ハルのウララの 2XXX海の向こうの甲子園   作:コンスタンチノープル

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 アンケートの結果を参考に、高知実業野球部の新入生のモデルは二刀流だった選手を多く入部させました。ですが、前々から入れようと考えていたモデルのキャラクターもいることをご了承ください。

 火曜、水曜、木曜には投稿してこなかったのですが今日は夏の甲子園開幕予定日なので水曜日初投稿です。


第15話

「おつかれ! 1着にはなれなかったけどみんなカッコよかったよ!」

 

 11月上旬、高校陸上の大イベントである全国高等学校伝競走大会の高知予選会が行われ、男子も女子も残念ながら都大路への切符を掴むことはできなかった。

 

 日本の高校野球は連盟の規定で12月1日から翌年の3月8日までの間は対外試合を行うことが出来ない。様々な理由で定められている規定だがそもそも正規の部員が5人しかおらず、平時でさえ試合が出来ない今の高知実業野球部にはあまり関係ないことである。

 

 ウララの活動も野球部より陸上部のほうをみることが多くなり野球部との交流も陸上部の練習に参加する滝山以外との交流は薄くなる。

 

 笹井からのオファーで滝山は同時期に行われていた投てき種目と棒高跳の記録会に参加し、中々の好成績を収めた。笹井からは本格的に陸上部に転部し、十種競技でオリンピックを目指してみないかと打診されたがウララに怒られた。ウララはかわいい。

 

 時を戻して9月、新学期に入ってから文化祭に向けた準備も始まっていた。

 

「えっ!? わたしのライブですか!?」

 

 高知実業では教師メインの出し物や模擬店も行われている。例えば、笹井は来てくれた地域の子供を中心にスポーツ教室を開いていたり、荻原はちゃんこ鍋を振る舞うのが定番となっている。

 

「はい、ウララ先生には一番いいかと思いまして」

 

 ある意味では当然といえば当然の流れであるが、ウララにはライブをやってみないかという打診が来たのである。

 

「う~ん……やりたいですけど、かってにやっていいのかなぁ……?」

 

「トレセン学園……中央と高知に聞いたら、ウララ先生ならやっても大丈夫ですとのことでしたよ」

 

 学校が既に許可を取っていたのであるが意外なことにウララが辞退した。

 

「やっぱりやめておきます。笹井先生といっしょにスポーツ教室をやってもいいですか?」

 

 何故辞退しようと思ったのか当のウララにも分からなかったのだが、結局のところこれが混乱を避けることに繋がったので良かったわけである。

 

 それでも文化祭当日はウララを目当てにスポーツ教室へ集まった子供は笹井曰く、いつもより多かったとのことなのでやはりまだウララの人気は健在であった。

 

 文化祭の準備の最中、野球部のピッチャー3人組がサッカー部の松梛に隙あらば挑戦状を叩き付けていた。だが10月上旬からサッカー部は冬の国立に向けた予選が始まるため相手にされない。サッカー部は健闘をみせるも準決勝敗退となった。サッカー部は国立のピッチにこそ立ったこそはないものの過去に*1冬の高校サッカーの全国大会に出場経もある高知県内では古豪なのである。

 

 準決勝が行われたのが11月の頭でもう文化祭も間近だったのでその後は3人が挑戦状を叩き付けることがなくなり、松梛はすこし寂しかった。

 

 同じ時期に春高バレーの高知県予選が行われ、野球部の助っ人に来てもらったお礼にウララが応援にやってきたが、男女とも初戦は突破したものの2回戦で優勝候補と当たるとくじ運が悪かったこともあり、ともに2回戦で敗退した。

 

 サッカー、バレーの他にも冬に大きな大会がある部活動があり、ウララは積極的に応援に参加した。

 

 そして一冬を無事に乗り越え、ハルウララ教師生活2年目の春を迎えた。因みに卒業式なんかもうウララは大号泣で、生徒たちから若干引かれていた。

 

「みんな! 5月にはしゅうがくりょこうがあるよ! たのしみだね!」

 

 前年の学年と同じ学年を担当、要は2年生たちを受け持つことになったので修学旅行が楽しみなウララ。レースで高知を(はじ)め全国各地へ行くことが多かったがやはり修学旅行は楽しみなのである。

 

「ウララ先生、俺たちトレセン学園の見学に行きたい!」

 

「えぇーっ!? で、でも行き先は京都だよ!?」

 

 行き先はベターではあるが京都・奈良である。じゃあ京都レース場を見学したいという意見が出てきたため、ウララが学校に確認するとウララがいる以上は出てくる意見だと思っていたようで既に京都レース場に確認していた。修学旅行は日程が平日なのでレースはやっていないがそれでも良ければと言われたそうで、そのことを後日生徒たちに伝えるとレースが観れないならいいや。ということになり結局行かないことになった。

 

 話を新年度初日に戻す。ウララの姿は野球部グラウンドにあった。平凡な公立校ということもあり初日から部活動が行われている部活は珍しく、新入部員の募集が行われる部活が多かった。野球部には念願の新入部員が入ったのである。

 

 なお、野球部は3月下旬に春季大会が行われたのだが秋季大会と同様に連合チームで挑み、秋季大会と同様の理由で初戦敗退という結果に終わった。

 

「ハルウララだよ! 先生2年目、みんなよりちょっとだけせんぱいだよ! いつもは陸上部のふくこもんをしているからあまりこれないけど、みんなよろしくね!」

 

 部員を代表して有賀が挨拶する。

 

「はい、みんな注目。キャプテンの有賀です。といっても3年は俺しかいないんだけどね。入ってきてくれてありがとう。今はこれだけの人数しかいないけど、みんな甲子園優勝を目指しているつもりだからみんなも目標は高く持ってね。じゃあ、新入部員たちから軽く自己紹介していこうか」

