ハルのウララの 2XXX海の向こうの甲子園   作:コンスタンチノープル

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 現在募集中のアンケートについてですが、「目指せ!全国制覇!」が選ばれても高実自体は文武両道の進学校路線にシフトするつもりです。筆者は学生時代、散散っぱら勉強から逃げてきたので全くと言っていいほど学業方面は書けませんがそれでも頭のいい人に対する憧れはあるのです。

 高知実業は公立高校という設定なのですが私立の中高一貫校で参考にしてみたい学校があります。進学校で練習時間が短く、環境も整ったものではないのですが、育成選手ではありますがNPB入りしたプロ野球選手を輩出している面白い学校です。

 その分高実野球部は老朽化していますが他校を招いて練習試合が行えるほどの専用グラウンドがあるのでかなり恵まれているほうです。


第27話

 高鶴がバッターボックスに立つ。その雰囲気はどこかいつものウララのようなのほほんとしたものを漂わせる。

 

「彼は本当にメジャーリーグでの活躍も期待されるような選手なんですか?」

 

 ブルボンの疑問は尤もであった。

 

「っかしいなあ……去年の夏やった時とは全然違うなあ」

 

 三宅も訝しむ。

 

「まずはオーソドックスだけどセオリー通りに……コレで」

 

 末松が頷いて白球を投じる。バッテリーの選択はアウトコースのストレート。高さは真ん中じゃなければ高め低め問わずというサイン。

 

「へぇ、そうなんだ……」

 

 ボールはアウトコース高めに決まり0ボール1ストライク。打ち気無く見送った高鶴がそう呟いた次の瞬間、グラウンドの空気が変わった。

 

「っ!?」

 

「おっ、あの眼だよ。あの眼」

 

「ミホノブルボンさんも感じたようですね」

 

 高鶴が纏うその空気は、ブルボンからすると天皇賞の時のライスを思わせるものであった。

 

「うぅっ……なんだかあの子(高鶴)、走ってるときのカイチョーさんみたいな感じがする」

 

「なんだか寒気がする」

 

 その空気はウララやレイチェルも感じる所である。

 

「ウララ先生、これが全国トップクラスというものです」

 

 レイチェルが反応した。

 

「ウララ先生、私たちが気後れしちゃダメです。ああいう選手と沢山勝負していくんですから私たちはみんなを信じ続けないと」

 

「そ、そうだよね! みんな~、がんばれー!」

 

 気を取り直していつもの調子で声援を送るウララ。吹本はこれは高実(うち)の強みだがこれに頼り切りではいけないと心に期するのであった。

 

「よし、次はココで」

 

 末松が頷きピッチングモーションを起こす。2球目のサインはインコース低めのストレート。初球がアウトコース高めに決まったのでその対になるボールである。ベタで読まれやすいリードであるが初球のアウトコースがあるのでより身体に近く感じる効果的なボールである。

 

「!」

 

「しま……」

 

 刹那、甲高い打球音が響く。

 

「ファウル!」

 

 末松のボールはインコースではあったが高さが真ん中よりの甘い失投といっていいボールになってしまった。高鶴のバットが一閃するがレフトへのファウル、しかし飛距離は間違いなくホームランという痛烈なライナーであった。

 

「いけないなあ~」

 

「マジかよ……」

 

 藤は愕した。失投に近いとはいえ、末松の投げるプロの一流ピッチャーと比較しても遜色ないストレートを甲子園球場だったとしてもフェアゾーンに飛べばホームラン間違いなしといえる痛烈なライナーを眼前のバッター、高鶴尊は放って見せたのである。そしてそれはウララも同様であった。

 

「末松くんのボールを……」

 

「高さが真ん中に近い失投でしたな。ほんの僅かなミスが命取りとなる、まさに全国トップといえるでしょうな」

 

 吹本はそう説くと同時に、この1打席の勝負は決したと確信するのであった。

 

「カーブを1球見せ球にしてフォームを修正するか? ……いや」

 

 藤の思案、カーブという変化球はたとえそれが切れ味に欠けるようなものでも他のボールを活かす見せ球としての効果があり、またカーブにはフォームを修正することが出来るという効果もあると言われている。しかし藤は違うと考えた。

 

「真っ直ぐがジャイロの末松さんじゃ投げ方が正反対のカーブは逆にフォームを崩すかもしれない。ここは、コレで」

 

