ハルのウララの 2XXX海の向こうの甲子園 作:コンスタンチノープル
もう自分の物として手に入れているから今読まなくてもいつでも読めるという感覚もあると思うのですが、もっと知識を得ればこの作品にも深みを付けられるのではないかと思うのですがついつい書きたいを優先してしまいます。今後も今回のように書きたい気持ちを一旦置いて読書する時間を設けるべきなのは分かっているのですが現状書きたい欲のほうが大きい現状です。
別に読むのが苦しいというわけではないのです。
「最初はグー……」
有賀と浜崎による先攻後攻決めのジャンケン、浜崎が体勢低く構え低く凄んだ声をあげた。
「ジャンケン……」
有賀がグー、浜崎はパー。こちらの負けといういかにも幸先の悪いスタートである。
「後攻で」
勝った浜崎は後攻を選択。野球は基本的に後攻が有利なので当然のことであった。
「ゴメン、負けた」
他の部員たちの下に戻った有賀は皆に頭を下げた。
「では私はこれで、ご健闘を」
「はい」
ウララも顔合わせに出ていたので他の部員たちのことは笹井が見てくれていた。ここまで勝ち上がると笹井以外にも他の教職員や生徒も観戦にやってきている。
「じゃあ先攻ですか?」
「うん! 先攻だよ!」
ウララが元気よく答えたところで一同ベンチに移動した。
「うぅ……なんだか
皆この空気を感じるのは前戦の功董戦に続き2度目。
「なんか相手の選手、みんな元気ないですね? おなかでもいたいのかな?」
「瑛北は常に緊張感を持って戦うことを重んじています。それにしてもやってくれたもんだ山淵君め……」
この時高実は、2つの点で後手に回った。1つはキャプテン同士のジャンケンに負けて後攻を獲られたこと。そしてもう1つは先発オーダー、以下の通りである。
| 7月〇◇日 | |||
| 先・後 | 高知実業高等学校 | ||
|---|---|---|---|
| 打順 | 守備位置 | 選手名(ふりがな) | 背番号 |
| 1 | 4 | 4 | |
| 2 | 6 | 6 | |
| 3 | 3 | 3 | |
| 4 | 7 | 7 | |
| 5 | 9 | 9 | |
| 6 | 2 | 15 | |
| 7 | 1 | ⑩ | |
| 8 | 5 | 5 | |
| 9 | 8 | 8 | |
| 控え選手 | |||||
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 16 | ||||
| 2 | 17 | ||||
| 11 | 18 | ||||
| 12 | 19 | ||||
| 13 | 20 | ||||
| 14 | 記録員 | 学年 | 1年 | ||
| 責任教師 | ハルウララ | 監督 | 吹本肇壽 | ||
| 審判 | (球)岡谷佑 | (一)浦田 | (二)黒山 | (三)氏本 | (外) |
| 7月〇◇日 | |||
| 先・後 | 瑛北義塾高等学校 | ||
|---|---|---|---|
| 打順 | 守備位置 | 選手名(ふりがな) | 背番号 |
| 1 | 6 | 6 | |
| 2 | 4 | ④ | |
| 3 | 7 | 7 | |
| 4 | 2 | 2 | |
| 5 | 9 | 9 | |
| 6 | 3 | 3 | |
| 7 | 8 | 17 | |
| 8 | 1 | 13 | |
| 9 | 5 | 15 | |
| 控え選手 | |||||
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 14 | ||||
| 5 | 16 | ||||
| 8 | 18 | ||||
| 10 | 19 | ||||
| 11 | 20 | ||||
| 12 | 記録員 | 学年 | 2 | ||
| 責任教師 | 畝本侑夫 | 監督 | 山淵達史朗 | ||
| 審判 | (球)岡谷佑 | (一)浦田 | (二)黒山 | (三)氏本 | (外) |
