ハルのウララの 2XXX海の向こうの甲子園   作:コンスタンチノープル

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 末松征隆には名前の由来となった実在の野球選手がいます。また、笹井先生にも同様に名前の由来となった実在の陸上競技選手がいます。

 今後書いていく上でなるべくハルウララの他にもウマ娘を登場させたいですが、地理的な関係や考えているストーリーの展開ではウマ娘やレースとは無関係な人間のオリジナルキャラクターが多くなってしまう予定です。

 ハーメルンの利用規約には「芸能人などの実在する人物が登場する作品の投稿」が禁止事項に定められていますが実在の人物が名前などの由来となっているオリジナルキャラクターの登場は今後も予定しております。気が向いた方は感想やダイレクトメッセージなどで由来となった人物の予想を送っていただければ合っているか回答します。


第2話

 公式戦39年間勝利なしという不名誉な記録を更新中の高知実業野球部であるが意外なことに老朽化こそ目立つものの立派な専用グラウンドが存在する。なぜそんな設備があるのかは後々説明するとして学校からグラウンドまでは徒歩圏内の近さにある。

 

「すごーい、わたし野球場に入ったのはじめて!」

 

「勿体無い設備ですよ。他県の強豪野球部には専用グラウンドが無くても甲子園でベスト8以上に勝ち進む高校だってあるのになんで高実(うち)の野球部ごときに専用グラウンドがあるのか……」

 

「甲子園でベスト8って……どれぐらいすごいんですか?」

 

 レースの舞台から退いてから教師になるために勉強に打ち込んできたウララにとってそれはどれぐらいの強さなのか理解できていない。

 

「あー、そうですね……ウマ娘で例えるんなら、いつもトレセン学園の設備を使えないで満足な練習が出来ないでいるウマ娘がGⅠで毎回入賞するような話でしょうかね?」

 

 陸上部の顧問である笹井はレースもよく知っているため咄嗟に出た例えであるが適切かは不明である。

 

「ていうかウララ先生って甲子園知ってるんですね」

 

 末松の発言は失礼ともとれるが確かにウララなら甲子園を知らなくても無理はない話である。

 

「むー、わたしだって甲子園ぐらいは知ってるよ? 高校野球の全国大会をやる場所でしょ? ねぇじゃあ知ってる? 甲子園が出来る前の甲子園って阪神レース場の中に野球場をつくってやってたんだよ!」

 

「へぇ、そうだったんですか」

 

 読者は絶対に覚えないでもらいたい知識である。

 

「笹井先生、ウララ先生、お待ちしておりました。その子が話していた末松君ですね。ようこそ」

 

 温厚そうな老紳士のような雰囲気を纏う男性がグラウンドから話しかけてきた。

 

「あ、ウララ先生、末松。こちらが野球部の部長で監督の吹本先生、3年生を受け持っているからちゃんとお話しするのは初めてでしょう」

 

「ハルウララです!」

 

「末松です。今日はありがとうございます」

 

 ウララはまるで自分が練習に参加するような元気な挨拶をした。

 

「それで末松君、今日は練習を体してみるかい?」

 

「でも今日、道具持ってきてなくて……」

 

「いや構わないよ。お~い、有賀(ありが)! 有賀ちょっと来てくれ」

 

 有賀と呼ばれた一人の部員が四人の下にやってきた。

 

(末松)に備品のグラブを貸してやってくれ」

 

「は~い」

 

「あ、俺左投げです」

 

 有賀は「左用あったかな~」と備品が納められている倉庫へ取りに行った。

 

「ほ~う、きみは左投げか~」

 

 練習中の他の部員たちも物珍しそうにやってきた。

 

高実(うち)みたいな野球部に途中から入ってくるなんて物好きだね」

 

「キャッチボールの相手しようか?」

 

「なあ、どこのポジション希望? 俺、3年の隅本(すみもと)。ファーストやってんだけど左ならファーストやりたい?」

 

 隅本と名乗った部員の問いに迷いながらも確かな意思をもって末松は答えた。

 

「いや俺、ピッチャーやりたいんです!」

 

「おいおい、お前中学で野球やってねぇんだろ? 高実(うち)で左だからって簡単になれるもんじゃねぇよ」

 

「確かにサウスポーってのは魅力だけど……」

 

「サウスポーってなに!? なんかカッコいい!!」

 

