ハルのウララの 2XXX海の向こうの甲子園   作:コンスタンチノープル

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 鉄人と称された野球界のレジェンドは極度の偏食で野菜どころか魚も嫌いで肉しか食べようとしなかったらしく、その方が引退後解説者になられた際に、年下の解説者仲間から野菜を食べないことを心配された際にそれを一蹴した言葉があるのですが、なんともナリタブライアンやスイープトウショウに言わせたい言葉なのですけど良い交流の機会が考えられず没になりそうでなんともいえません。

 そもそもこの2人はサポートカードしか持っていないので、もしかしたらゲームや作品の中で既に言っていてもおかしくない。


第32話

 2アウトとはいえ2塁と1塁にランナーを置いて対峙するのは高校野球界トップ・オブ・トップとも言われるスラッガー。キャッチャーの藤は1人思案を巡らせる。

 

「練習試合だからか満塁策のサインはない。末松先輩(ピッチャー)のボールは来ている。でもまだ5回だからその場しのぎのリードで切り抜けても後々追い詰められるのはこっちだ……なら」

 

 意を決して藤は初球のサインを出した。末松にとっては予想していなかった要求だったが頷いてピッチングモーションに入る。

 

「ストライク!」

 

 初球の選択はアウトコース低めのカーブ。高鶴は見送って0ボール1ストライク。

 

「次はこれで。手を出してくれたら儲けもの、コースには気をつけてください」

 

 次の選択は真ん中低めからボールになるスプリット。高鶴は打ってきて3塁側のファウルとなり0ボール2ストライクと追い込んだ。

 

「よし! 今のは大きい、次はこれです」

 

 バッテリーの選択はアウトコース高めのストレートを1球ボールに投げる。これには手を出さず1ボール2ストライク。

 

「これで決めます!」

 

 藤のサインは末松にとってかなり予想外だったので首を横に振った。しかし藤も譲らない。

 

目です。例え一発(ホームラン)を喰らって逆転されても、この1球は必要なんです」

 

 強い藤の意志に末松が折れてピッチングモーションを起こす。

 

「なっ!?」

 

「ストライク!」

 

 この場面での藤の選択はインコース低めのスローカーブ。タイミングを完全に外された高鶴のバットは空を切った。

 

「アウト!」

 

 ワンバウンドだったため振り逃げが成立する。高鶴とランナーは走るが藤がファーストに送球して3アウト目が成立し、高実はこのピンチを乗り切った。

 

「ナイスピッチング末松くん! やったね!」

 

「ったく、あぶねーボール要求してくんじゃねえよ……」

 

「いいんですよあれで。これで勝ちはかなり高実(うち)に手繰り寄せられました」

 

 ウララにも、末松にも藤の意図が分からない。

 

「全く、有田商工相手にあんな配球するなんて、ただ度胸が良いだけじゃ済まないよ」

 

 宇多田にはその意図が伝わったようであった。

 

「どういうこと? 宇多田くん」

 

「う~ん、試合が終わってからで。これは1つの作戦で、効果がないかもしれないですから」

 

「えーっ!? おしえてよー」

 

 ひとまずウララを丸め込む高実ベンチ。一方、有田商工側では南野の心配をしていた。

 

「大丈夫か?」

 

「問題ありません」

 

 南野は強がっているが事態はそこそこ深刻なものであった。

 

「そんな訳ないでしょ? あんなボールをどん詰まりさせられて」

 

 氷谷にも、勿論伊藤にも分かる。南野のライト前ヒットは、末松の威力を増したストレートを詰まらせながらライト前運んだものである。バッティングの際にバットの芯と言われる部分より手元側でボールを捉えることを「詰まる」と称する場合がある。詰まると木製バットの場合折れてしまうこともあり、金属バットでも手にしびれが残るなどのダメージを受けることも多い。ピッチャーがこれを被るとピッチングに悪影響が出ることも珍しいことではなく、南野はまさにこの状況なのである。

 

「この回までだ。ショートはやれそうか?」

 

「まだ投げれます! この回抑えたら続投させてください!」

 

