ハルのウララの 2XXX海の向こうの甲子園   作:コンスタンチノープル

31 / 64
 対戦相手のモチーフにしたい高校や選手・監督が山ほどあるのですが、試合の描写を増やすとウマ娘成分が薄くなってしまいますし、公式戦の数は限られているプラス県外の高校だと練習試合となってしまうのですが、公式戦だとネット配信などで中継される機会もあるので府中のトレセン学園にいるウマ娘も出せるのですが、非公式戦だと試合がリアルタイムで中継される可能性がゼロに近いのでウララ以外のウマ娘が出しづらいんですよね……今回のブルボンもかなり無理矢理に出した感がありますし、なんだかんだ言っても主人公はウララですから色々と難しい塩梅になるのは確かです。


第29話

 櫻のその口ぶりからブルボンは彼と南野が対戦相手以上に面識があるのではないかと思い聞いてみた。

 

「はい、去年秋の神宮大会で話す機会があって、その時にピッチングの組み立てやなんかを色々話したんです。彼、結構クレバーな所も持っていますよ」

 

「そうですか。攻め一辺倒ではないというのは好感が持てますね。深く思考した上で自分のスタイルを確立するのは重要です」

 

「俺は正直言って気に喰わねえんだけどね」

 

 三宅にとってはその南野の武器が気に入らないのだという。

 

「正々堂々真っ正面から真っ向勝負してえんだよ。強気なら強気のまま来いってんだ」

 

「南野君にはミチみたいに力に恵まれた訳じゃないからね。ミチにも時には引くことも大切なんだって分かってもらいたいんだけど……」

 

 やや困り顔の櫻からブルボンは彼が三宅のことで苦労させられているんだなと思うのであった。

 

「第一よぉ、高校レベルで真っ向勝負できねえってんは上に行った時に手詰まりになるんじゃねえかって思うんよ。トゥインクル・シリーズだってそうっしょ? GⅡやGⅢでガチンコの勝負ができねえってのにGⅠじゃ勝てねえっしょ?」

 

 ブルボンはやや思考を巡らせてから三宅の問いに答える。

 

「そういう訳でもありません。例えばヒシミラクルさんは重賞の勝利はGⅠのみですし、三宅さんの言っている『真っ向勝負』というのは力比べのことを言いたいのかと思いますが、力比べだけが真っ向勝負ではありません」

 

「流石はミホノブルボンさん。いいこと言いますね。ほらミチ、ミホノブルボンさんほどのウマ娘だってこう言ってるんだよ? ちょっとは考えて勝負したらどうなの?」

 

 しかし三宅も考え無しに力勝負を正統化しているわけではない。

 

「俺はもっと大学や社会人とか上のレベルでプレーしたい。プロでやる機会があればプロでも。もっとそういう頭で勝負するのってなあ、上行った時に真っ向勝負が通用しなくなった時になりゃいいじゃんか」

 

 彼もアマチュアの一番上のカテゴリである社会人野球やプロで力比べで通用しなくなった時はプレースタイルの変更も止む無しとは考えている。

 

「本当に分かってるのかなあ?」

 

 3人がそう話しているとグラウンドに甲高い打球音が響く。末松がレフト前にヒットを放ってノーアウトランナー2塁1塁とチャンスを迎えたのであった。

 

「よーし、みんなチャンスだよ! いっけーめいしょーくーん!」

 

 胡からの提案により台湾からの留学生3人の中で彼だけが姓ではなく名前で呼ばれている。ウララは最初、生徒を名前で呼ぶことに対して若干の抵抗があったのだが既に慣れている。過去に市居を名前で呼んでいるがそれは姉が一緒に居たため名前で呼んだだけである。

 

「初めはこれで」

 

 北のサインに南野は首を横に振った。

 

「じゃあこれか?」

 

 次に出したサインにも首を横に振る。

 

「おいおい……じゃあこれかよ?」

 

 3度目に出したサインに頷いて初球を投じる。

 

「くっ!」

 

 2度まで首を横に振って選んだ初球はインコース真ん中よりやや低め、ストライクからボールになるシュートであった。胡は打ち気無く見送り1ボール0ストライク。

 

