ハルのウララの 2XXX海の向こうの甲子園 作:コンスタンチノープル
高知に縁のある大物をモチーフにしたキャラクターを登場させられると思ったわけです。
「特に、キューバとアメリカは仲が悪いのでメジャーリーガー……アメリカでプロ野球選手になるためには亡命しなければならないんです」
「そうなんですね……あれ? でも森重さんさっき……」
日本はアメリカと違って比較的にキューバと友好関係にある。そのため、以前より金儲けのためでないことを条件にキューバでも選ばれた選手が日本のプロ野球で数多くプレーしている。
「そういうことでしたらそれこそ片貝や山淵に……」
「いえ、こちらについてはキューバ政府から公立高校にという要望が出されています」
キューバ政府も高校生世代の選手を日本に送り込みたいという希望を出すに当たり、日本の高校野球について調べていた。
私立高校の野球留学には金銭が動くこともあるという実態を掴んだようである。昔は選手本人に対して金銭や物品の授受があったが今は少なくなっている。その代わり、学費や寮費などが免除になる金銭的援助が多いというケースである。
また選手本人ではなく、選手の親族や在籍している中学校の野球部やクラブチームの関係者などに紹介料が渡るケースや、そういった間を仲介して金銭を得るブローカーの存在も掴んだようである。
「あの……お金のためがダメなら、わたしがいる
ウララはなんだかんだ自分の走りに大金が動いていたことを少しではあるが理解している。中央に行く前にボロボロだった高知の設備が帰郷してみると新しくなっていて、それをみんな「ウララちゃんのお蔭」と高知にいなかったウララにみんながみんな感謝するのを変に思って聞いたのであった。
みんな難しい話をウララでも分かりやすいように話してくれ、それでもウララはあまり理解できなかったが自分の走りを応援してくれた人々やウマ娘たちが高知のために沢山お金を使ってくれたことは理解できたのである。
そのためウララは自分が関わっている高実野球部に、金儲けは駄目だというキューバの選手を受け入れるのは合わないとウララなりに考えたのであった。
「それについては、キューバ政府から一言もらっています」
「え?」
「『ウララちゃんは別だ』と」
その一言は一つの国を動かすには充分であった。
「吹本先生、ウララ先生」
ここまでただ話を聞いていた南部が口を開いた。
「森重さん、
「校長先生?」
吹本の疑問は無理もない、高知実業はあくまでも普通の公立高校なのである。
「今回の件、
「分かっています。キューバ側としてもこういうことは想定しているので問題ないです」
「校長先生! わたしもいっしょに出ていいですか?」
ウララが強く希望したため同席することになった記者会見は後日、高知県内のホテルの広い一室で行われた。
「高知実業は公立じゃないですか!」
「それについてはキューバ政府の要望として公立高校を希望されましたので……」
会見は南部と吹本、ウララの高実関係者に森重とキューバ政府の関係者で行われている。
「森重さんがコーチや監督をしていた時の選手の息子を受け入れると言うのは立派な野球留学じゃないですか!」
「それはみなさん誤解なされています」
南部が毅然とした態度で答える。
「基本的に野球部に限らず運動部の有望選手だからといって優遇はしません。全員入学試験を受け、合格した者のみ入学を許し、入学後も中間試験や期末試験を始め、テストの点数が悪ければ運動部、文化部、同好会に関わらずクラブ活動への参加を認めません」
「そういった学生に対してテストの合格点を下げるなんてこともあるんじゃないですか!?」
それは絶対にないと南部は答える。
「所属するクラブ活動によって入学試験、定期試験などテストの合格点を引き下げたり、有利な試験問題を作成することは絶対にしません。各教職員にも勉強を視ても試験内容を漏洩することは絶対にしないよう厳命します」
詰めかけた記者やテレビクルーたちは、そこにいるハルウララが一番心配なんだといかにも言いたげである。
「えぇっ!? わたしもちゃんとヒミツにするよ!」
しかしながらやはり心配である。
「
「そんなお題目、わざわざ公立じゃなくて私立の学校を運営してやるべきなんじゃないですか!?」
そういわれてしまえばその通りかもしれない。しかしこの問いに対しても南部は明快な答えを持っていた。
「いえ、公立学校がやるということに意義があるんです。皆様の仰りたいことは、我が高知実業に限らず公立学校の運営には国や都道府県、その自治体の税金によって行われているということですよね?」
「分かっているんなら何でそんな方針を打ち出すんですか!?」
「公立学校はその土地に根ざし、地域のためにあるものです。私立学校がそうでないとはいいませんが……この高知実業という公立高校の門を叩いた学生には、高実生として学校のために……ですがそれでは私立高校と変わりません。公立高校の生徒として、この高知と交流を深め貢献し、この高知という土地は大変素晴らしい場所だと理解って卒業してもらうことを目指します」
「だからそれは私学がやればいいじゃないですか!?」
南部への問いは基本的にこれである。
「『公立だから駄目といって、なんでも禁止していればいずれ、公立高校は絶滅してしまいます。公立高校は地域のためにあるというのであれば、これが
そもそも、いくら外部から文句が飛ぼうが既に高知県には公立高校に地域外の中学生が留学することが出来る制度が存在し、他の県内の公立高校には他の地域からの留学生がいる学校もあるので高実だけ批判されるのはおかしい話である。
「無論、勉学を疎かにするようなことは絶対しません。確かに勉強ができる頭のいい人ばかりが世の中のためになる人であるとは言いません。ですが学校というところは本来勉学に励むための場所です。今後試験内容を徐々に難しく、合格点も徐々に引き上げていき、高知実業は偏差値で上位10校にコンスタントに名を連ねられることを目指して勉学に力を入れます。勿論現時点の在校生で勉強が苦手な生徒を切り捨てるようなことは絶対行いません。偏差値が学校の全てだとは考えていません」
