ハルのウララの 2XXX海の向こうの甲子園   作:コンスタンチノープル

26 / 64
 ライスシャワーと末松征隆が恋愛関係に発展しそうな風に書いていますがそのあたりのことは今はあまり考えていません。まず第一に、そのような展開をみなさまが喜ばないと思いますし、求められていないと考えられるからです。次に、ウマ娘たちがアニメ時空で何年経っても中等部、高等部のままなのに対して末松君たちは学年が上がりいずれ卒業を迎えるため、書くとしても難しいからです。なので前話の最後、2人のことを同士という表現をさせていただきました。


第24話

 京都から高実に帰ってきたウララは南部校長から怒られた。当然のことである。それとこれとは完全に別だ。むしろハルウララだから厳重注意だけで内々の処分で済まされたといっても過言ではない。

 

「急にいなくなったので教職員も生徒たちもみんな心配しましたよ。それに末松まで連れて行くなんて」

 

「校長先生からも言われました。本当にごめんなさい……」

 

 笹井からも怒られる。それだけみんなウララが心配だった。

 

「荻原先生なんか真っ青な顔して自分のクラスの生徒や相撲部の部員たちに頼んで町中探し回っていたんですよ?」

 

 中でもウマ娘をこよなく愛する荻原の狼狽ぶりは、後々まで高実の伝説として語り継がれることになる。

 

「ウララ先生。あ、笹井先生もいらしたんですね。丁度良かった。ちょっとお話があります」

 

 2人を探していたこの女性教師は剣道部の顧問を務める浅間(あさま)舞響(まおと)。前年度に続き副担任を任されるウララが受け持つクラスの今年度の担任ということでウララを探していたのである。

 

「吹本先生がお2人に相談したことがあると仰っていましたよ」

 

「わかりました!」

 

 3人は早速吹本のもとへ向かった。

 

「おや? 2人とも一緒ですか?」

 

「丁度話しているところを見つけたんで。では私はこれで」

 

 浅間がその場をあとにした。

 

「実は、今度のゴールデンウイーク中に組む練習試合の対戦相手が新たに決まったので、それで相談に」

 

「試合ですか!」

 

 ウララは嬉しそうである。

 

「1日に2試合行うダブルヘッダーになりました。それで相談と言うのは、ウララ先生にその日ベンチに入ってもらいたいんです」

 

「成程、それで私にも相談ということですか」

 

 笹井は自分にも相談ということに合点がいくのであった。

 

「ゴールデンウイーク中ですからどの部活も集中的に活動を行っているのは承知なのですが、どうしても来てもらいたい理由がありまして」

 

「わたしはいいですよ!」

 

 ウララは勿論了承したが笹井は待ったをかける。

 

「ですが、ただの練習試合。わざわざウララ先生が出張る必要はないのでは?」

 

「それが『ただの』ではないんです。申し込んで来た相手が問題でして……」

 

 吹本は少し困ったような表情を浮かべる。

 

「どこなんですか?」

 

「香川の小豆島水産さんと和歌山の有田(ありだ)商工さんです」

 

「えっ!? 高知の学校じゃないんですか?」

 

 ウララのくところはそこではない。

 

「確か、結構強い所ですよね? 少しですが聞いたことがあります」

 

「そうなんですか!?」

 

「はい、小豆島水産は『四国四水』の1校に数えられ、公立校として唯一全国大会の4大会全てで優勝経がある四国が誇る全国屈指の名門。有田商工も4大会のうち3大会で優勝を経し、こちらも公立校として唯一、春夏連覇を達成している名門校です」

 

 ウララは春夏連覇の意味が分からないというので吹本が追加で説明する。

 

「春夏連覇というのは同じ年に行われる春の甲子園大会と夏の甲子園大会の両方で優勝することです。トゥインクル・シリーズで例えるのであれば、クラシック三冠とトリプルティアラに相当するでしょう。秋の明治神宮大会優勝を加えて三冠、国体優勝を加えて四冠ということもあります」