「じゃあ次はこれかな?」

 

 北はアウトコース低めのスライダーを要求したが南野はまた首を横に振った。

 

「おいおい強気か?」

 

 しかし北のインコースのサインにも首を横に振る。

 

「うん? 何が投げたいんだ? これでどうだ?」

 

 今度はサインに頷いた。

 

「それです。こいつ(このバッター)は初球を打ち気無く見送ったからじっくり見てくるタイプだと思います。ストライクを積極的に投げていったほうが有利に勝負を進められると思います」

 

 という南野の2球目はアウトコース低め一杯に決まるストレート。胡は手が出ずに見送って1ボール1ストライクの平行カウントになった。

 

「うーん、この勝負。南野君の方が何枚か上手のようですな。この打席を次に活かしてくれればそれでいいでしょう」

 

「そんなにあの南野くんってピッチャーはすごいんですか?」

 

 ウララにはまだ彼の凄さが伝わっていない。

 

「高校生の投手にしてはけ引きを重きに置いてくるという子と聞いていますからな」

 

 ウララもレースに出ていた時は差しや追込を得意とする脚質だったがどちらかというとけ引きはあまり得意ではなかった。そのため、トレーナーが脚質を無視して逃げで出走させたこともあり、1着こそならなかったものの逃げで掲示板に載る好走をしたことも珍しくなかったのだが、却ってこれがウララに最も適した作戦を分からなくする結果となり、悲願の1勝を挙げることが叶わなかった原因の1つになったといっても過言ではない。

 

「かけひきが上手ってってことは、トランプとかも強いのかな?」

 

 これは単にウララが表情や耳、尻尾に感情が出やすいためでけ引きの上手い下手とはまた少し別の問題である。

 

「よし、じゃあこのボールを活かす感じで、次はこれなんてどうだ?」

 

「良いですね、悪くないです。それでいきましょう」

 

 南野が頷いて投じたボールは2球目と同じコースから更に外に逃げるスライダー。胡は思わず手が出てしまい、ファウルで追い込まれてしまった。

 

「まだ1球遊び球を投げれるけど、ここで仕留めに掛かろう。これでどうだ?」

 

 北のサインに頷いた南野が胡を仕留めるために投げた。

 

「ストライク! バッターアウト」

 

「くっ……」

 

 ウイニングショットにバッテリーが選んだのはインコース高めのボールゾーンからストライク一杯に決まるスライダー。身体に近い懐をエグるボールに胡は手も足も出ず見逃し三振に討ち取られた。

 

「すいません……」

 

「ドンマイだよ! まだ次があるよ!」

 

「いいようにやられてしまったなまだ交代させないから次につながるよう励みなさい」

 

 ウララと吹本がフォローすると胡は沈、蔣と母国語で会話する。

 

「あのレベルで3、4番手なんて日本は本当にレベルが高い。とんでもないピッチャーだ」

 

「お前が手も足も出ないなんてどんなレベルだよ」

 

「でも打たないと、やるしかないんだよ! 下向くなって」

 

「3人ともなんて言ってるの?」

 

 ウララに聞かれたので聞かれて困る話でもなかったので蔣が訳した。

 

「そうだよ! まだ次があるって吹本先生がいってるんだからファイトだよ!」

 

 そう話しているうちに滝山はショートの深い位置へのファウルフライに討ち取られてしまった。

 

「おや? 藤は何か意図を持って打席に入っているようですな」

 

「え? 吹本先生、持ってるのは糸じゃなくてバットじゃないですか」

 

 高実のベンチに居た全員がズッコケたのは言うまでもない。

 

 気を取り直して藤だが、バットをかなり短く持ち、スタンスもボールを見やすくするためにオープンスタンス気味に構え、スイングも極限までコンパクトにして南野のボールに喰らい付いていく。

 

「チッ……やりづらいな」

 

 ブルボンたちはその藤の必死さに若干違和感を感じている。

 

「アレじゃ打てねえだろ……」

 

 三宅の言葉は尤もである。とにかくバットにボールを当てることに重点を置き、ヒットを打つのは二の次、三の次というほど藤は必死に喰らい付いている。

 

