ハルのウララの 2XXX海の向こうの甲子園 作:コンスタンチノープル
「というか試合の結果分かってるの?」
「途中から観てたよ。てか、末松先輩神すぎじゃね!」
途中から病室のテレビで観ていたので宇多田も試合の行方は観ていた。
「あと加納のジャンピングとか震えたんだけど!」
「おう! もっと褒めてくれよ!」
「うん! みんなすごかったよ!」
ウララに褒められて嬉しい。
「というか今次の相手が決まるカードやってんだろ? 一緒に観ようぜ」
北沢の提案で備え付けのテレビで今行われている試合の中継を観ることにした。
「伊吹商業と……」
翌日の昼休み、昼食を済ませたウララは廃材置き場を見に行くように他の教師から頼まれた。最近、廃材置き場に頻繁に立ち入る生徒らしき姿が確認されているので教師が交代で見回るようにしていて、今日はウララが見てくるように言われた。
「あれ? だれかいる」
その生徒は聞きなれた音と見慣れた後ろ姿をしていた。
「すえ……」
「あ、ウララせんせー。ちょっといいですかー?」
「あ、なーに?」
別の生徒から声をかけられたのでウララはその場を後にした。
放課後になり空き教室に集まった野球部とウララ、翌日の準決勝に向けた作戦会議が開かれる。
「皆、昨日の結果は知っていると思うが明日の準決勝の対戦相手は
「功董の次、瑛北とかハードモードもいいとこどな」
瑛北義塾は先の準々決勝で勝利した功董学館と並び、甲子園優勝経験のある全国にその名が知られる高知県下で一、二を争う名門校である。
「1、2番を打つ
「ブチ……」
「? 末松くん、どうしたの?」
何でもないと答える末松だったが、いかにもいわく有り気な態度をとる末松をウララは追及した。
「なんでもなくないよ! なにか言いたいんじゃないの?」
「別にそういう訳じゃ……」
「征隆、何か情報を持っているのなら話してくれないか?」
「いえ、特に大した話じゃないんですけど……」
末松曰く、瑛北義塾の4番キャッチャーと正に中心選手である北淵とは、小学生の頃に同じクラブチームでプレーしていたという。
「そうか……征隆、その時の北淵に何か癖や考え方の傾向みたいなものはあるか?」
「クセって言われると……」
末松には思い当たるものがあった。
「
「えぇっ? でも、わたしはウマ娘だから……」
そういう訳ではないと吹本が訂正を入れる。
「だが過ぎるほど人が好いのは配球を考えるうえでは参考になるな。投手は右の
「どうしてその北淵くんの考えかたがさんこうになるんですか?」
相手キャッチャーの思考はこちらが攻める時に重要な要素となる。日本の高校野球において、ピッチャーがどんなボールを投げるかはキャッチャーが考えるからだ。
「例えば、相手捕手の北淵が基本的に人が好いということは戦略を巡らせて来るよりは素直な配球やピッチャーが投げたい球を優先することが考えられるという訳です」
「えーっと……」
「そうですね……授業の前に予習復習をしたり試験の前にそれまでの授業から対策を練るのがやりやすい。といった感じでしょうか?」
「なるほど!」
ウララが理解したようなので話を進める。
「1番から5番までの中軸も高い実力を持つ選手が並ぶが、中でも厄介なのが6番を打つ
この日、練習はオフで明日の試合に向けたミーティングに時間が充てられた。
「あ、ワタシからいいですか?」
レイチェルからも話があった。
「今年の瑛北は下級生主体のチームです。例年、瑛北は上級生を中心にベンチ入り選手が構成されていますが、今年は特に打倒・功董に向けてハードなメニューを行った結果、上級生に多くの脱落者が出たらしいと聞きます。勿論、
こうしてミーティングは終了したのだが解散し、帰りがけという時にウララが末松のことを呼び止めた。
「末松くん。今日は投げちゃダメだって吹本先生が言ったのに投げてたでしょ? ちゃんと休まなきゃダメだよ?」
「え? 投げてたって俺、今日は休み時間ずっと寝てましたよ?」
「お昼休みにはいざいおきばでコッソリ投げてたよね? わたしみたよ?」
これは吹本にとっても憂慮する事案であった。
「おいおい、昨日どれだけ投げたと思ってるんだ」
昨日の末松の投球はバッター34人に対し、ストライク27球、ボール51球、ファウル26球、空振り13球、内野ゴロ12、外野フライ7、内野フライ5、キャッチャーファウルフライ1、三振7、盗塁失敗1、四死球2、合計は142球。現代の高校野球でもまず投げることがない球数であり、プロよりも過密な登板スケジュールになる高校野球で今日のような休みの意味は大きく、完全休養が求められる。
「岸井じゃないんですか?」
「いや、俺でもないですよ。他のヤツじゃないんですか?」
「ううん、左手で投げてたよ」
末松も岸井も投げていないと主張するがウララが噓をつくとも到底思えない。ここで思わぬ紛糾があったがなんだかんだうやむやの内に解散し、とにかく明日の試合に万全の準備を整えることになったのであった。