 そう考えた藤の選択はアウトコースのシュートであった。ジャイロボールと比較的に近い投げ方をするシュートであればフォームを崩さないと考えたのである。

 

「っと」

 

 投じられたボールはアウトコースからボールゾーンに変化する格好の見せ球、高鶴のバットは止まり1ボール2ストライク。

 

「よし、じゃあコレで」

 

 藤の出したサインに末松が頷きピッチングモーションを起こす。投じられる白球、刹那一閃するスイング。

 

「っ!」

 

「あっ!!」

 

 白球は寸での所で末松のグラブの中に収まった。痛烈なピッチャーライナー、息詰まる攻防を末松と藤のバッテリーは制した。

 

「末松くん! 大丈夫!?」

 

 ベンチに戻ってきた末松をウララは心配する。

 

「っぶないボールでしたね。外れた分助かりましたね」

 

 藤のサインはインコース高めのストレートだった。しかし投じられたボールは真ん中高めへの抜け球であった。であったがストライクゾーンからも少し外れたため、高鶴のバッティングは僅かに強引なものとなり、鋭いライナーが末松を襲ったが会心のバッティングにはならなかったのである。

 

「相手に助けられたな」

 

「どういうことですか?」

 

 吹本は2球目の失投を仕留め斬ることが出来なかったことで末松の勝ちを確信していたのであった。

 

「だがまだまだ甘いな。今日は厳しい試合になると思え」

 

「はい!」

 

 一方で守備に就く有田商工ナインを見る三宅と櫻は気付く。

 

「なんだ、あいつ(・・・)サードか」

 

「みたいだね」

 

「先ほどから話に挙がっていた選手のことですか?」

 

 三宅と櫻が話していた件のあいつ(・・・)とは6番サードでスタメン出場している沢田石雄匠のことであった。

 

「あの選手です」

 

「成程、中々の選手のようですね」

 

 ブルボンの二冠ウマ娘のその眼には、沢田石を猛者と判断するには充分足り得るものがあった。

 

 一方の高実ベンチ、攻撃に向けて作戦が練られる。

 

「相手のピッチャーは4番手かよくて3番手レベルらしい。でも良いピッチャーだってから簡単なボールは中々来ないと思う。各自打てると思ったボールは積極的に手を出して行ってね」

 

 円陣の中心となった有賀から作戦が伝達される。

 

「よーし、かっとばせー! 高海くーん!」

 

 一方のマウンドに立つ南野には期するものがあった。

 

「俺にあんなボールは投げらんねえ……」

 

 表情を曇らせる南野にサードの沢田石が声をかける。

 

「相手気にすんな。お前(てめぇ)のピッチングしろ。お前(おめぇ)のが上だよ」

 

「で、でも……」

 

 更に沢田石が一言。

 

「気楽にいけ気楽に、練習試合なんだから色々込みで最後まで投げっ必要はねぇんだから」

 

「わかりました」

 

 そうして沢田石はサードの定位置に就く。

 

「プレイ!」

 

 この試合、高実は試合に割く人員で手一杯なので有田商工の指導者が審判を務める。球審の小北の手が上がり高実の攻撃が始まる。

 

「まずはここ」

 

 キャッチャー北のサインに南野が頷きピッチングモーションに入る。ウララやブルボンからすると、そのボールは大したことが無いように感じるものであった。

 

「う~ん? 本当に末松くんのライバルになる選手なんですか?」

 

 ウララの反応は尤も、末松と比較して圧倒的にボールに威力がないのである。そしてその反応はブルボンも同様であった。

 

「ミホノブルボンさん、脚が速くなくても、速いボールを投げられなくても、様々な能力を武器に戦うことができるのが野球と言うスポーツです」

 

「ウマ娘のレースはどんな距離にしろ最低限スピードがないと勝負できないって(とこ)と野球は違うかな?」

 

「成程、確かに絶対的に必要な能力あるという点ではウマ娘(私たち)とは違った競技性といえますね」

 

 そうこう話しているうちに2球目、インコース高めにストレートが決まりツーナッシング。返球を受け、北のサインに頷いた南野が3球目のピッチングモーションを起こす。

 

「ストライク! バッターアウト!」

 

 アウトコース低め、ボールゾーンからストライクゾーンを掠めるスライダーが決まり見逃しの三球三振となった。

 

 高海は碓井と言葉を交わしてからベンチに戻る。

 

