ハルのウララの 2XXX海の向こうの甲子園   作:コンスタンチノープル

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 過去一育成やってたので執筆をサボってしまいました。

 しばらくライスと末松君の一対一の会話が続くので地の文を入れるタイミングが難しい。


第23話

 ライスは末松の言葉に耳を疑った。

 

「ライスのどこがいいの? 一生懸命頑張って、頑張って、勝っても嫌な顔をされて、ヒールって呼ばれて……こんなライスのどこがいいの!?」

 

「その自分が勝つことを頭っから信じて疑わない心、でもったり慢心しないで勝つために力を尽くす姿勢、勝利を手に入れるためにやるべきことは全てやったと断言するほどの行動力、そしてそこから来る揺るぎない自信……そのどれをとっても言えるのは、ライスさん、アンタは(つえ)ぇ。悲観することなんざこれっぽっちもねえよ」

 

 それぐらいのことは当たり前だとライスは反論するが末松はそんなことはないと更に返す。

 

「野球界の伝説の1人は『小さいことを積み重ねる事が、とんでもないところへ行くただひとつの道だと思っています』って言ってます。『勝ってキラキラと輝いて、見てくれる人たちに新たな希望を与えたい』ってのは、俺からすれば『とんでもないところ』です」

 

「そう……かな?」

 

「です。そんでライスさんはやって当たり前だってことをやってんですから小さいことを積み重ねるっつっていいです」

 

 しかしその言葉ではまだライスは満足できない。

 

「じゃあ、何でライスはヒールなの?」

 

「そいつぁ……まだ途中なんさ」

 

 ライスにとっては自分の努力が足りないと言われた気がして嫌な心持ちになる。末松は言葉が足りなかったと詫びて説明する。

 

「まだライスさんが望む結果が出るには早すぎるってことです。千里の道も一歩からって言われてますから、まだ走り出したばかりで道半ばなんですよ。継続することは何より大切ですからね」

 

 しかしライスはまだ釈然としない。実際の所、言葉の意味を頭では理解しているのだがまだ一つ落ちないのである。

 

「それに、ライスさんは自分が認められていないって考えているかもしれないけど。それは違います」

 

「どういうこと?」

 

弱いヒールなんて存在しない(・・・・・・・・・・・・・)からです。そもそもヒールと言われるだけの実力があることを認められているんです」

 

「でもそれって、ライスはキラキラ輝くようなウマ娘じゃないことなんじゃ……」

 

 それは違うと末松は答え、持論を語る。

 

「ヒールってことは対義語はヒーローですか?」

 

「うん。ブルボンさんも、一応ライスのことヒーローって言ってくれたけど」

 

「ヒーローの形は1つじゃありません。人やウマ娘が抱くそれぞれのヒーロー像があって、それに対抗する(あだなす)存在をヒールと呼びがちです」

 

「そうかも。みんなにとっては、マックイーンさんが理想のヒーローで、ライスはヒールなんだよ」

 

 だがそれは物事の誠ではないと末松は答える。

 

「物事は正義対悪とは限りません。ヒーロー対ヒーロー、正義の反対にあるのはもう1つの正義ということだってあります。俺もライスさんはヒーローだと思います」

 

「今日あったばかりの人に、ライスの何が分かるの?」

 

 口調こそ荒らげていないが、確実に言葉の端から怒りが感じられる。

 

「ウララ先生からよく聞いている話、まあ生徒のみんな(こっち)から聞いてるってのもあるんですけど、それとさっきちょっと話しただけですけどスペシャルウィークさんやミホノブルボンさんから聞いた話、それからここでライスさんとちょっと話してそれで、具体的に何がって言ったほうが良いですか?」

 

「聞きたい」

 

「まず自分の確固たる信念を持っていること。次に自分の目的や正義を貫くためならどんなこともやってやるって強い意志。この2つをとってもライスさんはヒーローです。それになんですけど……ちょっと自分たちのこと言ってもいいですか?」

 

 ライスがいいと答えたので末松は自分たちの現状を問った。

 

「俺ね、野球部なんです。ウララ先生にも手伝ってもらってんですけど……」

 

「知ってるよ。去年の試合も観たから。凄い速いボールを投げてた人だよね?」

 

 ウララとライスは非常に親しい間柄だったので当然去年の夏の予選は観ていた。

 

「そりゃどうも。それで、今高実(うち)の野球部って甲子園優勝を目指してんです。あ、甲子園優勝ってのは日本一ってことです」

 

「そうなんだ」

 

「甲子園って春と夏にやるんですけど、今高知(うちの)地区には春夏9大会連続で甲子園に出てる超(つえ)ぇ学校がいるんです。言うなればその学校はヒーローです。俺たちとウララ先生はそのヒーローを倒そうとしているワケです。ヒーローを倒そうとするってことは、俺たちだけじゃなくてウララ先生もヒール(・・・)ってコトですか?」

