子を想定していたのですが、書き出しから全然違うキャラクターになってしまったので途中であだち充先生作の漫画、H2に登場する木根竜太郎というキャラクターみたいにいこうとコンセプトを変更したのですが、木根とも違った感じになり、結果的にメジロラモーヌとも木根とも全然似ても似つかない人物に仕上がりました。これからもっとキャラがブレてくる可能性も無きにしも非ずですね。

 どちらかというと、むつ利之先生作の漫画、名門!第三野球部に登場する田村達郎と近いものがあるのですがこちらについては全く意識しておらず、気付いたら似ていた感じです。

第15話より新年度。野球部の新入部員はどんな子が多いのが好みですか?

  • 二刀流(大谷モデルのキャラは他校に登場)
  • スイッチヒッター
  • その他(感想で詳細をください)
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