ハルのウララの 2XXX海の向こうの甲子園   作:コンスタンチノープル

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 対戦させたい・作りたい高校が山ほどあるのですが、ウララの教師何年目までこの話を書くと時期はある程度決めているのであまり多く作っても没になってしまうのが難しいところ。スピンオフも考えているのですがウマ娘の知識も、野球の知識も全然不足しているのが難点。足りないものが多すぎる。


第57話

「ここでの弱気な姿勢は瑛北(相手)の思う壺。内野前進、バッテリーはインをガンガン行けって」

 

 伝令に来た五十風はとてもこの場面で見せるような表情ではない。

 

「何笑ってんだよ」

 

「笑え笑え! カントクも逆転は覚悟の上だって言ってたから実際に試合してるオレたちが腹くくらねぇでどーすんだよ! 何ならオレと代わるか?」

 

「帰れ! お前ピッチャーしか出来ねえだろ! 投げたってこの場面じゃ押し出しやるだろ!」

 

 キレる高海、とてもピンチを迎えたマウンドでする会話ではないし、それにしたって高海も言い過ぎである。

 

「おっ? そんな威勢があるんなら平気だな。カントクは逆転カクゴっつってっけどウララ先生は点取られたら泣くと思うから、点やったらベンチ総出でおめぇらフクロだからぜってー抑えろよ!」

 

 勿論ウララはここで逆転されたところで泣き出すようなことはないのだが、そんなことを言われたら否が応にも気合が入る。そしてこのやり取りをライトから見ていた天童は至って冷静であった。

 

「次の西江さん、浜崎さんはミートが巧くてホームラン打てるパワーもある。じゃあこの場面、何を狙ってくる……瑛北だったら……よし」

 

 五十風を追い返した内野陣は気合充分、向こうっ気強く西江に対峙した。

 

「前進守備……ってなら……」

 

 初球、バッテリーはインコース高めにストレートを投じた。

 

「よし!」

 

「あっ!?」

 

 咄嗟、ホームベース寄りに立っていた西江は左足を外側に開いて打ちに来た。インコース攻めを予想していたのである。

 

「不味い!」

 

 打球は右中間を深々と破らんばかりの長打性の大きな打球。

 

「なっ!?」

 

「アウト!」

 

 しかし、そこには天童が既に回り込んでいた。難なく捕球してこのピンチを脱したのであった。

 

「あ゙~~~~~~」

 

「ウララ先生扇風機の前に立つのやめてくださいって言ってるじゃないですか」

 

 高校野球は5回終了時にベンチ裏の冷やされた部屋で休憩をとるクーリングタイムが設けられている。ウララはこの時間になると子供の如く扇風機に発声してご満悦の表情になっているところを咎められるところまではお決まりの光景になっている。

 

「でもユウ、さっきはよくあそこにいたよな」

 

「狙ってくると思ったからな」

 

 前進守備の内野をゴロで破るのはやや難易度が高く、外野に飛ばすことを考えた時にその前の打球で舘の動きが悪くなっていたことを把握していること、センターから逆方向を狙うことがバッティングの理想と言われていることを踏まえ、あの場面は右中間狙いのバッティングをしてくると天童は考えて予めセンター寄りに守備位置をとっていたのであった。

 

「でもホントタイミングに救われたよな」

 

 舘を始め、暑さで動きが鈍くなってきた選手がいて不利な状況になっていたところでこのクーリングタイムは正にベストタイミングであった。

 

「ウララ先生はコレどうぞ」

 

「あ! にんじんアイスだっ! ありがとー!」

 

 早速かぶりついたウララはアイスクリーム頭痛をおみまいされている。

 

「まだ試合中だから冷やしすぎは脚をつったり故障の原因になるから、程よくしろよ」

 

 近年の災害ともいえる酷暑への対策から最近導入されたクーリングタイムだが、逆にこのクーリングタイムの直後に脚をつるなどするケースが増えているという意見もある。

 

「この水入りで瑛北(むこう)が調子を崩す可能性も考えられる。次の回、慎重に投球を見極めつつ、打てる球は積極的に振っていくように」

 