 

「ちっ、違うよ! そんなわけない!」

 

 ライスだけではない、今の末松の言葉は全てのウマ娘とウマ娘ファンが否定することだろう。

 

「そういうことですよ。ヒーローって呼ばれてる相手を倒すからって、必ず自分がヒールってことじゃないと思います。でも、ライスさんヒーローになりたいってんだったらまだ足りないもんがあります」

 

「な、何が足りないの?」

 

 少し怯えるライス。

 

「ホントならトレーナーでもない俺が言うべきじゃないんですけど、悪役とか汚れ役とか憎まれ役ってのになることを恐れないで、周りの言うことなんか気にしなくていいです。時には自分のプライドを捨てることも辞さないべきです」

 

「でも……」

 

 それは『勝ってキラキラと輝いて、見てくれる人たちに新たな希望を与えたい』というライスの目指すものからすればやりたくないことであった。

 

「もし周りの言うことが気になるんなら、忘れないでほしいことがあります。ライスさんにも味方はいます。ウララ先生やミホノブルボンさんだってライスさんのこと応援してくれてるみたいですし……それにトレーナーさんだっているんでしょ?」

 

「あ……」

 

 ライスは大切なことに気が付いた。

 

「これまでだって、ライスさんのこと応援してくれてる人やウマ娘は沢山いるはずです。有記念出たんですよね? つまりライスさんが勝つのを……いや、走るのを観たいって願ってる人やウマ娘は絶対にいるんです!」

 

「ライス……お姉さまにも言われたのに……」

 

「お姉さま?」

 

 ライスが自分のトレーナーのことだと説明する。末松はどちらからそう呼んでいるかは分からないが、ライスとトレーナーの関係を少し心配した。

 

「それにね、これは俺個人の感情に任せた話なんだけどね。前評判で勝つのが決まってるとか言われてるようなのがそのまま前評判通り勝つのってつまんねぇんよ。だから俺はライスさんを推す。ライスさん、メジロマックイーンさんが勝つ予定調和を期待(きてぇ)してるつまんねぇん連中に……痛いのをぶっ食らわせてやれ!(・・・・・・・・・・・・・・)

 

「っ!……ライス……」

 

 ただライスに勝てというだけでは自分がズルいと思った末松は、自身の覚悟をライスに明かした。

 

「去年の夏の試合観てくれたんですよね。高実(うち)の野球部ね、あの試合の後、ウララ先生大泣きさせちゃったんです」

 

「えっ!? ウララちゃんになにしたの!?」

 

 ライスは戸惑いを隠せない。ウララはただ試合に負けたからというだけで大泣きするようなウマ娘ではないことをライスは当然知っているからである。

 

「勝負に挑む姿勢、あの時の高実野球部(おれたち)は大会に出れるだけで満足して、(はな)っから勝てなくてもいいとか、高校野球は教育の場で試合の勝ち負けなんて二の次なんだからそもそも勝たなくていいって空気が漂ってて……」

 

「そんなの、ウララちゃん泣いて当たり前だよ」

 

「はい。ウララ先生は中央でも地方でも1回も勝てなかったから、勝敗以上に大切なもんがあるってこと、ウララ先生は分かってると思って……」

 

 ライスは今は日本一を目指していると先に末松が言っていたため、それ以上追及することはしなかったが末松に注意した。

 

「あのね……その話、ライス以外のウマ娘には絶対しちゃダメだよ? ライスは先に今日本一を目指しているって聞いたからいいけど、他のウマ娘が聞いたらみんな絶対許さないって言うハズだから」

 

「ええ、ウララ先生もブチギレましたから」

 

 とてもじゃないがライスはあのウララがブチギレる姿など想像できなかった。

 

高実野球部(おれたち)は勝ちます。日本一とまではいかなくても、甲子園に出場するだけでも……俺は、ウララ先生のおかげで野球部に入れたんです。甲子園に出ることが、ウララ先生に喜んでもらうことだと思ってます。ウララ先生甲子園連れてって、ウララ先生また泣かせます」

 

 ライスはそうして真剣に取り組んでいるなら、例え甲子園に出れなくてもウララは喜んでくれると思ったが、ウマ娘の持つ(さが)である強烈なまでの勝利への欲求と競争(闘争)意識の本能がそれを口にさせることはなかった。

 

「そのために俺は、勝つことでブーイングを浴びる覚悟を決めているつもりです。それにね、考えようによってはブーイングも悪いモンじゃないですよ」

 

「どういうこと?」

 