 

「つまり、カイチョーさんやラモーヌちゃんと同じぐらいすごい学校と試合をするってことですか!?」

 

「そう考えていただいて問題ないです」

 

 吹本も笹井もシンボリルドルフとメジロラモーヌは当然知っている。ルドルフが中央トレセン学園の生徒会長であることは日本中のウマ娘と人間なら物心がついていれば知っていて当然のことである。

 

「連休で高校野球界で広く知られる強豪校とですから、当日は試合を観に来るギャラリーがいることが予想されます。本来であればそうした状況でウララ先生がいるとぎになる可能性も考えられますが、ウララ先生が高実(うち)の野球部に関わっていることはそれこそ野球に疎い層にも知られているほどですから、こういった有名校との試合にいないのはそれこそぎになる可能性があるので、できれば来てもらいたいんです」

 

「分かりました。そういうことでしたらウララ先生、行ってあげてください」

 

「はい!」

 

 そうして迎えたゴールデンウイーク某日の小豆島水産と有田商工を招いて行われたダブルヘッダー。有田商工のほうが遠方からやってくるので先に小豆島水産との試合が行われている。

 

「アウト! ゲームセット!」

 

 試合には負けてしまったが1-2の接戦であった。中でも7回裏からリリーフで登板した末松が僅か2イニングの登板だったが6個のアウトのうち4個を三振で奪う圧巻のピッチングで魅せた。

 

「ハルウララ目当てで来てみたけど、最後に出てきたピッチャー凄かったな」

 

末松(あいつ)のこと去年の夏から推してんだよなぁ」

 

 吹本の予想通り少なくない数のギャラリーが高実野球部グラウンドに集まっていた。その中に1人、パーカーのフードを目深に被ったウマ娘の姿があった。

 

「末松くん! ナイスピッチングだったね!」

 

 ウララも他の部員がそう言うので良いピッチングをした時にはナイスピッチング、良いバッティングをした時はナイスバッティング、ファインプレーをした時はナイスプレーと声をかけるのが分かってきている。

 

「今みたいなのを1試合通してできるようになんなきゃですね」

 

「そうだね!」

 

「そろそろ上がりましょう」

 

 今は試合後のクールダウン、相手は先発マウンドに上がった宇多田である。

 

「お先良いですか?」

 

「あぁ」

 

 宇多田がその場から離れ、2人だけになったところで件のフードを目深に被ったウマ娘が話しかけてきた。

 

「末松さん」

 

「えっと……」

 

「あっ! ブルボンさん! どうしてここに?」

 

 ミホノブルボン、そのウマ娘であった。少し困った表情を見せる。

 

「ウララさん、あまり大きな声で私の名前を呼ぶとぎになる可能性があります。小声で話すことを提案します」

 

「そうだね。ごめんなさい」

 

 気を取り直して2人と対峙するブルボン。その眼光は鋭く、敵意があることが感じられた。

 

「ウララさん、末松さんと少々話をさせていただいても宜しいですか?」

 

「ど、どうしたのブルボンさん? なんだかこわいよ?」

 

 ウララにも分かるほど言葉の端に怒りを感じる。

 

「末松さん、これから試合という時に話すべきでないのは私も分かっているのですが問い質します。貴方、ライスさんに何を吹き込んだんですか?(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「えっ!? 末松くん、ライスちゃんになにかイヤなこと言ったの?」

 

「そういう訳ではないのですが……」

 

 ブルボン曰く2人が帰った後、天皇賞(春)を走り終えたライスに異変があったとのことである。

 

「またやられたよ」

 

「マックイーンの3連覇、見たかったな」

 

「何でだよ!」

 

 ライスシャワーは天皇賞(春)に勝った。しかしメジロマックイーンの3連覇を期待した観衆から菊花賞の時のような冷ややかな眼と言葉が容赦なく押し寄せた。

 

