ハルのウララの 2XXX海の向こうの甲子園   作:コンスタンチノープル

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 この物語は書き溜めしておらず、1週間前後で2話書いて投稿しているのですが投稿する曜日と時間をある程度考えてはいるのですが不安定なので、1度投稿するのをストップして少し書き溜めてから決まった曜日と時間に一気に投稿したほうがいいんじゃないかと考えたのですが、投稿という行動をストップしただけで執筆するペースが低下してしまいそうだとも思って迷っています。

 こう思ったのも今の書き溜めしないで投稿しているのだとどうにもこの様に前書きと後書きも力を入れているのですが、皆様が読みたいものはあくまでも本編であって現在のように前書きと後書きに割く力と時間を本文に向けるべきではないかと思ったのがこの迷いの発端です。


第31話

 痛烈な打球だった。ホームランではなかったがそれでも会心の一撃という当たりが左中間を深々と破るスタンダップダブルを末松は高鶴に打たれた。

 

「あぅっ……」

 

「悪い球ではないです。ここからが力の見せどころです」

 

 続く今本も三遊間を破らんとする痛烈な当たりを放つ。碓井がギリギリの所で抑えたものの、どの塁にも投げられずノーアウトランナー3塁1塁のピンチを迎えた。

 

「ここは……」

 

 吹本が藤にサインを出した。

 

「どうするんですか?」

 

「打者に集中。1塁ランナー(今本君)が盗塁してきても無視しろとサインを出しました」

 

「ええっ!? でもとうるいされちゃったらもっとピンチになっちゃうんじゃないですか?」

 

 ウララは1年間野球部を視てきているとはいえ、まだ野球については素人なので相手が盗塁を仕掛けてきたら阻止しようとするのが当たり前だと思っている。

 

「盗塁にもいくつか種類があって、この場面ではディレイド・スチールという種類の盗塁を仕掛けてくる可能性が考えられます」

 

「でぃれいど・すちーる?」

 

1塁ランナー(今本君)がまず2塁に盗塁を仕掛け、捕手()がアウトにしようと2塁に送球した瞬間に、その隙を狙って3塁ランナー(高鶴君)が本塁目掛けて盗塁をして得点を狙ってくるという作戦です。時には3塁ランナーの盗塁を成功させるために1塁ランナーがわざとアウトになるということもあります」

 

「えぇ~!?」

 

 点を獲るためには故意にアウトになることもあるディレイド・スチールという作戦があることにウララは愕然とした。

 

 一方、櫻はブルボンにディレイド・スチールのことを説明するのと同時にそれを仕掛けてくる可能性は低いと説明していた。

 

「まず、高鶴君も今本君も徳山君ほどではないですが脚が速いことが知られているのでこの場面では充分考えられ、対策を講じられるであろう作戦だからです。簡単に言えば今本君の盗塁を阻止しようとしないでそのまま盗塁させてしまえばいいんです。そうすれば困るのは渥美君ですからね」

 

「どういうことですか? ランナーを2塁に置くことは得点圏といって、攻撃側にとってはチャンスであると説明していただいたではありませんか?」

 

高実(向こう)ファースト()見てみな。ベースにピッタシくっついてるだろ? 牽制に備えてランナーがいる時はああすんのが普通なんだ。アレだとファースト()セカンド(高海)の間が空いていてヒットが出やすいんだ。でも盗塁してランナーがなくなるとベースにくっついとかなくていい、他の野手と同じ体勢で守るからファーストとセカンドの間が狭くなってヒットが出にくくなんだよ」

 

 ここでブルボンは先ほどの櫻の言葉を思い出した。

 

「先程櫻さんが言っていた、好打者が打線に連なるが故に打者の打力に頼りがちになって作戦が打つ一辺倒となり、結果的に窮してしまう。というのはこのような場面のことですね?」

 

「確かに1つですね。ですがこの場合は渥美君への信頼もあるでしょうね」

 

 櫻は更に「ま、戦術を用いても渥美君に決められる技術が無いという彼の不器用さに対する信頼のなさもあるんでしょうが」と心の中で軽く毒づくのであった。

 

 グラウンドに鈍い打球音が響く。このピンチに末松は渥美をサードフライ、沢田石を三遊間寄りの力のないサードライナーに討ち取り2アウトに漕ぎ着けた。

 