「えぇーっ!? コンプちゃんのトレーナーが山淵カントクさんだったんですかーっ!?」
翌日球場に着いて対戦相手、瑛北義塾高校の山淵監督と畝本部長と直接対面し、ウララはひっくり返らんばかりに驚いた。
瑛北義塾高校野球部監督の
「どーして!? どーしてトレーナーが高校野球のカントクさんをしてるの!?」
「ウララ先生、そこは聞いてはいけないです」
山淵が中央のトレーナーという日本の最高学府である東江大学受験と比較され、合格者が出ない年もあるほど突破することが困難な難関を突破してなった職業を辞した理由は世間一般に広く知られている。しかしその理由を知らないウララにとっては山淵ほどのトレーナーが辞めたことが信じられないのである。
彼はトレーナーとして初期のキャリアはミスターシービーやスーパークリークなど学園入学前からその名が知れ渡る才気に溢れたウマ娘をその前評判そのまま三冠ウマ娘など様々なGⅠで勝利させたが山淵の本領が発揮されたのはその後担当したウマ娘によるものが大きい。
中央にこそ入学したものの、圧倒的才能や実力の差を見せつけられ燻り、落ちこぼれと他のトレーナーたちから見放されたり、見向きもされず、中には退学を決意していた名もなきウマ娘たちを厳格で徹底的なプライベートにまで至る管理統制と理論的な厳しいハードトレーニングによって磨き上げ、ほぼ例外なくGⅠで1着まではいかずとも掲示板入りの走りをコンスタントにする実力派ウマ娘に育て上げてきたのである。
中でもブリッジコンプは主戦の短距離とマイルにおいてサクラバクシンオーやキングヘイロー、タイキシャトルなどと肩を並べる王者と称されるまでになり、すぐに音を上げ自分の身体を安売りする言動まで目立ったフルールドシュマンの諦め癖に毅然とした態度で根気強く向かい続けて重賞を制覇させたことが広く知られているのだが、2人のほかにも山淵の下でどん底から這い上がったウマ娘は数えきれない。
そんな山淵がトレーナーを辞した訳は今は割愛するが、トレーナー業から離れた現在でもURAや中央には
ウララは山淵という名前は知らなかったが「ブリッジコンプを担当するすごいトレーナー」としてその顔は知っていた。一見、連戦連敗だったウララには声をかけていそうに思えるが「ハルウララというウマ娘は周囲が思うより才能に恵まれている。私のようなトレーナーが担当するまでもなく間違いなくGⅠを制せる実力者」とウララを高く評価していたため、敢えて担当しなかったが結局ウララは終ぞ1勝を挙げることなくトゥインクル・シリーズを去ったためその予想は外れてしまう。
このことについて山淵は既にトレーナーを辞した後だったがウララの担当トレーナーを強く批判している。
「ハルウララ先生」
「先生だなんてやめてよ。いつもみたいに『ハルウララ』とか『ウララ』ってよんでよ」
「いえ、もう2人とも立場が違いますしこれは公的な場ですから、私のことはいいんです。さ、浜崎」
山淵に促され連れられてきた1人の部員が前に出る。
「有賀くん」
「はい」
高実側からはウララに促されてこちらもキャプテンの有賀が前に出た。
「今日は宜しく御願いします」
「あ、あぁ……よろしく」
吹本は有賀が浜崎の放つ「圧」に飲み込まれそうになっているのを感じた。部員の
「今日の試合は……」
この試合の主審を務める
「むっ……」
メンバー表を交換すると吹本の顔が一層曇った。
「どうしたんですか?」
ウララも当然心配した。
「後でお話しましょう。さ、有賀」
先攻後攻を決めるキャプテン同士のジャンケンに有賀を送り出す吹本に瑛北の監督山淵と部長の畝本はほんの僅かにしてやったりという微笑を浮かべるのであった。
関西人もドン引きするほどコッテコテのご都合主義をふんだんに用いた大物キャラクターをこれまでも登場させてきて、今後も登場させていく予定ですが中でも瑛北義塾の山淵監督を思い入れの強いキャラクターです。
2人の人物を併せたキャラクターで片方の元ネタが畝本部長が存在するにあたって大きく影響しております。
ただどちらの人物も競馬とは深い関りはないと思いますが敢えて元中央トレーナーという肩書にしました。
今後も競馬と関りの薄い人物が元ネタになっているキャラクターをトレーナーや元はトレーナーをしていたキャラクターとして考えているのが何人かいます。
アンケート選択肢の詳細については第21話の前書きと後書き、第39話の後書きをお読みいただければとおもいます。
今後の高知実業(ストーリー展開)の方針
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目指せ!全国制覇!
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目指せ!模範的高校生スポーツマン!