 伊藤は冷静に対応した。

 

「お前の目標はこの試合じゃないだろう? 大人しく代わるんだ」

 

 それを言われると南野としても引き下がらざるをえない。

 

「監督、俺はこの回行かせるのもやめるべきじゃないかと思います」

 

「僕は完投させてもいいんじゃないかと思うよ?」

 

 北の心配は尤も、氷谷はかなり厳しいともとれる意見をした。

 

「ちょ、マメちゃん!?」

 

「旭日の言い分もマメの言い分もわかる。だがこれは練習試合、この回だけだ」

 

 公式戦でこのような事態が再び訪れないとも限らない。むしろ大いにあり得る。もしなった時に投げられませんでは済まない試合がやってくることに備えて氷谷は完投を進言したが、伊藤は北の言う通り練習試合で無理をさせるわけにはいかないが氷谷が考えるシナリオも分かっている。なので1イニングだけ続投という判断を下したのであった。

 

「分かりました」

 

「北、厳しいマウンドになると思うが頼んだぞ。みんなも2人のことを頼んだ」

 

 こうして有田商工のナインはグラウンドへけていった。

 

「さてと、一度セーフティ決めてるから2度目は使えないだろうなぁ……それになんだかさっきとは目の色が違う……」

 

 シンボリルドルフの言葉を借りるとすれば、「さっきと違い殺気が漂っている」という所である。勿論ルドルフ本人はそのような状況ではそんなことは言わないであろうが。

 

「遊び球放らせる余裕はない。球威も落ちてるだろうから打たせて取るのも危ない。なら……」

 

 北と南野はフロントドアとバックドアというコーナーの出し入れを使して舘を見逃しの三球三振に討ち取った。

 

「なんかピッチャー(南野さん)気合が入ってる。気を付けてけよ」

 

「ああ」

 

 続く高海に舘が助言する。

 

「なんだか、あの子(南野くん)さっきと違って怖い……」

 

 ウララにも分かるほど南野は気迫が溢れていた。

 

「先程の打席で征隆にやられましたかな」

 

 吹本も分かっている。ウララにそのことを説明する。

 

「そんな……手当てしてあげなきゃ!」

 

 ウララは自分の頭に巻いていた保冷剤やコールドスプレーを手に取ってグラウンドにけ出そうとしたが吹本とレイチェルが思いとどまらせた。

 

「もう有田商工(あちらの)ベンチでしているでしょう」

 

「そうですよ。そのくらいのことがわからないチームじゃないでしょうからね」

 

「でも……! でも……!」

 

 こういうところもウララの数ある魅力の1つなんだと高実ベンチの一同は思うのであった。

 

「成程、確かにさっきと違う。でも1番任されてんだからここいらで1本打ちたい」

 

「遊び球は使えない、かといって単調な配球じゃ打たれる、ここはこいつで」

 

 北のサインに南野は頷き初球のピッチングモーションに入った。

 

「ヤバっ!」

 

 インコース低めのストレートという要求だったがダメージの影響で真ん中寄りの失投になってしまった。

 

「っ!」

 

 しかし、ここまで厳しいコーナーに投じ続けてきたボールが急に甘くなった。それは高海にとって予想外のボールであったため打ち損じてしまった。

 

「任せろ!」

 

「アウト!」

 

 打球はマウンド後方への高いフライとなり、御崎が抑えて2アウトとなった。

 

「討ち取ったとはいえ、限界が近いか?」

 

 北は1度マウンドに行こうとしたが南野が制した。しかしその意志とは裏腹に続く碓井がレフト前にクリーンヒットを放つと、更に岸葉には引っ張られてライト前ヒットを打たれる。確実にボールの力がなくなっていっている。

 

「ユキちゃんのストレートに詰まらされたんだ。ダメージが無いわけじゃないだろうね。ちょっと可哀想だと思うけどこれもプレーの中で起きたことだから容赦しないよ。高実(うち)は練習試合とはいえ、この試合勝ちたいからね」

 