「先発投手の予想が外れてしまいました。右の福沢か高脇でくるものと思っていましたが的射とは……大会前のメンバー登録で彼は左でしたから想定外です。いえ、左だったら投球回数こそ少ないですが次本がいますから次本までは多少頭にあったのですが的射は全く考えていませんでした。これは不味いですな」
「たしかに……よそうが外れちゃったのはタイヘンですね……」
この試合の高実の打順は相手の先発が右の福沢か高脇だと決め打ちして左バッターを上位打線に集中させている。これは攻める上では不利と言わざるを得ない。
「しかも、的射は公式戦どころか練習試合でも殆ど投げていないので情報が圧倒的に無いです。ほぼ0といっていいです」
「つまり、序盤は的射サンがどんなピッチャーか見極めるための対応をしないとイケナイわけですね」
レイチェルの言う通り、データのないピッチャーには攻略の糸口は建て辛いので序盤は結果にこだわらず球数を投げさせてデータを収集するのが上策である。
「いや、ここは……皆、聞いてくれ」
「みんなー、吹本先生がおはなししたいことがあるんだってー」
ウララの一言で選手たちが吹本の前に集まる。
「情報の殆どない投手が相手だ。だが球数を稼いで情報を得る策はこれ以上後手に回ることになる。甘い球が来たら初球からでも狙っていけ」
「はい!」
敢えて早いカウントから積極的に打ちにいく作戦でこの後手を打開しようとした。
「それに
「相手のよそうが外れたってことですか? でもどうしてわかるんですか?」
それは瑛北の下位打線にあるという。
「7番の菱岡と9番の白橋は、特に左投手に相性が良いと評判の選手です。恐らく
「なるほど!
「ですが良いことばかりではないです」
吹本曰く、左キラーの2人が終盤まで出場するのであればこちらも末松と岸井を投入するかとなった時に、そのタイミングを考えなければならないとのことである。
「理想は有賀が完投してくれることですが、この試合は前の試合と違い選手交代をどこでするかが鍵になってくるでしょうな」
「わかりました! わたしもみんなのこと、いつもよりよく見ておきます!」
ウララのこの一言ほど頼りになる言葉はない。瑛北の試合前ノックが終了し、高実のノックの時間となった。
「ウララ先生、
「レイチェルさん? どういうこと?」
瑛北の先発ピッチャー、的射がブルペンで投球練習をしていないのである。キャッチボール程度で済ませている。ギリギリまでデータは与えない腹積もりのようであった。
そしてノックの時間が終了し、いざ臨戦態勢という時にウララは
「なんだか、
「さあ、行きましょう」
審判の掛け声とともに両校の選手たちが飛び出していく。
「互いに、礼!」
「御願いします!」
挨拶と礼をとっても瑛北は全員ピシっと、正に礼儀正しいもの。これを或る野球漫画では「礼儀で殴る」と表現した。折り目正しさは時として武器となる。
「なんだか、カイチョーさんみたい」
「あぁ……シンボリルドルフみたいというのは言い得て妙ですね。確かに似通った部分はあるかもしれません」
ウララは当然「礼儀で殴る」という表現は知らないが、トレセン学園に在学していた時にメジロ家やシンボリ家など名家のウマ娘たちと交流する中で殺傷能力の高い折り目正しさに触れていたのでまだ慣れている。殺傷能力などと物騒な表現をしたがアグネスデジタルは何度その折り目正しさの前に尊死したか数え切れない。
一方で高実の選手たちはこうした相手との対戦経験が少ないので今の挨拶と礼で委縮してしまっている選手もいる。
「みんなどーしたの! 元気ないよ! ホラ! 笑って笑って! 今日もいっぱいたのしもー!」
「サイドスローか……厄介な相手だな」
「蔣くんみたいな投げかたですね! あの、さいどすろーってなにがやっかいなんですか?」
サウスポーのボールの軌道は右ピッチャーにない独特なものを描く。そしてそれは腕が下がりリリースポイントが低く、そして横の角度がつくと独特な軌道は更に増幅される。
