ハルのウララの 2XXX海の向こうの甲子園   作:コンスタンチノープル

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 続きの投稿を長期にわたって休止していた言い訳は活動報告にその都度投稿してあるのでそちらをご覧になっていただければと思います。

 本編の執筆に影響が出るほど様々な方面のインスピレーションがとめどなく溢れかえっているのですが、とりあえず秋季四国大会の出場校が四国各4県で3枠ずつなので高実を入れても最低12校チーム分を作る必要があります。


第53話

 見逃し三振に討ち取られた高海がベンチに戻る前にネクストバッターズサークルの碓井に情報を伝達する。

 

「1塁側ギリギリ踏んでくる。左はメッチャ見づらいから覚悟した方がいいよ」

 

「わかった」

 

 その情報は早速ベンチにも伝えられる。

 

「1るいがわ。ってどういうこと?」

 

「マウンドのプレートのことです。横に細長いですが脚が少しでも掛かっていたらどこから投げてもいいのでプレートの1塁に近い位置から投げることです」

 

 サウスポーの中でもリリースポイントの低い対左バッターに特化したピッチャーがピッチャーズプレートの1塁側から投げるのは常套手段である。

 

「ストライク! バッターアウト!」

 

 続く碓井は途中で止めたバットがスイングと判定される中途半端な空振り三振に討ち取られてしまった。

 

「ボールに力を感じました。かなりインハイを積極的に使ってきてます」

 

「成程、流石は山淵君というところか……」

 

「吹本先生、コンプちゃんのトレーナーがどうしてスゴいんですか?」

 

 山淵はトレーナー業を廃業後は瑛北義塾高校野球部の監督として高校野球の監督でも名将と呼ばれる地位を築いており、著書も出版している。その一説にはサウスポーは左バッターのインコースになるコースをまずは集中的に覚えさせると書かれている。

 

「ここまで練習試合でも登板を控えていたのは、恐らくその存在を隠すためでしょう。本来であればこの試合は、功董との対戦になるハズでしたから、的射は元々対功董戦の秘密兵器だったのでしょう」

 

「ひ、ヒミツへーき……」

 

 ウララが吹本の言葉に思わず息を吞む間に胡はショートへの平凡なゴロに討ち取られてしまい初回の攻撃を3者凡退で終了してしまった。

 

「うぅーっ、みんな! まだはじまったばかりだよ! これからこれから!」

 

 ウララの言葉通り1回裏、瑛北の攻撃は先頭の西江サードゴロ、続く浜崎セカンドゴロ、3番大縣をレフトフライに討ち取り、有賀もこれ以上ない完璧な立ち上がりを見せた。

 

「投げにくいな……」

 

「沈くん、どうしたの?」

 

 しかしキャッチャーの沈は浮かない表情を浮かべるのであった。

 

「バッターがみんなホームベース寄りに立ってきて投げづらいって」

 

 当の有賀は簡単に言うがこれは彼にとっては死活問題である。有賀がこの夏までに構築してきたピッチングスタイルはシュートとスライダーを軸に積極的にインコースを攻めるというもので、バッターがホームベース寄りに立ってくるとデッドボールの確立が高くなるためである。

 

(ウェン)、思っきりインコースを攻めよう。ベース寄りに立ってくるってことはインは打ちづらいハズだ。それに投げ間違わなきゃいいだけだし」

 

「でも有賀くん、ぶつけちゃった時はちゃんとあやまらなきゃダメだよ」

 

 そうしている間に2回表、高実の攻撃は先頭の岸葉が見逃し三振に討ち取られてしまった。

 

「高海、碓井。消えるか?」

 

「そうですね、消えますね」

 

「きえちゃうって、なにが?」

 

 岸葉が言ったのは左バッターにはボールの出所が分からずに消えたように錯覚するかという意である。

 

「こうなってくると右バッターがカギですかね?」

 

「いやレイチェル、左バッターでもバントで揺さぶりを仕掛けたり方法が無いわけではない」

 