 こうしてクーリングタイムが終了し、6回表の攻撃。先頭バッターの碓井がバッターボックスに立つ。

 

「かっとばせー! 碓井くーん!」

 

 無事頭痛から回復したウララも元気よく声援を飛ばす。

 

「ここで一丁仕掛けてやる」

 

 碓井は前の打席よりもホームベース寄りに立った。

 

「クーリングタイムで調子を崩すかもしれないこの場面でここまで投げてきたコースを封じに来たか。でも……」

 

「ストライク! バッターアウト!」

 

 バッテリーはこの策をものともせずにインコースに投げ込み碓井を空振り三振に討ち取った。

 

「すいません……ベース寄りに立ってインを封じたつもりだったんですけど」

 

「ドンマイだよ! 試合はまだ終わっていないんだからね!」

 

 続く胡はアウトコースのボールに狙いを絞りレフト前ヒットを放った。

 

「ナイスバッティング! めいしょーくん!」

 

 吹本は前の打席に続き、再び胡に盗塁のサインを出した。既に盗塁を成功させているため警戒は厳しいが、その分ここは動いてこないだろうという場面であるため積極的にいく。

 

「メイ、牽制注意しろよ!」

 

 ファーストコーチスボックスに立つ藤から声が飛ぶ。敢えて相手にも聞こえるほどの大声を飛ばした。

 

「どうする?」

 

「バッターに集中しよう。もし走られても三盗(みっつ)来たら絶対刺すから」

 

 初球から胡が盗塁を仕掛ける。バッテリーは二盗は無視と決めたので相手にしない。

 

「今のは盗塁じゃないですよね?」

 

「えーっ!? なんで!?」

 

 盗塁は守備側がそれを封じようとする動作を見せない場合は記録されない。この場面は明らかにソレが適用されるシーンであった。

 

「今みたいなのは守備側の無関心って言って、盗塁の代わりに野手選択っていうのが記録されるんです」

 

「へぇ~、そうなんだ!」

 

 野手選択により1アウトランナー2塁と高実追加点のチャンス。バッターボックスの岸葉は碓井と同様にホームベース寄りに立ってインコースへのボールを封じる策に出た。

 

「そう来てくれた方がむしろ助かるかなー。なんせ的射(こっち)には勝負に使える手札が最初から少ないからね」

 

 瑛北バッテリーはこの岸葉の策をものともせず徹底的にインコースにボールを投じて見逃し三振に討ち取った。ここまで上位打線に据えた左バッター3人全員が3打席連続三振と完全なブレーキになっている。

 

「思っきし狙ってみっか……」

 

 続く天童はアウトコースに狙い球を絞ってセンター前にクリーンヒット。

 

「ストップストップ!」

 

 当たりが良すぎたためセカンドランナーの胡はホームに還れなかったものの、2アウトながらランナー1、3塁とチャンスを拡大し、前の打席でヒットを放っている沈を迎えた。

 

「いっけー! 沈くーん!」

 

 ウララはタオル片手に腕をブンブンと振り回してヒートアップしている。

 

「ここまで的射(このピッチャー)はアウトコースに徹底してる。2アウトだけどファーストはベースに着いている……ここは」

 

 アウトコースのボールを右方向に打つのがセオリーであるこの場面、予想通りのアウトコース低めのボールを1、2塁間に強く弾き返した。

 

「っ好!」

 

「あっ!?」

 

 セカンドの浜崎がヒット性の強い打球をなんでもなく捌きスリーアウト。追加点のチャンスを逃してしまった。

 

「うーっ! ドンマイだよ、沈くん!」

 

「狙いを読まれたな」

 

 配球が徹底しているということはバッターが狙い球を絞りやすいのと同時に、守りに就く野手も打球の傾向を読みやすくなるということである。

 

「ありがとうございます」

 

 ピッチャーの的射が再三の好守を魅せる浜崎に頭を下げる。

 