「さっき奇麗に打たれた市居君(4番)……ここはキツイか? いや、俺がナンノ信じてやらないでどうするんだよ! 俺が迷ったらナンノだけじゃない、みんなも迷う。監督はこの回ナンノに任せたんだから俺だって応えないと」

 

 弱気になりかけた北であったがさすがは夏の甲子園優勝の有力校に挙げられるチームの正捕手である。このような所で倒れずにサインを出す。

 

「わかりました……」

 

 その姿に南野も新たに奮起する。

 

 バッテリーはこの極面(局面)で強気のインコース攻め。スライダー、シュート、シュートと投げ切り市居をレフトフライに討ち取った。

 

「すいません……」

 

「相手の気迫に呑まれたな。こういう練習試合で本番さながらの気迫で来てくれたのは大きな経になる」

 

 吹本は相手が多少なりとも本気を出してくれたことを喜ぶべきだと言った。

 

「征隆、吞まれるな」

 

「吹本先生! 末松くんならだいじょうぶですよ!」

 

 末松はこの程度のことで吞まれるような選手ではない。ウララも彼を信頼している。

 

「この回は厄介ですね」

 

 ギリギリの所を無失点で切り抜けて攻撃は4番バッターから。期待値は高まる。

 

「じゃ、ここを抑えれば。だな」

 

 気合いを入れなおした末松はこの場面で今本と渥美をストレートのみで空振り三振に討ち取った。

 

「これは中々……」

 

 そのピッチングに櫻はきを隠せない。

 

「まだ分かんねえだろ? こういう時にやるのがあいつ(沢田石)だ」

 

「そのようですね。沢田石さん()から並々ならないもの(・・)を感じます」

 

 ブルボンは沢田石の猛者が放つ覇気のようなものを感じ取るのであった。

 

「ナンノがあれだけやってこのまんまにはさせねえよ」

 

 沢田石はここで末松のストレートをレフト前に弾き返す。

 

「マジかよ……前の試合から通して末松さんの今日のベストボールって言っていいボールだったぞ? これで6番かよ……」

 

 藤は今日のベストボールともいえるボールを打たれた末松が気落ちしないか心配した。

 

「な? こういう時あいつ(沢田石)はやるんだよ」

 

沢田石さん()が打つと、あちらのベンチ全体が盛り上がっているように感じます」

 

「打つだけじゃないよ。沢田石君はとにかく有田商工(あのチーム)の求心力なんだ」

 

 ブルボンの言葉を櫻は肯定しつつそれだけではないとした。

 

竹野内さん(こいつ)にはイン攻め上等。いきましょう」

 

 バッテリーの再三のインコース攻めにも竹野内は怯まずに踏み込んでくる。

 

「あっ!」

 

 失投。ついに竹野内にデッドボールを当ててしまった。末松が帽子をとり詫びる。

 

「タイム!」

 

 ここで竹野内に代わって3年生の槙村がピンチランナーとして起用された。

 

 2アウトながら迎えたチャンス。バッターボックスに立つ北には思うところがある。日本では配球やリードについて相当高い評価をされているキャッチャーでもない限り、ピッチャーが打たれたらキャッチャーが悪いと言われる反面、ピッチャーが抑えてもキャッチャーが評価されることは少なく、ピッチャーが良かったと言われることが多い。特に南野のようなコントロールに長けたピッチャーはキャッチャーの要求通りのボールを投げてくることが多いので打たれるとキャッチャーは批判の矢面に立たされることが多くなる。北自身もここまで南野が2失点したことに責任を感じているのであった。

 

「練習試合で熱くなりやがって……でもこの2点に責任感じないんならキャッチャー辞めるべき。なら、今やるべきことは……」




 結構切った台詞や地の文もあるのですが、それでも長台詞や長い地の文が多いので改行や行を空けたり、台詞を分割したほうがもっと読みやすくなるとは思うのですが、どうも長くしがちなことを反省しつつもどうしても長くなってしまう……

 短い言葉で簡潔に表現するのを筆者が得意ではないことをご了承いただければと思います。

 アンケート選択肢の詳細については第21話の前書きと後書きをお読みいただければとおもいます。

今後の高知実業(ストーリー展開)の方針

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