 このような会話が吹本とレイチェルの間で繰り広げられる間に天童はファーストゴロに討ち取られてしまった。

 

「右には外が遠く感じますね」

 

「じゃ、じゃあ! こっちもホームベースの近くに立てばいいんじゃない?」

 

「ウララ先生、それでは相手(向こう)の術中にはまると思われます」

 

「えぇっ!? どうして?」

 

 先ほど有賀が言ったようにホームベース寄りに立つとインコースが打ちづらくなる。ベース寄りに立ったところでインコースを突いてくるかもしれない訳である。

 

「ここまで左打者には内角を、右打者は外角を中心に攻めてきているようですが試合が進んでくれば配球を変えてくる可能性は充分に考えられます。そうなった時に鍵となるのは恐らく沈でしょう」

 

「え? どうして沈くんなんですか?」

 

 沈は反対方向にも強い打球を打てるのでこのような場合往々にしてキーになることが多い。

 

「コースに逆らわずに……」

 

 次のボール、沈はアウトコース高めに投じられたストレートを1、2塁間に強烈な当たりを弾き返した。

 

「っ好!」

 

「っ!」

 

「あっ……」

 

 抜けてもおかしくない当たりだったがセカンドの浜崎に好捕されセカンドゴロに終わった。

 

「ドンマイだよ! 沈くん!」

 

「良い当たりだったから状態は悪くないぞ。相手が1枚上手だっただけだ」

 

 防具やマスクを着けた沈がキャッチャーボックスに向かっていく。

 

「切り替えてくれればいいが……」

 

「どういうことですか?」

 

 野球の格言に「キャッチャーをノせるな」という言葉がある。バッティングで好結果を挙げると守備にも好影響があるので特に守備の要であるキャッチャーを打たせるなという意味である。

 

 つまりその逆もまた然りということなのでヒット性の当たりをファインプレーされた沈の守備に悪い影響が出ないか吹本は心配したのである。

 

「これで」

 

「ダメだ。こういうバッターこそ思っ切りいかねえとやられっぞ」

 

 先頭の4番北淵にも強気のインコース攻め、若干甘く入ったボールを北淵のバットが一閃する。

 

「あっ!」

 

「センター!」

 

「くっ!」

 

「アウト!」

 

 予め深めに守っていた舘がウォーニングゾーンまで後退してなんとか抑えて1アウト。

 

「ふぅ」

 

「全く、インコース攻めは危険すぎますよ」

 

「むしろ相手みんなホームベース寄りに立ってくるんだから外の方が危ないって」

 

 有賀の言葉通りかどうかはなんであるが、その後もインコース中心の配球で照井をセカンドフライ、川平をセカンドゴロに討ち取ってこの2回の裏は終了した。

 

「すごかったね! わたしドキドキしちゃった!」

 

「ハラハラの間違いじゃないですか?」

 

「有賀、次の回先頭なんだから早く準備しろ」

 

「あ、はーい」

 

 吹本から促されてバッターボックスに立った有賀だが的射の前に空振り三振に討ち取られ1アウト。

 

「かっとばせー! 滝山くーん!」

 

 滝山は大会前の練習試合を通じて全く当たっていない。去年の夏の初戦でホームランを打って以来サッパリなのである。

 

「監督は脚と守備で使ってくれてるんだろうと思う。でも俺だって打てるとこ見せないと」

 

 痛烈な打球がピッチャーの左横を抜ける。センター前に抜けようかという当たりだった。

 

「っし!」

 

「っ!!」

 

「あっ!」

 

 またしてもセカンドの浜崎に好捕されてセカンドゴロに終わってしまった。

 

「うぅっ……ドンマイだよ、滝山くん! つぎはゼッタイ打てるって!」

 

「引きずるなよ、当たりは良かったんだ」

 

「次はチャンスで回ってくるかもしれないからしゅーちゅー切らしちゃダメですよ」

 