竹野内さん(このバッター)は常に踏み込んで打ってくるから徹底的にイン攻めでいきましょう」

 

 藤の立て続けのインコースのサインに頷き、末松は竹野内を三振に討ち取りこのピンチを脱した。

 

「末松くん! ナイスピッチング!」

 

「………………」

 

「市居くん、どうしたの?」

 

「あ、いや何でもないです。先頭なんでいってきます。ほら、ユキちゃんも俺の次なんだから準備」

 

 バッターボックスに立つ市居には含むところがあった。小豆島水産、有田商工という全国屈指の強豪校との試合に登板機会が用意されていない。しかし期待されていないわけではない。こうして4番バッターとしてスタメン起用されている訳で……なら今求められることに応えようと決心するのであった。

 

「こいつは要注意、情報によれば兵庫の湧宮(ゆうきゅう)学館や福岡の冠孔(かんこう)工科大附属とかが特S推薦のスカウトかけたって話だ。さっきぶつけた時も衝撃を逃がす上手い当たり方をしていたし、並みの奴じゃねえぞ」

 

 市居が良かった時の7割5分ぐらいの感覚を取り戻したと言うのはあくまでもピッチングについてである。バッティングは既に9割以上の感覚まで取り戻している。

 

「ここは敢えて初球から、これでどうだ?」

 

 北のリードはアウトコース低めのスライダー。南野も納得尽くで投げてボールも悪くなかった。しかし市居は見事な流し打ちでライト線に鋭いライナーを弾き返す。

 

「セーフ!」

 

 そのままファーストベースを蹴りセカンドベースに滑り込む。見事なツーベースヒットでチャンスを作った。

 

「市居くん! ナイスバッティング! よーし、いっけー! 末松くーん!」

 

 そのバッティングは三宅と櫻をも唸らせた。

 

「中々良いバッティングすんじゃねえか」

 

「あのコースを打つのはかなりのものだね。柔らかい良いバッティングだ」

 

市居さん(あの方)も相当な手練れだと?」

 

 ブルボンの問いに2人は「高実にいるのが不思議なほど」という一致した見解を示した。

 

「うーん……」

 

「吹本先生、どうしたんですか?」

 

 ここは打線の中軸、クリーンナップである5番バッターとはいえ、手堅く送りバントで市居を3塁に進めたいところであるが、ピッチャーの末松にそのサインを出すことに若干抵抗があり、ヒッティングのサインを出した。

 

「末松くんはバッティングもすごいですからね!」

 

「でもウララ先生、プロ野球じゃピッチャーって基本打てないから送りバントなんですよ?」

 

「そうなの!? レイチェルさん」

 

 高校野球では特に実力の秀でた選手がピッチャーをやることが大多数を占めるため、ピッチャーでも打線の中軸を担うことも珍しくない。末松もその類いの1人であるが吹本がバントのサインを出すことを躊躇したのは末松の高いバッティングセンスを惜しんでのことではない。

 

「ウララ先生は先ほどの舘と高海のバントを観ていましたか?」

 

「もちろんです!」

 

「バントというのはあの様にバットの真ん中付近を手で持ちます。征隆は左投左打ですから真ん中を持つのは投げる左手です。つまり、バントした時にボールが左手の近くに当たる。不味いと手にボールが直撃して大きな怪我をしてしまう可能性があるのです」

 

 そのバッティング練習の時間をほぼ全てバントの練習に割いているといっても過言ではないプロのピッチャーでも、過去にエース級の活躍をしながらバントを失敗してボールが投げる手の指に当たり骨折した影響で引退に追い込まれたピッチャーもいる。高校野球はプロよりもバントに重きが置かれる傾向にあるが、好打者がバントの練習をする機会が少ないのは差こそあれプロと変わらない。

 

「たしかに、けがしちゃったらたいへんですもんね」

 

 吹本は末松にそのまま打たせた。結果はサードゴロに討ち取られたが本当に完璧に討ち取られた。弱い当たりが幸いし、サードゴロであったが市居を3塁に進塁させることができたのである。

 

「ナイス進塁打」

 

 ここで打席に立つ胡に沈と蔣の2人が母国語で檄を飛ばす。

 