 ウララは多少耳に入っていたはずだが抜けていた言葉にカッコよさを感じるのであった。

 

「ウララ先生、サウスポーってのは左投げのピッチャーのことですよ」

 

 一人の野球部員が答えた。

 

「えっ!? 左投げでもピッチャーじゃないとサウスポーって言わないの?」

 

「まぁ他のポジションでも言うことはありますけど基本的にはピッチャーしか言いませんね」

 

「じゃあ末松くんはすごいんだね!?」

 

 野球素人のウララはその言葉に自分がプレーするわけでもないのに目をキラキラと輝かせている。

 

 そこに有賀がグラブを持って戻ってきた。

 

「おいおい、どうしたんだよ?」

 

「有賀くんだっけ? すごいんだよ! 末松くん、サウスポーなんだって!」

 

「えぇ、おいおい、左のピッチャー用なんて備品にないよ。今日の所はこれ(外野手用)で我慢してくれ」

 

「大丈夫です」

 

 ユニフォームはないので体操着に着替えた末松が他の野球部員たちに交じってキャッチボールを行う。

 

「う~ん、笹井先生。(末松)陸上部では砲丸投げの選手でしたね? どれぐらいのモノなんですか?」

 

「正直なところ、末松には砲丸投げを続けてほしいんですよね……なんせアイツ(末松)、中学の時県大会優勝の実績がありますからね」

 

「同じ球を投げるなんだから大丈夫じゃないんですか?」

 

 ウララの素朴な疑問に笹井は困ったという表情を浮かべた。

 

「砲丸投げに使う砲丸は野球のボールより一回り大きくて何十倍も重いんですよ?」

 

「野球のボールの方が小さくて軽いんだったらそれだけ投げやすくなるんじゃないんですか?」

 

「ウララ先生、例えばレースで長距離が得意なウマ娘が短距離に出て距離が短くなった分力が出せるからと活躍するウマ娘はいないでしょう?」

 

「うー、確かに」

 

 再び笹井の咄嗟の例えなので正しい表現かは分からない。

 

「それに、砲丸投げは野球のピッチャーみたいな投げ方は禁止されているんですよ? アイツそこら辺のこと分かってピッチャーやるって言ってるのか……?」

 

「でもキャッチボールをする姿は様になってますよ。中学は陸上部でもそれ以前は野球の経があるんじゃないですかね?」

 

 そうしているうちにある程度キャッチボールをこなすのであった。

 

「じゃあ、ピッチャーやりたいんなら試しにマウンドから投げてみる?」

 

「はい!」

 

 末松は早速マウンドから投げることになった。

 

「3年の沢田(さわだ)だ。まあ、軽くな」

 

 キャッチャーの沢田は大分落ち着いた様子の末松を大したヤツと思った。

 

「色気出して変化球とか投げんなよ。まずストレート、真ん中目掛けて投げてみな」

 

「はい」

 

 沢田はそういうとプロテクターなどの防具は着けず、マスクだけ被ってキャッチャーボックスで構えた。

 

 ふぅーっと一息入れてから末松がワインドアップモーションを起こす。

 

 刹那、左腕から白球が放たれる。

 

「えっ?」

 

 ウララは、目の前で起きた出来事が一瞬理解出来なかった。

 

 響いたのは乾いたキャッチャーミットの捕球音ではなくガシャーンというバックネットの金網が鈍く響く衝撃音であった。

 

 暴投ではない。あまりの剛速球、そう、右投げよりも球速が出にくいとされるサウスポーの、それも高校に入学したての1年生が投げていいようなボールではない剛速球が沢田のミットの上を掠めてバックネットに突き刺さったのである。

 

「すごい……すごいよ末松くんっ! 『ごーっ!』っていって『びゅーん!』って! すっごくはやかったよ!」

 

「おい! お前みたいなのがなんで高実(うち)なんかに来たんだよ!?」

 

 間違いなく強豪や名門と呼ばれる高校の野球部でも1年の夏からベンチ入りできるレベルの逸材。それは疑いようもない事実であった。

 

「こいつはいた……先生、吹本先生! 末松を野球部に移籍させるんだったら……彼と、彼とトレードでどうですか!?」

 

 笹井は一人の野球部員を指さした。ウララが疑問に思って笹井に尋ねる。

 

「あの子を? どうしてですか?」

 