「ナイス低め。勝負所で高めに行かないから守りやすいんだよ。浮いてたらこうはいかない」

 

 キャプテンの浜崎は的射のここまでのピッチングを評する。

 

「監督、この回左はベース寄りに立ってインを封じようとしてきて右は躊躇なく踏み込んで来ました。右が続く次のイニングは不味いかもしれません」

 

「分かった。福沢、高脇用意してくれ」

 

「はい!」

 

 ここで瑛北ベンチはこの夏の主戦ピッチャーである福沢と高脇の2人をブルペンに向かわせ、肩を作らせ始めた。

 

「動いてきたか。有賀、この回瑛北(むこう)は追加点のピンチを絶って流れが来ている。この回を抑えたら表の攻撃では代打を送るから一層奮起して抑えてくれ」

 

「はい!」

 

「北沢、次の攻撃有賀の打順で代打に出すから準備しておいてくれ」

 

「はい!」

 

「有賀くん! 北沢くん! がんばってね!」

 

 この回の先頭バッターは先ほど好守の浜崎から。慎重なピッチングが求められる。

 

「征隆、次の回から行くぞ」

 

「任せてください」

 

 そして吹本も末松をブルペンに向かわせた。

 

「来たか……」

 

 末松がブルペンに向かうとそれだけで春野の雰囲気が一変した。

 

「その前に最低でも追いつかないとね」

 

 慎重な配球の高実バッテリーに浜崎も慎重にボールを見極める。

 

「ボール・フォー!」

 

 結局先頭バッターの浜崎にフォアボールを出して続く大縣にはピッチャー前に1球で送りバントを決められた。前の攻撃からチャンスを逃し、高実にこの上なく悪い流れが来ている。

 

北淵さん(このバッター)はここまで討ち取っているけど続けてセンターに長打性の当たりを打たれてる……照井さん(つぎのバッター)はセカンドフライとセカンドゴロで内容も良い。塁を埋めて勝負するか?」

 

 沈はベンチの吹本に目をやり判断を仰ぐ。

 

「勝負だ。ここで北淵を討ち取って流れを呼び込むんだ」

 

「ここまでやられたら嫌でも分かる。ここで求められるのは形じゃなくて、4番としての結果」

 

 北淵京一はこのバッターボックス、野球人生で始めてバットを短く握り構えた。それはこれまで来たボールを野性的な反応で好打してきたスタイルを崩すことであり、真の天才バッターが初めてそのスタイルをかなぐり捨てて立ち向かう。

 

「バットを短く持っている。インを意識しているんなら、アウトコースで仕留めるためにまず徹底的にインを突く」

 

 インコースに構え、シュートのサインを出す沈。有賀もその意図は分かり頷いてピッチングモーションに入る。

 

「っ!」

 

「レフトー!」

 

 強烈な打球がレフトポール際を襲う。岸葉が懸命に下がる。

 

「フェア!」

 

 ホームランにこそならなかったがフェンス直撃の打球。

 

「ボールセカン!」

 

 サードの滝山が叫ぶ。浜崎はサードを回りホームへ向かっている。岸葉は無理せずカットマンに入ったショートの碓井に送球、無のない中継プレーで長打性の打球であったがシングルヒットに留めた。

 

「危なかった。完璧に捉えたんだけどね。エースナンバーじゃないけど、凄いピッチャーだ。それに中継プレーも、監督もミーティングで言ってたけど、高実は征隆だけのチームじゃないね」

 

 そうファーストベース上でベースコーチの太刀川に零す。ヒットこそ打たれたものの、「天才・北淵京一に野球人生で初めてバットを短く握らせた男」として有賀幸一の名前は野球史に刻まれることになる。




 アップデートが必要なチームも多い上に、今まで作ったチームの多くにアップデートの必要性が生じてしまいました。

 アンケート選択肢の詳細については第21話の前書きと後書き、第39話の後書きをお読みいただければとおもいます。

今後の高知実業(ストーリー展開)の方針

  • 目指せ!全国制覇!
  • 目指せ!模範的高校生スポーツマン!
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