「噂通りのピッチャーですね。2年の先輩全員スタメンなのも分かります」

 

「どうして!? みんながなげるボールのほうが速いと思うよ?」

 

(南野君)にはスピードを補って余りある強力な武器があります。ここ(ベンチ)からではその凄さは解かりにくいかもしれませんな」

 

 一方のブルボンたちはその凄さを見る者が見れば充分理解することができる場所に陣を取っている。

 

「ここからであれば南野投手(あのピッチャー)の武器が解かると?」

 

「ミホノブルボンさんなら解かるかと思うので、まずは一通り(南野君)のピッチングを観てもらいましょう」

 

「まぁ、詰まんねぇピッチャーだよ」

 

 櫻が南野の力を認めているのに対し、三宅はあまり高く評価していないことにブルボンは少々の疑問を抱いた。

 

 南野は続く碓井も見逃しの三振に打ち取り、岸葉はライトフライに打ち取られ1回裏の高実の攻撃も有田商工と同じく三者凡退に終わった。

 

「さあ! まだはじまったばかりだよ! はりきっていこー!」

 

 ウララの声にノせられて高実ナインが守備に就く。末松と藤のバッテリーが、有田商工の4番、主将の今本と対峙する。その異形にはどちらかというとベンチのほうが分かりやすく、ウララが気付く。

 

「あれ? あの子(今本君)、バットをかまえる場所がみんなと違う気が……」

 

 今本はバットを体の正面で構えてバッターボックスに立っている。吹本が解説する。

 

「あれは神主打法という打ち方です。ああやって体の正面でゆったりと構える形が神主がお祓いをする様子に似てので『神主打法』と。全身をリラックスさせた状態で構えてバットを振る瞬間に全身の筋肉を動かすことによって、より大きな力を出せるという理論に基づく打法です」

 

「えーっと……えーっと……」

 

 ウララには難しかったようである。レイチェルが分かりやすい言葉に変換する。

 

「つまり、遠くに飛ばせる打ち方ってことですよ」

 

「えっ!? じゃあどうしてみんなかんぬしだほうで打たないんですか?」

 

「蔣の投げ方の時と同じように打ち方にもその人、ウマ娘にとっての合う合わないがあります。それに特に神主打法は遠くに飛ばすことが望める反面、ボールをバットに当てるのが非常に難しいと云われていて、フォームの構造上、投げられたボールを見極めるタイミングにも技術が必要だと言われています。また、神主打法の代名詞とも言われる大打者はこの打法のことをフォームの基礎を崩してしまうから野球少年達はマネをしないようにと言っています」

 

「あ、そうですね。みんなちがうのにいっしょのうちかたをおしえちゃダメですよね」

 

 これはトゥインクル・シリーズで走っていた時の経である。ウマ娘の指導はチームに所属し一見周りのウマ娘と同じような指導をされているようでも、1人1人細かい所で差異が出るものである。

 

 一方でブルボンのほうでは櫻が彼女に今本の解説をしている。

 

「今本君も高鶴君と肩を並べる走攻守3拍子揃った強打者です。4番という打順は日本においては古来よりそのチームで最強にして最も信頼の厚いバッターが務めます。ここにいるミチも4番を打っています。高鶴君ほどの選手を差し置いて4番に座るということは、それだけ信頼が厚いということです」

 

「成程、会長(シンボリルドルフ)のような選手ということですね」

 

 勿論ルドルフには到底及ばないわけではある。

 

「さて……この人も厄介。やけにベース寄りに立つからインを攻めづらいけどここは強気に……」

 

 藤はインコース高めのストレートを要求し末松もそのサインに頷きピッチングモーションに入る。

 

 次の瞬間、今本のバットが一閃、打球音は鈍いが痛烈な打球がセンター舘の後方を襲う。




 有田商工の選手のモチーフにした選手や監督、指導者(審判)はかなり古い時代の人です。ブルボンと話している三宅君と櫻君のモチーフになった選手はその人達より更に古い時代の人です。正直書いていて分かる読者の方がいるのか結構心配な所ではあります。ですが分からなくてもそれはそれで新しく感じるかと思うのでなんだかんだそれもアリだと思っています。

 アンケート選択肢の詳細については第21話の前書きと後書きをお読みいただければとおもいます。

今後の高知実業(ストーリー展開)の方針

  • 目指せ!全国制覇!
  • 目指せ!模範的高校生スポーツマン!
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