「プロ野球で、対左の好打者に特化した左投手の多くはサイドスローであることが多いです。この試合、高海、碓井、岸葉にとっては厳しい試合になるかもしれませんね」
「うぅ……が、がんばれー! 高海くーん!」
めげずにウララが送った声援を背に高海がバッターボックスに立った。
「監督は甘いの来たら初球から狙っていいって言ってたけどまず初球見送りはベタだな」
的射はランナーがいなくても最初からセットポジション。北淵のサインに頷き、注目の初球を投じた。
「なっ!?」
「ほぼアンダーじゃねえか!?」
「えっ? え? ね、ねえ……あんだーってなに?」
サイドスローよりも更に低い位置からボールを投げ込むのがアンダースロー。因みに、「アンダースロー」は和製英語であり、アメリカでは「アンダーハンドピッチ」や「サブマリン」と呼ぶのが一般的でサブマリンは日本球界でも比較的に使われている。サブマリンは潜水艦の意であり、日本でもその投げ方などの表現には潜水艦になぞらえた言葉を用いることがある。
ボールをリリースする際に身体の重心を急激に沈み込ませ、投げる腕を水平を下回る角度まで下げた後にしならせて投げることによりボールが下から上に上がってくるように見える。
「アンダースローで末松先輩みたいな剛速球を投げることは珍しくて、殆ど遅いボールなんですけどホールを投げる位置が低くて、そこから浮き上がってくるような軌道でボールがくるんで、バッターの眼を錯覚させることが出来るんです」
「へぇ~」
打順が回って来ることに備えてヘルメットやひじ当て、すね当てを着けて準備した天童がウララに解説した。更に、岸井がやってきて情報を追加する。
「アメリカの大学教授が上から投げるピッチャーとサブマリンのピッチャーのファストボールの軌道を比較したら、上から投げたボールは投げた位置からキャッチャーミットに届くまで大体1.3m落ちたのに対して、サブマリンからボールは投げた位置から大体30cmぐらいしか落ちなかったんです。このボール軌道の違いがバッターの眼を錯覚させるんじゃないかって言ってます。ファストボールだけじゃなくてシンカーやスクリューボール、カーブなんかの変化球は一旦浮き上がってから曲がり落ちる独特の軌道になるんです。あと、サブマリンで投げるピッチャー自体少なくて珍しい存在で、ボールの軌道を再現できるピッチングマシンも少ないからバッターが打つ練習をすること自体がそもそも難しいんです」
「えっ? どうしてあんだーすろーで投げるピッチャーは少ないの?」
確かにこれだけ聞けばもっとアンダースローが多くてもいいのでは? とウララも思ったが天童がアンダースローのデメリットについて解説する。
「アンダースローは右バッター対右ピッチャー、左バッター対左ピッチャーだと滅茶苦茶角度のついたボールとなるんで、これが苦手ってバッターもいるんですけど、逆に左バッター対右ピッチャー、右バッター対左ピッチャーだと今度はボールの軌道が物凄く見易くて、さっき言った通りアンダースローはボールのスピードがそんなに速くないんで慣れたらメッチャ打ちやすいんです」
「つまり、えーっと……あの的射くんってピッチャーは左投げだから、高海くんと碓井くんと岸葉くんは打つのがタイヘンってこと?」
「そういうことになります」
その言葉通り、高海は的射の前に見逃し三振に討ち取られてしまった。
瑛北義塾のメンバーを設定する上でこの時期のこのプロ野球チームの選手たちを参考にしたと言うのがあり、それ決める上で的射くんのモチーフになったピッチャーの存在は大きく働きました。
瑛北義塾のモチーフになった高校のエースとして甲子園に出場し、U-18の日本代表に選ばれ、卒業後はプロに進んだある選手が的射くんのモチーフになったピッチャーとタイプが比較的に似ているところがあったからです。
アンケート選択肢の詳細については第21話の前書きと後書き、第39話の後書きをお読みいただければとおもいます。
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