南部の演説は続く。
「ですがキューバから留学してくる将来有望な野球選手や、森重さんの紹介で入学してくるプロ野球で活躍した助っ人外国人選手の子供であっても、勉学の面で融通することはしない方針です。先程申し上げた通り、どんな生徒であろうと勉学で一定の成績に達していなければいかなるクラブ活動への参加も禁止します。ただし、海外からの留学生は日本語の習熟度が低い可能性があり、そういった学生たちに対しては日本語の特別授業を行い、必要な援助は行うことを考えております」
「えー、このことはキューバ政府は既にこの条件を了承しており、日本に留学予定の当該世代の選手においては日本語を始め、高度な教育を開始しております」
キューバ政府からの代表者が答え、それを森重が日本語に訳してコメントした。
「
なんだかんだ南部の方針は高知の事を思ってのことであった。
「
ここまで言って1つだけという「理解かってもらいたいこと」、記者たちの間に一層緊張が高まる。
「結果はすぐには出ないということです。
「高校は3年間しかないじゃないですか!?」
「確かに仰る通り。
この会見に集まった記者の多くは野球留学に反対の所謂うるさ方と言われる古株記者が多い。そういったベテラン記者にとっては好意的な意見である。
「皆さんのご意見の通り高知実業は小中高の12年間のうちのたった高校3年間です。みんな早く結果を出したいと思うのは当たり前です。ですが永続的な結果を得るためには大きなリスクや地道な努力が不可欠です。ローリスクやノーリスクで得たリターンはたとえ大きくても一過性になりがちです。民間にいた頃にそういった会社を興したことがありますがすぐに倒産してしまった経験があります。漁夫の利や濡れ手で粟ばかり狙い、棚から牡丹餅ばかり待つ『手っ取り早く、ラクにいい思いをしたい』と考えるような独善的で身勝手な子には絶対にしないつもりです」
この南部の最後の言葉が老獪な記者たちの心を打ったので最後はなんとか荒れることなく会見を終えることができた。
「あの……校長先生、わたし……」
ウララは南部の演説を理解できていない様であった。
「ウララ先生、私は生徒たちに何事も一所懸命に頑張る子になってほしいと思っているんです」
「! そうですね! なんでもいっしょうけんめいがんばるのは大切なことですね。わたしも生徒のみんなといっしょにがんばります!」
南部校長の野望も展開され始めアンケート無視のように思われるかもしれませんが違うと言わせてください。第27話の前書きにも書いた通り、「目指せ!全国制覇!」が選ばれても高実自体は文武両道の進学校路線にシフトするつもりです。
また「目指せ!模範的高校生スポーツマン!」が多数派になり採用された場合の肝はアメリカの学生スポーツのように他の運動部で活躍する部員が掛け持ちで野球部の試合に出るようになるところにあります。アメリカの学生スポーツ、特に頂点が北米4大プロスポーツリーグと呼ばれているアメフト、野球、バスケ、アイスホッケー(世論調査による人気順)の4競技については学生時代に複数のスポーツで有力選手でそれぞれのスポーツごとに奨学金をもらい学校に通い、大会でも好成績を修めるというケースもあります。
これを日本に置き換えるとすれば野球とサッカー両方で特待生として高校に進学し、夏の甲子園に出場して冬には国立のピッチに立つという競技の枠を超えた二刀流選手ということです。
複数の競技でプロからドラフト指名を受けた選手も多く、極稀にではありますが同じシーズンにMLBとNFL、MLBとNBAで同時にプレーした選手も存在します。
日本でこれらのようなケースがないのかと問われると全くないわけではありません。ですが多くの場合、高校に進学する頃には1つの競技に絞ることがほとんどといっていいです。中学まで野球と陸上競技を掛け持ちし、100mと200mで後に100m9秒台(当時の日本記録)を記録したスプリンターに勝って全国優勝した選手が高校大学では野球の道を進み、プロ野球選手になり野球日本代表に選ばれたというケースがあります。
古い話で言えばプロ野球選手を若くして引退した後にそれぞれプロレスラーとプロゴルファーで世界的選手になった人がいます。野球を辞めた後にゴルフや格闘技の道に進んだ選手は多く、公営競技の選手になる人もいて基本的に競輪か競艇です。
日本では多くの場合、高校以上になると1つの競技に絞り、引退後に別の競技に転向するケースがほとんどで同時期に複数のスポーツをプレーするケースは少ないです。高校や中学においては、この作品の最初の年の夏の大会のように選手不足を理由に他の部活から助っ人してもらうというケースが存在しますがあくまでもこれは弱小校の話でこれから強くなっていく高実野球部には適さないストーリーです。
そこで思い浮かんだのがアメリカの学生スポーツのように他の運動部と常時掛け持ちするという部活動の体制です。
なので「目指せ!全国制覇!」は海外からの留学生を受け入れ、文武両道の進学校路線に高知実業がシフトしても全国制覇を目指す目標は変わりません。ただ、他の部活動との掛け持ちはいないということだけです。現状、滝山君が陸上部の練習にも参加して競技会にも出場しているなど掛け持ちに近い形で活動していますが、あくまでも彼は野球部員であり、陸上部の入部届などは一切書いておらず、陸上部に籍はおいていません。
アンケート選択肢の詳細についてはさらに第21話の前書きと後書きをお読みいただければとおもいます。
今後の高知実業(ストーリー展開)の方針
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目指せ!全国制覇!
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目指せ!模範的高校生スポーツマン!