「どういうことですか? 当てるということとヒットを打とうとしているのは別なのですか?」

 

「そうですね、藤君()は打つことよりも塁に出て次のバッターに繋ぐことに重きを置いている。討ち取られる前にボール球を4球投げてくれればフォアボールで塁に出れますから」

 

 しかし藤はまた違った考えでバッターボックスに立っていた。

 

「しつこいな……1球牽制を入れてみよう。集中が途切れるかもしれない」

 

 南野はここで1回牽制球を投じた。

 

「っ! よし! できればもうちょっと……」

 

 更に藤は南野に球数を投げさせた。南野と北のバッテリーは藤の集中力を切らせるために何回か牽制球も投じたが藤はそれでも喰らい付き続けた。

 

「練習試合だぞ……もっと打ち気で来てくれよ」

 

 ようやく根競べ決着がついた。南野が藤を見逃し三振に討ち取った。

 

「よし!」

 

 しかし三振に討ち取られたハズの藤は微かに笑みを浮かべていた。

 

「藤くん、ドンマイだよ!」

 

「何言ってんですかウララ先生! これ以上ない結果ですよ!」

 

 さすがのウララもどういうことか分からない。ベンチの選手たちも同様。

 

「サダメ! 次の回何が何でも塁に出てくれ!」

 

「はっ?」

 

 舘も当惑している。

 

「いいから! ヒットじゃなくていい、フォアボールでも当たってでも、アウトになってでも塁に出ろ!」

 

「いや無茶言うんじゃねえよ」

 

「藤、何かを掴んだか?」

 

 吹本はただ藤が球数を稼ぐために粘ったという訳ではないという意図を汲んだ。

 

「まず次の回、サダメかホタカが出てくれなきゃ目です! サダメがベストです」

 

「分かった、考えよう」

 

「末松先輩! この回絶対抑えてください! ゼロで切り抜ければ勝機はあります!」

 

「勝機って……」

 

 他の1年生たちは藤がなぜ急にここまで前のめりになったのか分からない。

 

「勝つんだよ! 有田商工に、俺たち高実が! 行くぞ!」

 

「そうだよみんな! がんばって勝とう!」

 

 ウララもそれに呼応する。

 

「藤クンがウララ先生みたくなった……」

 

 レイチェルはかなり困惑している。

 

「なんか高実のベンチ盛り上がってんな?」

 

 三宅も突然のことに何事かと思う。

 

「もしかしたら、何か勝機を掴んだのでは」

 

 ブルボンにはそれが勝利への糸口の端をみた者のように感じ取っていた。

 

「次の回、何か仕掛けてくるかも。そのためにはこの回を抑える必要がありますが」

 

 藤はボール回しが終わったナインに威勢よく声を発する。

 

「しまっていくぞー!!」

 

「このキャッチャー、急に気合入ってんな……もしかしたらさっきの打席で……なら」

 

 北は流れを高実(相手)に手繰られる可能性を考え、それを発つためにまず出塁しようと考えたのだが、この回藤の熱意から少しボールの出力を上げた末松の前にショートライナーに討ち取られてしまった。

 

御崎(シン)、もしかしたらこの回ヤバいかもしんない。トクの前になんとか……」

 

「分かった、考えてみる」

 

 御崎は一塁線を破らんという鋭い打球を放ったが胡が寸での所で抑え、ファーストゴロに討ち取った。

 

 打順は2巡目の上位打線、1番徳山と2回目の対戦を迎えんとしていた。




 ブルボンと黒沼トレーナーは「精神は肉体を超越する」と言っていますが、あくまでもそれは限界までトレーニングして肉体を鍛え上げ、戦術など全て万端に練り上げた上でのことで、そこまで全ての要素を万全に持ってくるからこそ精神が肉体を超越するんだ。と考えているんだと解釈してブルボンがけ引きは重要だという発言をさせました。

 アンケート選択肢の詳細については第21話の前書きと後書きをお読みいただければとおもいます。

今後の高知実業(ストーリー展開)の方針

  • 目指せ!全国制覇!
  • 目指せ!模範的高校生スポーツマン!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。