「彼はね、滝山(たきやま)幸毅(こうき)といって1年なんですがね、恐ろしい身体能力しているんですよ! 体育を少し見ただけですがね、今から陸上部で仕込めばオリンピックだって夢じゃないんですよ!」

 

 ウララは思わぬ笹井の熱意に押されたが怒った。

 

「笹井先生! ダメですよ? 先生が言うんなら滝山くんもすごい子なんだけど、今は末松くんのはなしでしょう? 滝山くんはかんけいないんだから巻き込んじゃだめですよ?」

 

「いやーしかし、あれほどの身体能力を埋もれさせるには惜しい」

 

「笹井先生、ウララ先生。末松君! きみも来なさい」

 

 吹本は笹井の熱意に絆されることなく冷静に口を開いた。

 

「末松君。きみ、転校するつもりはないかい?」

 

「え?」

 

 ウララは吹本の言葉の意味が理解できなかった。

 

「笹井先生、ウララ先生、この子(末松)が野球をするのであれば、然るべき設備と環境の整った、野球に力を入れている高校に転入させるべきです。幸い、わたくしは功董(こうとう)学館の片貝(かたがい)監督とは交流があります。功董に紹介状を書くのでお二人で転校の手続きを始めるべきです」

 

「そんな! 末松くんは高実(うち)で野球がやりたいっていってるんですよ!? 受け入れてあげるべきです! そうだよね? 末松くん!」

 

「えぇまあ、功董みたいなトコは俺には性に合わないというか……」

 

「末松、野球はからっきし素人の先生から見てもお前はもっとレベルの高い環境でもやっていけるはずだ。学費がネックならさっきみたいにお前の球を見てもらえば特待生にしてくれると思うぞ?」

 

 笹井も吹本も、末松を他校に転入させる方向で話を進めようとしていることにウララは納得がいかなかった。

 

「う~ぅ、わかんない! どうして高実(うち)の野球部じゃダメなんですか!?」

 

 遺憾の意を示すウララに吹本が諭すように話す。

 

「ウララ先生、野球は何人でやるスポーツかご存知ですか?」

 

「それぐらいわたしでもわかるよ! 9人でしょ!?」

 

「そうです、そして今ここにいるのが野球部の全部員です。数えてみてください」

 

 そう言われウララは人数を数えた。

 

「えーっと……きみが有賀くんで、きみが沢田くん、それできみが隅本くんできみが~……」

 

戸田(とだ)って言います」

 

「戸田くん、それと……」

 

加治(かじ)です」

 

「加治くんでしょ。それで滝山くんで、いち、にー、さん、しー、ごー……あれ?」

 

 事ここに至ってウララは重大なことに気付く。

 

「末松君がもし高実(うち)の野球部に入っても7人しかいないんです。大会には出場できないんです」

 

「ええ~っ!? そ、そんなぁ~!!」




 ハルウララが言っていた「甲子園が出来る前の甲子園って阪神レース場の中に野球場を作ってやってたんだよ!」というのは間違った情報です。

 現実世界の話になりますが現在の夏の甲子園の前身である全国中等学校優勝野球大会が1917年の第3回大会から1923年の第9回大会まで開催された鳴尾球場は確かに競馬場の中に造られました。

 しかしこの競馬場というのは阪神競馬場ではなく鳴尾競馬場という1943年になくなった別の競馬場です。

 あくまでも作中においてはウマ娘などの間で広がっているよく知られた間違った知識という位置付けなのですが、なぜこのような知識が広まっていることにしたのかというとこの鳴尾競馬場が1937年に阪神競馬場と改称され、今の阪神競馬場のルーツとされており、このような歴史を踏まえ「甲子園が出来る前の甲子園は阪神レース場の中に野球場を造って行われていた」という間違った情報が広く知られている。ということにしました。

 なお、阪神競馬場で施行されるGⅢ「鳴尾記念」はこの鳴尾競馬場(球場)が由来となっております。過去にはタマモクロス、ヤエノムテキ、ナイスネイチャなどが優勝しており、ウマ娘のゲーム内ではクラシック級・シニア級の6月前半に開催されます。

ちゃんと書くためにウマ娘を始めハルウララでノーマルクリアしましたが有馬チャレンジまでやるべきですか?

  • 挑戦してハルウララに対する理解を深めて
  • 一度クリアしたならそこまでやらなくていい
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