「後ろめたいことなしで勝ったんなら、その勝者へのブーイングはスタンディングオベーションも同じです。勝負の前の野次だって、後ろめたいことしてないんだったらそれは畏怖と称賛です。ライスさんだって後ろめたいことはしてないんでしょ? ならブーイングも、野次られるのも一種のステータスです」

 

「ライスちゃ~ん!」

 

 2人が話しているとウララがライスのトレーナーとミホノブルボンを連れて戻ってきた。

 

「ごめんライス!」

 

 トレーナーはライスを思い切り抱きしめた。

 

「ライスの気持ち、全然わかってなくて。ごめん、私に力がないばっかりに……ライスがヒール呼ばわりされてるのに……私、トレーナー失格だ……」

 

 抱きしめられたときは慌てたライスだったが目を見据えをトレーナーに声をかける。

 

「そんなことないよ。全部お姉さまのおかげだよ、お姉さまのおかげでライスここまで来れたんだよ。だから、もっと自信もって。ライス、天皇賞勝ってくるから」

 

「ライスさん……」

 

「ブルボンさん、ウララちゃん、お姉さまも、みんな心配させてごめんなさい。もう大丈夫だから、ライス、マックイーンさんに勝つから」

 

 その眼は決意に満ち溢れていた。

 

「それから末松さん」

 

「なんですか?」

 

「ID交換してもらってもいいですか?」

 

 ライスからの意外な申し出。末松は承諾したがライスのトレーナーが待ったをかける。

 

「だいじょうぶです! 末松くんならライスちゃんのお友だちになってくれると思います!」

 

「いやウララさん、そういう訳ではなくて……あまり身元のしっかりした方以外と安易に関係を持ってほしくないんです。悪用される恐れがありますから」

 

「末松くんはわたしのたいせつな生徒だからだいじょうぶです! 末松くんもライスちゃんがイヤなことはしないよね?」

 

 ウララの熱に押される形ではあるがライスのトレーナーが折れた。普段は府中から多く離れた高知に住んでいる高校生なら直接会うことも少ない、物理的に危害を加えることなどそもそもウマ娘に人間が勝てるわけがない(・・・・・・・・・・・・・・・)ので一般の高校生という事を考えれば飛び道具やドラッグなど反社会的な手段をとる心配も含めてする必要はないとソロバンは一応弾いている。何よりあのハルウララが信頼を置く人物なら信用に値すると思ったのも事実である。

 

「わかりました。ライス、いいよ。ですが末松さん、ライスとIDを交換した仲だということは決して口外しないでください。ウララさんも……えーっと、2人が友達だってことは秘密にしてください。もし2人のことが悪く言われて嫌な思いをすることがあったら困るでしょ?」

 

「たしかに! わかりました! ライスちゃんと末松くんがヒミツのお友だちってなんかすごいね!」

 

 話している間に交換が終わった。

 

「これでいいですね。これから宜しくお願いします」

 

「うん、宜しくね……ユキちゃん!」

 

 ライスシャワーに同士ができた。




 末松君は米軍と自衛隊が宇宙人と戦うハリウッド映画を観ています。利用規約の禁止事項に引っかかる可能性と今後ゲームなどでその映画をモチーフにした作品への言及がある可能性を鑑みて作品名はここでは書かないことをご了承ください。

 このあたりのストーリーについてはトレーナーでもない一般人である末松君がトゥインクル・シリーズでGⅠを獲るようなウマ娘に深く介入することに不快感を示される方もいらっしゃると思います。いるのが当たり前だと思っています。

 ですがアニメSeason2のライスのお姉さまはアニメに登場する他のトレーナー達と同様にチーム単位のトレーナーでライス専属ではないのか雑誌のメディア対応するライスと一緒に顔さえ出ない写真が載っている程度で台詞も無いなど三冠の1つを獲ったウマ娘のトレーナーという指導力があると考えられる立場のキャラクターにしては多分話数や1話ごとの尺の関係上仕方がなかったことなのでしょうけど、割を喰わされた不遇な扱いを受けているトレーナーなんですよね。

 何かしらの理由で多忙が重なり、ライスを1人前扱いしすぎるあまりライスなら大丈夫だ、自分で何とかできると信頼しすぎて不干渉しすぎてしまっているのではないかとわたくしは思いました。そうでも思わなければあれだけ結果を出しているライスのお姉さまが全然登場しなかった理由が分からないのです。いえ、実際は1クールの話数と1話ごとの尺の関係上仕方のないことだとは分かっているのですが……

 とりあえずこの作品ではそういうことにさせていただきます。

 アンケート選択肢の詳細については第21話の前書きと後書きをお読みいただければとおもいます。

今後の高知実業(ストーリー展開)の方針

  • 目指せ!全国制覇!
  • 目指せ!模範的高校生スポーツマン!
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