 

 新入部員たちが自己紹介を始める。

 

五十風(いそかぜ)陽太(ようた)です! ピッチャーです! 甲子園で160km/h(キロ)投げたいです!」

 

「おっ、いきなり言うねえ」

 

 明るそうで顔立ちもアイドルのように整った五十風は速球に自信があるようだった。

 

岸井(きしい)弘佳(ひろよし)です。将来はメジャーリーグで活躍するようなピッチャーになりたいです」

 

「メジャーリーグか、これはでっかく出たな」

 

 大人しそうな容姿だが岸井には大きな夢があるようだ。

 

碓井(うすい)忠朗(ただあき)です。全部のプレーで魅せられる選手になりたいです。では一つ……」

 

 そういうと碓井は周りと少し距離をとると、その場でバック宙をしてみせた。

 

「うわあ! スゴイね!」

 

 ウララをかせるには充分であった。

 

「おぉっ? 滝山に挑戦か?」

 

 どうやら身体能力にはかなりの自信があるようだ。

 

天童(てんどう)裕次郎(ゆうじろう)です。バック宙までは出来ないですけどパワーには自信があります。目標は……161km/h(キロ)と高校通算50本塁打(ホーマー)です」

 

「むっ」

 

 明らかに自分が先に言った「160km/h(キロ)を投げたい」という目標に対抗してきた天童に対し五十風がムッとする。

 

羽鳥(はとり)弘嗣(ひろつぐ)です。肩とバッティングには自信があります。高校通算50本塁打(ぱつ)って言おうと思ったんですけど、先に言われちゃったんで同じ目標にするのもなんですから、上乗せして60本塁打(ぱつ)で」

 

「おいおい、具体的な数字を目標にするのはいいけど、張り合って大きくなりすぎるといけないからここから先はアピールポイントぐらいにしてくれよ」

 

「えぇっ!? でも大きな目標をたてるのも競い合うのもいいことだよ!」

 

 有賀は突拍子もない目標を出だす奴が現れないよう、やめさせようとしたがウララは大いなる目標大歓迎といった感じである。

 

「じゃあまあ……次」

 

(ふじ)恭廣(やすひろ)です。正捕手として甲子園を目指します」

 

 一見控えめなに聞こえるが「したいです」ではなく「します」と言うあたり、そこには確固たる意志が感じられる。

 

高海(たかみ)歩天(ほたか)です。走攻守バランスのとれた選手が目標です。内野と外野ならどこでも守れます」

 

 プロ野球や大学野球、社会人野球では1試合25人出場させられるが高校野球は20人しか出場できない。本当に内野と外野の7つのポジションがどこでもやれるのであれば心強い。

 

(やかた)天命(さだめ)です。外野手希望、脚と守備には自信があります。まあ、さすがにハルウララ先生より速くはないでしょうけど」

 

「あ、みんなわたしのことはウララでいいからね」

 

 このことは、この場にいる野球部の新入部員たちから他の新1年生たちにも伝わることになる。

 

加納(かのう)寿博(かずひろ)です。リードオフマンになれるように頑張ります」

 

「りーどおふまん? ……ってなに?」

 

 これまで主にどちらかというとホームランバッタータイプである滝山が1番を任されることが多かったため、特にリードオフマンという言葉が使われることが殆どなかったため、ウララは1番打者がリードオフマンと呼ばれることもあることをこれまで知らなかった。市居がウララに説明している間に先に進む。

 

北沢(きたざわ)道文(みちふみ)です。えーっと……」

 

「デカいな。何cm(センチ)あるんだ?」

 

「最後に測った時は188ありました」

 

「えっ!? じゃあアケボノちゃんよりも背が高いんだね!」

 

 ヒシアケボノの身長は180cmなので北沢はさらに10cm近く高いというわけである。

 

浅香(あさか)任三郎(にんざぶろう)です! 図体だけの奴に負けるつもりはありません!」

 

「えーっ!? 浅香くんだって大きいと思うよ?」

 

 ウララが言う大きいというのはあくまでも自分や一般の人間の男性と比べてである。ウララよりも身長は高いし一般的な高校1年生男子と比べても身長は高いが野球選手としては確かに低身長に分類されるほうである。

 

宇多田(うただ)孝明(たかあき)です。えっと、スコアブックつけられます」

 

「ホント!? じゃあこんどわたしにも教えて!」

 

 一応選手たちを鼓舞したり励ます言葉をかけたりと、ウララ自身は大したことをしているつもりはないが実は重要な役割を担っているのだが、如何せん当のウララにその自覚はなく、何かしたいと思いスコアブックのつけ方を自分で調べ覚えようとしている。日本にはつけ方について主に二種類の方式が確立されており*2、このことがウララを混乱させて中々会得できないでいる。

 

「いや~、12人なんて大分増えるな」

 

「でも、きょねん末松くんのボールがすごいのを見てもらえたからいっぱい入ってきてくれるかもしれないってきいたけど……」

 

「ウララ先生。去年4月の新年度から野球部に入ってくれたのは滝山だけですよ? そのあと入部してきた末松、岸葉、市居を入れても4人しか去年の1年で入ってこなかったんですよ? ウララ先生は何人ぐらい入ってくると思ってたんですか?」

 

「えっとね、100人ぐらい」

 

 吹本や部員たちが苦笑いしているとそこに若い女性教諭が数名の生徒を連れてやってきた。

*1
といっても40年近く前だが

*2
他にも独自の方式が採用されている地域がある。




 高校野球で7回制の導入が検討されているとのことなのでもし本当に導入されたらこの作品の今後にも影響があると思います。
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