「積極的に行け!」

 

「初球から手出していけ!」

 

 こういう時に外国語は日本で役に立つ。

 

あのバッター()じゃ荷が勝ち過ぎなんじゃねえかな?」

 

 三宅は胡から先の下位打線では心許ないという。

 

「どういうことでしょうか?」

 

胡君()はさっきの打席、慎重にボールを見てきましたからね。配球のけ引きで勝負してくる南野君を相手にそれで立ち向かうには相当読みが上手(うわて)でない限りはベストではありません」

 

「成程」

 

 櫻の解説にブルボンは尤もだと思った。

 

「どうやら胡君()はまだそこまでの力量は身に着けていないようですが、ここで勝負の仕方を変えてくるのであればまだ面白いですかね」

 

 ブルボンはライスともに懇意にしているクラスメイトのサクラバクシンオーのようにかと思考を巡らせるのであった。

 

「ここでもっと攻め手」

 

 南野がサインに頷きピッチングモーションを起こす。

 

「っ!」

 

 北のサインはインコースから更に懐をエグるシュート。しかしここで胡は果敢に打って出てきた。完全に詰まらせた当たりだったがショート後方に落ちるレフト前ヒットとなり市居が生還し、高実がそのリードを2点に拡げた。

 

「やったぁ! あいたっ!」

 

 ウララは喜びのあまり飛び上がったため、ベンチの屋根に耳と頭をぶつけた。レイチェルがウララにかけてもいいかと断ってからコールドスプレーを頭に噴射する。

 

「あいたた……」

 

「大丈夫ですか?」

 

 宇多田が更に保冷剤を頭にあてる。

 

「うん大丈夫、自分でやるよ」

 

 いつもしているハチマキに保冷剤をくくり付け、位置を上にずらしてぶつけた所にあてているこの一連の間に滝山が空振り三振、藤が見逃し三振に討ち取られてこの回の攻撃は終了した。

 

「末松先輩、もう中盤でこっちが追加点入れたトコですから有田商工(向こう)も力入れてくると思います。こっちもちょっと力入れてかかったほうがいいと思います」

 

 それはブルボンたちの間でも交わされている話であった。

 

「3回と同じ打順か」

 

「ですが、リードを拡げられて中盤戦に持ち込まれたという点では先程よりも力の入りようが違うのでは?」

 

「そうですね、今まではただの負けてもただの練習試合とそこまで本気モードではなかったでしょうから、ここから末松君の真価が試されると言ってもいいでしょうね」

 

 その真価が試される5回表、末松は先頭の北を空振り三振、続く御崎には手も足も出させず見逃し三振に斬って取った。

 

「球威が上がってる気がする。ユウに匹敵するかもしれない」

 

 御崎が続く徳山に耳打ちした。徳山は半信半疑であったが初球を見送るとそれが確かな情報であると確信した。

 

「ここでこの球威……そろそろ降板が近いからギアを上げてんのか? でも時々甘いコースに来てるからお手上げってほどでもない」

 

 徳山の狙い通り、真ん中寄りの甘いコースにストレートが来た。これを狙っていた徳山は教科書通りのセンター返しのヒットを放った。

 

「ヤバいな……ナンノ、無茶しないで三振で終わらせてもいいと思うぞ……」

 

 徳山はヒットを打ったからこそ末松のボールの恐ろしさを感じそう思ったが、その思いとは裏腹に打ち気たっぷりの南野はライト前にヒットを放った。

 

「アイツ無茶しやがって……」

 

 1塁塁上の南野の手に微かな異変。しかしそれは猛者が揃う有田商工の選手たちの多くに伝わっていた。

 

「不味いですね」

 

「ああ。ユウ、身体は準備する暇はないがメンタルは行く気でいておいてくれ」

 

「はい!」

 

 打席に向かう高鶴はその南野に一瞬視線をやってからバッターボックスに入る。

 

「練習試合で無茶すんなよ……でも、その気合いは伝わったぞ」




 ひとまずこの試合を書き終えるまでは何もなければ今のペースでいこうと思います。

 アンケート選択肢の詳細については第21話の前書きと後書きをお読みいただければとおもいます。

今後の高知実業(ストーリー展開)の方針

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