「はっ……」

 

 しかし敗れたマックイーンが真っ先にライスの勝利を祝い、拍手を贈る。

 

「はっ……あっ……」

 

「ハハハ……」

 

「うぅ……」

 

 それにつられるようにメジロパーマーやマチカネタンホイザといった他に激闘を戦ったウマ娘たちやキタサンブラックやマックイーンを慕うサトノダイヤモンド、さらに一部の観客たちもライスに拍手を贈った。

 

「ひぅっ!?」

 

 その時、ライスは自分でもどこから出たのか分からない声と、身体中をけ巡るこれまで感じたことのないドクンという鼓動と胸の高鳴りに襲われ、ターフをあとにした。

 

「ライスさん」

 

 通路でブルボンがライスを出迎え祝福の言葉を贈った。

 

「優勝おめでとう。ライスさん」

 

「うぅ……」

 

 ライスは涙に顔を歪ませる。

 

「また……たくさんの夢を壊してしまいました」

 

「それが勝つということです、勝負ですからね。誰かが勝てば、誰かは傷つき、夢破れる。そういうものです」

 

 しかし、ブルボンはライスの表情に異変を感じた。

 

「ブーイングって痛いですね。やっぱり痛かったです」

 

「ブーイングはチャレンジャーの勲章です。傷つく必要はありません、でもいつか、これが歓喜と祝福の声になる日は必ず来ます。あなたが勝ち続ければ、きっと……だって、あなたの名前はライスシャワーなんですから。」

 

「うん……ライス、頑張るね」

 

 本当に、ライスは痛みを感じているのだろうか? という相反する感情が入り混じった表情を彼女は見せた。

 

「それでこそ、私のヒーローです」

 

「でもね、それだけじゃないの。違うの。ううん、違わないの。なんだか……なんだかライスにもよく分からない……」

 

「ライスさん、どうしたんですか?」

 

 ライスは小刻みに身体を震わせている。

 

「ブーイングが痛いんだけどね。その痛いが、なんだか気持ちいいとか、心地いいような感じがするの」

 

「ライスさん、大丈夫ですか?」

 

「ブーイングもスタンディングオベーションだって言われたからかな? なんだかブーイングされた時に身体中がぞわぞわっていうのかな? ゾクゾクっていうのかな? そんな感じがして……」

 

 ブルボンはき目を見開いた。

 

「誰が言ったんですか? ライスさんのトレーナーですか?」

 

「違うよ。ユキちゃん、ほら、この間ウララちゃんと一緒にライスのこと探してくれたウララちゃんの学校の男の子だよ」

 

 そんな事態が展開されていたとブルボンは説明したのであった。

 

「ライスさんは変わりそうな気配をみせています。ですが今のままではその変化は危険な結果に至ると思われます」

 

「うーん、よくわかんないけど、ライスちゃんがあぶないの?」

 

 更に天皇賞の後、学園に戻ってからあったことをブルボンが話す。

 

「同室のロブロイさんやオペラオーさんに様々な物語の悪役や理想的な悪役像についてかなり熱心に聞いているんです」

 

「えっ!? ライスちゃん、わるい子になっちゃうの? そんなのダメだよ!」

 

 ブルボンも2人はかなり困惑して、自分に相談に来たという。

 

「ライスさんはヒールではなく、ヒーローになるべきウマ娘です。2人もそれが分かっていて困り果てているんです」

 

「それはちょっと違うんじゃないですか?」

 

 末松の一言に珍しくウララは怒った。当然である、末松の言葉は聞きようによればライスはヒール(悪い子)であるべきと言っているようにとれるからである。




 ブルボンと末松君が話すのは当初の想定になかったストーリーです。

 アンケート選択肢の詳細については第21話の前書きと後書きをお読みいただければとおもいます。

今後の高知実業(ストーリー展開)の方針

  • 目指せ!全国制覇!
  • 目指せ!模範的高校生スポーツマン!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。