 滝山をフォローするウララ、吹本、レイチェルの3人だがまたしても浜崎のファインプレーに阻まれたのもあってどこか自分自身に言い聞かせているところも1つあった。

 

「ここは1つ……」

 

 舘はこの試合の前に事前に決めておいたセーフティバントをしてもいいかというサインをベンチに向かってさりげなく出した。

 

「よし、やってみろ」

 

 吹本もOKの返しをして舘はバッターボックスに立った。

 

「よしっ!」

 

「ノータッチ!」

 

 舘のバントは3塁線ギリギリの当たり。キャッチャーの北淵はピッチャーの的射とサードの白橋に打球を見送るよう大声で叫んだ。

 

「ファウル!」

 

「ちっ!」

 

「ふぅ……」

 

 打球は寸でのところでファウルゾーンに転がり出てしまった。

 

「打ちに行け」

 

「いえ、ここは……」

 

 セーフティバントは1回で成功できなければ続けてとる戦術ではない。吹本も舘にヒッティングのサインを出したのだが館は敢えてまたセーフティバントをしたいというサインを出した。

 

「分かった……」

 

 バントは2ストライクから失敗するとアウトになるがまだ1ストライクということもあり吹本はやらせることにした。

 

「ボール!」

 

 アウトコースからストライクを狙ったカーブが外れて1ボール1ストライクの平行カウント。今度は吹本からセーフティバントのサインを出す。

 

的射(ピッチャー)!」

 

 舘のバントはサードとピッチャーの間に転がる打球、ピッチャーの的射が処理する。

 

「競走っ!」

 

「いけー! 舘くーん!」

 

 ファーストベース上ギリギリの競走になった。

 

「アウト!」

 

 僅かに的射の送球が速く3アウトでこの回の高実の攻撃は終了した。

 

「うー! もーちょっとだったのにー!」

 

「いえいえ、的射(ピッチャー)に揺さぶりをかけられたと思うんでこれからチャンスはありますよ」

 

 舘の狙いは出塁よりもココにあった。

 

「有賀、沈。瑛北(向こう)の下位打線は恐らく征隆対策の選手が置かれているが油断せずに気を引き締めていけ」

 

「はい」

 

 3回裏、瑛北の攻撃。有賀は先頭の菱岡をサードゴロに討ち取った。

 

「うむ、滝山も先程のファインプレーを引きずっていないようですな」

 

「がんばれー! 有賀くーん!」

 

 有賀は続く的射を空振り三振、白橋を見逃し三振と2者連続三振に斬って捨て3回裏を終えた。

 

「ナイスピッチング! 有賀くん! はい」

 

 有賀にドリンクの入ったボトルを手渡すウララはご満悦の表情である。

 

「どうやらこの試合も我慢比べになりそうですね……」

 

「ガマンくらべ?」

 

「先にミスをしたり、先制点をあげちゃったほうが一気に不利になるってことです」

 

 両先発ともに最初の打者一巡をパーフェクトに抑えたこともあり、この試合も膠着状態の様相を呈してきている。

 

「高海、碓井。この回は打つことは考えずにバントの構えで徹底的に相手に揺さぶりをかけろ」

 

「あれ? でも吹本先生、始まるまえはせっきょくてきに打って行けって……」

 

 ウララが疑問に思うのは当然だが両チームとも先発ピッチャーが完璧な立ち上がりを見せたため、このままロースコアの展開が終盤まで続くと試合経が豊富な瑛北に有利な展開になってしまうことが予想されるため、試合中盤1番高海から始まるこの4回表でまず相手守備に揺さぶりをしかけることにしたのである。




 これまで作り置きしておいたチームも作り直す必要が出てきてしまいました。

 アンケート選択肢の詳細については第21話の前書きと後書き、第39話の後書きをお読みいただければとおもいます。

今後の高知実業(ストーリー展開)の方針

  • 目指せ!全国制覇!
  • 目指せ!模範的高校生スポーツマン!
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